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Paul Strandコミュの「ポール・ストランド: 60年の軌跡」 より

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モダンアートシーンの評論家カルヴァン・トムキンスが、
「ポール・ストランド: 60年の軌跡」に寄せた小論「Profile」から。

(From "Profile of Paul Strand" by Calvin Tomkins from
"Paul Strand: Sixty Years of Photographs," 1976, Aperture Books)





写真の歴史は 150 年を超える。
果たしてそれが「アート」といえるか、
という陳腐なギロンに明快な答えが出されてすでに久しい。
主だった美術館は当たり前のように写真の展示を行い、
積極的にコレクションもするようになった。
多くの美術学校には写真科が設けられるようになったし、
写真作品の売買を行うギャラリーの数も増え続けている。・・・にもかかわらず、
写真の分野で大物アーチストと呼べる写真家はまだ少ない。
もちろん、男女を問わず「すごい写真家」は沢山いる。
ジャーナリズムやファッション・フォトの分野においても、
ユニークな視点、勤勉さ、技術的完成度・・・などにおいて
他を抜きん出る有名な多くの写真家たちだ。

しかし、そのような「才能」の地平を超え、
たとえば、マチスやデ・クーニングに比するスケールの写真家、
という意味では、まだ驚くほど数少ないのではないだろうか。

このレベルの写真家として、20世紀のアメリカが生んだ写真家、
アルフレッド・スティーグリッツ、エドワード・ウェストン、そして
ポール・ストランドの 3人をあげることができるだろう。

スティーグリッツは1946年に、ウェストンは1958年に亡くなったが、
ストランドは、85歳で亡くなる1976年まで膨大な量に上る作品を
制作し続けた。その活動は決して派手なものではなかったが、その「地味さ」
「静けさ」はストランドの作品自体についても言えるクオリティといえる。

劇的な緊張感、ドラマ、を感じさせるウェストンやスティーグリッツの作品が、
画面からはみ出るエネルギーを感じさせるとすれば、
ストランドの作品は、フレームの中で静かにたたずむ、というイメージだ。

長く見つめれば見つめるほど、そこに世界が広がっていく。
現代の写真作家には稀な例だと思われるが、作者自身が作品の中に溶け込んでいくような作品群だ。

しかし、1971年にフィラデルフィア美術館が行った回顧展を評した
多くの美術評論家が認めたように、
ストランドのキャリアを特徴づけるのは、 そ作品のクオリティもさることながら、
その長いキャリアを通じて維持された「静かな確信」ともいえる
ゆるぎない視点、ではないだろうか。

ストランドは、他の多くの有名な写真家と較べても、そのサブジェクト・マター、
つまり被写体とした対象が広い。
ポートレート、風景、抽象、機械、 自然物のディテール、建築、世界各地の「村の暮らし」・・・

彼は、これらのテーマを何度も取り上げている。
長年を通じて、彼のメソッドとヴィジョンがあまりに一貫しているので、
例えば 1966年にメキシコで撮った作品と、その 30 年前に撮った写真では、
ほとんど見分けがつかない。

20世紀のアーチストで、これほど、確固たるヴィジョンを長年
維持し続けた作家は珍しく、その意味で、彼のような作品は「アナクロ」
とさえ言える。

 初期から最後まで「職人技」にこだわって制作したストランドは、
「作品のクオリティは表現力以前の問題だ」と言っている。

生涯を商業的成功とは無縁な作品を作り続けることに捧げた彼の作品が
広く世間で認められるようになったのは、ごく近年のことである。
 彼の「静かな」写真の多くに共通するメッセージは、

「人間にとって尊厳とは <望ましい> ものであるだけでなく、
ひとが<達することの可能な(目指すべき)高み> でもあるのだ」

ということではないだろうか。 (1974, カルヴァン・トムキンス)

(日本語文責: Sista Orbit)


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