などがミキシングの手法として使われるようになりました。Phil Spector とか、The Beach Boys なんかはまさにこれを活用していたわけです。
ところが、彼らは実はステレオで音楽を発表していたわけではなく、かなり後の時期までモノラルでミキシングをしていたわけです。Phil Spector が "Back to Mono !" と書かれた CAN バッジを付けている写真なんかが有名ですけれど、少なくとも60年代に最も「深い」サウンドを構築していた彼らをして、左右方向の「深さ」を出す手立てはなかなか確立されなかったわけです(The Beach Boys の場合は、サウンドの主導権を握っていた Brian Wilson の片耳がほとんど聴こえない、というハンディがあったことも関連していますが)。
初期のステレオミックスというのは、それはそれはお粗末なものでした。ジャズなんかでは、クラブやスタジオで「いつものように」演奏しているのを2マイクで録音すれば良かったわけですが、その方法論をそのままロックに持ち込んで、ドラムとベースは左、残りは右、とか、オケは左、声は右、とか、ヘッドフォン愛用者だったら発狂しそうな代物が堂々と STEREO の冠を付けてリリースされていました。先の The Beach Boys なんかの場合だと、モノラルでミックスされたものを、レコード会社の方で左右で位相をひっくり返したものに作り変えてリリースされる、などということがありました。