．．．鏡．．．コミュの．．．今の時間．．．

子供を産んだ事はないけれど
女を辞めて　母になる
その気持ちが解らなくもない

例え腹を痛めて子を得ずとも
腹を痛めずに得た子でも
育てる事に造作はない

たびさんとろびさんの
日々の暮らしの変化を見て思う

ろびさんはご存知の通り
猫年齢では18歳過ぎのおばあさん
今はまどろむ時間を良しとする

たびさんは去年拾われてきた
当時は仔猫だったこの子も
今はろびさんと同じ体躯の猫

濃い青色の座椅子に
本を持って
行儀悪く寝転ぶ
元々冷え性の体質の癖に
生意気にも　靴下が嫌いなので
足元にはヒ-タ-が設置
私の足元はいつもぽかぽか
気持ち良いので　
そのまま一眠りもしばしば
オレンジ色の熱は
皆の人気者です

最近ね
たびさんが　ろびさんの事舐めるようになりました
やっと　心を許せるようになったのでしょうか？
今までは　誰にも警戒を解かなかった
たびさんの成長です

そしてね
今　たびさんが椅子に座る私の足元に来て
二本足で立って、飛び乗ってもいい？みたいな仕草をしました
嬉しいのは　本当です
おいで　おいでをせずとも自分から来てくれたのですから
オレンジの光は　今　消えています
私の膝には茶色の猫が丸くなっています
蒼い座椅子にはろびさんが丸くなっています
キ-を打つ肘に　この猫が頭を隠すようにすりつけてきます
何度も　何度も頭をこすって　臭い付けと甘えを繰り返しています

こんな時
思うのです
私は　この子達の母なのだと
責任も義務も　生きる為の糧も
この子達を生かすために
探り続けねばならないのだと
拾った時から
得た時から
私は母になっていたのだと

健やかな寝息が
ほっとした時間を呼び込む
諦めが後悔を抜く
指に触れる感触が
時を昇る

これも一つの人生の在り方なのだろうなぁと　貯めた息を吐く
明日もこの子達を守れるだろうか？
今日の私が問いかける
守れる．．．守るに決まってるじゃない？
すでに野良には戻れない
そんな事解っているのだし
何より　そんな選択させるつもりもない
一人と二匹が寄り添う部屋の暖
淋しいとは　呟けない
悲しげな笑みを諦めに戻し
母を演じる

いつまで続けば守り通せる
いつまで抱えれば安らぎを与えられ続ける
でも　いずれこの子達は私を置き去りに
旅立つのです
その時　私はどうしたらいいのでしょう？
でも　その時はその時．．．
今は今．．．
時が訪れたら決めればいい
触れる指の心地良さに
うっとりしながら肝を決める

それが今の時間