修復腎移植を認めさせようコミュの　＝移植学会幹部への公開質問状＝原本その１

ビルエバンスさんの日記から転載

ご存知のように、文芸春秋８月、９月号に、修復腎移植に関する文章が載りました。９月号の文章に関しては、難波先生が中心となり、関係者がかかわって以下の原本が作成されましたが、文芸春秋社との交渉の末、より平易にとの観点から、発売されたような文章となりました。難波先生の承諾を得て、原本をここに4部にわたって掲載します。

--------------------------------------------------------------------------

日本移植学会は患者と腎移植医に謝罪し、修復腎移植の推進へと方針転換せよ
　　＝移植学会幹部への公開質問状＝
難波紘二（広島大学名誉教授）

　１.プロローグ：「病腎移植」事件とわたしの立場
　大学を定年で辞めて１年半ほど経った頃だった…　2006年11月3日、新聞を開いて驚愕した。宇和島市での「病気腎移植」が大きく報じられていた。情報を集めるために新聞をすぐ４紙に増やした。筆者は血液病理学が専門の病理学者で、臓器移植に関してはまるで素人だが、連日の報道を追いながら書庫の免疫学、病理学、腎臓病理学、腫瘍学、生命倫理学、移植の歴史に関する本を読み漁った。筆者は生命倫理学も少し研究している。
　その結果、「腎がんを完全に切除した腎臓を移植に使用してもがんが移ることはない。医療の現場で、医師と患者の間に真の理解が成立しているかどうかがコアになる問題であって、一律の物差しを導入し、現場の医師や患者の希望に反して、それ強制するのは妥当とはいえない。常識の範囲内で治療法の地域及び年代によるちがいは許容すべきだ。他方、医学は情報の共有により進歩するのであるから、いわゆる＜瀬戸内グループ＞はやましいところがないのなら、病腎移植の件数とその成績を学会や学会誌に積極的に公開し、第三者の批判を仰ぐべきである」という結論に達した。
　それを論評にまとめて、11月14日地元紙「中国」に掲載してもらった。思えばこの論評が以後の筆者の人生を左右する契機となった。その後「産経」(11月19日)、「毎日」(11月27日)などにも求められて論評を寄せた。
　「瀬戸内グループ」の医師たちは論文の執筆経験があまりなく、多数症例の予後調査や統計的解析の経験もなかった。書庫兼仕事場である筆者の研究所に集合してもらい、「病腎移植例のドナーとレシピエント」一覧表を作り、予後追跡、生着生存か透析生存かの区別、がん再発の有無などを手分けして調べた。07年1月松山市での講演で、市立宇和島病院の発表例には漏れがあると指摘したら、病院が再調査し07年2月に25例と訂正発表された。これで病腎移植総件数が42件と最終確定した。筆者らが調査した42症例のデータはフロリダ大学移植外科藤田士朗準教授に受けつがれ、各種国際学会の発表と論文執筆の素材となった。もちろん「瀬戸内グループ」もデータを共有している。
　同年4月になって、07年医学ジャーナリスト賞を受賞した医学総合文化誌『季刊ミクロスコピア』の藤田恒夫（元新潟大学教授）編集長が「病腎移植」のアイデアに賛同され、すぐ07年夏号に「私の視点：病腎移植をどうとらえるか？」が掲載された。以後同誌は３回にわたり特集を組んだ。それにも「特集＜病腎移植を考える＞」(07秋号)、「特集：病腎移植を考えるNo.2」(08春号)、「特集：ふたたび＜病腎移植＞を考える」(09冬号)に執筆と編集協力を行った。
　さらに医学週刊誌『医学のあゆみ』にも08年3月8日号から３回にわたり、修復腎移植（以下「病腎移植」に換えてこの語を用いる）について、日本の実例、世界の実例、世界の移植事情に関して論文を発表した。07年6月にはドイツ・エッセンとローマでの国際学会に出席し、08年1月にはフロリダでの万波論文の表彰に立ち会い、11年秋にはブエノスアイレスでの「修復腎移植の臨床研究」小川論文の表彰にも立ち会った。この間に各国の移植指導者たちと意見交換し、各国の移植システムについても学んだ。
　筆者が面談した各国の移植エキスパートの中に「修復腎移植は悪い」と言った人物はひとりもいなかったと断言できる。エッセンで食事を同席したイランのゴーズ教授は、翌年イラン初の修復腎移植を実施している。ローマで会ったハイデルベルグ大学オペルツ教授は2012年8月ベルリンでの「世界移植学会」会長を務めている。
　「修復腎移植」はいまや世界の注目を浴びている。「第三の腎ドナー供給源」として真剣に考慮されている。08年の万波論文とニコル論文以来の世界報告例は90例を超えた。それなのになぜ日本発のこのアイデアを、日本の腎移植関係者は評価しないのだろうか？どのような新発明も初めから完成しているわけではない。万波移植の至らざる及ばざるを改良して、なぜドナーもレシピエントも満足できる、より安全な技術改善をはかろうとしないのだろうか？このままでは、せっかくの技術も医師の現役引退とともに失われ、日本は新たに欧米からより進歩した修復腎移植術を輸入するはめになりはしないか？
　「坊主憎けりゃ袈裟まで憎し」という。坊主は万波誠で、袈裟は修復腎移植である。『ミクロスコピア09年冬号』で移植外科医の福田康彦氏は、移植学会幹部の執拗な修復腎移植攻撃の根底には「男の嫉妬」があると指摘している。自分の心すら分からない筆者に学会幹部の「正直シグナル」は読めない。だが現状を黙認し放置することは、医学のレフェリーとされている病理学者として許されるだろうか？以下は、修復腎移植問題について、病理学・生命倫理学の立場からする一学徒の発言である。

２.修復腎移植の経過と現状＝
　2.1.臨床研究＝周知の如く「病腎移植」は07年3月の「四学会共同声明」による否定を受けて、同年7月厚労省が局長通達により「臨床研究として以外はこれを禁じる」としたために不可能となった。そこで「小径腎癌(径4cm未満)」がある腎臓を用いる「修復腎移植の臨床研究」が09年12月からスタートし、13年3月末に12例を達成した。にもかかわらず、日本移植学会などの強い反対で「先進医療」としての厚労省認可が遅れている。透析患者は一日千秋の想いで、保険医療適用となるのを待ち望んでいる。
　11年11月、医療法人徳洲会は10例に達した臨床研究症例をもとに、修復腎移植を先進医療として申請する手続きを取った。ところが12年2月、腎移植関連５学会が連名で先進医療の認可反対する「要望書」を、小宮山洋子厚労大臣宛てに提出した。移植学会（高原史郞理事長）に泌尿器科学会（本間之夫理事長）、腎臓学会（槇野博史理事長）、透析医学会（秋澤忠男理事長）、臨床腎移植学会（吉村了勇理事長）の５つである。医学的エビデンスにも論理的一貫性にも欠ける主張を、支持するする学会の数の力で押し通そうとする姿勢は、高原史郞大阪大教授による、07年3月30日厚労省で行われた記者会見（後述）以来、一貫している。
　５学会の「小径腎癌の標準的治療は部分切除であり、腎摘出は許されない」という主張を確認するために、厚労省は学会側に日本のデータの提出を求めた。しかし学会がこれに応じず、4月に入って厚労省は独自に全国の「がん拠点病院」に対してアンケート調査を行った。このため12年度内に審査される予定が大幅に遅れ、６月になって「追跡期間不十分」という理由で申請が却下される結果となった。その間にも、3月に「他人間修復腎移植」第12例目が実施され、親族間の2例を含め合計14例に達している。
　不思議なのは、死体腎が比較的容易に入手可能な欧米諸国でも慢性的なドナー不足があり、マージナル・ドナーと称して、小径腎癌、動脈硬化、糖尿病、ウイルス感染などがある腎臓を移植に用いる方向で努力しているのに、圧倒的ドナー不足に悩む日本では、学会が先頭に立って自らドナー供給源を狭めようと努力しているように思える点だ。これが患者のための医療といえるだろうか？学会の面子を維持するのが目的ではないか？
ちなみに、厚労省の調査では表１に示すように、2011年全国のがん拠点病院228病院の調査では、2,317件の小径腎癌があり、全摘は47%、部分切除は53%であった。「病腎移植」が問題になった頃の2005年では、7対3の割合で圧倒的に全摘が多い。部分切除が増えてきているとはいえ、とても「標準的治療」とはいえない。

　2.2.「病腎移植」事件の本質＝「病腎移植禁止」という学会の判断とそれに続く厚労省の局長通達は、結局のところ「宇和島腎臓売買事件」についてのメディアの扇情的報道に引きずられた、非医学的・非理性的な判断である。07年4月1日付「朝日」は「厚労省、学会を支援・移植への不信感一掃へ、二人三脚」という大きな見出しを掲げ、病腎移植問題が発覚した直後に、移植学会幹部と厚労省幹部の間に病腎移植禁止で合意があったことを伝えている。以下、記事の冒頭部。「病気腎移植問題が発覚した直後の昨年１１月はじめ日本移植学会の大島伸一副理事長（国立長寿医療センター総長）は厚生労働省の外口崇健康局長に電話で切り出した。『このような医療は絶対に容認できない。学会が責任を持って事実関係の解明に当たりたい』。これに対し外口局長は『厚労省としても重大な関心を持っています。最大限、学会を支えます』と答えた。」
　つまり移植学会には初めから結論があり、厚労省健康局はそれをサポートするかたちで以後の調査、監査、聴聞会を行い、07年7月に「病腎移植禁止」の局長通達を発したのである。これが事件の本質だ。移植学会幹部が「病腎移植禁止」を最初から唱えたのには万波潰しという魂胆があった。その動機は端的にいえば、万波誠医師の卓越した技量と当時850例（現在は1,000例超）に及ぶ個人執刀記録に対する嫉妬である。宇和島の田舎医者が大都会の大学病院を凌駕する実績を挙げているのが許せなかったのだ。
　「病腎（修復腎）移植禁止」という学会・厚労省の判断と通達は間違っている。献腎移植が年間200件程度、生体腎移植が1,300件、移植待ち患者13,000人、透析患者30万余人という日本のミゼラブルな状況を打開するには、修復腎移植の公認と推進により、臓器移植に対する国民の理解を高めるしかない。

　2.3.海外での評価と手法の拡大
　2.3.1日本の修復腎移植例の発見＝移植学会の幹部ははじめ、修復腎移植を「聞いたこともない手術だ」と真っ向から否定した。支持派がまずとり組んだのは過去における同様の事例の発掘だった。学術誌の掲載論文と学会抄録の徹底的な調査により、日本で1985～06年の21年間に、万波移植13例を除いても、77例の良性病変をもつ修復腎移植が行われたことが判明した。大阪大泌尿器科でも修復腎移植を実施していた。筆者は堤寛氏（藤田学園保健衛生大学・病理学教授）と連名で、日本における過去の修復腎（レストア腎）移植に関する論文を、「日本の実態」と題して『医学のあゆみ』(08年3月8日号)に掲載した。
　これらの事例が明らかにされると、移植学会は「がんの腎臓を使用したのが危険だ」と論点を変えた。超党派議員勉強会（後述）で寺岡慧移植学会理事長（当時）はこう説明している。「がんは移植しても発症しないとよく言われていますが、まったくの間違いでありまして、これは様々な国際統計で明らかにされています。若干、古い統計ではありますが43％のがんが、ドナー以外のがんが、発症しております。最近のUNOSの統計でも4.3％が発症しています。これはがんが完治して5年以降に提供した場合にでも4.3％がうつる可能性があると示しています。」
　「古い統計」というのは米シンシナチ大学ペン教授の1997年論文を指す。彼は「移植により担癌ドナーからがんが持ち込まれる危険性が高い」と唱えた学者で、世界の古い移植法の制定に大きな影響を与えた。この「ペン学説」の盲信は世界の臓器移植を驚くほどねじ曲げた。ペンの後任教授ブエルは、ペン教授が設立した「移植腫瘍登録」症例の中に、小径腎癌を切除後に移植した例が13例あることを見つけ、長期追跡したところ１例も再発がなかったと、2005年に論文発表した。今日、臓器移植患者に発生するがんは、ほとんどが免疫抑制状態にある患者の体内から生じたものであることがDNA解析などで証明されており、古いペンの学説は崩壊した。そして欧米では臓器ドナーの条件見なおしが始まった。
　寺岡氏はUNOS（全米臓器共有ネットワーク）のカウフマン論文を完全に誤読している。彼が（『トランスプランテーション』誌2002年74巻2号）発表した「移植腫瘍登録：ドナー関連悪性腫瘍」とい論文では、34,933件の脳死臓器移植のうち、ドナーによるがんの持ち込みがあったのは15件(0.043%)、ドナーの血液細胞ががん化した例が6件(0.017%)あったと指摘し、「米国ではドナー臓器によるがんの持ち込みはきわめて少ない。移植待ち期間の患者死亡率の高さに比べると、担がんドナーの受け入れに伴う危険率は低いので、ドナー基準の拡大を図るべきだ」と主張している。寺岡氏は「がんのリスク」を強調するために、元数値の「0.043%」を「4.3%」と誇張している。

　2.3.2.がんの腎移植の発見＝オーストラリア・クィーン病院の泌尿器科医デヴィッド・ニコル教授は1996～04年7月までの7年間に43例（生体腎38件、死体腎5件）の小径腎がんを切除後の修復腎移植を実施。詳細を08年の『英国国際泌尿器科学雑』に発表した。成績はきわめて良く１例で腎臓に再発が見られたのみで、これも途中で成長を止め静止状態にある。
　ニコル教授の「小径腎がん移植」はすでに日本で紹介されていた。04年5月「第99回米国泌尿器科学会総会（AUA）」が開催された。この内容紹介をある製薬会社が企画し、全国の主な大学の泌尿器科教授が協力して取材・翻訳。専門家のコメントを載せた『AUA 2004 学会ハイライト集』が全国の泌尿器科医に配布された。その中にニコル演題「偶発性小腎がん患者の腎臓は腎移植での臓器提供源となり得るか」が紹介されている。彼はこの抄録で18例の修復腎移植を報告している。コメントは堀江重郎教授（帝京大学泌尿器科、当時）が付していて、「pT1(小径腎がん)の腎臓をドナーソースとして用いることはインフォームド・コンセントがしっかりされていれば大きな問題はない」と述べている（同書p.197）。つまりおよそ学会の指導者で、まともに最新の文献を読み、腎臓提供を増やし透析患者を苦悩から解放しようと努力している人物なら、「聞いたこともない手術だ」とは口が裂けても言えなかったはずなのだ。

　2.3.3.修復腎移植、海外で支持される＝07年6月にドイツ・エッセンで開催された「生体臓器移植国際シンポジウム」では、フロリダ大藤田準教授（前出）が修復腎移植について万波移植のデータを発表し大きな反響を呼んだ。筆者は日本の移植の後進性を心配していた座長のカリフォルニア大サンフランシスコ校アッシャー教授から、「日本の移植が進まないのは、医師が＜内心のパターナリズム＞を捨てていないからではないか？」というきわめて重要な質問を受けた。彼女は同校生理学教授、作家ジャレド・ダイアモンドの同僚だ。
　その後に、ローマで開かれた「臓器移植後のがんリスクに関する国際ワークショップ」に出席したところ、ハイデルベルグ大のオペルツ教授（移植免疫学）に会った。日本の病腎移植騒動について、彼は「日本では最初の心臓移植が殺人だったため、移植医療に対する国民の信頼が失われ、このため今でも死後の臓器提供者が少ないのだろう」と指摘した。後に彼は「世界移植学会」会長に就任し、12年8月ベルリンで学術総会を開催した。
　藤田はその後、フランス・リヨンでの「国際泌尿器科学会」(9月)、シカゴでの「トランスプラント・サミット2007」(9月)でも演題を発表した。注目すべきはハーバード大学のデルモニコ教授がわざわざ藤田にアプローチして、「ドナーとレシピエントが納得していれば、小径腎がんを切除して腎移植を行うのは何の問題もない」とコメントしたことだ。デルモニコ教授は2010年世界移植学会会長に就任し、翌11年ブエノスアイレスで開催された「国際臓器提供学会」で、小川由英（琉球大名誉教授）による「修復腎移植の臨床研究」発表に賞を与えた。国際社会は明らかに「ジャパン・プロブレム」を理解し移植後進国の日本を心配して、なんとか応援しようとしている。修復腎移植に対する国際学会の評価を見ればそれが分かる。08年1月フロリダ・マルコ島で開催された「全米移植外科学会冬のセミナ－」で発表された「万波論文」は最優秀トップテンの論文に選ばれ、表彰された。
　07年、呉共済病院の腎がんと尿管癌をドナーとする修復腎移植に関する光畑論文が『トランスプランテーション』誌に発表されると、国際誌に「修復腎移植」の症例報告が現れ始めた。同年に報告された症例は３例（国別：米国、リトアニア、イラン）である。
　08年になるとニコルの43例、万波の42例に米国１例が加わり、09年には米国5例（マリーランド大）が新たに報告された。10年には英国１例、12年には31例（イタリア３例、スペイン１例、西オーストラリアのニコルと別のグループ27例）が論文発表されている。13年にはスペインから７例（バルセロナ大）が報告されている。「修復腎移植臨床研究」の主任研究員である小川名誉教授も、2012年夏、ベルリンの「国際移植学会」で臨床試験10例を発表した。日本の学会幹部が「絶対に危険だ」とする小径腎癌の腎移植はわずか６年で161例に拡大した。
　小川発表はブエノスアイレスの国際学会で優秀論文として表彰された後、さらに12年9月タイでの「アジア移植学会」でも表彰されている。日本の近隣外交には政治的に波風が立っているが、修復腎移植の論文がこのように数々の国際学会賞を受賞する背景には、アイデアの独創性のためだけでなく、「移植後進国日本」を応援しようとする国際的な医師たちの善意が働いていると理解するべきだろう。
　06年秋以後、日本の「病腎移植騒動」が国際メディアで大きく報道されたこともあり、世界的には過去7年間に修復腎移植の採用と実施が拡大している。このため日本移植学会関係者は窮地に立たされており、海外からの招待講演に当たっては「小径腎がん部分切除」論者を選ぶため、講演を依頼する人物の選択肢が狭まって来ている。しかし、修復腎移植の問題を「なあなあ、まあまあ」主義で終わらせることは、「和田心臓移植」事件の二の舞になるだろう。これについて移植学会幹部はどう答えるのか？

　2.4.「超党派議員の会」での発言＝過去に修復腎移植が親族間移植では実施されていたことを証明すると、学会幹部は「がんの臓器移植は危険だ」という別の論理でこれを否定した。がんの持ち込みに関するペン学説の誤りを実証すると、今度は「腎全摘はドナーに不利になる」と主張を変えた。部分切除が小径腎癌の「標準治療」だというのである。
　08年3月18日「第３回腎移植移植を考える超党派議員の会」の勉強会に日本移植学会幹部が出席した。冒頭、寺岡氏は「これまで15,000件の中で70件ほど生体間移植の術前検査で何らかの疾患が提供者に見つかって、それを手術・治療した後に、移植したことがあります」と日本でも修復腎移植があったことを認めた。同氏が在籍する東京女子医大では過去に15例の「病腎移植」が行われている。この事実は『医学のあゆみ』(224巻10号)の難波・堤論文が明らかにした。東邦医大の相川厚教授も修復腎移植を実施したことを認めた。
それ以前は、二人とも「日本における修復腎移植の存在」を否定していた。
　難波・堤論文は日本と世界における過去の修復腎移植の事例を、実施年、病名、実施施設名を挙げて列挙し、小径腎がんをドナーとした例で、がんが伝達されてレシピエントに重大な害を与えた例はないことを、文献調査により実証している。このため「修復腎移植は存在しない、行えばドナーに癌が移る」という従来の主張を変え、もっぱらドナーの不利益を強調する方向に転換したのだ。
　高原氏は「ニコル以外の世界の病腎移植。病腎移植って歴史40年前からあるんですよ！」と述べているが、この発言も、1975年以来、世界の修復腎移植が72例あることを示した『医学のあゆみ』224巻11号の難波・堤論文「世界の病腎移植」に基づいている。高原氏もその事実は認めたわけだ。にもかかわらず、市立宇和島病院の例に関して「生着率悪いですよね。…半分以上の人が4年で死んでいるんですよ！もらった人が！はっきり言いますけど、犯罪ですよ」と言い切っている。同院のレシピエント25例中2名は同一人が2度修復腎移植を受けている。５年未満の実死亡は6人だから、５年生存率は（23―6）/(25-2)＝74%が正しい。それでどうして「４年以内（５年未満の間違い）に半数死亡」といえるのか？医学者と称する人が、誤ったデータに基づいて他医の医療を「犯罪だ」と主張する。信じがたいことだ。
　相川氏も「これは問題だと思います。（同院の）腎臓移植提供者の生存率は、3年で1/4の方は死んでいるのです。7年で4割の方は死んでいるのです。」と述べている。市立宇和島病院におけるドナーの３例は重症ネフローゼ症候群のため両側腎摘出を受けている。従ってドナー実数は22名である。またドナーの10例は腎癌と尿管がん、それに子宮がんの再発である。年齢も70歳以上が11例(50%)を占め、このうちがん症例は5例(45.5%)である。ドナーが有病者である場合に、死因が「原病死」か「他病死」か「治療起因死」かを突きとめないと、統計学的に正しい生存率を計算することはできない。
　要するに修復腎移植を否定するためなら、何でもありの論法である。

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1909619649&owner_id=4303074