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憲法九条を暮らしに生かす会コミュの『色平哲郎氏のご紹介』(あすを探る 憲法・社会)9条の持論、披露する前に  木村草太

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『色平哲郎氏のご紹介』(あすを探る 憲法・社会)9条の持論、披露する前に 
木村草太 朝日新聞 2018年2月22日

 安倍晋三首相が自衛隊明記改憲を提案したことで、9条論議は活発化した。しかし、そこで持論を披瀝(ひれき)開陳する人の多くが、政府解釈や憲法体系を全く理解していないのは驚きだ。現在の憲法を理解しない人々が、その改正を語れるはずはない。

 まず、政府解釈を確認しよう。確かに、憲法9条の文言は、「国際関係における武力行使を一切禁じている」ように見える。しかし、他方で、憲法13条は、国民の生命や自由を国政の上で最大限尊重しなければならない旨を定める。政府は、強盗やテロリストのみならず、外国の侵略からも国民の生命等を保護する義務を負う。この義務は、国家の第一の存在意義とでもいうべきもので、政府はこれを放棄できない。そこで政府は、外国からの武力攻撃があった場合に、防衛のための必要最小限度の実力行使は「9条の下で認められる例外的な武力行使」だとしてきた。

 こうした政府解釈を「欺瞞(ぎまん)」と批判する見解もある。しかし、その見解は、「外国による侵略ji国民の生命・自由が奪われるのを放置することも、憲法13条に国反しない」との前提に立つことになる。こちらの方がよほど無理筋だ。さらに、仮に自衛隊が本当に違憲だとすれば、今すぐに自衛隊を解体しなければならないはずだが、自衛隊の即時解体までは主張しない。それこそが欺瞞でなくて、何であろうか。

 また、この機会に、軍法・軍法会議の規定を憲法に盛り込もうとの提案もある。しかし、自隊法には、自衛隊員を規律する罰則が既にある。規律が不十分ならそれを改正すればよく、「軍法」に拘泥する理由はどこにもない。また、現行憲法でも、家裁や知財高裁のように、法解釈に関する最高裁への上訴権を認めた上で、専門裁判所を設置することは禁止されない。他の行政組織と異なる専門判断が必要だというなら、防衛裁判所も設置できよう。

 他方、安倍首相による改憲提案に対し、「そもそも現行憲法でも、集団的自衛権の行使や安保理決議に基づく国連軍・多国籍軍への参加など、国際法上合法な武力行使はすべて可能であり、また、それを全面解禁すべきだ。よって、改憲は必要ない」との主張もある。この主張は、9条2項の「前項の目的を達するため」の文言は、侵略戦争に使う軍・戦力の保有だけを禁止する趣旨で挿入されたとする説(芦田修正説)を根拠にしている場合が多い。

 しかし、政府が、集団的自衛権行使の全面容認が禁じられるとする根拠は、9条の文言だけではなく、統治機構の条文構造にもある。天皇に統帥権と軍編成権があった明治憲法と異なり、日本国憲法は軍事権を類型ごと排除した。すなわち、日本国憲法の下では、国内統治作用たる「行政」の範囲を超えて、外国の主権領域で実力行使する「軍事」の権限を行使することは許されない。

 「9条で禁じられない」という理由だけで軍事活動を認めれば、権限行使の責任の所在や手続きを憲法で統制ができないことになる。だからこそ政府は、行政の範囲を超えた軍事活動を営むことは憲法上不可能と考えてきたのだ。「9条は集団的自衛権の行使なども禁じていない」と主張する人は、統治機構論の体系的な理解に欠け、視野が狭すぎる。

 正しい前提知識に基づかない議論は有害無益だ。報道関係者も含めて、まずは、正しい知識を確認する必要がある。

 いま憲法をめぐって国民が議論すべきは、従来の政府が言う「専守防衛のための自衛隊」とすべきか、2015年の安保法制で拡大された「存立危機事態での限定的な集団的自衛権」を容認するかであろう。ただし、元内閣法制局長官の阪田雅裕氏が指摘した通り、「存立危機事態」の定義はあまりに不明瞭で、それを条文にしても意味が定まらない。そんな条文は、権力乱用を招くだろう。

(きむら・そうた 80年生まれ。首都大学東京教授・憲法。編著『いま、〈日本〉を考えるということ』など)

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