歴史　ちょっといい話コミュの川中島の戦い

　ついにＮＨＫ大河ドラマ風林火山の一番の見所、川中島の戦いです。

　世の視聴者のほとんどは、武田信玄のファンなのでしょうけど、私は断然上杉謙信ファン。

　謙信の側からの川中島の戦いについて語ってみようと思います。

頼山陽の詩

鞭聲粛々夜河を過る
暁に見る千兵の大牙を擁するを
遺恨十年一剣を磨き
流星光底長蛇を逸す

訳

ムチの音も立てないほど静かに上杉軍は夜のうちに川を渡る

明け方になり、川中島には、なんと武田信玄が本陣を構えているではないか

この十年恨みを晴らすために剣を磨いてきた

謙信は勢いよく剣を振るい信玄に斬りかかるが、仕留めることはできなかった。

　実はこの川中島の戦い、黙っていれば、上杉軍の兵糧が底を尽き、簡単に信玄が勝ててもおかしくない戦いでした。

　ところが、ここが謙信らしい戦いなんです。
　
　
　軍神とうたわれるほどの武将上杉謙信。普通に戦おうとすれば、絶対に信玄をおびき寄せることはできません。

　謙信としてはなんとしても決戦にもちこみたい。

　一方、信玄は、五分勝ちといわれるほどの、とにかく慎重派の武将。

　そこでなんと謙信は、捨て身の作戦に出ます。自ら軍を率いて、武田家領内のしかも、武田の城のすぐそばの山に陣を構えます。

　目の前には武田の城があり、後方は武田領となれば補給路も退却路もまったくない。

　謀略なしの捨て身の決戦の構え

　さすがに、ここまでハンディキャップをもらいながら、戦いに臨まなければ、信玄としては世間の物笑い。

果たして信玄は川中島に自ら軍を進めることとなります。

　謙信は、いっさいのはかりごとなしに、信玄をおびき寄せ、しかも決戦に持ち込むことに成功します。

　補給路のない謙信。当然、先に動くのは謙信だろうというのは、軍略家でない素人でも察しの付くような気もしますが、待てど暮らせど、いっこうに謙信は山を降りる気配がない。

　一方武田は、上杉軍の倍以上の兵で待ち構えています。

　この状況にさっさとけりを付けようと、かの軍師山本勘助は、武田軍を二手に分けて上杉軍を挟み撃ちにしようという作戦。

　いわゆる「きつつき戦法」を提案します。

　そして、武田別働隊が山の裏を回り上杉軍に襲いかかるのですが、なんと、この機会を狙っていた上杉軍はさっさと山を下り、武田本陣をめがけて突撃をかけます。

　武田の諜報は超一級。行軍の際、敵が、落とし穴を掘っても、どこぞから情報を得て、その落とし穴をあらかじめ埋め立ててしまうほどだったといわれているのですが、なんと、この武田の行動が上杉軍に見破られ、しかも、それを逆手に取られる。

　一方は、孫子を愛読し、謀略も厭わない現実主義者。

　一方は、仏教に深く帰依して、謀を嫌う理想主義者。

　まったく相反する武将が、正面衝突の戦いをし、痛み分けで終わるという、戦国時代最大の決戦、川中島の戦いは、歴史好きなら興味をそそる戦いの一つだと思います。