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あざらしの談話室2コミュの恋旅小説『のんびり旅行記』☆30☆

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いよいよ物語はヤマ場を迎えます。前説はこの辺にしときましょう。




★★★



いつの間に寝てしまったのか、外が少々明るい。携帯を見ると4時少し過ぎを指していた。辺りを見回す恭輔。列車は駅に停まっていた。ちょうど東室蘭に着いたばかりだった。眠い目をこすりつつとりあえず列車を降りた。

「さすがに明るいな」

北の大地に陽が昇るのは早い。恭輔は大きなあくびをしたあと、おもいっきり伸びをした。やはり早起きはいいものだ・・・もう一度深く深呼吸する。そして3号車に向かい、窓越しに様子をうかがう。窓際の席に碧の顔がうかがえた。気持ち良さそうに寝ているではないか。

恭輔は自動販売機を探しに歩くことにした。財布を取りに一旦座席まで戻り、再び外に出る・・・すると3号車付近で辺りを見回す女の子を見つけた。黒髪のショートカット、右手にキャスケットを持って今飛び出して来ましたといった感じだった。別にキャスケットは要らないだろ、そう心で呟きつつ、その女の子の元に歩いた。

「どうした?」

彼女は恭輔の声に振り向いた。恭輔が3号車からはなれた時に目が覚めたらしい。慌てて出てくることはないんじゃない? 恭輔は彼女の右手を見て笑って言った。その時初めて、彼女は右手に持つ物に気付いたようだ。頬が少しだけ紅くなった・・・ような気がした。

「あとどれくらいで札幌に着くの?」

駅前のコンビニで飲み物などを買い物した帰り道、碧が恭輔に質問した。『ミッドナイト』は札幌に6時30分に着くので、後2時間弱といったところか。この旅も終盤、あと2時間弱で旅が終わる。そう考えると寂しいものだ。2人の間に沈黙の空気が流れた。恭輔の頭の中には、いちぞうとの会話がよぎっていた。

いったいオレはどうしたらいいのか・・・だがその答えは見つかっているはず。しかし彼はそれを実行に移せずにいた。持っていた缶コーヒーをただじっと見つめていた。

「札幌着いたら2人で遊びに行こうね」

恭輔はゆっくり碧に顔を向けた。彼女の表情は明るかった・・・それも作ったものではなく、彼女自身の自然にできた『彼女の笑顔』だった。それを見た瞬間、恭輔の中の『なにかが』ぷつりと切れた。彼は碧に向き直った。

「みどり・・・」

「きょうちゃん・・・」

ほぼ同時だった。瞬時に2人の顔がほんのり朱くなった。2人ともお互い目線を逸らす。また沈黙の空気が流れた、が今度のはさっきよりかははるかに短かった。先に言葉を発したのは碧のほうだった。

「こ、こんどは!」

そこで言葉が途切れる・・・見ると碧の顔は真っ赤になっていた。勢いよく立ち上がり、恭輔の顔を見つめた。


こんど遊びに行く時は、ボクを彼女として連れてって!!


・・・辺りはディーゼルエンジンの音以外、何も音はなかった。

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