歴史　ちょっといい話コミュの源氏物語　５　若紫

　いよいよ、ここで、この源氏物語の前半における最大のキーパーソン、紫の上が登場します。

　源氏は、マラリアに感染し、加持祈祷のために高僧のいる北山に来ている。

　その中の僧坊で、若い女性が大勢出入りしているところがあり、そこへ、惟光とともにのぞきに行く。

　そして、中には、重い病に冒された初老の尼が、つらそうに柱にもたれながら経を読んでいた。

　周囲では女の子たちが遊びまわっていたのだが、その中で一人だけひときわ美しい女の子がいた。

　女の子は泣きながら「雀の子を、子犬が逃がしてしまったの。籠の中に入れていたのに、、、」

　尼は、「こっちへいらっしゃい、あなたは、どうして、そんなに幼いままなの？私が、いつ死ぬとも知れないのに、、もし私が死んだなら、あなたのような、幼い女の子がどうやって暮らしていけるのだろうか」
そう言うと、将来を憂いて、涙ぐんでいた。

　源氏は、凍りつくように、その子を見入っていた。まだ幼さが残るが、抱きしめたいほどかわいらしい。

　なぜなら、その女の子は、藤壺の女御にそっくりだからなのだ、、、。

この女の子が、後の紫の上となる、若紫との出会いだった。

　
　尼君の身分は、亡くなった按察使大納言の未亡人である。その尼君には、一人娘がいた。本来であるなら、その娘を入内させるつもりだったのだが、その前に、按察使大納言がなくなってしまっていた。

その後尼君が一人で娘を育てていたのだが、兵部卿宮が忍び通うようになる。この兵部卿宮の兄が藤壺の女御にあたる。兵部卿宮には、本妻がおり、そのため、娘は苦労が尽きず、若紫を産むが、のちに死ぬことになる。

源氏は、若紫が藤壺の姪に当たるということをしり、より一層思いを強くする。

そして、なんと、源氏は、尼君に、若紫との結婚を申し出る。

しかし尼君は「何かの間違いでしょう。私を頼りにしている娘は一人おりますが、とても結婚ができるような年齢ではございません。」

その様子を、若紫が見ており
「あの方は、お父様よりも立派な方ね」とつぶやくと、侍女が「では、あの方のお子になるのはどうですか？」というと、若紫は、黙ってうなずいた。

そんなさなか、藤壺の女御がある日里帰りをした。藤壺に会うまたとないチャンス。源氏は、藤壺の侍女王命婦を脅し、強引に、藤壺の御簾の中に押し入った。

　父を裏切る罪の意識、継母を愛する心の震え、そして、抵抗する藤壺。。。

ほっそりとした腕を握ると、藤壺は源氏を受け入れた。

しかし、このことがあって以来、藤壺は御簾を固く閉ざし、源氏を受け入れることはなかった。

ほどなく、藤壺は病を患う、、、、。

しかし、それは、病ではなく、子を腹に宿していたのだった。。。

源氏はある時、夢を見た。

それは、自分の子が帝になるというものであった。

源氏は恐ろしくなり、藤壺への取り次ぎを願い出るが、王命婦は頑としてこれを受け入れない。

帝が、藤壺が懐妊したことを知ると、藤壺を喜ばせるために、管弦の遊びを催すが、一向に藤壺は憂いの表情を崩そうとはしない。

そこで、帝は藤壺のために、源氏を呼び、管弦の演奏をやらせる。藤壺の姿を見ることはかなわないが、今すぐそばに、最愛の藤壺がいる。

源氏は、来る日も来る日も、そのもどかしさから一人になると、泣き続けた。

ある時、惟光より、故按察大納言の家で、尼が若紫をつれて、戻ってきているとの情報を伝えられる。源氏は早速、立ち寄ると、尼の病はかなり重くなっていた。

源氏は尼に、求婚を申し入れる。しかし、尼は若紫の年齢を理由に、それを拒絶。それならば、声だけでも聞きたいと尼に迫るが「姫はいま、お昼寝の最中でございます」

、、、、、。と断りを入れようとしたとき、、、。

「おばあさま、今源氏の君が来られたと聞いたが、どうして、お目にかからないの？」という若紫と見て、源氏はそのあまりの幼さに、小さく笑った。

そして、数日後、尼君が亡くなったとの知らせを僧都より聞くことになる。

身寄りのなくなった若紫を父兵部卿宮が引き取りに行くとの情報を源氏は、惟光から聞く。

源氏は夜が明ける前に若紫の屋敷に駆けつけ、ぐっすりと眠りこんでいる若紫を抱き車へと連れて行った。近くで見る若紫は、さらに美しかった。

源氏は二条院に帰り、若紫と暮らすこととなるが、一緒に遊び、寝ることはあるが、それは、まるで父と子の関係のようで、腕に抱かれてすやすやと眠るが、男女の関係は二人にはまだない、不思議な関係だった。