Invitation card for Mazeコミュの8th card；宮城・幼女失踪事件

春､秋の番組改編時期になると､時折思い出したように放送されるのが
不可解な失踪などの未解決事件を扱う特番｡

数年前はﾃﾚﾋﾞ朝日系列でﾚｷﾞｭﾗｰ番組としても放送されていたが､
この手の番組に､判を押したように毎回登場してくるのが被害者の
残留思念を読み取ったり(ｻｲｺﾒﾄﾘｯｸ)､透視や予知夢､ﾀﾞｳﾝｼﾞﾝｸﾞなどの
手法を使って事件を解決するという､いわゆる外国人超能力たち｡

登場する超能力者たちは､各々FBI等の捜査機関に協力したという
肩書きを持ち､難事件を解決したという触れ込みなのだが､残念ながら､
これまでの放送において犯人検挙に至ったｹｰｽは皆無なのが実情である｡

それもそのはずFBI等が超能力者に対して捜査を依頼するｹｰｽは無く､
番組制作者たちはFBIが用いているﾌﾟﾛﾌｧｲﾘﾝｸﾞと超能力とを
混同しているのではないだろうか｡

ちなみにﾌﾟﾛﾌｧｲﾘﾝｸﾞとは犯罪現場などに残された証拠から犯人像や
行動ﾊﾟﾀｰﾝなどを読み解いていく手法で､心理学が基になっており､
未だに証明するされていない超能力とは全く異なるものである｡

本題からは少し逸れるが､金属の棒などを使って水脈を発見する
ﾀﾞｳﾝｼﾞﾝｸﾞについては､欧米で数々の実験(ﾀﾞｳﾝｼﾞﾝｸﾞを扱うﾀﾞｳｻﾞｰと
一般の掘削業者を使い3,000本の井戸を掘ったところ､ﾀﾞｳｻﾞｰの発見率が
70.4%だったのに対し掘削業者は83.8%の高率で井戸を発見している｡
またﾀﾞｳｻﾞｰと地質学者が水源の深さなどを当てる実験では
地質学者が正しい解答を導いたにもかかわらず､ダウザーは全く正解を
得られなかったなど)がされており､すでに効力を持たないことが
科学的に証明されている｡

もちろん､これらの超能力を駆使して事件が解決に導かれるのであれば､
それはそれで喜ばしい事態であり､超能力捜査の手法全てを否定する気は
毛頭無い。

ただ登場してくる超能力者たちの中には明らかに『ﾘｰﾃﾞｨﾝｸﾞ』と呼ばれる
手法を使っている者も少なくない｡

たとえばﾃﾚﾋﾞ朝日系列で過去において放送された未解決事件を
扱った番組に登場した男性超能力者は､ある中年女性が失踪した事件に関して､
｢金銭か性的なものが動機である｣と自信満々に語っていた｡

しかし､犯罪の動機など突き詰めて考えれば､この2つに全て収束して
しまう事は誰でも分かるであろう(逆に､この2つに全くあてはまらない
という動機があるとすれば教えてほしいものである)｡

また､この男性超能力者は｢事件は都心部で起こり､その後郊外へ運ばれた｣
などと言っていたが､失踪した女性の住家､勤務先共に都心部にある事は
手渡された失踪女性が写っている写真などからも明らかであり､誰でも
指摘できるのではないだろうか｡

このように被験者との会話やある程度のﾃﾞｰﾀを基に､どのようにでも
取れる内容を告げるのがﾘｰﾃﾞｨﾝｸﾞという手法であり､欧米では一種の
ｼｮｰとしてﾏｼﾞｯｸや腹話術などと同じ範疇(はんちゅう)に含まれている
(いわば､いっこく堂やﾏｷﾞｰ審司の仲間というわけだ)｡

このﾘｰﾃﾞｨﾝｸﾞを操る者が発する最も初歩的かつ代表的な質問と言えるのが､
｢ｱﾅﾀのお父さん(若しくはお母さん)はなくなっていませんね｣というもの｡

一見すると何の作為も無いように取れるが､この質問には2つの意味が
存在している。

｢亡くなって､いません｣と区切れば､｢既に死亡して今はいません｣という
意味になるが､｢亡くなっていません｣と区切らなければ､｢まだ亡くなって
いない｣のだから｢今も生きている｣という事になる｡

そう｡この質問はｲｴｽ､ﾉｰどちらの答えでも正解といえるもので､
その後の被験者と会話によって話しを合わせ､さも過去や未来を
読み取ったかのようにふるまうのがﾘｰﾃﾞｨﾝｸﾞなのである｡

家族を失った者にすれば超能力を駆使してでも事件の解決を
願うのは当然であり､その気持ちに応える為にも超能力が本当に
存在することも信じたい。

そしてもし､本物の超能力者がいるならば､ぜひとも力を貸して
ほしいのが昭和58年に宮城県で起きた『幼女失踪事件』である｡

……わずか2分間で消えた1人の幼女

宮城県川崎町で渋谷美樹ちゃん(事件当時3才9ｹ月)が行方不明に
なったのは昭和58年11月1日の16時頃。
ﾃﾚﾋﾞでは､その日に行われた日本ｼﾘｰｽﾞの試合で大活躍した中畑清選手
(元巨人軍)が笑顔でﾋｰﾛｰｲﾝﾀﾋﾞｭｰに答えていた｡

事件当日､美樹ちゃんの祖父喜代治さんは､いつもそうするように
町内にある川崎保育所に美樹ちゃんを車で迎えに行った｡
当時､父親の民男さんは運転手､母親の勝江さんは看護婦として働いており､
美樹ちゃんを迎えに行くのは祖父である喜代治さんの役目だった｡

喜代治さんは保育所で美樹ちゃんを助手席に乗せると自宅へと向かった｡
もしこのまま自宅までﾉﾝｽﾄｯﾌﾟで行けば事件は起こらなかったのかもしれない｡
しかし､運命は悲劇の幕を開けようとしていた｡

帰宅途上の16時20分頃｡大原前地区のたんぼで脱穀作業をしている
知人を見つけた喜代治さんは美樹ちゃんを車中に残し1人だけ車から降りた｡
2〜3分立ち話をし車へ戻ると閉まっていたはずの助手席のﾄﾞｱが開いており､
美樹ちゃんの姿が消えていたのである｡

事件が発生した現場は川崎町の中心部から北へ約2kmほどの地点｡
自宅までの距離は1km足らずで障害物などは全くなく見渡すかぎり
水田が広がっていた｡
にもかかわらず美樹ちゃんの姿を見つける事は出来なかった｡

もちろん異変に気づいた喜代治さんはすぐさま知人らと共に
必死に周辺を捜したが､結局見つけ出す事は出来ず大河原署に
｢孫がいなくなった｣と届け出ている｡

当初､警察では美樹ちゃんがいなくなった場所が､周囲に農業用水路が
多い水田である事から1人で車を降り誤って水路に転落した可能性が
強いと考え捜索を開始｡約50人の署員､警察犬を出動させ地元住民と共に
付近一帯を深夜まで捜索したが､手掛かりは何も発見出来なかった｡

その日以降､美樹ちゃんの姿を見た者は1人として無く26年もの歳月が
経過してしまったのである｡

じつは事件発生前夜､美樹ちゃんは普段とは違う行動をしていたという｡
｢いつもは寝つくと起きた事なんか無い美樹が事件のあった前の晩に
かぎって起きたんです。そして足元にまとわりついて離れなかったんです｣
(母･勝江さん談)｡
果たして､幼い美樹ちゃんは､この時すでに自分の身に起こる異変を
感じとっていたのだろうか……。

当初は水路に転落した可能性が強いと見ていた警察だが､
事態はすぐに一変する事となる｡

美樹ちゃんが姿を消した現場近くで自動車の物と思われるﾌﾞﾚｰｷ痕(こん)が
発見されたのだ｡
またﾌﾞﾚｰｷ痕の発見と相前後して｢車の前に1人で立っている美樹ちゃんを見た｣
｢現場近くに車を駐め､たたずんでいる男女のｶｯﾌﾟﾙを見た｣｢現場から猛ｽﾋﾟｰﾄﾞで
走り去る車を見た｣などの証言が次々に得られたのである｡

警察ではこれらの証拠や証言を基に轢き逃げ､誘拐両面での捜査に着手｡
宮城県警捜査一課､機動捜査課､大河原警察署､隣接署等合わせて144人体制を
敷き､延べ1万7,000人が捜査に動員されている｡

その後も交通事故説､身の代金目当ての誘拐説､怨恨による犯行説など､
あらゆる可能性について精力的な捜査が展開され､同時に目撃情報など
から現場付近を通行する車両数千台に絞り1台ずつ潰す地道な作業が
続けられたほか､事件前に渋谷さん宅に対して恨みなどを持つ者が
不審な動きをしていなかったかどうか徹底的な洗い出しもかけられた｡
　
しかし､捜査は意外なほど難航することとなる｡
｢ほとんどが親類縁者という川崎町の住民は本当の事をなかなか言って
くれない為､正確な情報が得られず苦労した｣(捜査に携わった捜査関係者談)｡

また営利誘拐の場合､必ず犯人からなにがしかの要求が出されるものだが､
美樹ちゃん失踪に関しては明確な要求がなされたことはなかった。
ただし事件発生直後には自宅へ無言電話や身の代金要求の電話が入ってはいる｡

当然､警察でも､これらの電話についての捜査を行ってはいるが､
便乗犯の可能性も捨て切れず犯人と特定するには至らなかった｡

さらに未解決の行方不明事件などを扱うﾃﾚﾋﾞ番組でも何度か事件は
取上げられており､その度に全国から寄せられる情報に関しても
裏づけを取っているが､美樹ちゃん本人を示す情報は残念ながら
現在に至るまで得られていない｡

ここからは､実際に事件関係者に取材をした事で得た筆者の推理であるが､
美樹ちゃんが何者(目撃証言どおりであればｶｯﾌﾟﾙ)に連れ去られたのは
間違いないであろう｡
その理由として考えられるのは1つ。
自分の子供として育てるための略奪である(交通事故の可能性もなくはないが､
現場に血痕や自動車の破損部品がない事､衝突音を聞いた者がいない事からも
蓋然性は低いと考えられる)｡

おそらく犯行に及んだｶｯﾌﾟﾙは何らかの事情で自分たちの子供を失い､
身代わりを得る必要に迫られていたのではないだろうか｡

生存しているなら､事件発生前日､母親にしがみついた美樹さんは
今年の1月22日に29歳の誕生日を迎えている｡

残された父母に取材をした経緯もあり､
美樹さんが無事でいる事はもちろん､
1日も早い事件解決を願わずにはいられない……。