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『神誤忍法帖』コミュの第三十二章

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「ぴぎゃはあはああああ!!!」凶獣『CHEAT』の悲鳴が地響きを立て続ける。地面にのた打ち回る様子は甲板にあげられた巨大鮫が暴れているようであった。血煙が全身から立ち上がる。血ヘドを吐きながらの痙攣、その有様でさえ「暴力的」。

『神誤』は「暴力の終焉」の証人として『CHEAT』の「死に様」を見ている。何も言う事はない。言ったところで今の『CHEAT』に何が理解できようか。「痛み」は己の「生」がまだ存在している事を意味する確認手段としてありうる。しかし「極上の痛み」はその「生」の存在を確認することさえ許さない。そしてその「痛み」において「暴力」は手段でしかない。「Destroy」は結果なのだ。

しかしダメージは『神誤』にもあったはずである。『CHEAT』のダブルバレル・ソードオフショットガンから放たれたスラッグ弾は確実に『神誤』の両腕と両膝を撃ち抜いていた。しかも弾頭には水銀が埋め込まれている。『神誤』の肉体に何が起こっていたのだろうか。そして『CHEAT』に何が起こったのであろうか。

まずは『神誤』の肉体。

人間の筋肉は長い線状のタンパク質であるフィラメントが複数集まって筋節を形成、その筋節がひも状につながり筋原繊維となっている。そしてその「繊維」が「収縮」することにより「力」を発生、いわば1本の「ゴム」がまとまったようなものと考えられる。

「ゴム」が伸びた状態で外部からの直接的な衝撃を受ければ「ゴム」そのものは簡単に損傷してしまう。だが、緊張のない「緩んだ」状態では外部からの衝撃に対しては「力」のかかりようがない。『神誤』が身体に起したのはまさにこれであった。

孤異厨流奥義「蝸護」。

打撃系の衝撃を受けた瞬間に筋肉の緊張をゼロ状態にすることによって、受けた「力」をすべて吸収してしまうのである。『神誤』はスラッグ弾が両膝と両腕に着弾した瞬間に筋肉の緊張を解放し、衝撃による被害を最小限に食い止めたのであった。

そして「蝸護」の更なる驚くべき点は、衝撃をいかに最小限に抑えたとしても外傷を受ける場合がある事も考慮し、失血の為に血液凝固因子を含む赤血球を緊急に血液中に大量生産ができるということである。しかし『神誤』は今回、あえてこの「能力」を封印し故意に出血をさせた。そうすることにより着弾点の外傷から入り込んだ水銀の毒素を体外へ排出させる為であった。

『CHEAT』の呻きが小さくなってきた。身体は痙攣はしているものの動きは殆ど無い。呼吸をする度に気管がまるで笛のような音を出している。左目は五寸釘でつぶされた。右目は突然見えなくなった。いったいなんだったのだ。

『CHEAT』と跪いている状態で対峙している時、『神誤』は悟られぬように下唇を噛んでいた。下唇から出血をさせていたのだ。切り口から流れてきた血を充分口の中に溜め『CHEAT』の右目を目掛けて含んでいた血を霧吹き状に吐いたのである。その血が『CHEAT』の右目に入った瞬間に視界はなくなった。ただの血ではない。「白寿切」が含まれていた。『西孤』の血をすすった『神誤』の身体には「白寿切」が流れていたのである。

後は目の見えない獣の後ろを取るだけであった。捜殺『Search and Destory』がここに完了した。

第三十二章:終わり---

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