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HEROS IN THE SKY -小説-コミュのプロローグ-1-

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当時、俺はまだ正規軍や傭兵などの登録はせず。
ただ荷を運び、金を受け取る運び屋だった。

当時の情勢を思えば、ポーランド国境への輸送物資を運んでる俺が
シーウィに追い回されるのは至極当然のことだった。


-プロローグ1-


「クソッ」

運び屋アラドのパイロットは舌打ちをしつつ、操縦桿を引いた。
急上昇するアラドについてきたのはシーウィの戦闘機だ。
いくらシーウィの戦闘機性能が低いとはいえ
ルフトお下がりを非武装にした荷運びアラドには文字通り荷が重い。

シーウィの戦闘機が着いてきたのを確認し、操縦桿を離し推力を下げた。
ほぼ自由落下に近い状態で地面に向かうアラドにも
シーウィの戦闘機はしっかりついてきた。
曲芸に近いマニューバにすらついてくるところを見ると
おそらく玄人パイロットだ。非武装で逃げ切れる相手ではない。

「万事休すか」

そう覚悟を決めたときだった。

"アラドのパイロット。
こちらルフトバッフェ第1航空艦隊所属、第5飛行中隊だ。応答しろ"

緊張した空気を一気に払うさざれ音が無線機から流れた。
シーウィから放たれるマシーネの銃弾を交わしつつ、パイロットは応えた

"アラドのパイロット、シェリックだ。
ポーランド国境まで物資輸送中、襲撃を受けている。至急援護願いたい"

と応えた瞬間、シーウィの銃弾がアラドを捉えた。
ドンッドンッという衝撃音のあとにバランスを失った機体に操縦桿を奪われた。
どうやら、被弾したのは右翼のようだ。

"シェリック。こちらスツーカのパイロット、リーベルフだ。"

(スツーカだと?)

スツーカといえば、ルフトの爆撃機だ。
なぜ爆撃機がこんなところにいるのか、シェリックには考える余裕はなかった。

"援護了解した。しかし、そちらに比べこちらのほうが鈍足だ。
こっちまでひっぱってこれるか?そちらから見て4時の方向だ"

クソ・・・ほとんど真後ろじゃねーか。
そうはシェリックは思ったものの、他に生きる道は考えられない。

"了解した。なんとかそちらにむかってみる"

そう応えるとシェリックは操縦桿を落とし、地面すれすれを飛行した。
そして一気に引き上げる。さっきと同じ急上昇だ。

(ついてきやがれクソッ)

シェリックの思惑通り、シーウィ3機も合わせて急上昇した。

アラドの高度限界ギリギリのところで、シェリックは推力を落とした。
ここまでは先と同じだ。しかしここからが違った。

今度は即座に推力を戻し、すれ違ったところで操縦桿を引き上げた。
その瞬間、急上昇しているシーウィ達の機体裏に回ったため
彼らからすれば、すれ違いざまにアラドが消えたように見えただろう。
さしずめ、垂直方向でのスプリットSと見えなくもない。

うまいこと、4時方向に機体を向けることに成功したシェリックだが。
1度見せられた曲芸にあわせられないほど、敵は柔じゃなかった。
すれ違い時ざまに船体に2〜3発被弾していた。
幸い、シェリック自信が被弾しなかった
がしかし、機体前方が黒煙を上げ前が見えない。

こうなってしまっては、自慢の操縦技術も生かせない。
シェリックはただただ推力を全開に回し、逃げるしかなかった。
エンジンが爆発しないように、祈りながら。

シーウィの戦闘機がいくらシェリックのアラドより劣っているとはいえ
方や手負いで、さらに積荷を積んでいる運び屋より遅いはずがなく。
方向を定めたシーウィの3機はアラドのすぐ後ろまで迫ってきた。

「あと少しだってのにっ」

シェリックが2度目の覚悟を決めたときだった・・・。
前方に、空を飛ぶには少々大きすぎる物体が見えた。
3機・・・いや5機だ。

"こちら、リーベルフだ。シェリック、そこは射線上だ。すぐ離脱しろ!"

無線から聞き覚えのある声が聞こえた。
さざれ音と共に流れてきた声に従い、シェリックは進路を少しずらした。

後ろから来たシーウィの奴らも前方に現れた物体に気付いたらしい。
ただのザコを追ってるときを違い3機は編成飛行をとりはじめた。

"こちらシェリック。射線を抜けた。援護感謝する。"

シェリックがリーベルフにそう応えると、すぐさま応々答が帰ってきた。

"ここから北西に飛べば、我々の駐屯基地がある。そちらに向かえ"

シェリックとしては、積荷を早く国境へ届けなければいけないが
この機体のままでは完行するのは難しい。
シェリックが"了解した"と応え進路を変えたのを見計らって
スツーカ5機の機銃が火を噴いた。

スツーカがつんでいた機銃はケルニーだ。
その射程はシーウィの奴らより絶対的に長かった。
機銃といえばマシーネが主流のシーウィの感覚では
まだ射程外と思っていたんだろう。
突然の射撃に対応できず、3機中2機が爆散、墜落していった。

元々重戦にむいていないシーウィの残存機は
手に負えないことを理解しすぐさま引き返した。

逃がしてしまっては爆撃機の存在を先のポーランド飛行基地に知られてしまう。
そう、リーベルフは懸念したが、鈍足のスツーカに追いつく術はなく
そのまま任務遂行のための航路を取るしかなかった。

このことが、リーベルフの作戦遂行に、大きな影響を及ぼすとは
このときはまだ知る由もなかったのだ。



- プロローグ2に続く -



言語解説・設定解説

「シーウィ」ポーランド空軍
「ルフト(ルフトバッフェ)」ドイツ第3帝国空軍
「アラド」第2次大戦初期の戦闘機。
「マニューバ」航空技法
「スツーカ」ルフトバッフェの急降下爆撃機。
「スプリットS」地面と平行に180度の垂直ターンを行う技法。
「ケルニー」長距離、大口径型機銃
「マシーネ」短距離、連射型機銃。ケルニーとは射程が200m近く違う。

舞台設定は1930年代後半。第2次大戦勃発直前頃。
シーウィの機体はP11eと仮定している。
ツッコミどころは満載だけど、そこはご愛嬌で。

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