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リズモジカル -lismojical-コミュの涙の音

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ある砂漠に囲まれた場所に
小さな国がありました
その国の王様には1人の王女がいました
王女はすくすくと大きくなっていきました 王女は皆に愛され とても優しく思いやりのある美しい王女に育ちました

しかし優しく美しくなればなるほど王女は部屋にこもるようになってしまいました 王様は理由もわからず心配でなりません

王女が閉じこもってから何年かが過ぎました すると不思議なことに王女閉じこもっていた部屋の中に高く厚い壁ができあがり 王女の姿さえも見えなくなってしまったのです その壁は四角く 壁には扉も窓もなく まるで自分で中から作り上げた牢屋のようでした

王様はその壁の中の王女を連れ出してくれるよう 様々な国の者たちに依頼をしました

あるときは隣の国の大きな王子がやってきて 力任せに壁を壊そうとしました 虎をも投げたおす力自慢のその王子の力をもっても壁を壊すことはできません

あるときは砂漠と川を三つも渡ってやってきた若い魔法使いが様々な魔法で壁に入り口を作ろうとしました 砂漠に水を湧き出さすことのできる力をもっていた魔法使いでさえも 壁に入り口を作ることはできません

王様は王女のことが心配で眠ることもできません 王様自身も様々な道具や人をつかって壁を壊すことをためしましたが その高く厚い壁を壊すことはできませんでした

そんなある時
ひとりの大きなカバンを背負った旅人がそのお城をしっていたかのようにそのお城にたどり着きました

旅人は壁を壊すのでは無く 王女の部屋の中の壁に手をあててそっと話しかけたのです
「おたずねします この辺りでついさっき 涙の落ちる音がきこえました 駆けつけたのですが 誰の涙でしょうか? そういえば君はずいぶん赤い目をしていますね」
返事はありません
「いくつかの物語を プレゼントしましょう ちゃんと読んでおいてください いいですね」
旅人は背負ってきた大きなカバンから みどりいろの本を取り出しました そのみどりいろの本は手のひらを二つ並べたくらいの大きさで 旅人がその緑色の本を開いて物語を読み始めると その本から長靴をはいた小さな亀がでてきました 亀はゆっくりゆっくり壁に向かい歩いていったかとおったら 壁に溶け込みそのまま中にはいってゆきました
「あなたが優しく思いやりがあればあるほど世界にだれもいないと思う夜があったのでしょう 自分がいないかのような気分に浸った朝があったのでしょう」
トンと壁の中から叩く音が
次に旅人は大きなカバンから青い本を取り出しました その青い本は象の耳ぐらいの大きな大きな本でした 旅人がその本を開いて物語を読み始めると その本からから手をつないだウサギが二匹がとびだしてきて そのまま壁にすいこまれていきました そのウサギを追いかけるように 大きな帽子をかぶった小人がなにか小さな叫び声をあげながら本から飛び出し壁にすいこまれていきました
「そんな時 目を閉じているほうが楽で 夢だけ見ていればよかったのでしょう 」
トンと壁の中から叩く音が
次に旅人は大きなカバンから赤い本を取り出しました その赤い本は大きな石ほど分厚い本でした 旅人がその本を開いて物語を読み始めると その本から毛玉のような白く丸い塊が何個も何個も出てきたと思ったらフワフワ浮き上がり 高い壁の天井のほうから壁の中へすいこまれていきました
「そうやってつくった この頑丈な扉 この世で1番固い壁で囲んだこのあなたの部屋 でも孤独を望んだはずのあなたの両耳が待つのは この世で1番柔らかいノックの音ではありませんか?」
すると旅人がそっと手をあてていた固かったはずの壁は少しだけ波打ってやわらかくなってきました

「きっと 今もまだ震えながら 笑おうとして泣いて 音の無い声で助けを呼ぼうとしている それは正しい姿ですよ」
壁はさらにぐにゃりぐにゃりと柔らかくなっていくではありせんか
ところどころに小さな穴ようなものができてきたのです
最後に旅人は大きなカバンから白い本を取り出しました その白い本はちゃんともっていないと飛んでいってしまいそうなくらい軽く柔らかい本でした 旅人がその本を開いて物語を読み始めると その本から翼のはえた魚が飛び出してきて まるで海に飛び込むようにみずしぶきをあげて壁の中へはいってゆきました
「このままだっていいんですよ 勇気も元気も生きる上では無くて困る物じゃない あって困る事の方が多いものです でも 壁だけでいい所に 扉作ったのもあなたなのですよ」
壁の大きさははじめより小さくもなってゆきました
「少なくとも 君には味方がいますからね それら物語の中の住人達がそうです」


旅人が王女の部屋にはいってから時間がたち 王様が心配になって
王女の部屋を覗き込みました すると それまで大きな壁しかなかった部屋にはその壁はなくなり かわりに 小さな布でできたようなやわらかな箱があり 時々風に揺れて その布ような外がわをゆらして中の王女の姿をときどきのぞかせていました
王様は王女をそこから出そうと近づいてゆきました
すると中から大きな帽子をかぶった小人がでてきて 王様にいいました
「王女が自分ででてくるまでまってあげてください われわれができるのはここまでです あとは信じましょう」
王様はまわりをみまわして いいました
「かの旅人はどこへ? そしてどのような力を使ったのだ?」
すると箱の中から長靴をはいた亀がでてきていいました
「王女が自分でここまで壁を小さく柔らかくしたのです 旅人や我々はその手伝いをしただけなのですよ」
すると中から白い毛玉がフワフワと飛んででてきていいました
「旅人はまた別の涙の音を聞きつけ また旅にでてしまいました」
羽のはえた魚はピョンと箱から飛び出して羽ばたきながらいいました
「僕らはもう少し王女と一緒に箱の中にいます 王女が自分ででてくるまでまってあげてください」
王様は静かに部屋をふりかえりながらでてゆきました

王女はその数日後
自分の足で誰に頼ることなく部屋からでてきたのです その時には小さな布のような箱も消えてなくなっていました
王様は約束を守って 無理やり連れ出そうとはしなかったのです

王女はその後 お城にいろいろな本を世界中から集めました
そして子どもや悩みをもった人 罪をおかしてしまった人など わけへだてなく様々な物語をよんできかせつづけたのでした 時々お城の外をながめて旅人の姿をさがすのですが 旅人は二度とそのお城へ訪れることはありませんでした
そうして旅人は涙の音がするほうへ 大きなカバンといろいろな本と物語の住人達と一緒に旅をつづけたのでした

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