歴史　ちょっといい話コミュの晏子

私が、学生時代のまだ十代ですね。
　そのときに、漢文の先生が、中国の歴代の宰相でもっとも、すばらしい人物は晏子だといったことを思い出します。

　晏子？だれ？といった感じでしたね。

　時代はちょうど、孔子とまったく同じ時代の人です。

前回、管仲のお話をしましたが、それからしばらくたって、斉の国の宰相になった人物です。

　孔子とは、あらゆる面で対比されるのですが、そのひとつが身長です。
　孔子は、２メートル近い身長があったといわれています。それに対して、晏子の身長は１３０センチぐらい。
　
　ところが、史記によると、司馬遷が晏子のことを御者になりたいとまで言い切るその生き様。
　それだけで、何かひかれてしまいますよね。

そんな、晏子のエピソードをひとつ。
「犬の門」

晏子が楚の国に使者としていきました。晏子は身長が低く、楚の国では晏子をからかって、大きい門の隣に、小さな門を建てて、そこから招きいれようとしました。
　すると晏子は
「楚の国は大国だと聞いたが、犬の国に来たならば犬の門より入るがそれでよろしいか？」

　というので、しょうがなく思った役人は、大門から晏子を入れます。

　楚の王宮に入り楚王と会った。王が小さな晏子を見て言うには
「斉にはもっとまともな人間はいないのか？なんで、お前みたいなつまらない人間を使者として送ってくるのか？」

晏子
「斉の都は人が多すぎるため街を歩くと肩がぶつかるほどです。
　わが国では、使者を立てるときにはその能力に応じて担当する国があります。
　優れた人間は優れた国を担当し、愚かな人間は愚かな国を担当します。
　私は、その中でも、特別に愚か過ぎるために、楚の国の担当にさせられました。」

　さすがにこのような、受け答えをされると、楚王はなんとしても、晏子にぎゃふんと言わせたくなります。

　ただでさえ、斉は大国で豊か、しかも中華の中枢にあり歴史も古く、まあ、簡単に言うと非の打ち所のない国です。

　一方、楚は大国ではあるのですが、中華からはずいぶんと外れた田舎の歴史の浅い国、文化レベルも低い野蛮な国ですから、斉のエリート宰相に馬鹿にされたとなると、それはもう、腹が立ってしょうがありません。

　そこで、楚王は、作戦を考えます。

　晏子と楚王が会見している最中に、たまたま中庭で泥棒が捕まります。
　楚王はその捕らえられた泥棒に対し、
「お前の出身はどこか？」と聞きます。

泥棒は「斉の国の出身です」と答えます。

楚王は晏子に「斉の国というのは泥棒が多いのか？」と聞くと、
晏子は「橘という植物がありますが、気候が違うところで橘のたねを植えると、からたちという植物として育ちます。見た目は似ているのですが、食べると全然味が違います。

　この橘と同様に、盗人も斉の国ではまともな人間だったのでしょうけど、野蛮な楚の国でそだつと、盗みを働く性分に変わってしまったのでしょう。
それほどに、楚の国は野蛮なのでしょうね。」

そう、晏子は答えます。

さすがに、ここまで頓知が利くとなると、楚王もかんねんしたそうです。