ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

[mixi小説]BLACK OR WHITE?コミュのBLACK OR WHITE? 6〜誰が為に騎士は行く.part15〜

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
地上に降り立つ大悪魔、リリム。腕を組んで余裕を振り撒いていた。巨大な霧の翼を羽ばたかせ、砂塵を巻き上げる。生ぬるい風が、ミカエルの八枚翼に絡む。

「影とはいえ、わらわを斬ったツケは高いぞ?」

…小さかったアレと同じに思えない。自信も気迫も魔力も、この肌をかすめる全てが別だ。

敵が余裕を見せている以上、剣を構える気など露ほども起こらなかった。不敵に笑む魔物。切れ味鋭い眼差しの天使。気の抜ける細い音…

っこの臭い…!

クロードが闘技場中の地面に撃ち込んだ弾丸。そこから赤黒い腐乱臭が静かに、しかし確実に、白を蝕まんと、黒に栄光をもたらしに噴出している。

決闘開始数分後、初めてミカエルが苦汁を舐めた。
右手が、剣を強く握り締める。





「今度は瘴気か!?…悪魔といい、君の同僚は次々ととんでもないことをやってくれるな!」

「す、すみません、ラグエル様…」

「まぁまぁ、そう責めないの。悪いのはソフィアちゃんじゃないんですもの。ねぇ?」

ソフィアの背後から、ガブリエルが顔を寄せた。薄い目が妖艶で、その気がなくても調子が狂うから困る。

「放出した魔力が起爆剤になったのかしら?でも驚いたわ…。白導に擬似結界ができるヤツがいたなんて…」

「…貴様の目は一体、何だ?」

エリザベスが一言。

「え…?どういうこと?」

「あんなものは擬似結界じゃないってことだよ、ハニエル。本物はもっと安定した形状を保っている。あんなもの、瘴気と地形を利用した…そうだね、擬似的擬似結界とでも言おうかね」

「…ややこしいです。ブルーノート将軍」





クロードが銃を抜き、両方に弾倉を挿入する。ここまでの事の流れが楽しくて仕方がなかった。
だが、油断はならない。流れ落ちる冷や汗と血の混合液を舐め取った。塩辛さで身が引き締まる。

ミカエルが怪訝な顔で言う。

「…私にくれてやる銃弾はない。と、聞いた気がしたが」

「ああ、あれか。鉛弾はやんねぇ、ってつもりだった」

クロードの一挙一動がミカエルの鼻につく。
しかし、この一言で相手の魂胆は大体わかった。神剣の柄を握る右手の力が強くなる。

白銀と黒銀、両方の銃に弾倉を込め終える。冷たい銃口を、ミカエルに向ける。無言の闘志をしかと目に映し、ようやく片手で剣を構えるミカエル。
額から止めどなく流れる血を袖で拭い、クロードが会場全体に向けて言い放つ。

「待たせたな!前置きはここまでだ!始めようぜぇ、ミカエル!」

「言われるまでもない」

背後から声がした。
クロードに振り向く余裕などない。与えはしない。狂愚にも悪魔と契約し、騎士になろうなどと企てた者には、訳もわからずに死ぬのがお似合いだ。
金色の焔をたぎらせて、神剣を振り下ろす。
目の前が暗闇になる。
暗闇はクロードを包んで、既でのことで燃えたぎる剣の一撃を受け止めた。剣と闇の接触面から紫の炎が上がる。
闇の根源はリリムの背中。彼女の翼だった。伸びた翼に遅れて、リリムがクロードとミカエルの間に割り込む。

「おうおう、いきなりわらわを無視するとは何たる無礼か」

いたずら小僧を見るような困った眼差しをミカエルに作って見せる。翼が焼けて熱い。リリムには余裕など残ってはいない。
動いたと思ったら、既にクロードの背後に迫っていた。
影でミカエルの速さは経験済みだが、あの時は狭い螺旋階段での話。この広い闘技場では、目で追うのも困難だった。咄嗟に翼を伸ばしてクロードを守りはしたものの、何回もできることではない。しかもミカエルは瘴気が漂う中を動いている。
自分が有利、相手が不利なはずだ。だが、力の差は始めから逆転はおろか均衡にすらなっていなかった。
剣が重く、熱い。翼は紫の炎を上げて焼ける。本当に勝てるのかと、リリムの脳裏に不安がよぎった。不安が冷や汗となる。
力で剣を押し退ける。ミカエルは体勢を崩すことなく、自分が瞬殺できる間合いから出る。その距離一〇メートル。

一時、やり過ごしてリリムは理解した。ミカエルは小細工の効く相手ではない。
振るった刀身に舞う至高の焔は、ミカエルを蝕もうとする瘴気を片端から焼き消していた。
致命的な勘違いをしていた。相手は不利にすらなっていない。自分が有利なだけだ。悠然と片手で大剣を構えるミカエルが急に怖くなる。抑えようとしているのに体の震えが止まらない。

「リリム」

クロードの声で我に返る。耳元の囁き声と同時に銃のグリップで頭を軽く小突かれた。

「ミカエルの攻撃はこっちで防げる。俺は気にしなくていい。全力で奴にぶつかってくれ」
「正気か?」
「正気で勝てる相手か?」

リリムの目はミカエルから離れていない。とうとう剣の焔は周囲の瘴気を引き寄せて、全てを燃やし消そうとしていた。
最悪過ぎる。最悪過ぎて苦笑する。クロードの言う通りだ。

「確かに、まともな考えを立てて勝てる相手ではないのぅ」
クロードが問う。
「じゃあ、この中で一番まともじゃねぇのは?」
「貴様のことか、クロード」
「ご名答」

腹がよじれるほど笑いたいところだが、今は微笑で我慢しよう。この馬鹿と一緒だと、絶望的な状況でも何故か勝機が見える気がする。と、リリムは思った。

「ならばこの決闘に勝つのは貴様じゃな。狂気の騎士よ」
「そゆこと」

リリムの目の色が変わる。たった今、闘争の空気が完成したと、ミカエルははっきりと認識した。神剣が放つ焔の勢いが数段増す。間合いに踏み込もうと、利き脚で地を踏みしめる。
だが、リリムが先に駆け出す。黒い霧の翼で巨大な腕を作り出し、猛火を放つ大剣を掴む。紫の炎で翼を焦がしつつも、剣の動きを殺す。
胴体に向けて、リリムの右拳が飛ぶ。難なくミカエルの左手が受け止める。ミカエルは顔色一つ変えず、淡々としている。

「…そろそろ待つのにも飽きたところだ」
「安心するが良い。今度は息つく暇すら与えぬ」

リリムの左拳が黒い火球をまとい、無防備になったミカエルの胴体に襲いかかる。が、結界に攻撃を阻まれる。それどころか結界は拳の炎を吹き飛ばしてリリムの左肘までを焼いた。皮を剥ぎ取られるかのような苦痛に奥歯がきしむほど顔をしかめる。
左手が引く前に、霧の翼が焼け落ちる。ミカエルが大きく剣を振りかざす。リリムは身を引いて避けようとするが、右拳をミカエルに掴まれて逃げることができない。

「伏せろ!」

とっさにクロードの指示通り動く。白銀の銃から二発の銃声。くすんだ白の弾丸は、バターのように斬り捨てられる。切断面から腐臭を撒く墨色の液体が飛び散った。
普通の銃弾を斬った時と手応えが違う。硬すぎる。更にこの液体の色と臭いは、よく嗅いだことのあるものだ。
やはり思った通りだと、ミカエルは確信する。

リリムの右拳に黒い炎が上がる。炎がミカエルの白い肌を焦がす。初めてミカエルに傷を、苦悶の声を上げさせた。
傷口が瘴気を吸い、瞬時にリリムの翼と左腕が再生する。剣を押さえたところで隙ができるわけではない。ミカエルの間合いの外から翼と黒い火球による連続攻撃でたたみかける。
正面から火球でねじ伏せようとも、後方から翼で不意打ちをかけようとも、ミカエルは全てを見通すかの如く全てを斬り捨てる。翼を斬られる度にリリムに火傷と刃の傷みが響く。彼に届くのはせいぜい翼の返り血程度だった。翼を斬る度に黄金の焔は紫に変わり、限りなく黒墨に近い赤の血を浴びる。何度も嗅いだことのある獣じみた臭い。
リリムの後方からはクロードの支援射撃がミカエルに降り注ぐ。黒銀の銃バスカヴィルから放たれる銀弾はミカエルの足元を狙い、彼の動きを制限する。白銀の銃ヴォーティガーンから放たれる白い弾丸はミカエルの身体を貫こうと飛びかかる。対するミカエルは宣言通り自分に向かう白い凶弾を尽く斬り捨て続けた。黄金の焔をまとった剣の軌跡は軽やかな舞のよう。だが手応えは硬く重い。飛び出る墨色の液体は焔に焼かれて紫色の炎となる。思い出すのも忌々しい臭いが吹き出た。
リリムが前衛で余すことなく暴力を行使し、クロードが後衛でミカエルの行動を制限、隙をうかがってはヴォーティガーンの大口径弾を撃ちこむ。観客席が思わず息を呑むほどの、見事な連携だった。だが、見事な連携では至高の剣舞を崩すことはできない。あらゆる真向勝負を、誘導を、不意打ちを、息をするかのように雑作もなく斬り捨てる。その度に墨色の液体と紫の炎、不愉快な臭気が吹き出る。
だが、ミカエルは笑った。健気に攻め続けるクロードが滑稽なダンスを披露する道化に見えて仕方がなかった。
白い大口径弾を斬り捨てる。

◆

「対天使専用大口径拳銃ヴォーティガーン♪」

同時刻、人の気配がない森の中。フラン=K=シュタインは自らの研究所の中で、ヴィクター号に拳銃の設計図を広げて見せながら高らかに自分の理論を語り尽くそうと意気込んでいる。

「撃ち出される白い弾丸はぁ〜、外殻が悪魔の骨格でぇ〜、内部に腐食させた悪魔の細胞を仕込んでるのぉ〜♪」

自慢げにヴォーティガーンの機能を語るフラン。ヴィクター号はうんうんと頷きながら聞き続ける。

「更にぃ〜あり得ないくらい大口径にしたからぁ〜、反動を抑えるのはぁ〜クロちゃんの魔力の噴射を利用しないといけないのよねぇ〜♪」
「なるほど。本当の意味でクロードさん専用なんだね」
「ピンポンピンポぉ〜ン♪大正解ぃ〜♪」

フランは子供のようにはしゃいで、椅子の首を回転させる。

「だけど、これのどこがミカエルの剣を超えた武器なんだい?」

悪魔の体組織を利用した銃弾、威力を追及した大口径化。結界による防御に特化した天使たちに有効なのはわかる。だが、これだけでは最強の天使の異名を持つミカエルに勝つ要因にはならない。
フランが椅子の回転を止めて、説明を続ける。

「聖書にはこうあるわぁ〜♪」

右手を挙げる。

「これ、天使ちゃんたちねぇ〜♪」

左手を挙げる。

「これ、悪魔ちゃんたちねぇ〜♪」

力加減もせず、両手を揉みくちゃに絡ませる。

「むかぁ〜し昔のそのまたまたまた昔にぃ〜、神様へと反逆したルシファーちゃんたちはぁ〜、ミカエルちゃんが率いる天界の軍隊と対決しましたぁ〜♪ミカエルちゃんはぁ〜神様から貰った焔の剣でぇ〜悪魔ちゃんたちをバッサバサにしてやんよぉ〜♪ってな具合でぇ〜♪何だかんだでぇ〜ルシファーちゃんにぃ〜、人生で初めての大怪我を負わせてぇ〜、魔界に撤退させましたぁ〜♪ちゃんちゃん♪」

語部の才能は感じられないが、大体の流れはわかった。つまりは天使軍が悪魔軍に勝利した時の物語である。

「…何か変じゃねぇ〜?」

フランが微笑む。上目遣いでヴィクター号の瞳を覗きこむ。

「変、って何が?」

「何でミカエルちゃん、ルシファーちゃん殺さなかったのぉ〜?」

言われてみれば奇妙なことである。天界の三分の一の軍勢を引き連れて発起した神への反逆。その首謀者たるルシファーが殺されずに、ただの重傷を負わされた程度で終わって良い戦いではない。仮にかつての仲間への慈悲だとしたら、ミカエルや神は陳腐なヒロイズムに毒された理想主義者に成り下がる。
ならば、とヴィクター号が答える。

「疲れたとか…ミカエル自身が満身創痍で、ルシファーにとどめを刺す力も残ってなかったとか?」

「ブブブぅ〜♪何万って大群を正面突破したんだよぉ〜?消耗してたら改心の一撃なんてぇ〜そうそう出ないわよぉ〜♪」

もっともだ。と、ヴィクター号は思った。間髪入れずにフランの自論は続く。

「私はぁ〜とどめを刺したくてもぉ〜、刺せなかったんだと思うのぉ〜♪」

「どういうこと?」

「悪魔ちゃんたちを斬り続けてくうちにぃ〜、剣がボロリンチョしちゃったんじゃないのぉ〜?」

あり得る話だ。悪魔の組織にはあらゆる物の腐食を進める作用がある。更に骨格は非常に硬い。並大抵の剣ならば、壊れるまでに一体倒せるかどうかも怪しい。しかし…。
ヴィクター号の顔に一抹の不安が現れる。

「だから、悪魔から作った銃弾、か。だけどフラン。君は一体…」

◆

一体、何発撃つつもりなんだ?リリムの猛攻とクロードの精密な射撃を尽く切断しながら、ミカエルは心の内でほくそ笑んだ。
確かにこの剣、神から賜ったものとはいえ悪魔の身体を斬り続ければ刃はこぼれる。そのうち折れる。
ただし何千、何万と斬ればの話だ。途方もない話だ。彼方の話だ。
貴様の弾丸一発一発は一体、悪魔何匹分になるというのだ?そのちっぽけな骨と肉の弾を、貴様はあと何発撃つことができるというのだ?それは、勝機を得るに足る数なのか?
くすんだ白の弾丸、悪魔の弾を両断する。腐った悪魔の肉の臭いが鼻に刺さる。
研究熱心なのは認めよう。腕も良い。私を追い詰めるための術もよく考えている。正直、最初は感心したよ。クロード=スティグマン。
だが、浅はかだ。貴様の手持ちを全て返したところで、私には及ばない。どれだけ貴様が一途であろうと、どれだけ過去を渇望しようと、今の貴様はひ弱が過ぎる。

クロードが弾倉を交換する瞬間。ミカエルは見逃さなかった。
神剣に金色の焔が収束する。その姿はまさに焔の剣だ。ミカエルにできた僅かな隙。
今しかないとリリムは思った。正面から黒い火球、左右後方、上方を霧の翼で作った壁が覆いかぶさる。既に吸収できる瘴気も少なくぼろぼろの翼だが、敵の判断を鈍らせる程度には役立つはずだ。
退路を失ったミカエルを襲う無数の火球。リリムの脳裏に勝利の二文字が瞬いた。そして、本物の光が瞬く。ミカエルが大剣を振るっていた。火球の黒い光は神剣から放たれた焔の波にアリの如く潰さる。リリムの意識はそこで途切れた。
クロードの後方、遥か彼方。闘技場の対極に位置する結界に、リリムのか細い四肢が叩きつけられる。末魔をを断ったかのような絶叫が闘技場に響く。翼は消し飛び、背中から紫の炎が燃え盛る。落ちる。いとも呆気ないものだった。力を使い果たしたリリムは吐血し、するすると幼い姿に戻ってしまった。
クロードにリリムを気遣う余裕はない。ミカエルの剣の切先が眼前まで迫っている。



「終わったな、今度こそ」

メイナードが言う。

「あら、もうちょっと期待できると思ったのに」

ガブリエルが落胆した声で言う。

「…そう言うけどさ、誰か忘れてないかしら?お二人さん」

そう言ったのはハニエルだった。



焔が唸る神剣を振り下ろすミカエル。
だが、刀身はクロードの一歩手前で止まった。先に進めようにも、何かが阻んで剣が動かない。
クロードが何かを仕掛けているわけではなさそうだ。彼は悠々と弾倉を詰め替えている。
と、クロードの腰にかけてあるランタンが光り輝いていた。
深呼吸。一筋だけ流れた汗を拭ってクロードが言う。

「助かったぜ、ルナ」

ルナの張ったごく小さな結界がミカエルの攻撃を止めていた。さすがの大天使ミカエルも驚きを隠せない。下級天使の結界が自分の剣を止められるとは思ってもみなかった。



これには客席もざわめいた。

「あの小さい子…見た目以上にやるな」

エリザベスが目を見開いて感心している。
自慢げにハニエルが語る。

「ルナエルは確かに魔力量では最低クラスよ。でもその絶対的な弱点を補うために努力を惜しまなかったわ。
本来なら全方位に展開する結界を一点に集中させて出す。さらにそれを多重展開して魔力強度を増幅させる。それがルナエルの導き出した答えよ」



「…極結界の多重展開か。それは予想できなかった」

ミカエルは淡々としている。
ランタンの光が小さくなる。代わりに荒い息が大きくなる。

「クロード…も、限界…」

息も絶え絶えにルナが伝える。

「あぁ、これで仕舞いだ」

結界と神剣の端競り合い。金色の焔は火花となって飛び散る。ヴォーティガーンの銃口がミカエルの剣を捕らえ、バスカヴィルの銃口はミカエルの心臓に向く。
それでもミカエルは鼻で笑い、小馬鹿にした口調で言う。

「また悪魔の弾か?クロード=スティグマン」

クロードも鼻で笑い返す。言葉はない。
その油断が命取りだ。過剰な自信が己を殺すんだ。
弾倉の中で撃鉄が落とされる時を待ち構える弾丸。その色は鮮やかな赤だった。

◆

「君は一体、何発撃ったらミカエルの剣が折れると思っているんだい?」

フランは、ほらきたよ。とでも言いたそうな呆れ顔だった。そして、堂々と指を一本、天に向けてかざして宣言する。

「一発ぅ〜♪」

ヴィクター号の理解の範疇を超えている。出せる言葉がなかった。構わずフランが続ける。

「ヴィクたんが言いたいこと、わかるよぉ〜?私の理論が正しかったとしても、何万匹って悪魔ぶった斬らないと折れないもんねぇ〜♪」

けらけらと子供のように笑い上げた。
ヴィクター号は、未だに何が何だかわかっていない様子である。声すら出ない。
そんな彼もまた愛おしいとフランは思った。

「じゃあ、言葉変えてみよっかぁ〜♪悪魔、バツ。堕天使、マル。っつ〜ことでぇ〜♪
私ぃ〜、ミカエルの剣は悪魔ちゃんに反応するってゆ〜かぁ〜、むしろ天使ちゃんに反応するんじゃないかと思うのよねぇ〜♪」

「…!?それはどういう…」

「講義中は静かにぃ〜♪」

やっと出た言葉も、唇に人差し指を押さえられて止まってしまった。
講義は続く。

「考えてもみなよぉ〜♪神ちゃまったら、自分が一番信頼してた部下に裏切られたばっかじゃぁ〜ん♪疑惑は、ミカエルちゃんにも共通する思考って考えるのが普通じゃないぃ〜?」

唇を押さえられたまま、ヴィクター号は頷いた。

「神ちゃまはぁ〜、ミカエルちゃんが裏切る可能性も考慮したのよぉ〜♪
天使ちゃんを斬れば折れる…いいえ、天使ちゃんを斬り殺してしまう直前で、何らかの化学反応を起こして分解される剣♪それがぁ〜、ミカエルの剣の弱点よぉ〜♪」

唇から指が離れる。

「質問タぁ〜イム♪」

「じゃあ、何で悪魔を斬って折れたの?」

「堕天使ちゃんって考えないとぉ〜♪堕ちても天使の要素がゼロになるわけないじゃぁ〜ん♪まぁ、副作用ってトコかなぁ〜♪」

納得できる答えだ。

「…じゃあ、あれとは別に銃弾も?」

「そう♪こぉ〜れ♪」

フランがポケットから赤い弾丸を取り出した。

「対悪魔用弾丸…ってのが表向きでぇ〜♪もとい、対ミカエル用弾丸ちゃんだおぉ〜♪
ヴォーティガーンはぁ〜、銃身とこの弾がセットになって完成する拳銃なんだぁ〜♪」

「そうか…だから赤い竜の名前を付けたんだ」

「そゆことぉ〜♪」

フランが弾丸を指で弾く。天井近くまで上がった銃弾は、そのまま床に急降下し、澄んだ金属音を立てた。

◆

ヴォーティガーンが火を噴く。
ミカエルの神剣を折る、赤い凶弾を放つ。

◆

研究室から外へ続く階段から拍手が鳴り響いた。

「素晴らしい。さすがは私が見込んだ科学者だ、フラン=K=シュタイン」

声の主がゆっくりと階段を降りて来る。暗闇から蝋燭の光の下に現れたのは、悪魔を模した仮面を被った黒マントの人物だった。声からして男であろう。
ヴィクター号の知らない人だった。

「あらぁ〜、D様ぁ〜よく御越しでぇ〜♪」

Dと言うらしい。Dは拍手を一回止めて、再び三回だけ平手を叩いた。

「だが、九九パーセントだ。それも、戦いにおいては敗北に直結する」

その言葉を聞いた途端、フランの表情が豹変した。真面目で不機嫌、なおかつ冷静な科学者の顔だった。

「何、それ?」

口調もいつもと違って引き締まっている。

「シュタイン博士。貴女は科学者としては最高の勝利をものにしたことだろう。だが、科学者だからこそ完全な敗北を喫する」

「…どういう意味よ?」

更に不機嫌になる。

「貴女の公式で正しいとは思う。物質世界においてはね。だが、相手は天使だ。精神が物質に勝る世界の住人だ」

「そんなん知るか。私の科学がお伽に勝つんだ」

「だから貴女の負けだと言うのに…」

Dが笑う。腹の奥底から込上げる笑いだ。失礼と思ってか、腹の中で留まらせている。それがフランの不機嫌を加速させる。
立ち上がって、椅子を蹴り飛ばす。

「何よ?D様だからって私の理論を否定させないわよ!?」

「神が反逆を疑っている。それはミカエルに限らず全ての天使に対してだ」

Dが手を上げる。フランの講義の確認だった。

「…そうよ」

「ミカエルが味方である限りは、裏切り者の排除も請け負うはずだ」

「そうね」

「だが、天使を斬っただけで折れる剣では不十分な任務だと思わないか?」

「…だったら、別の天使がやってるんでしょう?」

「ミカエルも別の天使も関係ない。全ての天使の武器に言えることだ」

仮面で表情はわからない。しかし、きっとDは勝ち誇った笑顔だろうとヴィクター号は思った。

「武器崩壊のファクターは、君が言った通りだ。天使を傷つける。そして、もう一つ重要なファクターが感情」

苛立ちが頂点になった。

「感情!?は?馬鹿にしないで!感情なんて必要ないわ!科学だもの!」

「だが、相手はお伽だ」

フランが言葉に詰まらせる。

「続けよう。
その感情は広義で言えば悪意、狭義ならば恨み、怒り、私欲など…。これらが一致して初めて神への反逆は完全に成立する」

確かにDの方が正確だ。これなら、反逆者を始末できる上に、自分が反逆すれば武器は無力と化す。

「よって、君は九九パーセント勝利した。だが、勝負においては一〇〇パーセントの敗北を喫したのだよ」

苦虫を噛んだようなしかめ面。フランが拳で怒りを机に叩きつけながら言い放つ。

「そんなの、科学じゃないわ!!」

「そう。サイエンスではない。相手はファンタジーだ」

Dは哀れむ。完敗に打ちひしがれるフランの背中を、震える背中を哀れに見下ろした。

◆

赤い銃弾は、白い銃弾と同じように斬り捨てられた。
神剣は刃こぼれ一つない。ただ、大量の悪魔の血液と、少量の天使の血液を浴びただけだ。
クロードの思考が止まる。思っていた結果と違う。
剣は健在。いままで淡々としていたミカエルが、憤懣に歯の根を鳴らしている。

「…貴様。私の同胞に何をした!?」

ルナの極結界が崩れる。神剣はクロードの左肩から入り、肉を焼きながら肋骨を絶ってゆく。





BLACK OR WHITE? 6〜誰が為に騎士は行く.part13〜 part14に続く

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

[mixi小説]BLACK OR WHITE? 更新情報

[mixi小説]BLACK OR WHITE?のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。