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北京波の新世紀映画水路コミュの「幸福のスイッチ」評

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2006年11月3日(祝・金)

今年度の劇場映画153 
梅田・テアトル梅田1 
公開14日目 
観客54人(90%) 


小さな町で電器店を営むガンコ親父と、そんな父親と衝突ばかりする次女を中心とした三姉妹が繰り広げる人生模様をペーソスとユーモアを織り交ぜ綴る人情ストーリー。
主演は「スウィングガールズ」の上野樹里。
共演に本上まなみ、沢田研二。
監督は期待の新人女性監督・安田真奈。
 家計を度外視してまで“お客様第一”と言い続ける電器屋の父に反発して田舎の実家を離れ、東京のデザイン会社でイラストレーターとして働く21歳の怜。
まだ新人にもかかわらず自己主張は一人前で、ある時、ついに上司と衝突、その勢いで会社を辞めてしまう。
そんな怜のもとに、妹の香から長女の瞳が倒れて入院したとの手紙が届く。
あわてて実家へと帰省した怜だったが、実のところ、入院したのは瞳ではなく骨折した父の誠一郎だった。
ソリの合わない父が骨折したぐらいでは帰ってこないだろうと考えた香が嘘の手紙を書いたのだった。
まんまと家業の電器店を手伝わされるハメになり、ますますふてくされる怜だったが…。(ONLINE映画データ・ベースより)



気になっていた日本映画『幸福のスイッチ』だ。
定員60のテアトル梅田1は九割の入り。驚くべきことに半数は50歳〜60歳以上の男性である。
その年代の女性ならジュリー目当てかもしれないが、これはどうしたことだろうか?

この秋は一挙に華々しく上野樹里の出演作ラッシュだが、この映画は素晴らしかった。

映画にはいろんなことを観客は求めるものだろうが、ボクはこの映画の持つ等身大の魅力がとても好きだ。

日本映画が産業として成立していた頃、量産体制のローテーションのなかで、映画はどんなにマイナーな存在であろうとも実際にそういう仕事で生計を立てている人々がいる以上、スポットを当てて生活を描いたものであった。

例えば小林正樹の『この広い空のどこかに』(‘54松竹)は川崎にある小売酒屋の生活を描いたものだし、阿部豊の『素足の娘』(‘57日活)は九州の造船所に勤める少女の生活に密着したもので、この『幸福のスイッチ』は量販店でない、むかしからあらゆる市町村にあった“町の電気屋さん”を採りあげたものである。

伊丹十三はあらゆる事項を調べ上げて娯楽映画に仕立てる名手であったが、その丹念な取材は強烈な個性と戯画化に彩られていたためにおいそれとは気がつかないだけであった。

『幸福のスイッチ』はもしかすると『ファンシイ・ダンス』以来の徹底した取材による成功作ではあるまいか。

和歌山県田辺市の電気屋。妻に先立たれた沢田研二には3人の娘がいる。結婚して身重の本上まなみと、東京でイラストレーターとして勤めている上野樹里、高校生の妹の三人姉妹。沢田がアンテナを取り付けようとして転落骨折したため、仕事場をちょうど辞めた上野は故郷にとって返す。

そして父親に反発したままの上野は父親の仕事を手伝いながら、自分の父親の知られざる一面に触れていく・・・。

この映画の脚本は監督である安田真奈の筆になるものであるが、OLをしながら映画監督ができる時代となったことも凄いが、そういう夢のようなことを実現させた人が若い女性ならではの肌理細かいユーモアに溢れた世界を選んだことに心から感心した。

本音を書かせてもらえば、女性監督がみんな「ゆれる」みたいな映画を撮られたら困ってしまう。

健全な家庭生活に育まれた普通の女性の細やかな感性で、日常生活や家族を描いてもいいはずだ。

そりゃあ、決して技巧を凝らした作品とは言えないが、いまどき誰も描こうとしない地道な仕事と家族に挑んだことは認めるべきであろう。こういう監督に温めているシナリオがあれば、撮らせてみる製作者がもっと出て欲しい。

百の家庭には百の家族がいる。当然のことだが百の夢があり、百の愛憎が渦巻くことになる。

白状すると何回も涙が湧いてでる描写があり、笑い笑い泣き笑ってしまった。(★★★☆☆)

終わったとき、その30人近かったおっさんたちがいかにも嬉しそうに立ち上がったことは嬉しかった。

あれは、もしかすると、街の電気屋のご主人たちであったのではないか・・・、そんな気がしてならない。

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