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【理子の短編小説】コミュのA&A vol.17

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『…つしくん…篤志くん?』

少し肩の辺りを揺さぶられて目を開けると視界の中に貴女の心配そうな顔。

冷静になって飛び起きた。

『ホントに来た』
『来ちゃった…もう、心配したよ…大丈夫?』

クシャクシャの髪に素顔に眼鏡をかけた貴女。

慌てて来てくれた様子が見て取れる。

『こんな床で寝たら…喉に良くないよ?』

俺の顔を覗き込んで頬を撫でてくれた。

貴女の手。

愛しいこの手に触れて目を閉じる。

『はぁ…ごめん』

酔っ払って泣きながら床で横たわって寝落ちる無様な姿を見られて、ちょっと自分で自分が恥ずかしくもあり…

貴女に優しく撫でられてると、昼間のことが蘇ってまた泣けた。

涙が静かに頬を伝う。

『どうしたの?仕事で何かあった?』

貴女に身を委ねて抱き締めてもらう。

すすり泣いて抱きついた。

『なんにもないよ、なんにも・・・』

『篤志くん?』

『俺…貴女にできることなんて、なんにもないんだよ…』

『なに言ってるの…?』

貴女の胸に顔をうずめながら子どもみたいに泣いた。

ただ黙って背中を撫で下ろしてこんな俺を受け止めてくれる。

『…好きになり過ぎて…辛い…もう一人じゃ持ちきれないんだよ』

『…あたしだって同じ気持ち』

『じゃあ…もう帰んないで?ずっと側にいて?』

『…………篤志く…ん』

『どこにも行かせない、今から俺と逃げてどこか知らない街に行こう…俺のすべて捨てるから…一緒に生きよう?』

『………………………』

それは余りにも突然で、余りにも退廃的な言葉。

自分でも何を言い出したのかわからない。

背中を撫でてくれていた手が止まって貴女が真っ直ぐ俺を見つめる。

『あゆみ?俺だけのあゆみになってよ?俺もあゆみだけの篤志でいるから』

それは超えてはならない一線だとわかっていた。

でも、もう後戻りはできない。

愛することが罪ならばこの罪を堂々と背負って生きていきたい。

この人の為なら何もかも捨てられる。

その覚悟はしていたから。

何かを壊さなければ手に入らない。

それなら壊すしかない。

俺はもう貴女の為にしか唄わない。

むしろ歌なんていらない。

貴女だけが欲しい……………

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