石炭酸のことです。クレゾールよりさらに古い時代の消毒薬でした。ジョセフ・リスター(1827−1921)という英国グラスゴー大学外科学教授が手術の時、手や傷の消毒に用いて感染を防ぎ、以後、使用されるようになったのは有名な話です。1880年以来、ロベルト・コッホら細菌学者によって病原菌が次々と発見されました。しかし同時に医師の手はフェノール(2%溶液)によって荒れ、うろこ状になりました。この問題を解決しれたのは1890年、米国ジョンスホプキンズ大学の外科医ハルステッドで、彼は薄いゴム手袋をグッドイアー・ゴム会社に作らせて手術の時に使い、以後、フェノールによる皮膚荒れはなくなったのです。正露丸の問題は、皮膚や粘膜への刺激性の他に、フェノールには発ガン性が証明されていることです。このような医薬品の製造・販売をまだ続けていていいのでしょうか。 (Boutwell R. K. and Dorothy K. Busch. The tumor-promoting Action of Phenol and Related Compounds for Mouse Skin. Cancer Research; Vol.19, 413-427,1959.)