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文豪てっしーを見守る会コミュのライン(中学後編)【大樹編】?

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 「サーバーマッチポイント」良祐は審判の声を聞いてから、高いトスを上げた。サーブはわずかにサービスラインからはずれた。強さを抑えたセカンドサーブは佐々木に完全に捉えられた。大樹はすぐさまバックハンドで返す。近藤は執拗に大樹に返してくる。後が無くなっても近藤は真っ向勝負だった。打ち合っているうちにそれが近藤にとっての意地なのではないかと大樹は感じるようになった。
 

 大樹としても真っ向から決着をつけたい相手に変わっていた。大樹は近藤に向かってボールを打ち続けた。大樹の打ったボールがバックライン上に落ちる。近藤は慌てずに返したがそのボールがわずかに甘く入った。


 チャンスと見た大樹は近藤のバックサイド側のかなり厳しい場所を狙った。近藤は体勢を崩しながらボールを返した。良祐の元にチャンスボールが上がる。


 「良祐、決めろ」大樹は叫んだ。良祐が勢いよくラケットを振り下ろした。綺麗なスマッシュだった。ボールはコートには返ってこなかった。しばらくコートの周りが静かになった。


 「ゲームセット。4-2 原中」静寂に包まれたコートに審判の声が響く。その審判の言葉が引き金となって一気に歓声が広がった。前評判を覆す勝利だった。大樹はコート上で良祐と抱きあった。
 

 応援席に戻った時、大樹と良祐は再び歓声に包まれた。瑤子が真美を引っ張って大樹の元にやってきた。真美は泣いていた。良祐に背中を押されて大樹は真美のことを抱きしめた。


 「真美…勝ったぞ」大樹の目からも涙が出てきた。声が声にならなかった。真美は大樹の腕の中で小さく頷いた。
 

 余韻冷めやらぬ中、コートを二面使っての2番手と3番手の試合が始まった。大栄中は2番手・3番手とも1番手となんら遜色ない力を持っていた。まずは3番手が1-4で力尽き、2番手は善戦したが最終的に2-4で一蹴された。総合的に大栄中の方が一枚上手だった。


 「終わる時はあっけないものやね」2番手の試合が終わりを迎えた時、良祐が大樹につぶやいた。


 「ああ。俺らのテニスもこれで終わりか」大樹は手に持っていたラケットを静かに置いた。


 「お前達とはまたどっかで戦いたいな」試合終了後の挨拶で近藤が大樹に告げた。


 「機会があればね」大樹は明確な返事を避けた。
 

 結局一回戦で原中を破った大栄中はそのままトーナメントを最後まで勝ち抜いた。大樹はその一部始終を見ていたがなんとも複雑な気持ちになった。一回戦敗退という結果自体は十分予想出来ていたし、試合内容にも満足だった。たださっきまで戦っていた相手がトーナメントを勝ち上がっていく姿は、本当に夢を見ているみたいだった。もうだいぶ日は西の空に傾いていた。


【大樹編 終】

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