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山行記・旅行記コミュの編笠山

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日時:2003年8月18日
場所:編笠山
メンバー:プースケ、F林

コメント(2)

今回の山行には9月に登る北アルプスに向けてのトレーニングという目的があった。そこで、観音平→編笠山→権現岳→観音平、というコースタイムにして9時間、標高差で1200mのなかなか歩きがいのあるコースに設定した。

しかし正直僕はこのコースを踏破することに若干の抵抗を抱いていた。久しぶりの登山で9時間歩けるかという懸念もあったし、何より悪天で展望が全く利かない中ひたすら歩き続けるのは精神衛生上あまりかんばしくない。それでも楽しみにしている角田さんの出鼻をくじくわけにはいかないと、僕はこの行程を歩ききることを覚悟した。

しかし今思えば角田さんも僕と同じ心境だったのではないか。僕たちは前日、確信犯的な寝坊をすることによって、予定通りの行程では日没を迎えてしまうから行程の短縮をせざるを得ないであろうという大義名分を作ることに成功した。もしお互いが行程短縮を望んでいたとしたら、ずいぶん回りくどい手続きを経たもんだ。なんか外交努力に通じるものをひそかに感じていた。


8月18日(月)
 登山口となる観音平までは車ではいることができる。観音平にはすでに7,8台の車が駐車していて登山の準備をしている人もいる。僕たちは準備を終えると、自動販売機が壊れているとか、じつはジュースなんかいらないなどの一悶着はあったが、早々に登山道に取り付いた。

歩き始めると行く手の樹林の中から人の話し声が聞こえてきた。今回は登山客が多く、終始人の影が感じられた。押手川の分岐までは非対称な尾根沿いの道を登る。山頂を見て左側の斜面は緩やかだが右側は切り立っている。30分ほど歩くと雲海と名のついた分岐地点に到着した。ここもやはり右側の斜面が切り立っていて、きっと条件のいい日にはこの場所から、その名の通り雲海が見られるのであろう。雲海には他の登山客が多くいたので、ちょっと登ったところで休憩を入れた。途中何組かのパーティーに先をゆずってから出発。

押手川分岐までは緩やかな登り。一時間くらい歩くと押手川分岐に着いたがここにも大勢の登山者がいた。やはりちょっと登ったところで休憩を入れた。道のほうは押手川分岐を超えたあたりから尾根沿いの道をはずれ斜面の急登にかわるから、休憩を入れるタイミングとしては妥当であろう。空は雲に覆われていたが微かに明るく、雨は降りそうになかった。ところが休憩中、山裾の方から突如ガスが湧きあがりあっという間に雨が降り始めた。雨に対してある程度覚悟はしていたものの、実際降り始めるとなかなか気が滅入る。雨にせかされる様に出発した。

道が急登になるとあたりの雰囲気にも変化がみられるようになった。背の低い針葉樹や大きな岩石の出現頻度が増え、高山らしくなってきた。ところどころ、よじ登るような箇所を通過すると、途端に背の低い草ばかりになりあたりから木々が消えた。すぐ前方にピークが見える。尾根が発達していないこの山には偽ピークはないから、あれが編笠山山頂であろう。そこから10分ほど歩いて編笠山山頂に到着した。

団体が山頂を占有していたためすみっこに陣取り、お茶を沸かした。雨は止んでいた。僕らは山頂でカレーを作って食べるつもりでいたが面倒だったので(レトルトなのに)、各自持ち合わせていたチョコレート等を食べる。下界にいるときは「山頂でカレー作るなんて粋ですね!楽しみですね!?」って感じだったはずなのだが。結局カレーは翌日の朝ごはんとして重宝した。

さて、今回は不覚にも寝坊してしまったため権現岳までの行程は無念のカット。後は車を停めている観音平まで降りるだけである。今来た道を引き返してもいいのだが、ちょっと遠回りになるが青年小屋を経由して下山するルートをとった。こちらの道のほうが斜面をトラバースするようについているため下りやすいと判断したためだ。青年小屋まではトレースのない岩の上を行く。しかもまた降り始めた雨のため視界が悪く何度か道を外しそうになった。ガスもでてきていて、目の前に青年小屋が現れるまで小屋の存在に気付かなかった。

青年小屋からしばらくは谷のような地形を下るため登山道に水がたまっていて、歩きにくい。それでも快調にくだり、前を歩いているパーティーを根こそぎ追い抜く。追い抜きざま「こんにちはー」なんて挨拶をする。これも登山における醍醐味の一つだと思う。山での挨拶は儀式的、あるいは慣例的なものではない。同じ山に登っているだけである種の連帯感、親近感がわくのである。今日のように過酷な気象条件の時などなおさらだ。街の中ではすれ違ったことにも無関心に違いない他人同士が山ですれちがったばっかりに互いの安全を祈る。山を「人間の土地」と評す人があったが上手い表現だ。

押手川分岐で、のぼりのときに通った道と合流する。すなわちここから観音平までは一度通った道を下る。小走りに近いスピードで進むためあっという間に雲海分岐に到着した。
微かな晴れ間からかろうじて富士山が見える。今山行における初の展望といっていいであろう。

ちょっと長め休憩をとっていると、若者の団体が降りてきた。先頭を歩いていた数人の女の子が微かに見える富士山に歓喜の声を上げていた。彼女たちは見た感じ登山の初心者で、今回のような天候の中、編笠山往復という行程はさぞ辛かったであろう。その見返りが、この景色では釣り合わないようにも思えるが、来て良かったっと無邪気にはしゃいでいる彼女たちを見て、一瞬とはいえ、晴れてよかったと思った。次々と雲海に登山者が到着してきそうだったので、僕たちは再び下山を開始した。観音平につくころには雨は完全にあがっていた。明日は晴天らしい。それでも、この雨の中、重い荷をしょってただ登って降りてきただけの一見理不尽な行動が、これから向かう温泉や食事、そして家での睡眠までもを格別なものにしてくれるに違いなかった。

 それにしても本番の北ア縦走では今日よりきつい行程を6日間耐えねばならない。標高も高く荷物も上乗せされる。今回はいいトレーニングになったがこれをもってよしとするわけにはいかなそうだ。できれば稜線歩きを本番までにしておきたい。今回はいろんな意味でプチ山行であった
 前日は甲斐大泉駅歩15分にある千露里庵に泊まったが、我々は無計画に惰眠をむさぼったため7:30に起床した。結局観音平に着いたのは9:30だった。

 ザックを背負うと日帰り登山にしては重い。トレーニングのために余分な荷物も入れたからだ。シュラフとか飯盒とか米2合とか先割れスプーンとか、不要だったものは多い。9月に予定している北アルプス計画のトレーニングとして今回の登山を計画したのだが、元々は編笠山だけではなく権現岳にも行くはずだったのに時間が足りなさそうなのでやめた。

 さて、登り始めてみるとちょっとした登りだ。湿度が高く、気温も高めなのですぐに汗が吹き出る。登って30分するといつものかかとが痛み出した。この靴は、買ってから1年経って3回くらい履いたけどいつもこれだ。

 山頂までの道のりは、森林に囲まれ淡々と登るだけだ。数日間雨が続いていたせいで道は滑りやすくなっていた。僕は足を気遣って歩くため、身軽な他の登山者にしばしば抜かれた。しかし我々の休憩の本数は少ないため抜きつ抜かれつ進んだ。団体登山者達とのすれ違いは少々面倒だ。

 途中やはり雨に降られた。雨具を着るが、こりゃまた暑くて蒸れる。押手川から山頂までは急登でつらい。山頂に着くと我々のすぐ後にいた団体が早くも山頂付近を独占し始め、我々はその手前で、僕はコーヒーを、藤林氏はお茶を、それぞれ自分のバーナーで沸かして飲む。山頂は風が西から強く吹いてきており、気温は10度位なのに寒く感じた。そこで飲むコーヒーの美味いこと美味いこと。普段何気なく飲むコーヒーとは比べようもない。一般に、人が渇望したときに手に入るそれは、普段手に入る時よりも格段に満足感を得られるようだ。

 山頂では雨は止んでいたが空は曇ったままでさらに霧が立ち込めていて、展望が得られず残念だった。もし晴れていたなら、富士山・南アルプス・中央アルプス・北アルプス・甲府盆地が眺望できたはずだ。

 下りは楽勝だ。登りに比べてかかとに負担がかからないのと、靴が防水なのをいいことに水溜りを気にせずすいすいと下った。ちゃんとした休憩は1回しか取らなかった。先の団体どもを一気に抜かし帰り道を急ぐ。森林の中から見える空は曇天だし、地面がぬかるんでいる下りはおもろうない。我々はなるだけ早く駐車場に着いて、温泉に入ることしか頭に無くなっていた。

 下りにおいて滑らないための数式を考えてみた。
体重をm、斜面の角度をθ、垂直抗力をN、静止摩擦係数をμとすれば、靴が地面に付いて静止している状態の力のつりあいの式は、
mgsinθ=μN、
N=mgcosθより
mgsinθ=μmgcosθ…?

斜面の水平方向に軸をとり、下る方向を正として、靴の着地時の力の軸方向への分解ベクトルをfとすれば、滑り始める直前の力のつりあいの式は、?より
f+mgsinθ=μmgcosθ…?

滑るという事は左辺>右辺となることである。なるべく左辺を最小にし、右辺を最大にすれば滑らないはずだ。
?式において変数はfとμと斜面の角度θである。
つまり、fについて言えば、着地時の足が地面にかける力の向きを山側にすればよい。
μについて、静止摩擦係数がより大きくなるような地面と靴底を接地させればよい。岩と木の根っこと土(ぬかるみ状態も考慮)と靴底との静止摩擦係数をいつか計測するとしよう。
θについて、なるべく斜面の角度が小さい場所に足を着地させればよい。

 ただ以上の考察は単純化しすぎて複雑な現実には対応できない。やはり現実問題は演繹的方法より、経験法則を寄せ集めた帰納的方法のほうが適していると結論付けて、無駄な考察を終了にする。

 途中雲海展望台で空が少し晴れていて、富士山を拝むことができたので写真を取りつつ一息入れる。団体を率いる人が先に着いていて、地元の人らしく何気なく話しかけてくる。こちらも何気なく言葉を返すが、山梨県人の話し言葉は何が違うとは指摘しづらいほどだが、やはりすこし訛りがある。僕は訛りが大好きだ。自分に訛りが無く親戚も首都圏にしかいないこともあって、過度に相対化して勝手に憧れているだけだろうけど、標準語にはない細かいニュアンスを伝えられる言葉が方言にはあるような気がする。

 さらに話はそれるが言語は多様であればある程よい。1つの言葉で物事の本質を言い表し尽くせないとしたら、必要なのは言葉の数や多様性だ(時には抽象性も必要)。

 ひたすら駐車場を目指すとあっという間に着いた。振り返ってみると山登りとしてはあまり楽しいものではなかったが、トレーニングと考えれば有意義な登山だった。靴下を脱ぐとやはりかかとは皮むけて少々出血していた。

 車で15分ほど走って「スパティオ小淵沢」という温泉に着く。レジャー化された施設で多くの温泉客で賑わっており、何はともあれ登山の後の温泉はよい。電磁式貴重品ロッカーの操作で戸惑っている推定年齢33歳の主婦を助けてやるため会話すると今度は関西弁だ。小淵沢まで関西からも来るのか、などと将来のペンション経営計画をふまえた立地調査資料とする。

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