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ピーリング☆ラブコミュの深ピーリング☆ラブ 深章#1

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深ピーリング☆ラブ 
  深章#1
     ―モジラ、階段の下で…

言葉にならない深い場所に
アタシは立ちすくんでいた。

  あの瞳に出会うために
  アタシはまた蛇の道を歩くんだ。
 
        そんだけ。
             如月キララ(家事手伝い)


登場人物
アタシ(如月キララ/37歳):記憶を取り戻しつつあるハンペンガール
ヒカル(14歳):キララの親友にして怒涛のチクワブガール

ルキア(14歳):シゲルさんとキララの一人っ子、現在漁師見習い中

ミツコさん(37歳):牛との融合を果たしたキララの親友カウガール

均さん(45歳):ヒカルの父にして鳥羽一郎の生まれ変わり
想オヂサン(40歳):ワカメを頭に載せた天才ワカメジャックダンサー


ナカザー(42歳):ヒカルの担任の経理&物理マニア、宇宙船の設計者
カサイ丼(55歳):元ダンスジャック総帥で現在は定食カサイ丼の支部長

林さん(14歳):無人島で遭難後、ゴリラとして保護された才女

シゲルさん(49歳):キララの夫にして映画界のカリスマ黒びかりP

珠子さん(28歳):均さんの嫁だがヒカルにとっては義理の母

アンJ(40歳):元カリスマモデルで女優、シゲルさんの義妹

鬼山(101歳):SとMの交差する闇の世界の帝王、キララの命を狙う

謎のソムリエ:敵か味方かあるいはボンマルシェ?
謎のジャガ:敵か味方かあるいは桃屋か

コメント(17)

アタシ。
如月キララ。
自信はないけど皆からそう呼ばれてる感じ?

アタシってば途切れ途切れの庭の中にいたんだよね。

「いた」っていうのは最近アタシの中で途切れの切れ端がリンクしかかっちゃってるから。


ぶっちゃけ、
アタシの中でアタシはもっとピチピチギャルって設定だったじゃん?

けど今は…
なんていうかオネギャル?
アネキャンっつーか婦人画報っつーか大人の科学っつーか
とにかくオ・ト・ナ・O・T・O・N・Aなウーマンなわけ。
これまさに正解。


それはそれでアゲアゲなんだけど、
アタシはアタシであるという推定現実がさ、
うれしいんだよね。


例え鼻の穴のなかに閉じ込められた現実だとしてもさ。

ね。
ヒカル。


ヒカルはアタシの親友。

アタシたちの物語は
伊勢の海岸で始まったんだ。


ヒデリン軍団が撃ち鳴らす
アカペン弾幕の中で
アタシはそんなことを考えてた。


それから。
空に浮かんだ星よりも尊いアイダホ。

アタシはあのアイダホを知ってるYO。

深い深い。
胸の底にある。

記憶。


アタシはアタシの心を覆う膜を
何度でも削って磨いて削って磨いて
ピーリングするんだ。

ホントのアタシに出会うために。

そんだけ。

そして。
アタシの脳裏に焼き付いては
繰り返す
あの瞳に出会うために。


ピーリングラブ。
空を高く舞ったアイダホポテトが
隕石みたいに降り注いで
ヒデリン軍団を次から次へ駆逐してくじゃん!!

ナイスポテトだねこりゃ。

それにつけても。
敵か味方か。


アイダホアタックを仕掛けたであろう人影が
アタシたちの前に降ってきた。


そのシルエットは…
美少女仮面ポワトリンなんだよね。

なんつーの。
あの目だけが出てる仮面舞踏会?っつーの。
それそれ。

身体は限りなく酒樽なんだけど。

ピタッとしたマントから3段バラ肉販売中だしさ。


そんだけ。


「アチキは影。
アナタたちを見守るジャガイモのツタみたいなもの。」

ポテトリンはそう言うとポテトを地面にクラッシュ!!
澱粉質が舞ってあたりはまるで煙幕。
ポテトリンはその合間に闇へと消えていった。


とにかく。
アタシたちはなんとなく助かったわけだ。

やりぃ。


ミツコもカニサンの爪を持ってVサインじゃね?


ありがとう。
アイダホ。


アタシはあのアイダホを知ってる。


桜の花びらが窓から忍び込んだ
サムデイ。


アタシの視界には
白い天井と
白い壁、
窓の外を埋めたチェリーブロッサム、
それから
それから。

あの初老の酒樽。

もしかして…。


アタシはミツコに視線を送った。

ミツコはGokuriと頷いた。

長い長い道を行く。

あるいは戻り道だったろうか。


その時!!
息絶え絶えだったヒデリン軍団が
粘菌のようにドロドロと蘇った!!

がっちーん!!

ヒデリン軍団の赤ペンをガシっと受け止めたその人は
鳥羽さんだった。

「ヒカル、如月!!
 ここはわしらに任せて
 お前らは先に進むが!!」


うん。
アリガト。


「ヒカル!
行こう。」


アタシはヒカルの手を引いて
インナースペースの奥に向かって駆け出した。
インナースペースの先に進んだところ、

ポツリと階段があった。


見覚えのあるその黒い階段。。。
シブヤの巨大クラブモジラのじゃね?

アタシは
ヒカルとミツコ、それにルッキーとその前に立った。


「ミッチャン」

「せやな、キララ。
これは間違いなくモジラや。」

「でも何で?」

「ヒデリン軍団の力が弱まってるんや!
破綻の漏れがモザイク漏れのように出始めてるっちゅーとこやろ。」

!
この先にあるのは現実?
それとも過去の亡霊?

例えどんな結果になるとしても
アタシには選択の余地なんてないんだよね。

そう思ったら体が震えたんだ。

だって・・・。


「どうしたの、キララさん?」

ってヒカル。

「ヒカル。
アタシはね、
あの階段の下に長靴いっぱいの忘れ物をしてきたの。
思い出、記憶。
甘い恋の思い出や、あまじょっぱい恋の記憶、それにセンチメンタルな恋のメモリーとか
青春すべてをモジラのフロアの上に置いてきちゃったの。

けど、
それに触れたらさ、
いまの自分でいられるかしら?

アタシはね、怯えているの。」


アタシは言葉を探しながらユックリと言った。

「ネェ、キララさん。
アタシは例えどんなキララさんだとしても、
ゴリラやたこ焼きみたいだったとしても
好きでいるよ。

だって
キララさんはきっと抜かりなくキララさんだもん。」

ヒカルのその言葉がアタシの背肝を押した。
階段を降りると

ズンドコズンドコ。


「あ、DJキヨシーのズンドコビートじゃん!」

ミツコは目をルンルンさせて
フロアへ突撃。

途中、黒々した人たちに制止されてたけど
後ろ足をギュウギュウさせながらねじ込んでオールライト☆


んで。
今さら気づいたっぽいんだけどさ。

ミツコの手、
カニサンのハサミじゃね?

ま、
ミツコ流儀って感じ?
オールライトだね☆


とにかくアタシたちは
導かれるまま
巨大クラブモジラのフロアに辿り着いたんだよね。


隣のヒカルは何かオドオド。

「どうしたの?ヒカリー。」

「いやクラブ初めてっていうか、トウキョウ初めてっていうか…。」

「え?そなの?
じゃ、ネオギャルのアタシに任せんシャイ。」


アタシはヒカルとルキアくんを連れて
バーカウンターへ。

早速注文。
モスコミュールとジントニックと爆弾酒。

「モスコミュールは大人の味で
ジントニックは塩ッからイ青春の味で
化石サイダーはヒミツの味なの」

アタシはモスコミュールをヒカルに渡し
化石サイダーをルキアくんに渡した。

「わ、甘〜い。
キララさん、お酒って均さんのダイゴローしか飲んだこと無いけど
スイーツなんだね。」

アタシもジントニックをGokuri。
気分が解れてく。

ルキアくんは爆弾酒で口からアワアワしてたけど
リラックスしてるってことだよね。

少し頬を赤らめたヒカルはキャッキャとはしゃぐ。

ヒカルの息に薫るモスコミュールの甘い匂い。


固い記憶の紐がほどけていく。


あの瞳。
床屋さんのポスターみたいな笑顔。
モスコミュールの薫り。


あぁ
アタシは。

もう一度、
ここに帰ってきたんだ。
アタシたちは
フロアのマタドールと化したミツコを残し、
クラブを抜け出して
渋谷の街に出た。


あの頃と何一つ変わらない。
何一つ。

街の街灯やネオンが優しくて、
アタシは光を吸い込むように深呼吸をした。

アタシもネオンみたいにピカピカしたいや。

ふと横を見ると
ルキアくんが梅干し食べてスッパイマンみたいな顔してた。

「どしたの?
ルッキー。」


「いや、
なんか変なんだ。
だってさ、
ドンキーがあるんだよ。」


「え?
ドンキーは渋谷のカジュアル発信地帯じゃない。」

アタシ、ポカリ。


「いやさ。
だから、それはずっと昔の話で
今はメガ富士そばになってるじゃんかよ。」

ってルキアくん。

なになにドンキーが亡くなりました?

ってwwww
アタシの激安&激ヤセサプリ「ファイナルチャイナプロポーション」、買えないじゃん!

アタシ
涙目。

ま。
富士そばがメガになったのは
天才的な発想だとは思いますけど。


アタシはその辺を歩いてたオカッパさんに
「今日って西暦何年何月ですか?」

って聞いてみた。


オカッパさんは一瞬キョトンだったけど
「2××9年10月10日ですけど何か?」

wwww
おもいっきし過去じゃね?

アタシらってば完全にタイムワープ。


そっか。
やっぱりインナースペースっていうのは…。


やるっきゃないねこりゃ。
シブヤ。
アタシの故郷。
アタシの街。

そんだけ。


時間の裂け目。
インナースペース。
過去と未来。

そんだけ。


何に拘ってきて
何に拘ってこなかったのだろうか。


アタシはヒカルとルキアを連れて、
東急東館の屋上へ上がった。

そこには昔のまんま
小さな遊園スペースとペットショップがあった。


迷い込んだ場所に
アタシは馴染んだ。

放り込まれた世界のほうが
よりアタシらしい世界だと思った。

そんだけ。


金網越しの渋谷の街を見下ろす。

Q FRONTの巨大ビジョンには
ダンスジャックのプロモーションが繰り返し流れていた。

アタシの青春すべてを賭けても
想たちにはダンスで勝てなかったんだっけ。

アタシは脳裏にどこからともなく湧き上がる
記憶の泉に
戸惑いながらも確かめるように飲み込んでいった。

アタシの時間。


アタシが黙りこくってしまって
ヒカルもルキアも困った顔をしながら
小さな遊園の前のベンチに座っていた。

ごめんね。


そして。
気づくとアタシの頬には
とめどない涙が伝っては落ちていった。

それは嗚咽のような慟哭へと変わり、
アタシは金網に凭れるように顔を埋めた。

涙にネオンがにじみ
小さな光のプリズムをたくさん作った。


ただいま。
アタシの街だよ。
足音。
雑踏。

そんだけ。


ジョナサンを後にしたアタシたちは
宮下公園の階段に座り込んでいた。

とにかく途方に暮れてたんだ。


そういえば。
想とか大丈夫かな?

なんてことを
1秒考えて辞めた。
濃いから。
濃すぎだから。


その時!

「ギッチュー」

目の前にイタチが現れた。

「ギャヌス!
イタチのノロイはガンバの敵!」

アタシ、絶叫!


「ん?
どうしたキララ?
パンツの紐でも切れたんか?」

「アタシはハンペン挟んでるだけだってば
ミツコ。

それより!
ほら白いイタチが!」

アタシ、イタチを指差す。


「ん。
なんもおらんやんけ。」

ミツコきょとん。
ルッキーぼとん。

え?
みんなには見えないの?

やっべ。
これて幻覚?
マジックリンマッシュルーム?

けど。
ヒカルだけはイタチのいる場所を正確に見てた。


「うん。
白いイタチ。
フェレットっぽいやつだよね、
キララさん。」

ってヒカル。


「そうなの。
白い奴なの。」


「ギッチュー!」

イタチは一声啼いて
トコトコスタコラと歩き始めた。


「ついてこいって!」
ヒカルは言った。


「イタチの言葉がわかるの?」

「うんん。
そんな気がしただけ。」


かくしてアタシたちはイタチの後を
ポテクラサッサと歩き始めた。


それは。
真実へと繋がる道。
導かれるまま。

アタシはそんな予感で鳩胸がボンキュボンだったんだ。
イタチのあとをついていく。

飲兵衛横丁のアーチをくぐって
まるで時代に取り残されたみたいな路地を歩く。

やがてイタチはすすけたような古い木造りのバーの壁の隙間に潜り込んだ。


けどさ。
アタシたちはそんなとこ入れないわけ。
軟体タコ社長じゃないんだからね!


アタシたちは建物の入り口とおぼしき
足と顔は見えちゃう感じの
西部劇な扉?
をクルッとした。


古色。

まるでタイムスリップ。


ハリオのサイフォンの底に溜まった埃に
時代をみた。


その時!


「あら、ギッチューじゃないの、キララ!」

バーカウンターの江戸むらさきの空き瓶の裏から
出てきた何かは!


「ちょー!
白タイツの小人はピーターマン!」

アタシは驚愕。


「随分じゃないの、キララ!
アタシはイワチ!」

…。
幻覚じゃね?


アタシはドクターシャウトに処方されてた
白い錠剤をこっくり!

むー。
消えないタイツ。

リアル?

でも。
どこか郷愁を誘う。

アタシの記憶。



ニューロン、バチバチ!


「あっ!ギッチューだ!」


「それは、イタチ!
私は、イワチ!」


「ギチューッ!!」

アタシたちは最強の水先案内をゲットした!

なぜかふいにそう思ったのさ!
ねぇ、イワチ。
この世界はいったいどこなのかしら?


それを紐解くカギはキララが探さなきゃ。
イワチはただの案内人なのさ。


そんだけ。


アタシたちは
この世界のリアルを探す。


きっと残された時間は少ない。
アタシはそう確信してる。
根拠はない。

あるのはザーサイの空き瓶だけ。


アタシたちはルキア、ミツコ班と
アタシ、ヒカル班に分かれて

リアルを求め街に飛び出した。


そんだけ。


シブヤ、サルガクチョウ、マルヤマチョウ、カスカベ。
アタシたちはとにかく走り回ったんだ。


けど紐解くも何も
紐さえ見つからず。

今にも横たわってしまいそうな時間が焦燥を生む。


とりあえず判ったこと。

?この世界は15年前の世界
?ドンキは健在
?お好み焼きよりもんじゃ派
?イワチの毛は抜けど抜けど生える
?ヒカルの理想の男性は前川清


アタシ、プロファイルする。

けど。
途方だよね。

そんだけ。


かすかな希望。

アタシは・・・
この世界のアタシに逢いに行くことにした。


「それには賛成できないな。」

イワチは顔を曇らせた。

なんでよ!!
都内某所から橋を渡ってギリギリ東京な私の住んでた町。

ノボリト。


「そこは神奈川県川崎市多摩区だよ、
 キララ。」

「ギチュー」


え?そうなのイワチ。
あたしショボーン。

お母さんの大嘘つき!!


アタシたちはノボリトの町を歩く。

多摩川の川沿い。

そこから少し坂を上って。
中学校を過ぎて

また坂を下ると。


ありました。

如月家です。


    ねぇ。イワチ。
    どうしてアタシはアタシに会ってはいけないの?

    今のキララがこの世界のキララと逢うと
    この世界のキララは消えちゃうかもしれないんだ。

    なにそれ。
    オカルト?

    同じ魂は同じ世界には共存できないんだ。
    共鳴してどちらかのブレーカーが落ちるってこと。

    じゃあさ。
    見つからないようにそっとね。


アタシたちは家の中に誰もいないことを確かめて、
今のアタシが持ってた合鍵で家の中に入った。


玄関には何故かじゃがいもが無造作に転がっていた。
今夜のおかずはジャガバタなのかな?


アタシは階段を2階へと上がった。

2階の突き当たりにあるのは
間違いなくアタシの城。


アタシは恐る恐るその扉を開けた。
アタシの城は、
なんていうか…
一言で言うと散らかっていた。


そもそも床を敷き詰めてるのが
毛ガニのカラだったわけで。

ギャヌス!
毛が痛いってば。

アタシ、足を振り払う。

すると何故かイワチがダイブ。

「ずいぶんじゃないのさ、
キララ!」

なんか知らんがイワチ怒ってる。
怖い。


それはともかくさ。
アタシはその部屋に一つもノスタルジアを感じないワケ。

この世界のキララが痛すぎるわけ。

だって!
ごはんですよ、の空き瓶をペンたてにしたり、
ザーサイの空き瓶に飲みかけのキャッフェが残ってたり…。
てゆーか、カニのアップリケのついたジャージとかマヂキチだし、
20cmのヒールとか小鹿ちゃんじゃね?


全然、いけてない。
これ常識。


とにかくアタシはアタシの黒歴史を
お母さんのせいにしまくって
積極的に否定してまわったわけだ。


それはそれとして。


「あれ?
これ・・・。」

ヒカルが呟いた。


「ん?」

アタシが見やるとそこにはワサビーフが!


「やや!ワサビーフ殿下!」

アタシは無駄にテンションアゲアゲ☆
ちょっぴりピリカラなうじゃね?

「いや、そうじゃなくって…」

ヒカルはワサビーフの裏からフォトフレームのような物を手に取った。
そこには一枚の写真が挟まっていた。

「この人って…」


アタシはそれを見て
しばらく何も言えなかった。

そのフォトフレームの中には
何度も何度も夢に見たあの瞳が写っていた。

アタシはその写真を胸に抱いて、
声を出さずに泣いた。

ねぇ、イワチ。
アタシはね。
アタシはね。


窓からは茜色の光が差し込み、
写真のフレームがキラキラと輝いていた。

「全然OK」
「shi-gel…。」

アタシは口の中で呟いた。

きっとこの写真の彼のファーストネーム。


シゲル。

アタシにはシゲルとの思い出や記憶がない。


徐々に繋がるリンクの中からも
その部分だけゲッソリ落ちてる。

いや。
松坂の町で何度か会ったことは憶えてる。

ヒカルから前に聞いた。
この人がアタシの夫であること。
そして、ルキアの父であること。

けど、
アタシには何にもないんだ。

だって。
目の前にいるその人が
誰なのかってことが判らなかったから。


だからこの写真を見たとき
思わずズッキューンってきたんだ。

胸をつく切なさや愛しさや心強さや全然OKやいろいろ。


アタシはそんな溢れ出す思いを抑えながら、
手にしていたフォトフレームをワサビーフの裏にそっと戻す。


シゲル。
こんなアタシを見つけてくれたんだね。
気づけなくてゴメンネ。

アタシはね。
きっとそのことをアナタに伝えたかったんだ。

アタシはそんな風に思ったんだ。

アタシの長い長い片思い。

アタシは彼に気持ちを伝えただろうか?

そう。
アタシには何もないのだ。



階下に降りてガレージに行く。

確かお母さんがライブハウスみたいに改築して
ソファとかでユックリできるはずだから。


て思ったんだけど、
ガレージはなんていうの?室内なのにテント。

そして!
そのテントの中から人影が!

緑色に輝くオーラを放ったその人影は
敵か味方かあるいはモモヤか!
出てきた人影は緑色の褌をまとい
顔という顔が毛むくじゃらで覆われてる
端的に言えば

「ひっ、ふぇっ、変態!」

アタシ、思わず股に挟んだハンペンをキュッ!


「あれ、キララの顔した小鬼がおる!」

変態はメガネを丸くして言った。


「緑おじさん!」

隣のミツコが言った。

「あれあれ、ミツコに善く似た小牛もおる。」

ミツコは緑おじさんに駆け寄って
カニサンで抱擁した。

アタシ、キョトン。


「なんや、忘れたんかい。キララ。
妙子さんの叔父さんの緑おじさんやないか!」


っwww
そんな人、記憶の中に居ないよぉ。

フンドシだし…。

でもまぁ。
ブリーフよりはまし。

そんだけ。


アタシたちはテントの中で焼きバナナと
ヤモリの串焼きを振る舞われた。

「ほれ、バナナ焼けたよ。
イモリよりヤモリ!」

緑おじさんは他の人より
1トーン大きな声で
もてなしてくれる。

けどさ…。
バナナまではなんとかわかる。
しかし。
イモリなんか食べれんの?
姿焼きだし。

「えいっ!キララ、これはヤモリ!」

怖い。

でも。
そこはミツコ。

「ウマス。ウマス。
トカゲ、ウマス。」
ってモーパラ祭状態。

アタシも思い切ってパクリ。

!

キタwwwwwwwwww


「ウマス〜!
このカナヘビ、バロウワス!」

アタシ、感涙。


「ほれ、おいもむし焼けたよ。」


アタシとミツコは
怯えているルキアとヒカルを他所に

モーパラランデブーな祭状態に凸していったのだった。
夜。

アタシたちはそのままアタシの家にいた。

緑おじさんによると
妙子さんはグアム旅行中で
キララはダンス合宿とかでしばらく家を空けているようだったから。


ほらギッチュー。
遊んでおいで。


ギッチューはガレージの中を所狭しと走った。


アタシは屋根の上に上がった。

子供の頃、
ここから星を見るのが好きだった。


お母さんと喧嘩してはよくここで独りゴチたんだっけ。

そんなときは決まって美妻沙パパ(3番目のパパ)が遊びに来てくれた。

そんな思い出。
ぽつり。

そんだけ。


アタシはいろんなことを考える。


緑おじさんは
精霊や都市伝説に詳しくて
ギッチューやイワチが見えたみたい。

そんな緑おじさん曰く、
アタシはこの世界のどこかに隠されている
アタシを探さなければいけないんだって。

あんま意味がよくわからなかったけど、

インナースペースのどこかにリアルなアタシがいるってこと。

ヒカルじゃないけど・・・
アタシもリアルなアタシに会いたいんだ。


でも会ってどうするのだろう?

アタシは何になり何にならないんだろう?


その時、
窓からこそっとヒカルが出てきた。


「キララさん、寒くない?」

「星が明るいからアッタカいよ。」

アタシは朗らかに言う。

「そっか。」

ヒカルはそういって恐る恐る屋根を伝ってアタシの隣に座った。


「なんかまだ下は馬鹿騒ぎだね。」

アタシがそういうとヒカルは大きくうなずいて

「そうなの。
 なんかイワチと緑さんとミツコさんで呑んだくれちゃって
 ルキアはすでにグロッキー。

 3人は
 これからアンデスの怪鳥を降臨させるとかなんとか言ってる。
 怪鳥ならカイチョーを倒せるとかもぉワケ解らんが。」

くすっ。
アタシはヒカルの口ぶりが可笑しくてほんのちょっとだけ笑う。
それから空を見上げる。

ヒカルも同じように空を見上げる。

「松坂みたいに空一面吸い込めるような星空じゃないけど、
 なんか・・・いいよね。」

アタシが空に向かって言う。

「トウキョーでもこんな星見えるんですね。」

「ま。トウキョーじゃなくてカワサキだったらしいけど。」

っていってアタシたちは笑いあった。



これから起こる
激しい運命の前に
ほんのちょっと息を抜くように。

なんてね。


そんだけ。
起きたらさ。


なんか、ミツコとイワチと緑おじさんがガレージで円陣組んでるわけ。

タロットカードみたいな魔法陣描いてさ。

そんでギッチューが捕まえてきたスズメの生き血を(ry


フンガー。
ボボボボボボボボボボボボボボボボボボッボ!!!


円陣の真ん中にいたミツコに青白い炎点灯!!


ドッカーン!!

ガレージが揺れる!!


「なにごと?」

驚いたヒカルが寝室から飛び出してくる。


そして次の瞬間。
世界は一瞬だけ大きな緑色に包まれた。


「えいっ!!アルゲンタビス降臨せよ!!」

緑おじさんの声と共に
世界を包んでいた緑色が
ミツコの体内に入っていった!!


キシャーン!!
ミツコのハイブリッドボディが徐々に変化していく。

カニサンの爪は大きくなり、
牛さんの体は逞しくなった。
そして!!
牛さんボディの背からニョキニョキと大きな翼が生え始めた。


ボボボボボボボボボボボボボボボボボボボ!!!!!!!!!

やがてミツコを包んでいた青白い炎は一筋となり
天に向かってけたたましいスピードで消えていった。


な!!
何が起きたの?


アタシは慌ててミツコに駆け寄る。



「おはよう。キララ。」

緑おじさんは顔色一つ変えず朗らか。


「ぎひひひひひっ」

イワチはなんか笑ってる、怖い。


「ミツコ。」

アタシが声をかけると
ミツコはゆっくりと振り返った。


「キララ、完成したで。
 アンデスの幻のコンドル・アルゲンタビスを召還したけのぉ。
 ワイの究極ハイブリッドボディじゃけぇ!!
 鬼山にももぉ負けん!!」


闘牛の躯体とバルタン成人の鋏、そして怪鳥の羽を持った女の子
ミツコ(37)。

アタシの親友はね
普通の女の子に見えて
でも常にポジティブでバイタリティに溢れる世界一大切な友達だよ。
これまでのはなし。


アタシたちは兄弟舟に乗って
木星の衛星エウロパへとやってきた。


エウロパは地球によく似た
蒼い星だった。


そこでアタシたちの目の前に現れたのは
他ならぬ鬼山。
鬼山は執拗にアタシたちを追い詰め
アタシたちは森の奥の洞穴に身を潜めた。


その洞穴の奥にはインナースペースがあった。

インナースペースを進んでいくと
そのずっと奥には
シブヤの巨大クラブモジラに繋がる階段があった。


そんだけ。


アタシたちはシブヤの街に出た。
インナースペースの内側にあるシブヤ。


15年前のアタシの記憶から何一つ変わることなく・・・。
そして気づいた。
この世界は15年前のセカイなのだと。


アタシはインナースペースがどんなものなのかってこと
薄々気づいてるつもり。

でもそれは誰にも言えない。


とにかくアタシは何かを求め
そして完結させるだけの何かを手に入れなければならなかった。

アタシはアタシを完結させなければならないのだ。
って思うから。
漠然と。
悠然と。


そんなときにイワチに出会った。
イワチはアタシを導いてくれる白いタイツの妖精。
イワチはアタシにたくさんのカギのヒントをくれる。


アタシはイワチやヒカル、
ミツコやルキアと一緒に
アタシが生まれ育ったノボリトにやってきた。
アタシが住んだ家。


これからのはなし。


アタシは。
ペガサスっぽい何かに変身を遂げたミツコと共に
そしてヒカルやルキアとともに

アタシを終わらせる旅に出るとこ。

アタシがアタシを終わらせるって事。

完結へのカウントダウン。


ここはインナースペース。

はじまりとおわりが同じ起点をもつ場所。


ピーリングラブ。
深ピーリングラブ
 深章#1
  To Be Continued

深章#2に続く

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