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【理子の短編小説】コミュのA&A vol.15

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その日は仕事が終わってから一人になりたくなくてジムで思い切り身体を虐め、更に夜の街に出かけた。

貴女からの連絡はない。

宛てもなくさ迷う気持ちを鎮めたくて浴びるほど酒を飲んで帰った。

どんなに心苦しくてやるせない夜でも朝は来る。

そして、俺はまた唄うだろう…

格好悪いくらい人を好きになって、

惨めな姿をしていたって陽がまた昇れば俺は唄う。

それしかないから。

でも今夜はこの喉が潰れても構わないとさえ思う自分がいる。

例えば人魚姫が人間になることと引き換えに声を奪われたように、

貴女のすべてを手に入れられるならこの喉を切り裂かれることくらいたやすいことだと…

俺だって男なんだよ。

負けたくなんかない。

心とは裏腹に疲れ切った身体が妙に爽快で心地良くてフラフラと千鳥足ながら部屋に辿り着いたら真っ直ぐにベッドルームへと向かう。

服を脱ごうと腕を広げたらよろめいてチェストに腕をぶつけ…

カシャンッ

『いっってぇ…っ』

真っ暗な中でよく見えないけれど何かが落下したので拾い上げる…

チェストに山積みになったCDの間から落ちたのは、

あの日の手錠。

こんな所に…

よく見ると手錠同士が互いに交わり、赤いリボンで蝶々結びがしてあった。

結び目には鍵が通されてある。

貴女が残した愛のサイン。

交差された部分がメビウスの∞を物語り、無限の愛を結ぶも解くもこの時だけと手錠が静かに囁いた。

この鍵を使うのもこの場所でだけ…

俺たちのすべてが集約された愛のカタチ。

『あゆみっ…』

逢いたいよ。

寂しいよ。

今すぐ抱きしめて欲しい…

貴女も辛いの?

こんなに切ない想いなら出会わなければ良かったのかな…

冷たい鉄の感触に今日の出来事が頭に過ぎる。

あゆみ…

俺は此処にいるしかないの?

もうこのまま朝になっても目が覚めなければいいのに。

俺の中の想いは膨らんで大きな波になり貴女さえも溺れさせてしまうような気がして…

何もかもを壊したい衝動が込み上げてくる。

と、突然にスマホが震えるのを感じて床に座り込んだままポケットから取り出し通話ボタンを押す。

『篤志くん?』

貴女から着信があるなんて…

胸がいっぱいで言葉が出ない。

貴女の声が耳に伝わると同時に涙が零れた。

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