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けんのじのさきちな小説コミュのさき☆ちな 第20話 目が覚めるまでそばにいて・・・

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「今年のクリスマスにどうしても欲しいものがあるのBaby〜♪」
「また歌ってるよえりぃ。」
「なになに何の曲?」
「なんて歌?」

すっかり風の冷たくなった12月半ば。いつもの学校の帰り道。期末試験の前で部活の休みな千奈美を交えて佐紀は舞美とえりかと4人で一緒に帰っていた。
短縮授業でいつもより早い時間。もうすぐおやつの時間にちょうどい。
4人はちょっと冒険して足を伸ばして中華街まで豚マンを買いに行く途中だ。
誰が言い出したわけでもないが寒い空気の中ほかほかの豚マンを食べることを想像するとみんな目を細めてにやけている。

「ん?パパの持ってるCDにあった曲だよ。」
「だから誰の何て歌なのよー?」

舞美がえりかに絡めた腕を引っ張ってぴったりと寄り添い顔を近づける。白い吐息がえりかの顔にかかる。

「えとね、JAMの・・・タイトル忘れたっ。」

JAMは知っている。ボーカルだったYUKIは今でも現役だし年齢を感じさせない可愛さで女の子に根強い人気がある。

「ねーねー、その歌詞の続きは?」

すっかり仲良しになった4人組。千奈美は少し甘えた声でえりかに話しかける。

「えーと・・・ちょっと待ってね・・・。」
「たしか・・・『真っ赤なリボンに包むダイヤモンドじゃなくて/サンタクロースになれなくてあなたはしょんぼりしてるけど/何よりも大切なものをくれた/もみの木と暖炉の前/大きな犬と小さなケーキ/ろうそくに火をともして/二人だけで過ごすMerryChristmas/・・・目が覚めるまでそばにいて・・・。』って感じだったと思う・・・間違ってたらすまんです。」

「か・・・可愛いぃー!」

千奈美が目を丸くしている。どうやら気に入ってしまったようだ。

「今度CD貸してもらえるかパパに聞いてあげるね。」

えりかが首をかしげて千奈美に笑いかける。

「えへ・・・ありがとです。」


石川町の駅から歩いてすぐ中華街に入る。赤・緑・黄色・金色・・・きらびやかな門。派手な町並み。日本語と中国語。白人も黒人もいっぱいいる。普段の自分たちの街とはまったく違う雰囲気に佐紀も千奈美も舞美も興奮していた。

「そういえば・・・えりは横浜出身なんだよね。」

きょろきょろしながら舞美が話を振る。

「あー、そういえばそうだったよね。」

千奈美の手をぎゅっと握ったまま佐紀が答える。

「えー!そうなの?知らなかったぁー。ねねね、じゃ中華街も詳しいの?」

佐紀の手をにぎにぎしながら千奈美がはしゃいでいる。

「横浜って言っても外れの方だったからなぁ・・・近くに米軍施設があったくらいで・・・。あ、でも中華街は年に何回かは遊びに来てたよ?」

えりかが舞美の顔に頬がつくぐらいにして喋る。

「ちょ・・・えり近すぎ・・・。」

舞美に手で押しのけられる。

「ううっ・・・ひどいわ舞美さんったら・・・しくしく。」

横一列になって物色しながら歩く。平日の夕方なのでそんなに混んでいないせいか店先で豚マンを蒸かしているお姉さんたちが声を掛けてくる。並び順は一番左に千奈美、右隣に佐紀、舞美、えりか。佐紀は背の高い3人に囲まれてひときわ小さい。

ふと千奈美が佐紀の手を離した。
え・・・どうして・・・なんで・・・?
佐紀が少し悲しそうな目で千奈美を見る。
千奈美の顔がすぐ目の前にある。

「ね・・・佐紀ちゃん・・・腕・・・組んで歩こう?」

千奈美が佐紀の耳元で囁く。そっと千奈美は肘を佐紀に向けて開く。佐紀は後ろから手を廻して千奈美の上腕部にぴたっと手をつける。
必然的に寄り添った形になる。

「えへへ・・・あったかーい♪」

幸せな顔の佐紀。
そんな二人をじーっと見ている舞美とえりか。

「また二人だけの世界つくってるよー。」
「なんかうちらを寄せ付けないオーラを放ってませんこと?」
「そっ・・・そんなっ・・・。」
「二人だってぴったりくっついてるじゃん・・・。」

4人とも顔を見合わせて笑った。

えりか曰く、豚マンは有名店だから必ずおいしいとは限らないこと、150円くらいの安いものだと身が小さくてイマイチなこと、できれば400〜500円くらいのものがおいしいこと、作りたては身と肉汁が熱すぎてやけどしちゃうこと、このへんが豚マン買い食いのコツだということで・・・しばらく探していて条件にぴったりの店を見つけた。

4人はそれぞれ450円の豚マンを一つずつ買い、千奈美は小さな椰子の実にストローが刺さっている椰子の実ジュースも買った。
佐紀と舞美とえりかは自販機でお茶を買い、中華街の中にあるごく普通の小さな公園のベンチに腰掛けた。

袋から取り出したそれは盛大に湯気を立てている。とても熱くて持っていられない。

「も・・・もう少し冷めるまで待とうか・・・。」

千奈美は手に持っていた椰子の実ジュースのストローを咥え一口飲んでみた。

「・・・。」

無言で固まる千奈美を3人が覗き込む。

「ち・・・ちぃ・・・どうしたの?」

佐紀が千奈美の腿に手を乗せて聞く。
少し涙目になりながら椰子の実を佐紀に手渡す千奈美。

一口・・・。

「・・・。」

やはり無言になる佐紀。

「私にも飲ませてー!」

まだ佐紀が手に持っている椰子の実のストローをかぷっと咥える舞美。

「あ・・・。」

千奈美が小さい声を出すが気にせず大きく吸い込む舞美。

「・・・う・・・。」

舞美がえりかの方を見てじたばたしている。何とか飲み込んだ舞美はなんとも不思議な表情をしている。

「ど・・・どんな味なのよ?」

えりかが3人の顔を交互に見る。
涙目の千奈美と佐紀。変な表情の舞美。

「わ・・・私は遠慮しとく・・・。」


程よく冷めたと思われる豚マン。割ってみるとやはり盛大に湯気が立ち、かじってみるとまだ熱いがおいしさの前には熱さなど飛んでしまう。

「おいしいぃぃぃぃ!」
「うまー!」
「やばいやばいやばい!」
「幸せー!」

賑やかな4人。通行人がびっくりして見ていても気にならない程にそれはおいしかった。
息を吐くたびに口から出る白い湯気。段々と赤くなる顔。冷えていた体が一気に温まってきた。
佐紀はお茶のペットボトルを開けるとごくっと一口飲んだ。熱い豚マンと暖かい緑茶がよく合っていておいしい。

「・・・はいっ。」

ペットボトルを千奈美に差し出す。

「佐紀ちゃん・・・?」
「えへ。一緒に飲も?」
「うん・・・。えへへ。ありがと佐紀ちゃん・・・。」

「あー!また二人だけのさきちなワールド作ってるわねー?」

えりかがニヤニヤしながら二人を除きこむ。

「えへへー。いいでしょー♪」

ニコニコの千奈美。

「いいもーん。私だって舞美と・・・。ってちょっと舞美さん?」

舞美は夢中になって豚マンをもふもふと食べ続けている。

「ん?呼んだ?」

口の中を豚マンでいっぱいにしながらニコニコしている舞美。

「もー・・・舞美ったら口の周りにいっぱいつけて・・・しょうがないわねぇ。」

ポケットからハンカチを出して丁寧に拭いてあげるえりか。目を細めて幸せそうな舞美。

「そっちだって二人の世界つくってるじゃん・・・。」
「ねー。」

顔を見合わせて笑う佐紀と千奈美。


食べ終わり、暫く街中を散策する。中華雑貨とアジアン雑貨の店チャイハネで4人は500円で売っていたカンフーシューズを買った。
時間はまだ4時。だけどすっかり日の暮れるのが早くなった12月・・・試験勉強もしなければならないし、ましてや佐紀と舞美とえりかは受験生だ。本来なら本格的に勉強していなければいけない時期だ。

「・・・帰ろっか・・・。」
「うん・・・そうだね・・・。」
「・・・楽しかったね・・・。」
「・・・うん・・・。」

来た時と違いどことなく寂しそうな4人。電車はまだ混んでいなかったので4人並んで座ることができた。

「ねぇ・・・次っていつ・・・こうやって4人で遊べるのかなぁ・・・。」

佐紀が俯きがちで上唇を尖らせながら呟く。

「うーん・・・そうだ!クリスマスは?集まってパーティでもしない?」

舞美が目を大きく開けて提案する。

「あー、それいいかも・・・。」

ちらっと千奈美を見る佐紀。俯いて唇を尖らせている。拗ねた時の千奈美の癖だ・・・。

「あ・・・やっぱクリスマスは別行動にしない?」

何かを察したえりかが舞美を諭す。

「うーん、そっかー。じゃあ・・・初詣とかは?」

一人盛り上がる舞美の腿をえりかがつつく。

『舞美・・・千奈美の顔見なさいよっ。ちゃんと察してあげなきゃだめでしょ?』
『え・・・?なんかあんの?』
『千奈美は佐紀ちゃんと一緒に過ごしたいの!』
『・・・そっか!』
『ホントに鈍いんだから舞美は・・・』
『だってぇ・・・』

しょぼんとして口を尖らす舞美。

『私たちも・・・二人っきりですごそ?』
『うん・・・そうだね・・・へへっ』


地元の駅に着く。舞美とえりかは一つ先の駅の方が近いので佐紀と千奈美は二人で先に降りた。
発車する電車の窓から二人が見えなくなるまで見送ると、佐紀は自分から千奈美の腕にしがみついた。

「・・・帰ろっ。」
「・・・うん。」

駅を出て腕を組んだまま歩く。まだ5時前なのにあたりはすっかり暗い。

「・・・佐紀ちゃん・・・。」
「なぁに、ちぃ?」

千奈美の顔を斜めに見上げる佐紀。

「あんまりくっつくと歩きにくい・・・。」

しょぼんとする佐紀。口がギリシャ文字のωみたいになっている。

「もう・・・しかたないなぁ!」

千奈美は腕を解くと佐紀の肩を抱き寄せる。
佐紀は凄く嬉しそうに笑って千奈美の腰に手を廻す。

「・・・やっぱり歩きにくいかな。」
「・・・でもこっちの方があったかいよ・・・。」


いつもの角のいつもの場所。壁に寄りかかって抱き合う二人。

「あったかい・・・。」
「うん・・・最近特に寒くなったよね・・・。」
「手袋・・・しないとだめだね・・・。」
「うん・・・。ね・・・?おそろいの手袋・・・したいな・・・。」
「今度・・・買いに行こうか。」
「うん・・・。」

いつもなら何も言わずにキスしてくる千奈美。今日はしてこないな・・・。

「ねぇ・・・ちぃ・・・。」
「ん・・・?」
「・・・キス・・・したい・・・。」
「うん・・・。」
「なんでしてくれないの・・・?」
「・・・。」
「私・・・怒らせるようなこと・・・した?」
「ううん・・・。」
「・・・。」
「・・・佐紀ちゃんの・・・。」
「・・・ん?」
「さっき・・・舞美ちゃんが・・・佐紀ちゃんと間接キスした・・・。」
「・・・へ?」
「・・・椰子の実ジュースのストローで間接キスした!」
「そんなの別に・・・。」
「やなの!佐紀ちゃんは・・・千奈美だけのものなのに・・・。」

涙目の千奈美。そんな千奈美がたまらなく愛しい。

ちゅっ。

「さ・・・佐紀ちゃん・・・。」

佐紀が千奈美の首に手を廻して抱きつく。

ちゅぅっ。

「ん・・・。」

顔中にいっぱいキスをする。

「私は・・・佐紀は千奈美のものなの!私の全部は千奈美のものなの!千奈美だけに・・・。」
「わ・・・私だってっ・・・ちぃの全部は佐紀ちゃんのものなんだからっ・・・。」

真っ赤な千奈美。可愛い千奈美。

「機嫌・・・直った?」
「うん・・・。もー・・・佐紀ちゃんには勝てません・・・。」

照れている千奈美。へへ・・・可愛いな。


「ね・・・佐紀ちゃん。」
「ん?」

抱き合ったまま喋る。白い息が二人を優しく包むよう。

「クリスマス・・・。」
「うん・・・二人で・・・過ごそうね・・・。」
「えへへ・・・。じゃあ・・・うちに泊まってもいいかお母さんに相談してみるね?」
「うん・・・みんなでパーティして・・・。」
「お互いの家族ぐるみでパーティして・・・。」
「終わったら・・・ちぃの部屋に・・・。」

真っ赤になる佐紀。幸せそうな顔の二人。

「そして・・・。」
「そして?」

佐紀の顔をじっと見つめる千奈美。佐紀の大好きな千奈美。佐紀の大好きな優しい目。だんだん顔が近づいてくる・・・。

ちゅ。


「目が覚めるまで・・・そばに・・・いて・・・。」

コメント(2)

>ぬこ好きたん

基本的にドエームなのでじれったいので(*´д`)ハアハアしてしまうのれす

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