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Invitation card for Mazeコミュの17th card;フレディ・ミルズに纏わる謎

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……読者を愚弄(ぐろう)する安易な謎

「ヒロインが難病に罹(かか)り、ほとんどの場合は祈りも空しく死んでしまう」
「援助交際などをしているヒロインが真実の愛に巡り逢って立ち直る」「ヒロインを
愛する男性は限りなく無力に近い」……。
 
近年、大きな潮流となっているライトノベルのプロットは、ほとんどが以上3点の中
の1つを柱とし、それにいくつかのエピソードを加味した物となっているのでは
ないだろうか。ストーリー自体もカノンのように美しい旋律(せんりつ)を奏(かな)で
るが如く重層的に描かれている物は少なく、読み易い仕上がりとなっている。

読書離れが叫ばれて久しいなか、このようなライトノベルが若者を中心として読
者を増やしていく事は、出版業界にとって望ましい事態ではあるのだろうが、
この機会に少なくとも文学と呼べるジャンルへと読み進む読者を獲得出来なけ
れば、所詮(しょせん)は時代の徒花(あだばな)として消え去る運命となって
しまうであろう……。

それはさて措き、ライトノベル並みの、いや読者を愚弄するような安易な謎ばか
り好まれているのが推理小説ではないだろうか。

実際、毎年のように長者番付に名を連ねているA川J郎やN村K太郎、Y村M紗な
ど推理小説のジャンルにおいてベストセラー作家と呼ばれているのは、どちらかと言
うと安易な謎を提示している作家ばかりである。

無論、多くの読者が買い求めるからこそベストセラーとなるわけだが、その理由が
単にライトノベル同様「読み易い」という事であれば、そのような読者は推理小説が
持つ本来の醍醐味を放棄しているとも言えるであろう。もし推理小説というジ
ャンルに少しでも興味を持っているならば、安直なトラベルミステリなどから、本格派推
理小説へと読み進んでほしいものである。

確かに、死体消失や二重、三重もの密室殺人など大掛かりで幻想的な謎を冒頭
で提出し、中盤でサスペンスを加味しながら、後半では一気に理詰めで不明快な謎を
解き明かしていく本格ミステリは読み慣れない読者にとっては取っ付きにくく、若
干の戸惑いを覚えてしまうかもしれない。

だが、本格ミステリの中でも有栖川有栖や綾辻行人のような優れた書き手の作品を
一読すれば、その魅力に囚われてしまう人も多いはずである(とくに有栖川有栖
の作品に関して言えば、本格ミステリの形をとりながらも、根底では純愛を描いた物
が少なくなく、謎解きのエレガンスさに加え、独自の世界観を創り上げている)。そこ
で更なる興味を覚えるようであれば是非とも『虚無への供物』(中井英夫著)、
『ドグラ・マグラ』(夢野久作著)、『黒死館殺人事件』(小栗虫太郎著)など(『黒死
館殺人事件』は現在かなり入手困難かもしれないが)へとチャレンジしてもらいたい
ものである。

そもそも『モルグ街の殺人』を始祖とするミステリは、決してライトノベルのような安直
な読み物ではなく、知的エッセンスをふんだんに盛り込んだ読み物として誕生して
いる。たとえば、エラリー・クイン著の名作『Yの悲劇』にも見られたダイイング・メッセージ(被
害者が殺される間際、犯人の手掛かりなどを示す為に残した書き置きのような
物)にしても、本格ミステリで提示される場合は、謎そのものであると同時に、その蓋
然(がいぜん)性についても言及している作品がほとんどである。

対して、ライトノベル級の推理小説には、単にダイイング・メッセージさえ提示すれば読者が
納得するかのような作品すら存在している。たとえば、Y村M紗は得意の京都を舞
台にした某推理小説で『O』というダイイング・メッセージを提示し、記号の「○」として
読んだ場合の苗字に丸を含む人物(大丸さんか丸木サン)、アルファベットとした場合の
Oさん(イニシァル若しくはあだ名がO)、数字の0として玲子さんなどと主人公の探偵
に推理を展開させているのだが、犯人を示す手掛かりとしてダイイング・メッセージを
提示しているにもかかわらず、結局犯人は記号の○、アルファベットのO、数字の0でも
なかったという何ともお粗末な結末を用意している。Y村M紗は、作中においてこ
れを「被害者が犯人を勘違いした結果」などとしているが、勘違いされて疑われた
人物こそ大きな迷惑であり、ミスリードにすらなっていない。

さらに言えばダイイング・メッセージが犯人のイニシァルなどをストレートに表現しているとす
れば、犯人がそう気付いた時点ですぐに消すのが道理であろう。少なくとも犯人
が「自分の身には嫌疑が及ばない」と考えたからこそダイイング・メッセージは殺人現場
にそのまま残るわけであり、安易に犯人のイニシァルなどを示してない事は、どんな
愚鈍(ぐどん)な探偵でも即座に気づくはずであり、またそうでなければ探偵と呼
ぶ資格すら有してないと言えよう。にもかかわらず、『O』というダイイング・メッセー
ジから、これでもかと的外れの推理を展開していくような探偵が、事件の真相な
ど究明出来ない事は火を見るよりも明らかではないだろうか。また、推理小説で
は往々にして探偵よりも劣るが如く描かれる警察組織であっても、このぐらいの
事は推理出来て当然であろう。

だが実際の事件に関していえば、捜査のプロである警察が関知しながらも納得出
来ない結末のまま幕を降ろしてしまうケース少なくない。『フレディ・ミルズに纏(まつ)
わる謎』も、そんな事件の1つだったのである……。

……無視された数々の証言

事件の説明へと入る前に、先ずは被害者となったフレディ・ミルズについて語って
おこう。後にイギリス人に最も愛されたボクサーとして名を馳せることとなるフレディ
・ミルズ(本名フレデリック・バーシヴァル・ミルズ)が生まれたのは1919年。11歳の誕生日に
父親からボクシングのグローブをプレゼントされたのがサクセス・ストーリーの幕開けとなった。

ただ貧困階級に生まれた多くの者がそうであるように、フレディもまた最初から
恵まれた環境でボクシングをしていたわけではない。実際、フレディは当初ファイト後に
投げ込まれる幾枚かのコインを得る為、今でいうところの地下組織にも似たリング
でグローブを交えている。

そんなフレディが世界チャンピオンへと続くビクトリー・ロードに辿り着いたのは1941年8月
の事であった。地下組織のリングで無敵を誇っていたフレディの噂を聞きつけ、当時
のボクシング業界では有力者として知られていたマッチメーカー兼マネージャーのテッド・プロード
リブがスカウトに来たのである(ちなみに、この時同行していたテッドの娘クリスティンが後
にフレディ夫人となっている)。

その後、天性の素質と自らの努力によってライト・ヘビー級の世界チャンピオンとなった
フレディは以降2年間にわたりその座に君臨し、1950年アメリカ人のジョウイ・マクシムに敗れ
るまで防衛を続けている。同年の引退後、TVプログラムのエンターティナーに転身したフレデ
ィは陽気な人柄もあって、ボクサーとして以上の成功を手にしたほか、友人3人と共
同経営を始めた中華料理店も順調に売り上げを伸ばすなど、まさに順風満帆と
呼ぶにふさわしい人生を歩んでいた。

1960年代に入ってもフレディはボクサー時代に手にいれていたプール付きの豪邸で家
族4人と幸せに暮らしており、経済的にも何ら問題はなかった。唯一の変化とい
えば経営していた中華料理店をナイトクラブへと転換した事ぐらいであろう。もちろ
ん、そのナイトクラブにおいても見事なまでのホスト役を務めていたフレディは名士と呼ば
れ、多くの人々に愛されていたことは言うまでもない。

そんなフレディが突如、死体として発見されたのは1965年7月25日未明のことだっ
た。発見された場所はロンドンのウエスト・エンドに位置するゴズレット・ヤード。自身が経営す
るナイトクラブの裏道にあたる小さなL字型の袋小路で、そこはフレディがいつも愛車を
とめ休憩に利用している場所だった。1つだけある街灯に照らされた愛車の中で
フレディは片目を撃ち抜かれて死亡していたのである。

第1発見者となったのはクリスティン夫人で、彼女は一緒にいた息子のドニーに救急隊
と警察へ知らせるよう即座に告げている。フレディが既に死亡している事は、夫人
の悲鳴によって駆け付けてきたナイトクラブ関係者の目にも明らかだったが、警察よ
り早く現場に到着した救急隊は、何故か死体を運び去ってしまうのである。間を
置かずに到着した警察の調べによってフレディを冥界へと追いやったのは、後部座
席にきちんと立て掛けられてあった22口径のフェアグラウンド・ライフルと判明したが、死
体が運び去られた後だけに、詳しい現場検証がなされる事はなく(ほぼ即死状態
だった事は後に判明)、1965年8月2日に行われた陪審員抜きの検死法廷において
自殺と判断されてしまったのである。

フレディが死亡した当日、夫人や息子たちと「仕事を終えたら食事に行こう」とい
う約束を交わしていた事、世界チャンピオンにまでなり引退後の事業でも成功した闘
志の持ち主で自殺する原因など一切なかった事、ナイトクラブの経営権を狙っていた
地元のギャングが存在していた事(実際、死亡推定時間とされる22時〜24時の間に
現場において不審な男を見たという目撃証言も得られている)といった数々の証
言は、取り上げられる事もなかったのである。

……残されたライフルが語るもの

無論、これら証言のいずれもが真実であったとしても発作的に自殺をしてし
まう可能性は捨て切れない。だが、ほぼ即死状態であったフレディが果たして、自
身を死に追いやったライフル銃をきちんと後部座席に立て掛ける事など出来たで
あろうか。ごく普通に考えても片目を撃ち抜いたライフル銃(しかも発射角度はほ
ぼ水平であった事も後に判明している)が後部座席にきちんと立て掛けられる
確率など、限りなく0%に近い事は、明々白々であろう。

実は、この事件に関しては興味深い証言が残されている。死体発見翌日、フレ
ディの知己(ちき)であるジャック・ソロモンズが「もしフレディがここで『俺は自分で撃
ったんだ』と言っても信じないが、警察は自殺として片付けようとするだろ
うよ」と夫人に語っているのだ。そして事件はまさにジャックが語っていたとお
り自殺として処理されたのである。

おそらくフレディは自殺ではなく、ナイトクラブの経営権を狙っていたギャングに殺さ
れたのであろう。さらに彼らは救急隊や警察にも因果を含め、詳しい現場検証
をさせないように手配した後、自殺として処理するよう何らかの取引が交わさ
れいたのではないだろうか。もちろん、これは筆者の推測であり事件関係者の
ほぼ全員が死亡している現在にあっては、真実が語られる機会は永遠に齎(も
た)らされないのだが……。

コメント(2)

>ミッチーさん

HIVで死んじゃったクイーンの
ヴォーカリストですね(苦笑)

「エルム街の悪夢」に登場する
フレディもあわせ、お騒がせな
名前かもしれませんね。

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