但し、リッパロロジストと呼ばれる研究者たちが、 現在においても世界各地でJack The Ripperに関する 謎の解明に挑んでおり、比較的最近の例としては、 『検屍官』『死体農場』等の女性検屍官ケイ・スカーペッタを 主人公とするシリーズで知られる作家のパトリシア・ダニエルズ・コーンウェルが 自著で研究成果を発表しているほか、 後に事件現場付近で王室に関係した馬車が 目撃されていた事などが判明し、 現在では貴族階級にいた者が Jack The Ripperではなかったか、という 推察が主流となっている。
……Jack The Ripperは最後の殺人を犯していない
以下はあくまでも筆者の誰何(すいか)であり、 結論を下したつもりなど毛頭ないが……。
Jack The Ripperが第3、第4の事件前、 手紙を送った事は前述したとおりだが、 その中で彼(or彼女)は 「俺は娼婦に恨みがあるんだ」と綴(つづ)っている。
しかし、だからと言って、これほどまでに 残虐な殺人を繰り返す必要があったのだろうか。
現在ではメジャーになった犯罪者の動向などを示す プロファイリングによれば、確かに異常な犯罪を繰り返す者はいるが、 それにしてはJack The Ripperの場合、件数そのものが少ない。
またJack The Ripperが犯したとされる殺人のうち、 「なぜ最後の被害者だけが25歳と若かったのか」という 謎は残されたままとなっている。
だが、もし、Jack The Ripperの恨みの対象が、 娼婦の女性ではなく、職業そのものだとしたら。
さらにJack The Ripperが最後の被害者となった 「ブラック・メアリーを愛していた」としたらどうだろうか。
幾多のリッパロロジストたちによる研究成果を信じるならば、 Jack The Ripperが貴族階級に属する人物であることは 間違いないであろう(多数の証拠があったにもかかわらず 検挙に至らなかった事も、王室関係者からの圧力が あったとも推察されるではないか)。
もし、そうであるならば、貴族階級に属する Jack The Ripperが、娼婦のブラック・メアリーを 愛したとしても、階級の壁に自らの愛を 阻まれる結果になった事は容易に推察できる。
Jack The Ripperは「ブラック・メアリーが同じ階級にいたら」と思い、 娼婦という職業そのものを恨んだのではないだろうか。
結果、愛情に端を発したJack The Ripperの想いが、 娼婦殺害という形で発露したのではないだろうか。
最初の被害者と最後の被害者が、 共にメアリーという名前なのは決して偶然ではなく、 Jack The Ripperの明確な意思表示ではなかったのだろうか。