ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

けんのじのさきちな小説コミュのさき☆ちな 第24話 明日は特別スペシャルデイ

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
「うーん・・・。」
「・・・?」
「うーん・・・。」
「ちょっと・・・。」
「んー・・・。」
「・・・ちょっと・・・ちぃ・・・。」
「ん?うーん・・・。」
「何さっきから唸ってんのよ。」
「あー!もうだめっ!全然アイデアが浮かばないっ!」
「って・・・アンタまだ考えてたの?もう明日だよ?」
「だって・・・だってさっ・・・こんなの初めてだもんわかんないよー!」
「初めても何も・・・心がこもってれば何でもいいじゃん。」
「そんなこと言ったって・・・あーんもー助けて!みや!」
「ふんっ!勝手に悩んでなさい!まったくもぅ・・・。」

お昼休みの教室。よく晴れた空。硬く感じる冷え込んだ空気。暖かいストーブの前の席に陣取り悩む千奈美。
雅はその横で他の友達と話している。話題は目前に迫った一大イベントの事ばかり。
一年に一度の特別なイベント。しかも・・・
神様の意地悪なのか・・・佐紀ちゃんの合格発表の日と重なっている。これは悩みますよ彼女としては。

当然の如く授業に身が入るわけもなくずっと頭を抱えている。雅はそんな千奈美を見て首を振ってため息をつく。
私のことも少しは気にかけてよね・・・ばか・・・。


「ただいま・・・。」

家に帰り自分の部屋に鞄とユニフォームを放り投げると千奈美はキッチンに降りていった。甘い匂い・・・。

「おかえりー!」
「あ・・・お姉ちゃん・・・なにやってんの?」
「・・・見りゃわかんでしょ。」
「・・・わかるけどさ・・・なによこの量は?」
「そりゃあんた友チョコ義理チョコ本命チョコ合わせればこんぐらいになるわよ。」
「・・・頭が下がります・・・ってどうしよー!助けてお姉様ぁ!」
「えーい!ひっつくな鬱陶しい!」
「だって・・・だってぇ・・・しくしく。」
「なに・・・まさかまだ何も用意してないとか言うんじゃないでしょうね・・・。」

潤んだ目で姉を見つめる千奈美。あまり似ていなくて千奈美より少し背の低い色白の可愛い姉。
きっと高校でもモテるんだろうな・・・。

「ううっ・・・たすけてお姉ちゃん・・・」
「だって材料だって頑張ってもあとひとつ分くらいしか」
「一つ!一個だけでいいの!ねぇー・・・だめ・・・?」
「う・・・上目遣いでアヒル口で見つめるたぁ我が妹ながら可愛いじゃねぇかい・・・わかったよ!」
「ホント?!わーいお姉ちゃん大好きっ!」
「わかったからひっつくなってばっ!もうっ。」

とりあえず部屋に戻りお気に入りのスウェットに着替える。

「さて・・・どんなのがいいのよ千奈美としては?」
「すいません全然アイデアが浮かばないのです・・・。」
「・・・呆れた・・・だいたい誰に渡すのよ。」
「そっ・・・!それは明かせないのっ・・・。」
「ふーん?ふーん??」
「すっ・・・好きな人っ!」
「ほう・・・愛情のこもったチョコが作りたいと・・・。」
「もー!いいじゃん誰でもー!」
「ふふーん・・・まぁいいけどっ♪」

真っ赤になって恥ずかしがる千奈美が面白くて顔を覗き込む姉。

「さて・・・不器用なアンタだからシンプルなのがいいと思うんだけどどうかな?」
「・・・お任せします・・・。」
「いま空いてる型は普通の四角いのだけだけど・・・文字とか入れてデコレーションすれば可愛くなると思うよ?」
「それでお願いしますっ。」
「甘さはどうするの?」
「えと・・・甘すぎない方が・・・いや!思いっきり甘めでっ。」

実は千奈美はチョコレートがあまり好きではない。ココアは好きなくせに変だと言われるがなぜか得意ではない。
どちらかと言うと和菓子の方が好きだ。梅干とかお煎餅とかも好きだ。でも佐紀ちゃんにあげるのにそれではあまりに色気がなさ過ぎる。

「一応手作りってことだからアンタこの溶けたの型に流し込んで。」
「は・・・はいっ。」

こぼれないように慎重に流し込む。濃い茶色と少し薄い茶色がマーブル模様になっていて綺麗・・・。

「さて。ここからが大事なのよ。いいこと?よーく聞いて真似するのよ?」
「了解であります姉上!」
「まず目を閉じて大好きな人を思い浮かべて・・・。」
「・・・(佐紀ちゃん・・・私の大好きな佐紀ちゃん)・・・」
「両手を右の腰に持ってきて・・・。」
「はいっ。」
「愛情を込めて前に突き出すっ!」
「はぁっ!・・・ってかめはめ波じゃんっ!ふざけないでよっもうっ!」
「あーっはははっ!いいのよそのくらいで。大好きな人なんでしょ?めいっぱい愛情込めなきゃ♪」
「気合なんて込めたくないですぅ!」
「さーさー。固まりきる前にデコレーションしないと。」
「うい・・・。」
「まずコレで絞りながら字を書く。」
「お・・・おおぅ?」

いきなり絞りすぎてダマになる・・・。

「あーもう!力入れすぎだよー・・・しょうがないからそれハート型にしちゃいなさい。」
「はい・・・。」

何て文字を入れるかは考えていなかった。だけど自然と浮かんできた言葉・・・千奈美は何も考えずにもくもくと文字を入れていった。

「そーそー。うまいじゃん。そしたら文字の周りにコレを散らして・・・。」

ピンク・緑・オレンジ・白・水色・・・色とりどりのちっちゃいつぶつぶ・・・。千奈美はオレンジと水色を指でつまむとパラパラと回りに散らしていった。

「あらまアンタまた微妙な色使いで・・・これだったら上から粉砂糖かければいいかな?」

お姉ちゃんが手際よく粉砂糖を振ってくれた。千奈美のようなぎこちなさがなく、まるで魔法のようにぱぁっと華やいだ感じになる。

「す・・・すごーい・・・すごいよお姉ちゃん!」
「さて。じゃ自分の部屋に持っていって窓際にでも置いときなさい。冷蔵庫は私のでいっぱいだから。後で箱とか持ってってあげるから妄想でもして待ってなさい。」
「うんっ。ありがとー!」


両手で大事に型を持ち部屋に戻る千奈美。少しだけ出窓になっているのでそこにそっと置く。

ばふっ。

ベッドに大の字になって寝転がる。布団が冷たい。慣れないことをしてほてった体に冷たさが気持ちいい。
佐紀ちゃん・・・いま何してるかな・・・明日の合格発表・・・不安がったりしてないかな・・・。
試験のとき・・・自信ありそうだったから大丈夫だと思うけど・・・。

千奈美は試験前日のことを思い出していた。

あの日・・・夜遅い時間にメールも電話もなしにいきなり千奈美の家に来た佐紀ちゃん。
びっくりしたママは何かを察知したのかニコニコしながら温かいココアを入れてくれて・・・。
千奈美の部屋でベッドに並んで腰掛けて他愛もないお喋りをして過ごした一時間。

『じゃ・・・帰るね』

そう言った佐紀ちゃんの顔がなんだか少し泣きそうに見えて・・・やっぱり不安なんだなと思うと千奈美も泣きそうな顔になって・・・。
ふわっ・・・と優しく抱きついてきた佐紀ちゃんが千奈美を見上げて・・・。

『大丈夫だよ。ちぃと会ったら不安がってた自分が馬鹿みたいに感じてきた。』
『ひど・・・』

ちゅ。
軽くキスをする佐紀。

『ふふ・・・。ちぃは私の太陽なの。いつだって・・・私のこと照らしてくれる・・・。暖かくて・・・元気をくれる太陽なんだから・・・。』
『佐紀ちゃん・・・。』
『えへへ。ホントはね、自信はバッチリあるんだ。でも少し不安だったのと・・・』
『と?』
『どうしても・・・ちぃに会いたくなっちゃったから・・・。』
『へへっ。佐紀ちゃんのことだからちぃは心配してないよ?絶対受かるもん。』
『おぉっ。まかせて。』
『うん』
『じゃ、帰るね・・・オヤスミ・・・。』

「ご飯よー!」
お母さんの呼ぶ声で目が覚めた。いつの間にか眠っていたらしい。机の上にはいつの間にかお姉ちゃんが置いていってくれた箱とクッション材がおいてある。
「いま行くー!」
箱詰めとラッピングはご飯の後にしよう・・・。

つづく

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

けんのじのさきちな小説 更新情報

けんのじのさきちな小説のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング