数年後に今年をふり返って、どんな年だったかを問うなら、きっと「あの新型インフルエンザに揺れた一年」ということになるでしょう。特に子供たちの間での広がりはすさまじく、幼稚園から大学まで、数多くの人たちが罹っています。大変症状が重い子供たちも多く、話しに聞いても、また、病院で見かけても、大変気の毒です。また、学級閉鎖などが頻繁にあり、普通の生活や学校での学習などにもかなり支障が出ているようです。 私たちが当たり前に思っている健康や、安全すらが、大変大切で、時に崩れやすいものであることに気づく機会でもあります。そして、これを防ごうと努力しますが、ウィルスを防ぐためにできることも、すべて確実なものはありません。感染を防げても、また感染してしまっても、何が良かったとも、悪かったとも言えないという、何もかも不確実なところに、この問題をめぐる不安のみなもとがあるようです。そして、この不安というものは、人生の中での大変大きな障害物でもあります。 「人生は旅である」と言うとき、その旅は、英語ではjourneyといいます。長く、先のことが決まっていない旅です。ガリバー旅行記のガリバーの旅のような、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が西インド諸島やニューオーリーンズ、そして日本に旅した人生のような旅です。また、私たちの人生の旅も、同様です。 これに対して、団体旅行や、修学旅行のような、日程がしっかり決まっていて、すべてアレンジされていて心配のない旅行はexcursionといいます。excursionには「横道にそれる」というような意味もありますが、犬の散歩にたとえれば、飼い主の持つ革紐(リーシュ:leash)の届く範囲のようなそれかたですから、人生はexcursionでは、あまりおもしろくありませんね。 不安や不確実ということは、人生の中では、取り除けるようなものではなく、それと共に生き、時に乗り越え、そして乗り越えた後に、後から来る人に手を差し伸べる、というようなもので、喜びを得る旅のはじまりにあるもののようです。努力や喜びと表裏をなしているような存在です。 アメリカ系アメリカ人の人たちの教会でよく耳にした言葉に、”Just do your best, and God will do the rest.”という言葉がありました。「ただ、あなたのベストをつくせばいいのですよ、そうすれば、残りは神さまがしてくださいます」、というのですが、肌の色の差別の外に、話し方の訛りなど、様々なことで社会からはじかれることが多いアメリカの黒人社会では、いっそうこの不安との戦いは大きいのでしょう。 そこに、神が共にいてくださり、私たちがベストをつくすなら、その残りを祈りと共に神に委ねることができるという信仰です。 パウロは、「 私たちの主イエス・キリストをとおして、神に対して平和な思いにひたされている」と記しています。