ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

Invitation card for Mazeコミュの9the card;松川事件

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ミステリの女王と称されるイギリスの作家アガサ・クリスティは名作と呼ばれる
数々の推理小説を世に残している。

もちろん、それぞれの作品におけるプロット自体が素晴らしい事は、
言うまでもないのだが、彼女の作品が支持される理由としては、
主人公である探偵のエルキュール・ポワロやミス・マープルの存在に負う所が
大きいという事に異論を挟む余地はないであろう。

自分の住む町での出来事に例えながら事件を解決していくミス・マープルは
アームチェア・ディテクティヴ(安楽椅子型探偵=現場に赴く事は少なく伝聞された
様子などから真相を解決する)の変形とも言え、慈悲深さは名探偵の中
でも最右翼と呼ぶにふさわしいキャラクターを形成している。

対して灰色の脳細胞を持つとされるエルキュール・ポワロは天を向いた手入れの
行き届いた髭(ひげ)、ふくよかな体型という外見からして特異とも言える
のだが、彼の最たる特徴として挙げなくてはならないのが、時として傲慢
(ごうまん)とも取れる態度や物言いであろう。

理論が切れる故である事は容易に推察されるのだが、ポワロにそのような
言動を取らせる事によってアガサは自身が抱える名探偵への畏怖(いふ)と
尊敬をも同時に描きたかったのではないだろうか。

日本においても江戸川乱歩が生んだ明智小五郎、横溝正史が誕生させた
金田一耕助といった名探偵が存在している。

その中でポワロが内包するイメージに近い探偵という意味では『占星術殺人事件』
『切り裂きジャック・100年の孤独』等で恐ろしいほどの理論の切れを見せた、
島荘司描くところの御手洗潔(みたらい きよし)が近いのではないだろうか。

『切り裂きジャック・100年の孤独』に彼の名前が登場する事はないが、探偵が
御手洗である事は明白であろう。また論理の切れという点では『朱色の研究』
『海のない奈良に死す』『スイス時計の謎』等で鋭利な推理を展開する、有栖
川有栖(ありすがわ ありす)が描く火村英生(ひむら ひでお)が双璧と言える
のではないだろうか。

このポワロと火村両人が取り組んだ事件として知られるのがアガサの名作『ABC
殺人事件』(火村が活躍する『ABCキラー』はアガサへのオマージュとして書かれた物で
ある事は言うまでもないであろう)。

ミステリ好きであれば既読の方も多いだろうが、簡単なシノプスを紹介すると、
『ABC殺人事件』ではアンドゥーバーでアリス・アッシャーが、ベクスヒルでベティ・バーナードが、
というように殺害現場と被害者のイニシァルがアルファベット順に展開されていくと
いうストーリーで謎解きはもちろんイギリス全土を舞台にダイナミックに展開されていく。

日本においても『ABC殺人事件』をモチーフにした作品が数多く登場しているが、
有栖川有栖の『ABCキラー』などを除き、ほとんどが駄作と言わざるを得ない。

例えば次のようなストーリーはその最たる例と言えるだろう。本当に殺したいのは
2人目のBだけだが、その動機を隠す為、最初にAを、最後にCを殺すというもの。

一見すると動機を隠す為のAとCの殺人は仕方無いと取れるかもしれないが、
本当の狙いであるBを殺す前にAを殺害した時点で捕まってしまう危険性、Bを
殺した後に自分とは何の関係も無いCを殺すモチペーションを保てるか、またC以降も
D、E、Fと続けるのか、などという点については疑問を呈さざるを得ない。

いくら真実味のある理由をつけたところ(このような作品で真実味のある
理由に出会える事など皆無なのは言うまでもないが……)で、この蓋然性
(がいぜんせい)について触れなければ『ABC殺人事件』を描く資格は無いと
断じざるを得ない。

それはさて措き、実は日本においても殺人事件でこそないが、この『ABC殺人
事件』に類する事件が発生しているのである。
そう。それが戦後の混乱期における国鉄を舞台とする『松川事件』なのだ。

最高裁での判決は全員無罪

広島、長崎への原子爆弾投下で敗戦を余儀なくされた日本がまだまだ
戦後の混乱期にあった1949(昭和24)年7月。謎に包まれた鉄道事件が続発し、
社会は混迷の度を強くしている。

まず最初に起こったのが、初代国鉄総裁である下山定則氏が常磐線の
下り線路上で轢死体(れきしたい)として7月6日に発見された『下山事件』。

この事件については全く異なった死体解剖所見(死体は頭部、胴体、右腕、左足、
右足首に切断された跡が見られたが、これらの切断について一方は生前になさ
れたもの、他方は死後出来たものと完全に違う結論が出されている)が下された
ほか、警察と検察が自殺と他殺の両説に分かれるなど混迷を極め、捜査自体も
事件発生から僅か半年で終了されるなど不透明なまま幕を閉じている。

もちろん真相については当時も現在もなお謎に包まれたままとなっており、
戦後日本におけるミステリーとして名高い事件でもある。

続いて発生したのが7月15日の『三鷹事件』。
同日21時24分に国鉄(現JR)中央線三鷹駅構内において無人列車が
突如として暴走。駅前に位置する交番と民家にそのまま突っ込み死者6名、
負傷者20人を出す大惨事となっている。

この事件では後に元三鷹電車区検査掛(かかり)の飯田七三など10人が逮捕・
起訴(検察側は飯田のほか喜屋武被告を首謀者と認定。竹内量助を実行犯と
してこれら3人に死刑を求刑。残る7被告に懲役7年から無期懲役を求刑したが、
一審の東京地裁は竹内の単独犯とし無期懲役の判決を宣告。二審の東京高裁
では竹内被告は死刑、他者は無罪となっている。この判決を不服とした検察、
被告ともに上告したが6年後に最高裁は上告を棄却)、刑が確定されている。

ただ被告10人のうち9人までが共産党員だった事から思想弾圧の可能性が
当時から指摘されている。

このら2つの事件から1ケ月ほど経った8月17日に起こったのが『松川事件』
である。現場となったのは東北線の松川=金谷川駅間。この間におけるレールが
破壊された事により上り列車が転覆。国鉄の乗務員3人が死亡している。
現在でならば列車テロと報道されているのではないだろうか……。

直ちに行われた現場検証の結果、レールを支える釘と継ぎ目板が外されていた
事が判明。警察は鉄道事情に詳しいグループによる犯行とみなし捜査を開始した。

その後の調べで国鉄労組福島支部分会員(当時)の赤間勝美が逮捕されたほか、
同人の自供により国鉄解雇者など20人が逮捕・起訴されている。

一審の福島地裁においては死刑5人、無期懲役5人のほか全員に有罪判決が
言い渡されたが、2年後に行われた二審において仙台高裁は3被告については
無罪とし他者については一審どおりの判決を下している。

しかし1961(昭和36)年6月。二審の判決を下した仙台高裁は最高裁から
裁判のやり直しを命じられる。そして迎えた同年8月8日。仙台高裁は二審
とは全く逆の判決とも言える無罪を被告全員に宣告。真相については何も
語らる事のないまま事件はその幕を閉じることとなってしまった。

真の狙いが存在するところ

この『松川事件』については社会派推理小説の巨匠と称される松本清張が
『日本の黒い霧』という作品の中で独自の推理を展開しているが、相変わらず
焦点がぼやけており的はずれな結論を導き出している。

同氏が『松川事件』を解明する上で論拠としているのが同事件が起こる前に
発生した2つの類似する事件(同氏はこれら2つの事件を『松川事件』のリハーサル
としている)で、1つは『松川事件』の前年4月に奥羽線の赤岩=庭坂駅間で起
こった機関車と郵便車の脱線事故。高さ10mの土手から転落し機関士、助士、技
士の3人が死亡している。

もう1つが『松川事件』の3ケ月前に四国予讃線の愛媛県難波大浦付近で発生
した転覆事故。この事件でも機関助士3人が死亡したほか、機関士と乗客の3人が
負傷している。

これら2つの事件(ともに犯人不明のまま迷宮入りになっている)に関しては
現場検証の結果、たしかに『松川事件』同様、脱線地点においてレールを支える
釘と継ぎ目板が外されていた事実が判明してはいる。

ただし、それだけの理由(もちろん松本清張は更なる確証をつかんでいたの
であろうが……)により、これら2つの事件を『松川事件』のリハーサルと捕らえる
のはやはり無理があると言わざるを得ない。

100歩譲り『ABC殺人事件』をモチーフにした日本での愚作同様、真の狙いは
『松川事件』にあったと仮定しよう。

この場合Aに当たる事件が奥羽線での転落、Bに当たるのが予讃線における
転覆となり、Cが『松川事件』となる。

とすれば犯人グループは順序良く事件を起こした事となるわけだが、果たして
メリットは何だったのだろうか。

リハーサルというのは本番が確実に出来るよう繰り返し行う練習であり、本番では
より大きな成果が望まれる事は言うまでもない。しかし『松川事件』においては
リハーサルとされる前2つの事件同様、死者は3人に過ぎず、『松川事件』だけが取り
立てて大惨事になったというわけではない。
これではリハーサルの意味などなさないのではないだろうか。

むしろ同様の事件を繰り返す事によって大量解雇を断行していた当時の
国鉄首脳陣に対してプレッシャーを与える意味合いの方が強かったと推察する方が
妥当であろう。

大量解雇などしなければ、こんな事故が続けて起こる事はなかったという
怨嗟(えんさ)の声を発すると同時に国鉄の非情さを世間に対してもアピール
したかった事は用意に推察される。

犯行グループが同一だった事は確かだろうが、だとすれば、それぞれが
本番であり、リハーサルなどでは決してなかったのではないだろうか。

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

Invitation card for Maze 更新情報

Invitation card for Mazeのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング