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オリバトコミュ【第四部】コミュのshort story.4〜song remains the same『永遠の詩』〜

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2.blue baloque(・u・)
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10.のりくん
11.へなちョコヲ
12.まっく
13.いちーこォ
14.もりし( ゚Ω゚)
15.天体観測☆彡

コメント(16)

午後8時。


狭い階段を地下に降りたその先。

ドカドカうるさいロックンロールバンドの歌声がさっきから流れ続けている。

薄暗い室内は、気が付くと人で溢れ返っていた。



周りを見ると、皆どことなく恍惚として、それでいて目はランランと輝いている。

これから目の前で起こる出来事への期待感なのか、それとも単純に騒ぎたいだけなのか。

ちょっと浮かれて、そしてイカレた顔ばかりだ。





「…オイ!何ぼーっとしてやがんだよ!」


「…あぁ、まぁね」


「ったく、せっかくのゴキゲンなライヴなんだぜ?!もっといい顔出来ねぇかなぁ」




僕をここに連れてきた張本人、ジョーイ。
会場の中の誰よりも幸せそうな顔をして、彼は叫ぶ。


「さぁ、聴かせてくれよ、お前らのメロディを!」

【ジョーイ/ブローイン・イン・ザ・ウィンド(3部)】
風を操るスタンド。




…ふぅ。

何でこの人は、静夜くんじゃなくて僕を誘ったんだろう。

人がいっぱいいる所は、あんまり好きじゃないんだよなぁ…

【揚蝶 純/バタフライ・キッス(3部)】
常識で考えてありえない事を起こす。





客電が、落ちる。
BGMが、変わる。

ストラヴィンスキーの「火の鳥」だ。

「さぁ、始まるぜ!」



一瞬の静寂。



次の瞬間、耳をつんざくようなフィードバック。
そして、物凄い勢いで駆け上がるフレーズ。

湧き上がる歓声が、ステージ上の男を更に高みへと押し上げる。

【SETO/サウンド・オブ・ミュージック(3部外伝)】
観客の歓声を無限のエネルギーに変える。



ライヴが、始まった。


収容人数50人程度の、小さな地下のライヴハウス。

この後に起こる事など、この時はまだ誰も知る由もなかった…



【OSBss第4話〜song remains the same『永遠の詩』〜】


ライブハウスでは音楽は耳で聞くものでなく、全身で感じるものだという。

それがどういうことなのか、純は瞬間に理解した。


衝撃!
熱風!
爽快!


ジョーイさんが熱心になるのもよく分かる。

破壊的な、疾走感。
弾劾的な、威圧感。
戦慄を奏でる、爆音。
旋律を奏でる、響音。

悉く全身をシェイクする。
破裂にも似た、魂の叫び。
火の鳥の羽撃きにも似た、焔の情熱。


鋭いギターの早弾きは、速さの限界に迫ろうとする灼熱の光速域。
重々しく鼓動を刻み、パワーで何もかもを弾き飛ばすベース&ドラム。
唸り号するその歌声は、血液すら沸騰するような熱さに満ちている。

そして、場を揺らすような歓声。
儀式にも似た熱狂が、自らの心身に染み渡るかのような、情熱の演奏(パッション・プレイ)。



何もかもが、絶している。


純はいつのまにか、そのギグに魅入られた。
まるで呼吸すらも忘れた赤子のように、その音楽に身を委ねている。

ジョーイがそんな純を見て、ニヤリと笑う。


「あのヤロウ、プログレッシブに磨きをかけたやがったなッ……!」


本来、ジョーイとSETOの愛する音楽性は違うところにある。
しかし、ジョーイはSETOの音楽を否定しない。

音楽に、境界などない。

いつか、己の魂を賭けたセッションで、ジョーイはそのことを悟った。


クラシックをロックにアレンジした、新しい形の、新時代のロックンロール!





あらゆる音に包まれながらジョーイは、ある一つの決心をした。

このライブならッ!
今こそ風を吹かせるときだアッ!!


背中に背負ったギターケースをアクロバティックに下ろす。
中から華麗に取り出されたのは、一本のエレキギター。

フェンダースペシャルモデル・ウィンドストリングス。

カタログモデルとは異なり、最高の素材と技術で作られた逸品…!
ジョーイ・ジョバァーナが生涯の貯金全額を使い果たして作り上げたオンリーワン・ギター!!


熱狂する群衆をモーセの如くッ!

ジョーイの魂をこめたサウンドが、波分けるように響き渡るッ!!


「再戦といこうぜ、SETO」

不敵にジョーイが笑う。
何もかもを吹き飛ばす、騒々しい風(おと)を吹かして。



「テメェの音楽に、このオレが黄金の嵐を巻き起こしてやるぜッ――!!!! 」



今ここに、伝説の夜の幕は開かれる。

幾人ものアーティスト達が魂を賭けて、音せめぎあう戦い(ライブ)が、今!始まる――!


響く爆音の中、純はあっっけにとられて無音の中にいた…。
『あの人は何をっ!!』




会場SP達を殴り飛ばしながらステージにあがるジョーイ。
ざわめくオーディエンス。
不敵な笑みを返すSETO.
方向性は違っても『音』を『楽』しむ二人に言葉はいらなかった。
このセッションは仲良しこよしの『調和』ではない!!!
そう、これは『破壊』と『創造』!!!
そしてそこには、熱が生じる。
その熱風に中てられた観客たちは熱狂の渦に飲込まれた!!!


ただ一人の少年を除いては…。


『あの人は何をしているんだ!?と、いうよりもこの空間、なんなんだ??ステージ上に突然乱入した男をアーティストも客も、殴り飛ばされたSPの人さえも受け入れてるっ!!会場が一つになって、海みたいだ…。』
「うっ…、気持ち悪い。」
会場の熱気に中てられて酔ってしまう。
ライブ会場などに慣れていない初心者にはよくあることだ、まして純はジョーイの予想外の行動で完全に覚めていた。
ステージに客が押し寄せた分、後方にスペースができていた。
純は、そのスペースで壁によりかかりステージを見遣る。
ため息を一つ。
「あの人、もうこっちには帰ってこないよなぁ。」
そして、観客の波を見遣った。
「…なんで僕連れてこられたんだろ?」
帰るという選択肢もあるのだが、これを選ぶと確実に後で何か言われるだろう。そんな無駄な争いごとしたくない。
純は時計を見た。

午後9時半。

あと少しすれば叫宴も終わる。
純は、あと少しこのイカレた空間に身を置くことにした。




ステージ上、ジョーイはまるで最初からそこにいるのが、当たり前であるかのように一体になっていた。
ジョーイに殴り飛ばされたSPでさえもその存在を受け入れて熱狂に身を興じていた。
ジョーイとSETOによって創造された音空間は人々を一体にして新しい生命体のような鼓動を響かせていた。

「海に龍が生まれた…。」
一歩離れた所で見ていた純はポツリと呟いた。
自分でも無意識に呟いた言葉。
純はドキドキしていた。
そして、覚めていた心がまた、麻痺しようとしていた。
だが、心が痺れきるにはなにか違和感があった。
その違和感に




      純は



          気がつく
うねる会場の龍の前に、少女が独り立っていた。
あまりにも、小さな存在で見落としてしまいそうな少女。
一体となった会場で、ただ独り覇気無く存在する少女に純は違和感を感じていたのだ。
少女は純の方を見て少し微笑むと、龍の中に呑まれていった。
「あ、ちょっと…。」
純は少女を追って、龍の腹に入っていった。
ステージ場、感極まったジョーイが叫ぶ。
「お前らぁ!今日は伝説生んでやるぞ!!!」
うぉおぉぉオおぉおおおぉぉぉおおぉぉぉぉおおおお!!!!
龍が雄叫びをあげる。

うおぉぉぁぁぁぁああああ!!!!!
ああぉぉぉぅぅううううぉぉおおおぁぉぉ!!!

轟音がうねり、ぶつかり、押し寄せ、勢い付いて走っていく。


純は呑み込まれていった少女の腕を掴もうとするが、
小柄な少女の方が小回りが利く所為かなかなか追いつけないでいた。

ライブハウス自体は、それほど広くないはずだが…??


「ねぇ、ちょっ…と、ま!」

はしっっ!

冷っとした、小さな手。
客側の照明は落ちているから本当はどうかわからないが、きっと真っ白い。
…その手に、純の手首は捕らえられた。
追っていた方向とは約90度違う角度から、細い腕が伸びている。



『ちょうちょ…すきなの??』


何故か、背を冷や汗が伝う。

『ちょっと…かしてね』


嵐を遮断していた空気が一瞬で溶け出し、耳に爆音が戻る。
少女から純への、一方的な接触。

「な…なんだったんだ?」
純は再び少女を追うことはなく、呆然としていたが
またすぐジョーイとSETOの音に刺激され全身を衝撃が駆け巡る!!

ふと彷徨わせた目で、寄せ沸く龍を器用に受け流しながら少女が人壁の向こうまで抜けるとこを視界の端に捕らえたが、
その後はもう純自身が龍に巻き込まれ、熱気で何がなんだかわからなくなっていった…。

純は、群集にもまれながら考えていた。
少女が、蝶と戯れる。
そのあまりに自然な情景の中にあった、一つの違和感に気づく。
「あの子・・・何故『バタフライ・キッス』が見えるッ!?」

−−

熱気を増す会場。
それはバックステージで次の演奏を控えるバンドも同じだった。
「筋肉全裸隊」のメンバーは控え室で会場の映像を見ていた。
「やべーよこれ・・・すげーアガッてんじゃん。」
「前座のくせにわけわかんねえ。ちくしょう・・・。」
伝わってくる高揚。しかしそれは彼らにとっては恐怖でもあった。
「お、俺らの盛り上がんなかったらどうしょー・・・・。」

突然、一人モニターに背を向けていた男が立ち上がる。
「コルァ!ビビッてんなら今すぐタマ切り取って田舎に帰りやがれッ!」
「うっ・・・すまねえ・・・。明くん。」
「ケッ。便所行ってくるわ。」
そうはき捨てると男・・・音石明はそのまま控え室を出て行った。

【音石明/レッド・ホット・チリ・ペッパー(原作第四部)】
電機を操るスタンド。

「あのクソバンド全員の〜お袋を〜〜殺してやるぅ〜〜♪」
鼻歌まじりに手を洗う音石。
「おにいちゃん。わたしもうたっていいかな?」
ルンルンだった音石の顔が一気に青ざめる。
「な、なんだてめえ!?いつからここに・・・」
「おにいちゃん」
音石の言葉を遮り、少女は言う。

「うたっていい?」

−−


ブツン


大きな音と共に真っ赤な照明と爆音が突然途切れる。
代わりに暗闇と静寂が会場を満たしていく。
「停電・・・? ッ!?」
その暗闇と静寂は、間を置かずして打ち破られる。


『Un bel dì, vedremo
levarsi un fil di fumo
sull'estremo confin del mare』


唄とともに青い光の照明が会場を満たす。天を仰ぐジョーイ
「これは・・・?女の声だ。一体どこから・・・?オイSETO!」
SETOはギターを持ったまま、わけがわからない、といった表情で自らの身体を見ていた。
青く光る、自らの身体を。
「な、なんだ!?おいSETOッこれは一体・・・・なっ!?」
ジョーイは会場を見渡し、驚愕する。
会場の観客全員の身体が青く発光している。そして、自分自身も。
青い光は照明などではなかった。「自らが光っていた」のだ。


『E poi la nave appare.
Poi la nave bianca entra nel porto,
romba il suo saluto.』


1人2人とフロアに倒れていく会場の客。それに続いてジョーイも膝を落とす。
「クソッなんだこの感覚は・・・身体と魂を2つに裂かれるような・・・・」
ジョーイは、自らの魂・・・「ウィンドストリングス」を強く握り締めた。

−−

純はバックステージを走っていた。
「感覚を研ぎ澄ますんだ・・・少女の行方はわからないけど、『少女が連れて行ったバタフライキッス』の位置はわかるはずだ!」

『Vedi? È venuto!
Io non gli scendo incontro. Io no.
Mi metto là sul ciglio del colle e aspetto,
e aspetto gran tempo
e non mi pesa,
la lunga attesa.』

そして歌声が、純にも聞こえ始める。
「これは・・・『Madame Butterfly』・・・・?ハッ!」
突然、トイレの前で急停止する。
「あれは・・・人・・・?倒れているぞ!大丈夫ですか!?」
あわてて人影に駆け寄る。そしてその姿を見た純の背中に氷でなぞられたような恐怖が走る。
「こ、これは・・・・」
ジジジジジ・・・


トイレの前のうす汚い蛍光灯が点滅している。


蛍光灯が消えた瞬間だけ、倒れた男の身体がぼわんとにじみ光る。

男はうつ伏せに倒れており、ぐっしょり濡れた派手な衣装と、
髪型がべしゃっとつぶれ弾けたように広がっていたが、
一箇所だけ見慣れぬ、不可思議なものが純の視線を奪っていた。



「こ…これ、髪の毛・・・じゃあないよね・・・・・・・・・『 触 覚 』!?」



その太く光沢のある2本の黒い線は、
蛍光灯の点滅によってコマ送りの映像を見ているかのように蠢いていた。



「は、流行ってるのかな・・・ハハ・・・
 
 それよりッ!あなた大丈夫ですか?!」



純はその不可解さを飲み込み、状況にできるだけ対応する
理性的人間として行動しようと努め、男を抱き起こそうとした。
男の身体は驚く程冷たく、また血が通った脈々とする生気が感じられなかった。


「あ・・・あぁ・・・、チ・・・リ・・・ペッパ・・・ァ・・・ホタ・・・ル・・・」


男の顔には額から目、頬にかけて稲妻のようなメイクが施されていたが、
トイレの水道から溢れた水のせいであろうか、
その化粧は流れ落ちはじめ、あたかもピエロの様に男の瞳に涙を彩らせていた。



「え?!え?!なんです?!尻ペン太踊る?!」



がくっ



男が首をうなだれた瞬間、ところどころ電気が通っていた蛍光灯や幕裏の計器類から灯が消え、
あたりで光っているのは気を失った男の身体と、
暗転中に通路を確認するための蓄光テープの点々とした頼りないものだけが存在し、
それが返って少し前からあたりに漂っていた甘い匂いを純に気づかせた。



「尻ペン太・・・・・・

 ってあれ?なんだろうこの匂い・・・スイカ・・・?

 こんな季節外れに?」

 



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【ホタル】wikiより参考引用
多くの種類の幼虫は森林で生活し、土壌動物の捕食者として分化している。
ゲンジボタルやヘイケボタルなど水生の種では、幼虫・成虫ともに水草やスイカのような香りがある。

成虫になると水分を摂取するだけで、ほぼ1-2週間の間に、幼虫時代に蓄えた栄養素のみで繁殖活動を行う。

夜行性の種類ではおもに配偶行動の交信に発光を用いており、光を放つリズムやその際の飛び方などに種ごとの特徴がある。

極端な例では以下のような種類もいる。

・一方の性のみ発光する。
・他種のメスをまねて発光し、そのオスをおびき寄せて捕食してしまう。
・オスが一か所に集まり一斉に同調して光る。


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「ちょうちょ・・・マーマ待って・・・わたしの・・・パパ・・・どこ・・・?」


本体/ルシオーラ
スタンド/オールドロングシーンス(古き昔の為)
能力/発動能力圏内の『オス』をホタルに変える


少女は真っ暗な建物の中、季節外れの母と呼ぶ蝶を追いかけ、闇に溶けた。


突然の出来事に頭の中が真っ白になる。


少女の歌声、衰弱しきった男、いきなりの停電。
立て続けに起こる事態に冷静になる方が不可能だった。

「何なんだ一体………停電!?それに……」


純は青く光る男の体を見つめた。


(光ってる……それに体がかなり冷え切ってる………)


「大丈夫ですか!!……と、とにかく誰か呼ばないと!!」

自らの上着をとりあえず男に被せると、
男をトイレに残し、再び会場へと引き返した。



薄暗いバックステージを走る一つの足音。

純は走りながら先ほどの少女の事を考えていた。


(バタフライキッスの気配が………消えた…!?
……いや!今はとにかく誰か呼びに行かないと!!)


「もうライブも終わる頃だ!ジョーイさん……」


ハァ…ハァ………ガチャリ。

ギ…ギギギ……


古い扉が音を立てて開く。


「誰か!!とにかく誰…………!!」

純の瞳に先ほどまでの熱気まったく異なる光景が飛び込んで来る。


「……な!なんなんだ!!何なんだよ一体!!」



そこにある光景は衰弱し青く光る『オス達』と、
いきなりの事にパニックになる『メス達』の鳴き声だった……


泣きじゃくる『メス』……我を忘れ叫ぶ『メス』……オスの名前を呼ぶ『メス』……


しかし、その中に周りの『メス』とは違う『メス』の姿があった……


混乱する客席の中にただ一人ただ立ち尽くしているのは、
一糸纏わぬ生まれたままの姿の、病的なほどに華奢な、先ほどの少女…

その長い髪は青白く発光している…

憂いをおびた表情を浮かべこちらを向いている…


は…はだかァ!?
そ…それにおかしいぞ?
確か彼女はさっきバックステージの方に…
そういえばさっきも後ろを追っかけてたハズなのに横から腕を掴まれたし…
いったい…!?

そ、それにしても……キレイだ…


その悲しいほどに美しい姿に、
時が止まったかのように、瞳奪われる純。


少女はゆっくりと方向転換、純に背を向ける。

「……羽?」

少女の背中には薄紫の羽虫の羽のようなものが生えていた。
半透明… もしかして、スタンドだったり?

その羽がはばたくと、ブン…と音を立てる。

なんだろう… なんだかこの音が、心地よい…





「…ソノ音ヲ聞クンジャネーゾ… ボーヤ!」

背後から声。
振り向くとそこには小さい奇妙な生物が立っていた。
身長は30cmくらい。バッテリーみたいなのを必死で抱えている。
頭からは触覚、くちばし状の口、全体は白金色に輝いているがお尻の部分だけ青白く光っている。
そしてなにより、ボロボロに傷ついて衰弱してるような感じだった。

「俺ノ名ハ…ソウダナ。
 ホタル・チリ・ペッパー…トデモ呼ンデクレヤ。
 コノ充電バッテリーデナントカ動イテルンダカラ、奪ッタリスンジャネーゾ…」


…何を言ってるのかよく分からないけど…?

「コノ音ニ気ヲツケロッテイッテルンダゼ!
 耳ヲ塞ギヤガレ!」

ホタル・チリ・ペッパーと名乗る奇妙な生物が怒鳴る。
ひとまず耳を塞ぐが、こいつは何者なんだ?
この異常な状況の中、敵なのか?味方なのか?

「説明ハ後ダ。
 ミンナアノ音ニヤラレテコノザマダ。
 ソレニ奴ニハマダ謎ガアル…
 トリアエズ逃ゲルカ…

 …戦ウカダナ。」


戦う…だって?
相手の事も、こいつの事も分からないのに?
何よりこの異常な状況について、僕は全然分かっていないっていうのに。
…そうだ、ジョーイさんはどこに行ったんだ?

今一つ状況がつかめていない中、チリ・ペッパーは僕に聞いてきた。


「トコロデボーヤ、オ前ハコノ俺ノ姿ガ『見エテル』ンダナ?」


… 見 え て る ?


「…あぁ、まあね」

「ナルホドナ。オ前モ『スタンド使イ』ッテワケダ」
言うとチリ・ペッパーはニヤリと笑った。

「前々カラ『スタンド使イハヒカレ合ウ』トハ聞イテハイタガ…杜王町以来ダゼ。コンナニ見カケルノハヨォ」

「こんなに?…他にも見かけたっていうのかい?」

「アァ、モニター越シダケドナ。アイツラ、前座ノクセニスゲー音出シテヤガッタナ…マ、俺ノ『エイトフィンガー・トーキング・ギター』ニャカナワネーケドナ」

「ちょ、ちょっと!それってジョーイさんの事?ジョーイさんがどこにいるか知ってるの?」

「イッキニマクシ立テンナ。俺ダッテヤット少シ見エテキタトコロナンダヨ」
チリ・ペッパーは肩をすくめる。
「ソレニ、今ハアイツヲブチノメス方ガ先ダ」



振り向くと、少女の周りにはいつの間にかオスが集まり始めていた。
さっきの羽音に、近くにいた連中が引き寄せられているようだ。

少女は近寄って来たオスを抱きしめる。

そして…



「!」

「何テコッタ…奪イ取ッテイヤガル」


少女に抱きすくめられたオスがひとり、またひとりと打ち捨てられていく。
倒れたオスは僅かな光さえも失い、ピクリとも動かない。

立ちすくんで遠巻きに見ていたメスの一人が、悲鳴を上げた。
それが合図だったかのように、会場にいたメスは全て逃げ出してしまった。


…少女ひとりを除いて。


交わるような抱擁を繰り返した後、少女の半径3m以内のオスは全て倒れていた。


…一匹のオスと、一人の少年を残して。



「…近付イテ来ルゾッ!オ前ノスタンドヲトットト出シヤガレッ!」
「さっきからいないんだ…あの娘に触られた時から」
「何ダト?!ダッタラ逃ゲルシカネージャネーカ!サッサト言イヤガレッテンダ!」

…無茶苦茶だ。
しかし、この狭い地下の中、逃げるって…どこへ?

「…アッチダ」


・・・

わたしの名前は、ルシオーラといいます。

やさしいマーマと、一緒です。

ううん、間違えた。『一緒でした』。

パパはどこにいるのかわかりません。

マーマはいっつも胸にキラキラのちょうちょをつけてました。

でも、突然マーマはいなくなりました。

ううん、間違えた。『私がいなくなってしまいました』。

おうちがどこだかわかりません。

私のおうちの周りにはたくさん「ほたる」がいます。

ここにも「ほたる」がいっぱいいます。

『ここは私のおうちです。』

ちょうちょもいました。マーマもいます。

・・・

彼女は、蝶を象ったアクセサリーをいつもつけた優しい母と暮らしていた。

生まれつきのスタンド使いであった彼女は、生後間もなくして父をホタルに変えた。

母はそれについて何も言及することはなかった。

気付くと、彼女は知らない土地にいた。事実上、捨てられたのだ。

彼女の周りに近付くオスは皆ホタルになってしまう・・・

『化け物だ』と言われた。

何年か、何十年に一度だが…天然記念物であるホタルが大量発生する年がある。

原因は分かっていない。

彼女は家を探している。母を探している。

「ほたる」、「ちょうちょ」…

幼い彼女は自制心を無くしていた。
「ほたる…いっぱい…ここは…おうち……?」

何事か呟く少女を背に、薄暗いライブハウスの中をチリペッパーの光る背中を追って走る。
ホタルに変えられた『オス』達の明かりが手助けをするなんて皮肉なものだな、と純は漠然と考えていた。

「ココダッ!」

「ここって…計器パネルで何をしようって言うんだ!?停電になってるんだからこんなものをいじったって何にもなりはしないよ!」

両手を計器パネルに貼り付けて純は思わず叫んだ。
彼女はきっと自分を追ってくる。
さっき打ち捨てられていた『オス』の有様を見ればわかる。
あれはなんらかの方法で、あるいはそういう能力なのかもしれないけど『オス』のホタルからエネルギーを奪い取って…

「奪い取って…何をするんだ?」

「知ルカ、ソンナコト!!早クソイツヲ壊セ!モウ…尽キル……」

はっとして振り向いたチリペッパーはバッテリーを落とし、光を失って黒ずんでいた。

「だ、大丈夫なのか!?」

「ソンナワケ…ネーダ…ロ…ハ…ヤク…」


バギャアン!


「良くわかんねーが、これでいいのか?純、なんだそいつは?」

「ジョーイさん!!」

派手な音に純が振り返るとジョーイが誰の物かもわからないベースで計器パネルをブン殴って破壊していた。
哀れなべースを放り投げたジョーイは、

「可哀想なことしたが…ま、仕方ないな」

と呟いて計器パネルから離れる。
破壊されたそれはショートし放電を始め、バチバチと音を響かせた。
と、突然チリペッパーが輝きを取り戻す!

「イイィィイヤッハァーーーッッ!!」

辺りを目にも止まらぬ速さで飛び回るチリペッパーを見て純は目を丸くする。
そして、ある考えに辿り着いた。

「電気をスタンドエネルギーに変えた…?他のエネルギーを…自分の目的に…」

「おい、どうした、純?…ッ!」

考え込む純の肩をジョーイが掴む。
その先に、青白い髪を揺らして少女がゆったりと歩いて現れた。

「ちょうちょのお兄ちゃん…マーマは…どこにいるの?…おうちの…どこにもいないの…」

「マーマダトォッ!何寝言行ッテヤガル!!コノチリ・ペッパー様を舐メタ ツケ ハ、キチット払ッテモラウゼ!!スッ飛ビナッッ!」

電気を取り入れ、輝きを取り戻したチリ・ペッパーがルシオーラに蹴りをいれる
その速度は尋常ではなく、まさに一瞬
純とジョーイが気がつく頃には少女はステージの奥へと吹っ飛んでいた


「ッな!!」

純がとっさに少女が飛んでぶつかった壁を見る
だが、薄暗いこのライヴハウスの中では状態がよく伺えない

「おい!テメェ何やってんだよ!!」

ジョーイが思わずチリ・ペッパーに殴りかかった



  ブン

「!?」

「ククク、当タラナイネ。前座のジョーイ君…ダッタカナ。」
「ぜ…野郎!出演者かッ!?舐めてやがるな!!」

「ちょっとジョーイさん待って!違うんです!!彼は敵じゃない!」

さらにスタンドで挑もうとするジョーイを純が制する

「うるせェ!敵じゃなくても俺はこういう輩は好かねーんだッ!いきなり女を蹴りやがった!!」
「へ、ドコカノツッパリ野郎ニヨク似テヤガル。ムカムカシテクルゼ。甘チャンガ。」
「んだとッ!」

「いい加減にし…………ッ!!!」


二人を止めようと純が叫んだその時

彼の視線はを捕らた




『ルシオーラ、ほらごらん。ホタルだ。』

『綺麗だろう?あれは誰かを呼んでいるんだよ。』


『もしルシオーラが迷子になったら、パパがあんな風に合図するよ。そしたらルシオーラはパパ目掛けて飛んでこれるだろう?』


『あなた、まだこの子にはわからないわよ。』


『だってお前、ほら… 笑ってる 』

『あら…』





ステージの奥に浮かび上がる青白い光り

「マーマ、パパはどこ?ルシオーラを待ってるの…。」

少女の髪はより強力に発光する

「パパの光はまだ見えない。だからルシオーラが照らすわ。」

「…バタフライ・キッス?」

少女の周りを蝶が飛びまわる
その羽からこぼれ落ちる鱗粉が、少女の光に照らされて青白く輝いていた


「野郎、マダ動イテヤガル!」
「待って……!」

バタフライ・キッスを見つめる純


「それがお前の意思なのか…バタフライ・キッス……。」

蝶の羽とホタルの光がキラキラと輝くステージ
少女の 歌



…少女?

「違う これは大人の女性の声色だ」
「SETO!?テメェ今までどこでくたばって……!」
「しッ……!」



歌声 優しい呼びかけ

声がするのは

ステージに舞う蝶々


「……マーマ。」

「オイ!お前…あれ、お前ェの蝶なのか…??」

「そうですよ、ジョーイさん。」


飛び交う蝶から鱗粉が降り注ぎ、ステージ上全体が淡く輝いている。
歌声と、姿が、段々とはっきり形になっていく。


E uscito dalla folla cittadina,
un uomo, un picciol punto
s'avvia per la collina.
Chi sar?? chi sar??




「マーマ!!」




E come sar? giunto
che dir?? che dir??
Chiamer? Butterfly dalla lontana.



壁際、チリペッパーに飛ばされうずくまっていたであろうルシオーラが
再び立ち上がり輝きを増した。

少女は母親を求めている。
小さい手を伸ばせず、ぎゅっと握り締めて
目を見開いて
力いっぱい叫ぶが、母親の元には届いていない。

いや、母親には…





青白く鱗粉を纏い輝き、ルシオーラを丁度成長させたような『マーマ』

愛しい人を思うように
少し頬を高揚させ
しかし、寂しげに

彼女は歌う。



「マーマ…」



視線は何処か、遠く
見下ろす様に

ルシオーラのことは
決して…見ない。




見えない。





オスから、ありたっけ奪い取って
僕のバタフライ・キッスも使って

こうやって君たちは、ずっと求めてきたのかな。
向き合えないままで…
探しものがあるんだよね。


「貸してあげるよ。」

バタフライ・キッスの力があれば…思いもよらぬ事が起こるからね…


ルシオーラは現れた母親を求め叫ぶ………


母親は主人を求め唄う………




「マーマ!!マァーマッ!!」



母親を求め叫ぶ少女の瞳から大粒の涙が溢れ出す………

「マァーマァッ!!……マ…マーマ……」



それでも彼女は主人を求め唄い続ける………

「……マァー……マ…………」



やがてルシオーラは力無くその場に座り込み決してこちらを見ることの無い母親を見つめる……


ブ……ブン…ブブン………


「………お、おい!様子が変だぞ!!」

周囲の異変にジョーイが気付く。

放心状態のルシオーラから再び羽音が鳴り、光りを失ったはずのオス達が痙攣をしながら再び光り始める。



「おい純、異常すぎる!!これ以上は待てねぇぞ!!あの鱗紛を吹き飛ばす!!」
「待ってください!!様子が変なんです!!」

叫ぶジョーイの前に純が立ちはだかり制止する。

「何言ってんだ!!変なのは判ってる!!」

ジョーイがスタンドを発現し風を集めようと構えをとる。


「違うんです!!彼女の…彼女の様子が変なんです!!」

純がそう言った瞬間にルシオーラの体から光りが奪われていく……
そして反対にオス達には光りが戻っていく。


オス達から放たれる光りが段々と強く、大きく輝き始める……


「ナンダ!?オイ!!ドウナッテンダ!?」
「俺に聞くな!解る訳無いだろ!!」

チリペッパーとSETOは状況を掴めぬまま慌てふためいている。


やがてオス達の光りは一つに集まりさらに強い光となり形を作る。


「……ひ……ひと…?」

純が思わず口にしたそれは確かに人のような形になり光っていた……


「…なんだッ?!スタンドが出ねェッ!!」
スタンドを発現しようとしていたジョーイが当惑したように叫んだ。

「お前もか…さっきから『サウンド・オブ・ミュージック』を感じないんだよ」
SETOも同調するように呟き、首をかしげる。


「ナルホドナ…ヨウヤク奴ノ仕組ミガ見エタゼ」

「何だとッ!どういうことだッ」
ひとり頷くチリ・ペッパーに向かい、怒鳴るジョーイ。


「ソウ喚キタテンジャネーヨ。
 …俺達『スタンド使イ』ハ、アノガキノ前デハソノ能力ヲ奪ワレル。
 恐ラクソウイウ事ナンダロウ。
 オ前ラモアノ『羽音』ヲ聞イタダロ?」

「確かに停電した時、歌声の後ろで微かにそんな音がしていたな」
ハテナマークが顔に貼り付いたジョーイをよそに、SETOは思い出していた。

「俺ハアノ時ガキニ直接触レラレタ。ソレデ本体ガ影響サレタ、ッテトコカ。
 デ、全テノ触媒ハ…ボーヤ、オ前ノチョウチョダヨ」
チリ・ペッパーは苦々しげに純を見た。


「…オイ、聞イテンノカヨ、ボーヤ!」
「しっ…よく見て」


一連の会話が耳に入らないかのように、純はステージを凝視する。
いつの間にか彼のそばに蝶が一羽だけ、舞っている。


「今、彼女はようやく求めていた風景に巡り会えたんですよ」



「…パ……パ?」

バタフライ・キッスが生み出した『マーマ』が寄り添う、人のカタチをした光。
その光に向かい、ルシオーラは不思議そうに問いかけた。

「パパ」と呼ばれた光はその時、確かに微笑んだ。
少なくとも、純にはそう見えたのだ。


「マーマ」と「パパ」が、ルシオーラの手をとる。


「…おい、電気野郎!さっさとこっちに電気を寄越しやがれッ!」
気が付くと、ジョーイとSETOがギターを抱えていた。

「ウルセー、俺ニ指図スンジャネーヨ」
悪態をつきながら、チリ・ペッパーは2台のマーシャルに灯を点す。


「…送り火、ってとこだな。さぁ、聞かせてみろよ、お前らのメロディを!」

ジョーイとSETOのツインギターが織り成すハーモニー。
ギグで激しくバトルを展開した二人が、ここでは優しく包むようにルシオーラと「マーマ」の歌のバックを務めていた。


『Vedi? È venuto!
Io non gli scendo incontro. Io no.
Mi metto là sul ciglio del colle e aspetto,
e aspetto gran tempo
e non mi pesa,
la lunga attesa.』


メロディがクライマックスを迎えたところで、ルシオーラが再び発光する。

「!」

あまりの眩しさに、思わず目を閉じる純。
その刹那、純の体を何かが突き抜けた。


「ちょーちょのお兄ちゃん、ありがとう」
純は確かにその声を、聞いた。



−−−−−−−−−−

午後11時。

喧騒が、戻ってきた。


ステージ上では「筋肉全裸隊featuringジョーイ&SETO」によるアンコールが繰り広げられている。
音石の殺人的ノイズ、SETOの流れるようなクラシカルなフレーズ、ジョーイの旋風の如きフィードバック。
さっきまでの事が、まるでなかったかのように続く3人のバトル。

惚けた顔をして、純は後方から一人眺めていた。



不意に演奏が止まる。ジョーイが叫んだ。
「聞いてくれよ!この場所に宿る永遠の詩だ!」

ニコリとSETOが頷く。そして、純に向かってウィンクをした。


…あの、メロディーだ。


ヒラリ、蝶が舞った。





ss第4話【完】

「MadameButterfly(蝶々夫人)」

Un bel dì, vedremo
levarsi un fil di fumo
sull'estremo confin del mare.
E poi la nave appare.
Poi la nave bianca
entra nel porto,
romba il suo saluto.

Vedi? È venuto!
Io non gli scendo incontro. Io no.
Mi metto là sul ciglio del colle e aspetto,
e aspetto gran tempo
e non mi pesa,
la lunga attesa.

E uscito dalla folla cittadina,
un uomo, un picciol punto
s'avvia per la collina.
Chi sarà? chi sarà?
E come sarà giunto
che dirà? che dirà?
Chiamerà Butterfly dalla lontana.
Io senza dar risposta
me ne starò nascosta
un po' per celia
e un po' per non morire
al primo incontro;
ed egli alquanto in pena
chiamerà, chiamerà:
"Piccina mogliettina,
olezzo di verbena"
i nomi che mi dava al suo venire.
Tutto questo avverrà,
te lo prometto.
Tienti la tua paura,
io con sicura fede l'aspetto.



ある晴れた日
海のは彼方に煙がひとすじ上がるのが
見えるでしょう
そして 船が姿が見せるの
真っ白の船が
港に入ってきて
礼砲がひびきわたるの

見える? あの方が帰っていらしたのよ!
でも私はお迎えには行かないの 行かないわ
向こうの丘の端に立って待つの
いつまでも 待つわ
いつまで 待っても
辛いなんて 思わない

そして 群集の中から
小さな点のように見える1人の人が
この丘を登ってくるの
だれかしら?だれかしら?
ここへ着いたら
なんて言うかしら?なんて言うかしら?
遠くからきっと「蝶々さん」と呼ぶわ
でも私は返事をしないで
隠れるの
からかうのよ ほんのちょっと
久しぶりに会うから
嬉しくて 死んでしまわないように
そうすればあの方は 少し心配になって
きっと呼ぶわ きっと呼ぶわ
「かわいい奥さん
美女桜の香りよ」
これはあの人がここに来た時
私につけてくれたあだ名なの


ぜんぶ この通りになるのよ
約束するわ
あなたは心配していればいいわ
私は 心から信じて 待っている


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