ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

けんのじのさきちな小説コミュのさき☆ちな 第26話 バレンタインデイKISS

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
午後の授業が終わった。みんな急いで帰り支度をしている。学校側も気を使っているのか、今日はどの部活も休み。千奈美は雅と一緒に教室を出る。

「ねー、アンタ佐紀ちゃんにいつ渡すのよ。」
「うん・・・さっきの電話で時間と場所決めようとしたんだけどさ。切れちゃったから・・・。」
「メールした?」
「うん・・・でもまだ返事来ない・・・。」
「移動してる最中かな・・・。」
「直接佐紀ちゃんちに行ってみようかな・・・。」

いつもよりカップルが目立つ昇降口。いつもと違う甘ったるい空気。そこら中にハートマークが飛び交っているよう・・・。佐紀ちゃんと・・・一緒に帰りたかったな・・・。

靴に履き替え校舎から出る。思わず肩をすくめてしまう冷たい風。雅が千奈美の手を握る。

「みや・・・。」
「一緒に・・・いてあげようか?ちぃ・・・。」

雅の手にきゅっと力が入る。

「ありがと・・・。でも・・・佐紀ちゃんと会えるまでの時間だけみやを使うみたいで悪いよ・・・。」

節目がちの千奈美。少し見上げる雅の胸がちくちく痛む。

こんな状況でも千奈美と一緒にいたいって思うなんて・・・私・・・。いや・・・しょんぼりしてる千奈美を支えて上げられるのは佐紀ちゃんがいないときは私しかいないんだもん・・・仕方ないよね・・・。うん、仕方ないんだ。

「ね、みや・・・。少し寄り道して帰ろっか。」

雅の顔がぱあっと明るくなる。

「しょうがないなぁ。佐紀ちゃんがつかまるまで付き合ってあげるか♪」

校門を出る2人。ぐいっ。千奈美のマフラーが後ろに引っ張られる。
ほっぺたを寒さで赤くして千奈美のマフラーをつかむ背の低い女の子。

「さ・・・佐紀ちゃん・・・。」

雅は思わず千奈美の手を離す。

「えへへ。びっくりした?」
「くっ・・・首が首が」
「あ・・・ごめん。」
「じ・・・じゃ先に帰るね、ちぃ。また・・・明日・・・。」

駆け出す雅。

「あ・・・みや・・・。」
「どうしたの?なんかあったの?」
「ん・・・何でもないよ?」
「そ?」
「うん。それより・・・佐紀ちゃん!何よメールの返事もしてくれないでさ!」
「えへ。ごめんなさーい。驚かそうと思ったんだもん。」
「もー・・・。ばかっ。」
「ばかだもーん。それより寒くて寒くて遭難するかと思ったー。ね、あのさ、ちぃ・・・。」

きゅむ。佐紀が千奈美に抱きつく。

「なによっ。」

横を向いて口を尖らせる千奈美。

「あの・・・。」
「だからなによっ。」
「あのね・・・。」

佐紀が背伸びをして千奈美の耳元で囁く。

「二人きりになりたいな・・・。」
「あばっ・・・!」

一気に赤くなる二人の顔。

「ふんっ。そのくらいじゃ機嫌なおしてあげないんだからっ。」
「へへっ。ね、ウチに・・・来て?」


「そういえばあの二人は?」
「ご飯食べたら『じゃ!』って舞美がえりかの手を引っ張って消えてった。」
「あはは。なんか目に浮かぶよねー。」

佐紀が手をにぎにぎしてくる。時々きゅっと握り返す。つないだ手が暖かい・・・。


「ただいまー!」
「おじゃましまーす!」
「って誰もいないんですけど。」
「あれ?お家の人は?」
「まだ仕事だよー。ささ、あがってっ。」

リビングのソファに座る千奈美。暖房を入れお湯を沸かして紅茶を入れる佐紀。

「あぁぁぁぁ紅茶が暖かぁい。」
「今日寒かったもんねー。」
「ね、佐紀ちゃん・・・。」
「ん?」
「合格・・・おめでと・・・。」
「うん・・・ありがと・・・。」
「はいっ!これっ!」

千奈美は小さい白い紙袋に入れられたチョコレートをカバンから出す。

「おぉっ?」

佐紀が千奈美の隣に座りなおす。

「ねねね、空けてもいい?見ちゃってもいい?食べてもいい?」
「あははっ。いいよー。」

ソファに寄りかかり足を組む千奈美。制服の短いスカートが少しまくれ上がる。
がさがさ。薄茶色の箱にかけられたリボンをはずして蓋を開ける佐紀。

「うわ・・・ぁ・・・。すごーい・・・。これ、ちぃが作ったの・・・ ?」
「当然です。」
「ママにも手伝ってもらわずに?」
「すいません・・・お姉ちゃんに手伝ってもらいました。」
「ははは。でもすごーい・・・。えへ・・・えへへ・・・。」

ぐすっ。佐紀が涙ぐむ。

「さっ・・・佐紀ちゃん・・・どうしたの?」
「だって・・・だってぇ・・・。」
「ずっと・・・大好きでさ・・・。やっと付き合えて・・・ちぃも佐紀のこと好きでいてくれて・・・。」
「うん・・・。」
「そんなちぃの手作り・・・嬉しすぎて・・・。」
「もぅ・・・彼女なんだから当たり前じゃん・・・手伝ってもらったけどさ。」
「それにさ・・・この言葉が嬉しくて・・・涙が出てきちゃった・・・。」
「それさ・・・何も考えずに自然と浮かんできた言葉なんだ・・・。」
「・・・私も同じこと言いたい・・・言ってもいい?」
「・・・言って・・・。」

佐紀が千奈美に抱きつく。唇が軽く触れる。

「一生あなたの事・・・愛したい・・・。」

「さ、食べてみて?」
「うん・・・。えへへ、なんかもったいないな。」
「食べないほうがもったいないと思うですー。」
「いただきまーす。」
「・・・どう・・・?」

身を乗り出して顔を覗き込む千奈美。

「う・・・うまっ・・・あまっ・・・。なんか凄く甘いけどそれがまた・・・。これ・・・おいしい・・・。」

佐紀が口の横に茶色い筋をつけながら目を丸くしている。

「よかったぁー!おいしいって言ってもらえて。気合と愛情がたっぷり入ってるんだよそれ。」
「え?気合?」
「うん。詳細は秘密♪」

「あ、そーそー。私のも・・・はいっ、大好きなちぃにたっぷりの愛情チョコレート。」
「わーい♪へへー。さっそく開けてみるですー。」

がさがさ。薄い緑色の紙袋を開ける。中には・・・ハート型のチョコがいっぱい・・・。

「これ・・・佐紀ちゃんの手作り?」
「そうだよー♪ねねね、出して見てみて?」
「うん・・・。おおっ?コレは・・・!」

一つ一つに文字が書いてある。『ちなみ』『さき』『大好き』・・・。

「佐紀ちゃん・・・これ・・・。」
「うん・・・。絶対人に見せられないって思って・・・。ふ・・・二人だけでいちゃいちゃしたかったのもあるけどさっ。」
「えへへ・・・ちぃはとても幸せです・・・。」

今度は千奈美が佐紀に抱きつく。

「ねー、佐紀ちゃん?」
「なぁに?」
「このチョコ・・・。」
「ん?」
「なんか・・・黒くない?」
「んふふ。食べてみて?」
「うん・・・。いただきまーす!」
「どう?どう?」
「・・・」

千奈美は無言で紅茶に砂糖を足して口に運ぶ。
佐紀の目が大きく開いて少し悲しそうな顔になる。

「・・・おいしく・・・なかった・・・?」
「佐紀ちゃん・・・これ・・・苦い・・・。」
「だって・・・ちぃ前に『甘いチョコってちょっと苦手』って言ってたから・・・。」
「だからってこれは・・・。」
「だから砂糖入れないで作ってみたの・・・。」

無言の千奈美。佐紀が千奈美の顔をじっと見る。大きな目が潤んでくる。

「ねぇ・・・佐紀ちゃん・・・。」
「ごめん・・・ちぃ・・・。」

思案顔の千奈美。泣きそうな佐紀。
二人同時に口を開く。

「一緒にしたらおいしいかな。」
「二つが溶けて一緒になればちょうどいいかな。」

「・・・。」
「・・・。」
「・・・いっぺんに口に入れるとか?」
「・・・交互に食べるとか・・・。」
「・・・。」
「・・・。」

多分・・・二人とも同じこと考えてる。顔が熱い・・・。


二人ともチョコを口に入れる。口の中で溶けるチョコレート。
夜になる直前の暗い夕日に照らされる部屋。黒と濃いオレンジ色。長く伸びた影。時間が止まったような感覚。奥行きが判らないポートレートのような視界。重なる唇。流れ込む甘さと苦さ。熱い吐息。心がしびれて何も考えられなくなりそうな感じ。重なる二つの影。

「ね・・・ちぃ・・・。」
「ん・・・。」
「あのね・・・。」
「なぁに・・・?」
「・・・大好き・・・。」
「・・・ちぃも・・・大好き・・・。」


日が落ちてすっかり暗くなる。抱き合ったまま立ち上がり照明をつける。

「もうすぐお家の人帰ってきちゃうね。」
「うん・・・。ねぇ、ちぃ・・・。今日お泊り・・・無理かな・・・?」
「いきなりは無理だよ・・・。家族でお祝いもするでしょ?」
「うん・・・。そだね。」
「チョコ・・・まだいっぱいあるよ・・・?」

唇を重ねたまま佐紀が囁く。

「この次に・・・とっておきたいな・・・。」


ベッドでうとうとする千奈美。
まだ体の中が・・・しびれているようで熱い。
毎日の日課になっているこの時間の佐紀ちゃんとのメールのやり取りも終わって後は寝るだけ・・・。
佐紀ちゃんと同じ高校か・・・私の成績だと頑張らないと厳しいな・・・。
でも平気。佐紀ちゃんがいるもん。佐紀ちゃんがついててくれる・・・応援してくれる・・・。
千奈美はぬいぐるみを抱きしめる。ぬいぐるみに日課のキスをする。
おやすみ佐紀ちゃん・・・また明日ね・・・。

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

けんのじのさきちな小説 更新情報

けんのじのさきちな小説のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。