ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

あざらしの談話室2コミュのFreedom-Fighter 22-3

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ハスティーもよしこと境遇は似ていた。当時はなんのために生きているのか、その価値も見出だせないくらい、精神的に傷付いていた。それはハスティーだけでなく、キックスやフリッツも一緒だった。特にラプターは実の姉をあんな風にされてしまったのだ。憎しみに支配されていた。

生き残った5人の中ではウイングが一番平然としていた。しかし彼に関しては別の意味で思考がおかしくなっていた。やられたらやりかえす…ウイングの持論だ。だから彼は同じ目に遭わせてやればいいだけの話としか考えていなかった。それを必死に説得して考え方を改めさせたのはロビンソンであり、アリソンさかがみだった。

「あいつ、変に冷酷でね…真顔で人に刃を向けるんだ。ちーちゃんは、わかるよね」

ミルフィーは鮮明に覚えている。キャンプダガイに初めて行ったときに、銃口を向けられたのだ。さすがにあれはやり過ぎだと、本人も反省しているのだが…。

「どこか、信じられないところがあるんだよ、あいつ。人見知りかな、わかりやすく言うと…」

ウイングは元々大人しい人間だった。5人の中でも大人しいほうで、黙々と何かしらこなすタイプだったらしい。それもダガイ村にいた時の話。ボエラニアに移ってから、取り替えたように性格が変わったという。ハスティーらも戦場を渡り歩くようになってから、価値観やらが変わったというが、ウイングの変化は特に顕著だった。

「恐ろしかったな。特にもう一人のウイングが姿を現した頃から…」

彼は昔からコントロールがよかった。だからライフルを手にしたら誰よりも狙いを外さなかった。



いかに効率よく敵を黙らせるか



ずっとそれを研究していた。いつしか彼は狙撃能力において右に出る者がいなくなるまでになっていた。

「基本的に住民救助が任務だったから、戦闘になることは少なかった。それでもなにかあった時はあいつのスナイパーライフルが敵を撃ってたよ。だいたい撃ってた時は頭にきてた時が多かったから…」

頭を狙撃することもあったという。

「そんなときは、みんなやつをこう呼んでたよ…」



Darkness Wing



Stornes Wing というコードネームのストーネスを、暗く恐ろしいという意味を含ませダークネスともじって呼んだという。ウイングに存在する『もう1人』とはダークネスのことで、こいつが出てくると慈悲もかけらもない光景が広がるのだ。

「敵も逃げ出すさ。ピンポイントで狙われるからな。ただ、ダークネスでもある程度理性が残っていれば、頭は外す」

頭が外れたら彼は決まって足を狙った。動けなくして拘束するのだ。情報収集のためである。

「最近はダークネス見ないな…。二度と見たくはないが」

ハスティーはそう言って話を締めくくった。機上ではその後偵察機の帰投指示に伴い、母艦に向かうのだが、ダークネスの話は別の場所で続きが語られていた。

「ウイングはその点では頼もしいよ。やつの方向感覚は最高だ。なにより慎重に安全なルートを割り出してくれる」

ホッカサホロでも一番信頼を置けたのは彼だった。方向感覚もさることながら、索敵能力も素晴らしかった。何度となく危険を回避していたのだ。常に先頭に立ち、ときには自ら囮となり敵の目を引き付けておいて、その間に仲間や住民を逃がしたりすることも…。とにかくなにも言わずに買って出るやつだ。

「そういえば、あいつはどこにいるんだ?」

思い出したようにキックスはやつの所在を気にしはじめた。ダガイ付近でリジェルバルタ軍を攻撃して以来連絡がとれていなかった。が、タイミングよく艦隊に接近する機体をレーダーが捕捉する。信号に波があるもののやつの機体に間違いなかった。

念のために偵察機と共に帰還中のハスティー・ミルフィーに確認に向かってもらうことになったのだが、それと別にストライフからも戦闘機を出すことにした。

「中尉のβは整備中です、メンフィス少尉のホワイトヘロンは出せます。改装で複座になりましたが」

「試作のエグレットか?」

LTF-X682E EGRET、元々試作機だった『LTF-X682WH』をオーバーホールがてら技術屋が複座でも使える機体に改造したのだ。すでにテストフライトも終えていた。事実上のフェリーネクト・メンフィス専用機だ。

すぐに燃料弾薬の補給が始まった。メンフィスがパイロット、アリソンがサポートに回る。

「…ゆかも、板についたね」

カタパルト作業の間、メンフィスはアリソンに話しかけた。

「それは喜んでいいの?」

アリソンは苦笑いだった。それもそうだ、流れてこんな場所にやってきたのだ。

「1年、経ったのかなぁ?」

「もっとじゃない?」

とにかく忙しすぎた、忙しすぎてどこでどれだけいたのかもわからない。ウイングに拾われてダガイから戦闘機で脱出、空母でボエラニアに向かい、しばらくしてから戦闘機でダガイに戻る。土にまみれたこともあった。人が死ぬ場面にも出くわした。普通に大学生やっていたら、間違いなく体験することはなかった。

「…強くなったね」

メンフィスはそう呟いた。気持ちひとつでこうも強くなれるんだ、彼女はそう感じていた。

LTF-X682E EGRETはカタパルトから勢いよく射出され、ハスティーとミルフィーのLTF-X789SK Super-Kamuiを追いかけた。

「なんだ、EGRETってことは、メンフィスか?」

「いけなかった?」

「そういう意味じゃないさ」

「ハスティー、こっちに向かってるのは、ウイング大尉なの?」

「あぁ、間違いない。無傷ではないかもしれんな」

アリソンの問いかけに、ハスティーはトーンを下げて答えた。敵味方識別信号が不安定なので、機体的に重症である可能性があったからだ。

レーダーに反応、間違いなく『LTF-X689E ENGEL-RITTER』だった。しかし4人はすぐにその異変に気付いた。目視確認できる距離になってもウイングから通信が入らなかったのだ。

「ウイング、応答しろ!」

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

あざらしの談話室2 更新情報

あざらしの談話室2のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング