経済人類学(Economic Anthropology)のコミュニティ
■経済人類学ってなに?
植民地主義批判からマルクス主義の挫折、極端な未開社会讃美、ネオリベラリズムの台頭を受け、紆余曲折しながらも、現在の資本主義に代わる経済のあり方を暗中模索し続ける人類学の一分野。日本で経済人類学というと、栗本慎一郎が有名。フィールド派、推測派、理論派などなど、興味のある方からご専門の方まで、みなさんおいでませー。
経済人類学はマルクス主義と縁が深いです。経済人類学内でマルクス主義批判は当初から当然のことではありましたが、栗本慎一郎にも見出されたように、歴史発展段階説などの進化論的推測の影響は散見されたようです。大きく分けて、形式主義と実在主義と呼ばれる二つの理論的立場があります。経済に関する人類学的な研究は、オセアニアやアフリカを中心として数多く存在しますが、「経済人類学」という名称は現在は世界的に下火になっています。
■資源人類学
近年はサステイナビリティ(持続可能性)の影響を吸収して、「資源人類学」なる分野が現われています。資源人類学のいう「資源」は、これまで使われてきた概念よりもっと広い意味で用いられる。もちろん天然資源も含めるし、文化資源という言葉でイメージされる、ハイカルチャーなものから、伝統的な人類学で文化という場合の、生活文化だとか、サブカルチャーも含める。ブルデューの「資本」概念が、「経済」や「階級」を含意しているのに対して、資源人類学の「資源」は、通常経済学で扱われる「経済」より広い領域を「資源」と定義する。概して資源は、「生態面」と「象徴面」とを持っていて、大抵の資源はその両側面を具えうる。特に、資源が資源として見いだされ、資源であることをやめるまでの「資源化」と「資源循環」のプロセスに着目し、平面よりも、動態的な側面を意識して捉える。
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■経済人類学の参考文献
秋道智弥 2004 『コモンズの人類学:文化・歴史・生態』人文書院
アタリ・ジャック、ギョーム・マルク 1986 『アンチ・エコノミクス』法政大学出版局
アタリ・ジャック 1994 『所有の歴史:本義にも転義にも』法政大学出版局
内堀基光、菅原和孝、印東道子編著 2007 『資源人類学01-09』
織田竜也、深田淳太郎 2009 『経済からの脱出』春風社
川田順造 2001 『文化としての経済』国際文化交流推進協会、2001.
ギアツ・クリフォード、ギアツ・ヒルドレッド 1989 『バリの親族体系』(吉田禎吾、鏡味治也)みすず書房
栗本慎一郎 1980 『幻想としての経済』青土社
栗本慎一郎 2007 『シルクロードの経済人類学:日本とキルギスを繋ぐ文化の謎』東京農業大学出版会
ゴドリエ・モーリス 1980 『経済人類学序説』(今村仁司訳)日本ブリタニカ
ゴドリエ・モーリス 1984 『経済における合理性と非合理性:経済人類学への道』(今村仁司訳)国文社
ゴドリエ・モーリス 2000 『贈与の謎』(山内昶訳)法政大学出版局
サーリンズ・マーシャル 1984 『石器時代の経済学』山(内昶法訳)政大学出版局
杉村和彦 2004 『アフリカ農民の経済:組織原理の地域比較』世界思想社
ダグラス・メアリー 1984 『儀礼としての消費:財と消費の経済人類学』(浅田彰、佐和隆光訳)新曜社
テスタール・アラン 1995 『新不平等起源論:狩猟=採集民の民族学』法政大学出版局
ファース・R 1978 『価値と組織化:社会人類学序説』(正岡寛司訳)早稲田大学出版部
プイヨン・フランソワ編 1984 『経済人類学の現在』(山内昶訳)法政大学出版局
ブローデル・フェルディナン 1985- 『物質文明・経済・資本主義:15-18世紀』みすず書房
ポランニー・カール 1975 『経済と文明』(栗本慎一郎、端信行)筑摩書房
ポランニー・カール 1975 『大転換:市場社会の形成と崩壊』(吉沢英成訳)東洋経済新報社
ポランニー・カール 1980 『人間の経済?・?』(玉野井芳郎他訳)岩波書店
前川啓治 2004 『グローカリゼーションの人類学:国際文化・開発・移民』新曜社
間々田孝夫 2000 『消費社会論』有斐閣
間々田孝夫 2005 『消費社会のゆくえ:記号消費と脱物質主義』有斐閣
間々田孝夫 2007 『第三の消費文化論:モダンでもポストモダンでもなく』ミネルヴァ書房
マリノウスキー 1967 「西太平洋の遠洋航海者」『世界の名著59マリノウスキー/レヴィ=ストロース』(泉靖一編さん)中央公論新社
マリノウスキー・B、デ・ラ・フェンテ・J 1987 『市(いち)の人類学』(信岡奈生訳)平凡社
モース・マルセル 2008(1962) 『贈与論』(有地亨訳)勁草書房
メイヤスー・C 1997 『家族制共同体の理論:経済人類学の課題』(川田順造、原口武彦訳)筑摩書房
山内昶 1992 『経済人類学の対位法』世界書院
山崎カヲル、メイヤスー・C 1980 『マルクス主義と経済人類学』柘植書房
湯浅赳男 1984 『経済人類学序説:マルクス主義批判』新評論
湯浅赳男 1998 『文明の「血液」:貨幣から見た世界史』新評論
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■『資源人類学09:貨幣と資源』
序―貨幣と資源 春日直樹
I 貨幣の贈与性
貨幣の区別と使用―カメルーン都市の同郷会とその役割 野元美佐
貨幣と共同体―スリランカ・タミル漁村における負債の贈与的資源性をめぐって 田中雅一
エスニシティと「貨幣」―国境を越えるサモア人の交換とアイデンティティ 山本真鳥
II モノ化=客体化される貨幣
「お金の道」、「食物の道」、「敬意の道」―アフリカのミオンボ林帯に住む、焼畑農耕民ベンバにおける資源化のプロセスと貨幣の役割 杉山祐子
外在化された記憶表象としての原始貨幣―貨幣にとって美とはなにか 竹川大介
III 貨幣のモノ化とヒト化
エンデで家を建てる方法―資源としての貨幣と資源でない貨幣 中川敏
地域通貨のリアリティ―南フランスのSELの事例から 中川理
資本に転化しない地域通貨 丸山真人