歴史　ちょっといい話コミュの政治と財界

政界と財界の歴史、それは、明治維新に始まると思います。とある評論家は、この関係を、夫婦と位置づけました。

　時には犬も食わないけんかをし、共通の利害に敏感に反応し、得をするとわかれば攻撃的に追求し、トラブルに巻き込まれれば、互いに責任をなすりつけ、ののしりあうが、基本的なことにひびが入ったと思えばぴたりと中止し外的の排除に乗り出す。

　そういう関係だそうです。

　清国や露国と戦ったとき、夫婦が力を合わせこれに勝ち強国の仲間入りをする。

　一次大戦では、漁夫の利を得ることに成功し、リッチな暮らしをするようになる。
　
　ひとたび豊かさになれてしまうと、そのことを忘れられなくなる。恐慌が襲いかかったとき、その豊かさを維持するために、満州に進出し、中国に侵攻する。

　そして、なんと、アメリカさえも向こうに回し、第二次大戦に突入。死にものぐるいでがんばったが、刀おれ矢尽き、夫婦は裸一貫からやり直す。

　空腹を満たすために、がむしゃらに働く、そして気づけば、腹はいっぱいになり、財布には札束でいっぱいになっていた。

　そして、夫婦がお互い顔を見合わせる。そこにあるのは、満足ではなく、当惑であった。。

　という感じだろうか、、、。

　財界の主流、それは、三井と三菱。いわゆる政商といわれるが、政商とはなにか？

その定義は

「国にも儲けさせるが、俺たちも儲けさせてもらう」

だろう。

そして、この定義が微妙に変わる。

「国にも儲けさせるから、政治家を儲けさせる」とかわる。

一次大戦景気にわく日本、関東大震災により、日本の心臓部が壊滅的被害を受けながらも、よろけ気味の経済に、恐慌が追い打ちをかける。

　しかし、皮肉なことに、当時の日本は、大正デモクラシー、政党政治の花盛りだった。

　政友、民政の二大政党時代。民政党の大蔵官僚出身の若槻礼次郎がしくじれば、政友会の田中義一、民政党の浜口雄幸、若槻礼次郎、政友会の犬養毅、、、、。

　こんなぐあいで、政党政治がちゃんと機能していた。

しかし、それは表面上であって、実際は、外交、国防、軍事など、国家の根幹に関わる政策までもが、政争の具にされ、スキャンダルをあばきあう泥仕合を演じているに過ぎなかった。

　当然、経済危機はさらに深刻となり、東北の少女が売りに出されるのもこの時代。

　それを危惧してか、共産主義思想を大きく台頭する。

工場ではストライキ、社会党共産党が活気づき、赤い学生や教授が幅をきかせる。

　その状況に危機感を感じたのが、財界だった。明治以来、こつこつと築いてきた資本主義の牙城が崩れようとしていたのだから、必死である。

　政党はもはやアテにはできない。

　そして、財界が目をつけたのが、軍部だった。財界に見放された政治家は、その求心力を失う。

　まずはじめに、浜口が撃たれる。

　しかし、その後を若槻が継ぎ、政党政治は続くのだが、、、。

　犬養が、白昼堂々と軍人に暗殺されるにいたり、政党政治の時代は幕を閉じ、組閣の大命は、軍部に移る。

斉藤実内閣の出現から、軍部と財界の歴史が始まる。

　お互いの利害の一致。

　それは、海外進出。

　まず、軍隊が行き、占領し、そこへ産業が拠点を構える。また、国内の不満をそらすこともできる。

　政府の号令一下国民は沸き立ち、景気も刺激されるという、一石二鳥。

　まずは、満州国の建国までは成功だったといえる。

　ただ、財界も軍部も欲張りであった。

　ルビコン川ならぬ、万里の長城を越えることで事変は泥沼化する。

　この間、政党は無力と化し、軍部の提灯を持つようになり、自らその民主主義ののれんをたたみ大政翼賛会を結成する有様だった。

　日本の侵攻は、政商を大いに稼がせた。そして、新たな政商、新興コンツェルンを生む。

　日産の鮎川と大陸の官僚のトップである岸信介が、同じ山口出身というのもこのつながりがある。

　しかし、夫である政治家と別居することになった女房役の財界。それが、結果的に破滅を招く。

　浮気相手の軍部が暴走し、中国との泥沼の戦争はおろか、アメリカと戦争を決意してしまったのである。

　もし、政治家であったなら、そのような行動に出たであろうか？もともと、財界は利にめざといが、臆病であるため、負ける戦いはもとより望まない。

大正デモクラシー時代、軍服を着て外を出ることさえできなかった軍人が、なぜ、そんなに強くなったのか、一つは、満州事変の影響がある。

　景気回復と国威発揚のメリットは著しく軍人の株を高めた。それと、政治のだらしなさだ。

　そのため、キビキビと清潔なイメージの軍人が相対的に過大評価されるに至る。

　このことを追い風に、軍人は白色テロを断行。軍に抵抗するものは国家の最高最重要人物さえも血祭りに上げられた。

　権力をほしいままにしてきた政治家はこれによりものを言えなくなった。命を狙われるからだ。

　しかも財界さえも標的にあう。三井の大番頭団琢磨が凶弾に倒れることになる。

　極めつけは、国家総動員法と治安維持法である。軍部の悪口は誰一人言えなくなり、国家のすべての物資は軍部の支配となった。

　右翼思想とはいえ、マルクスの統制経済の焼き直しに他ならない。

　治安維持法で政治家は言葉を失い。総動員法は財界の手足を失った。

　法案の審議中陸軍省の佐藤中佐は説明員に過ぎなかったが、「黙れ！」と叫んだ「ダマレ事件」

　軍はそれほどまでに強大な権力を握ってしまった。

　もちろん、こんな体制は、あっという間に崩壊するのだが、それまでに、あまりにも多くの犠牲を払うことになった。

　日本は負けた。軍部は、今さらのように日米の実力の差を知ることになる。財界にしてはなおさらである。アメリカに比べれば日本の経済力は赤ちゃんさながらだったからだ。

　戦後処理内閣、東久邇宮総理は、当時の状況を見て、日本がフィリピン並みに復興するには５０年はかかるだろうと考えていた。

　しかし、そのまえに、戦争責任を問わなければならなかった。

　ＧＨＱの指示で既存の政治家はすべて追放され、その中でも指導的役割を果たした政治家と軍人は、Ａ級戦犯として処刑された。

　しかし、財界からは一人のＡ級戦犯もだしてはいないが、日本の弱体化を目的としているアメリカは、責任者を罰することよりも、それよりも遙かにダメージの大きい財閥を解体する。

　当時の日本人に希望はなかった。世界の四等国として再出発し、肩身の狭い思いをして生きていかなければならないだろうと、多くの国民も考えていた。

　しかし、その状況が一変する。

　朝鮮戦争である。

　アメリカは日本弱体化の政策を大きく転換し、日本をアジアの拠点とし、育成政策に乗り出す。

　Ａ級戦犯の岸は政界に復帰、解体された財閥が生き生きと活動を再開することになる。