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【理子の短編小説】コミュのA&A vol.16

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『篤志くん?』

耳に伝わる愛しい人の声。

『どうして…いきなりじゃん…』

泣き声を悟られたくないから言葉に詰まる。

『…もしかして泣いてるの?』
『…………ウッ…』

もう言葉が出て来ない、隠せない。

『…ウッ……あゆっ…』

涙が後から後からとめどなく溢れ出す。

男のくせにこんなにも泣いて恥ずかしいけど抑えられずに泣きじゃくった。

『今何処にいるの?ねぇ篤志くん!家?』
『………うん』
『すぐ行くから、待ってて!』

心配そうな声で貴女が言うから一息ついて少しずつ言葉を出す。

『…大丈夫…来なくていい…家族にバレたらどうすんだよ』
『こんな声聞いたまま放っておけないっ…』
『あゆみ…』

通話は一方的に切られた。

こんな時間に電話なんてしたことがなかったのになんでかけてきたんだろう?

でもとっさに行動してくれた貴女に愛を感じられた。

幸せと辛いと言う漢字は背中合わせの一線違いであって…

俺が貴女にしてあげられることって何かあるのかな?

砂の城みたいなハカナイ夜を何度越えれば答えが見つかるの?

こんなガキみたいな男でごめんね…

今日はもうダメみたい。

無理をさせてまで抱きしめて欲しい。

まだかな…

気づけば季節は移ろい窓から見える星空が低くなってきた。

流れ行く時間に二人のリミットが隠されているような気がして怖くなる。

迫り来る秋も、その向こうに待つ冬も、やがて芽吹く春も、もう一度巡る夏も…

貴女の一部分を俺に下さい、そっと月に願う。

酒と涙の疲れからウトウトとまどろみながら横たわる。

貴女を想い、人を愛することを知り、そして愛するだけではどうにもならないことも知った。

でも、こんなにちぎれそうな心を受け止めてくれるのも貴女で…

真夜中に自分なんかの為に息を切らし駆け出してくれた…

なのに、また貴女は帰ってしまうんだよね?

嫌だよ…

今夜は…

今夜だけは帰さない。

寂しさに震える夜、愛する人に朝まで傍に居て欲しいと願うことはそんなにも大罪ですか?

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