皆さんが激愛盤を出す中で、僕はとりあえず『呪われた夜』で行きます。かつて自分のHPのタイトルとなった『On The Border』にしようか迷ったのですが、レスが付かないと淋しいので、よりメジャー感のあるこちらにしました。
75年のイーグルスの4枚目。前作「On The Border」で5人目のメンバーとしてドン・フェルダーが参加。それまでのカントリー・ロック・バンドから一歩進んで、泥くさいロックンロールもこなす、ルーツ系ロックにステップアップしたイーグルスですが、今回はソウル・ミュージックからの影響を受けつつ新たな境地に達します。 prodは、前作でグリン・ジョンズから引き継いだ、ビル・シムジク。
その当時ギャンブル&ハフのフィリー・ソウルに夢中だったという、グレン・フライとドン・ヘンリーのコンビが書き上げた "One Of These Nights"は、ファルセットを生かしたコーラス、細かく刻むリズムgなど、それまでのイーグルスにはなかった個性が発揮された名曲です。全米#1。 ヘンリーと並びもう1人の顔、フライはここでは、"Lyin' Eyes"という名曲をものにしています。僕が思い浮かべるところの典型的なウエスト・コースト・ロックがこの曲で、シンプルなリズムが湿度の少ない爽やかさをかもし出します。それでも辛辣な歌詞(老いた金持ちに囲われた若い女性が、「真実の愛」を感じた若い恋人との間で揺れると言う話)との落差に驚いた覚えがあります。こちらは全米#2。 メンバーの中では一番の年上でありながら、童顔のせいでそうは見られなかった、ランディー・マイズナーも"Take It To The Limit"で、朗々たる歌声を聞かせます。このカントリーっぽいメロディーの曲を引き締めているのは、ヘンリーのシャイロウというバンドを組んでいたジム・エド・ノーマンがarrしたストリングスで、これがない多くのカヴァー(マイズナー本人の度重なるセルフカヴァーも含めて)では、妙に間延びした感じに聞こえます(これは好みですが)。これは全米#4。 と、カットされた3枚のシングルはすべてヒットし、三者三様のヴォーカリストの存在を浮き彫りにするという、スケールの大きさは、西海岸限定ではなく、全米的な人気のバンドに成長する予感を感じさせます。 もちろんシングル以外にも名曲は多く、フライ=ヘンリーがvoをわけあう、"After The Thrill Is Gone"、バーニー・リードンのsteelが印象的なゆるやかなワルツタイプの"Hollywood waltz"などは忘れられません。 そうそう、バーニーのことを書かなくては。フェルダーがバンドに馴染むにしたがって、並々ならぬプレッシャーを感じていた(らしい)リードンは、次第に音楽的に孤立するようになり、しまいには脱退という事になるのですが、ここに収められたリードン主導の2曲もそれがはっきりとわかります。 デイヴィッド・ブロンバーグ(fiddle)が参加したブルーグラス色の濃いインスト"Journey Of Sorcerer"は、ひょっとするとメンバーは誰も参加していないのでは?と思わせるくらいタッチが違います。僕的には壮大な失敗作と思うのですが、どうでしょう?(もちろん好みです) もう1つ、ラストに収められた"I Wish You Peace"は、ポピュラー・ヴォーカル的なバラードで、いい曲ですがこれまたイーグルスらしくないです。当時のGFだったパティ・デイヴィス(レーガン元大統領の娘)との共作で、ヘンリーはデイヴィスの名前がクレジットされるのを嫌って、この曲のことを"I Wish You Pee"と呼んでたとかそんな逸話も伝わってきます。
本編では抑えてます(ほっとくと全曲解説しそうなんで)が、フェルダーが唯一歌った"Visions"、ランディーとフェルダーと言う珍しいコンビによる"Too Many Hands"もいい曲です。あと"Hollywood Waltz"では共作者にバーニーの弟で、シルヴァーのトム・リードンがクレジットされてます。
それから"魔術師の旅"についてですが、wikipediaにこんな記事がありました。
英BBCラジオで78年から1年間OAされたダグラス・アダムスの「The Hitchhiker's Guide to the Galaxy」(銀河系ヒッチハイクガイド)の中でこの曲がテーマ曲として使われたそうです。このSFコメディーはその後映画化されていますが、そんな話は全く知らなかったなあ。
>ラストを優しく切ないバラードで締めて余韻を持たせるのも、
例えば「Hotel Calif」の最後"The Last Resort"は、フロンティア・スピリットの名の下で、ネイティヴ・アメリカン(インディアン)が居住地を追われた話を念頭に置きつつ、楽園を求めて西へ向かったかつての開拓者たちが、最後にたどり着いたカリフォルニアは、最後の楽園ではないのだよ〜というような警告的な歌詞を甘美なarrで聞かせる名曲ですが・・・長くなるのでやめます。
"One Of These Nights"に関して言うと、当時のSoul Musicを彼らなりに解釈してみせたものでしょう。16beatのギターカッティングにしても今まであまり聴かれないモノだったし。ソロになってからグレン・フライはもろにアル・グリーンぽい曲やってましたし。
ウエストコーストサウンドの分岐点ですかね。