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けんのじのさきちな小説コミュのさき☆ちな 第23話 初詣

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「じゃ・・・また後でメールするねっ♪」
「うんっ。へへ・・・楽しみだなぁ・・・。」
「でもあれだよね、よく親も許してくれたよね。」
「だよねー。まぁ近所だし、なんと言っても佐紀ちゃんはウチの両親に信用されてるから。へへっ。誇らしいぞっ。」
「ちぃだって『千奈美ちゃんはホントにいい子ねー。娘に欲しいわ』って言われてるよ。」
「佐紀ちゃんちの娘・・・佐紀ちゃんと兄弟・・・?それとも・・・。」
「おっ・・・お兄ちゃんと結婚なんて絶っっっ対にだめ!許さない!ちぃは・・・佐紀だけのものなんだからぁっ!」
「へへっ・・・じゃあ・・・佐紀ちゃんと結婚・・・だね♪」
「ちぃ・・・顔が緩みまくってるよ・・・。」
「佐紀ちゃんだってぇ・・・。」
「ん・・・。」
「もう・・・しょうがないなぁ。」

ちゅ。

「じゃ、また後でねー。」
「うーん、待ってるねー。」

 千奈美は停めていた自転車のカゴに荷物を入れて走り出す。この大晦日に買い忘れた物があるからと母親に頼まれたものは正月のお飾り。玄関にぶら下げるタイプのものだ。
 出掛けに預かったお金はお飾りの代金にしては少し多めで、不思議な顔で母親を見るとさりげなくカッコよくウィンクをして『余ったらお小遣いね。佐紀ちゃん誘ってお茶でもしてきなさい♪』って・・・。
 最近・・・毎日のように何回も佐紀ちゃん佐紀ちゃん言ってるからかなぁ・・・。まさか・・・気づかれてたり・・・それはないか。


 お店に入ると高くつくのでコンビニで買ったお茶とポッキーで公園でプチデート。とは言え近所なので通る人達は知ってる人ばかりで・・・あんまりいちゃいちゃできなかったな・・・。

 今日は家族で年越し蕎麦を食べた後に紅白を見て佐紀ちゃんと二人きりで初詣。クラスメイトに会う確率は高いけど、神社は混んでいるし寒い冬なので手を繋いでいてもぴったりくっついていても怪しまれない。
 クリスマスの後に両親に切り出したときは絶対反対されると思っていたけど意外とすんなり認めてくれたな・・・。やっぱり佐紀ちゃんは信用されてるな・・・。まぁ、夜中とは言え近所だし人はいっぱいだし、何と言っても今日は自治会の夜店もテキヤに混じって出ていて知り合いばっかりだから困った時は駆け込めばいいって事になって・・・。


 紅白を見ているときに母親が年越し蕎麦を持ってきた。みんなは蕎麦だけど千奈美だけはうどん。いまだに『おうどん』と言えずに『おーどん』と言ってしまう千奈美は蕎麦よりもうどんが好きだ。ラーメンも好きだけど・・・麺類ではやっぱりおーどんが一番好き・・・。
 食べている最中にメール着信。佐紀ちゃんかな?随分早いな・・・。

『やほー(*゜∇゜)ノ これから舞美と○○神社に初詣に行くんだけど一緒に行かない?』

 えりかちゃんからだった・・・。しかも○○神社って今から行くところ・・・。・・・会わないようにしないと・・・いや、会った方が楽しいのかな・・・。
またメール着信。佐紀ちゃんかな・・・。

『いまから○○神社に行くから来なさいとゆいたいです』

 茉麻・・・。てことは熊井ちゃんも一緒なのかな・・・。実は千奈美は一時期友理奈に少しだけ好意を寄せていたことがあった。と言っても恋とかそういう類のものではなく、背が高くてきりっとしていて美人で、でも意外と子供っぽいところが何となくいいな・・・と思う程度で。
 何しろ今は佐紀ちゃんがいる。心の底から大好きな、いなくなったら死んじゃうくらいの大事な大事な佐紀ちゃんがいる。

「ちぃ・・・うどんが冷めるよ?」

 母親に言われて我に返る。すっかり汁を吸って伸びているおーどん。千奈美は一気に掻き込む。


「じゃ行ってきまーす!」

 千奈美はニコニコしながら家を出た。出た途端に体を包む底冷えのする冷気。乾燥していなくて少し湿度のある感じ。雪でも降るのかな・・・玄関の前で千奈美は空を見上げる。星は見えず曇っているのが判る。千奈美の口から出る息が白く広がって少し幻想的な感じ。何となく嬉しくて千奈美は何度も空に向かって息を吐く。

きゅむっ。

「あばっ・・・びっ・・・佐紀ちゃんっ・・・!」
「えへへ。来ちゃった♪」

上を向いている千奈美にいきなり佐紀が抱きついてきた。

「・・・びっくりしたー。待ち合わせは公園だったじゃん。」
「・・・少しでも早く会いたかったんだもん・・・。」

俯いて口を尖らせ抱きついたまま体を小さく左右に捻る佐紀。

「もう・・・嬉しいに決まってるじゃん・・・。」
「えへ・・・えへへっ。」

夜で暗いので佐紀の黒目がひときわ大きく見えてたまらなく可愛い。

「さ・・・いこっ!」


 二人は手を繋いで歩き出す。吐くたびに白い息が二人の視界を軽く遮り混ざり合う。
夜中なのに車の通りが多い。さすが県内でも大きな神社だ。品川・練馬・山梨・千葉・・・普段あまり見ないナンバーの車も多い。千奈美は自分が車道側に立って歩く。道幅がそんなに広くないので、歩道のないところでは手を繋いで歩いていると結構危ない。

「佐紀ちゃん・・・。」
「ん?なぁに?」

ぎゅっ。

「ふぉぇっ?」
「ぴったりくっついてないと車にひかれちゃうからさ・・・。」
「・・・車に・・・。それだけ・・・?」
「う・・・。すいません、くっついていちゃいちゃしたかったんです・・・。」
「うふ。素直でよろしい。」

 他の人から見たらどう見えるのかな・・・。打ち合わせどおり、ほぼペアルック。千奈美が白、佐紀が水色の、フードにフェイクファーのボアが暖かそうなハーフ丈のダウンジャケット。濃い目の黒いタイツ二枚重ね。千奈美はキャメル色、佐紀はダークブラウンのスエードのブーツ。千奈美はダークブラウンのコーデュロイで佐紀がデニムのスカート。
 姉妹に見えるかな・・・それとも仲のいい友達に見えるかな。恋人同士に見えたら嬉しいな・・・。

「恋人同士に見られるのって嬉しいけど恥ずかしいよね・・・。」
「あまり大っぴらにできない関係だけど・・・でも自慢したいっ。」

 クリスマス以来・・・言葉がなくてもお互いの考えていることがわかる。以前からそういう所はあったけど、さらにハッキリとしてきた感じだ。歩いていても、あまり喋らなくてもこうしてぴったりくっついているとお互いの意識が溶け合っているような感じがする。こういうのって・・・なんかいいな・・・。


 神社に着き、二人はまず参拝の列に並んだ。横に10人ずつくらいでぎっしり並んでいる。進む速度が場所によって微妙に違うので離れないように千奈美はしっかりと佐紀の肩を抱く。佐紀は千奈美の腰に手を廻す。佐紀が時々千奈美の脇をくすぐるように指を動かす。くすぐったいのを堪えて体をくねらせる千奈美が可愛くて佐紀は悪戯っぽく笑う。

「もぉー。手ぇ離すよ?」千奈美がどこか嬉しそうに笑う。
「ごめんなちゃいでしゅ。」

ひたすら甘える佐紀。

 やっと自分達が参拝する順番が来た。お賽銭をいれ、二人で一緒に鈴を鳴らす。佐紀の打つ柏手がぺちぺちと可愛い音を立ててなんだかおかしくなる。

「ね、ちぃは何をお願いしたの?」
「んー。教えないっ!」
「えぇー・・・いじわるぅ・・・じゃ佐紀も教えないっ。」
「はいはい、佐紀ちゃんには勝てません。あのね・・・佐紀ちゃんが無事に志望校に合格しますようにっ、て。」
「佐紀はね、ちぃが部活でいい成績を残せるようにっ、て。」
「あとは・・・。」
「あとは・・・?」
「恥ずかしくて言えない・・・。」
「私も・・・。」
「人がいないところでなら・・・言えるかな・・・。」
「じゃあ・・・後であの秋祭りの時に腰掛けて休んだあの末社で・・・ね?」
「うん・・・。」
「へへ・・・。ね、ちぃ!おみくじ引こう?」

おみくじ売り場はそんなに混んでいなかった。ガラガラと容器を振って出てきたおみくじを見る。

「ちぃは・・・中吉だ。」
「私は・・・同じだ・・・中吉。」
「どれどれ・・・あーホントだ。でも微妙に書いてあることが違うんだね。」
「恋愛運・・・『些細なことで喧嘩になることもあるが自分から謝ることが吉』だって・・・。」
「ちぃの恋愛運・・・『近くに一生添い遂げる相手がいる。相手のいない者は注意深く見ればみつかる。』って・・・。」
「え・・・一生添い遂げる・・・って・・・。」
「ずっと・・・ずっと一緒って事だよね・・・。」
「佐紀と・・・ちぃの事・・・だよね・・・?」
「絶対そうだよ!神様ありがとー!」
「う・・・ぐす・・・。」
「さ、佐紀ちゃんなに泣いてんの?」
「だって・・・だって嬉しくて・・・神様にも祝福されてるのかなって思ったら・・・ぐすっ。」
「もー・・・佐紀ちゃんの泣き虫ぃー。」
「だってぇ・・・。」
「あんまり泣いてばかりいるとー・・・。」
「ぐすっ・・・いると?」
「写真撮っちゃうぞ♪」
「やぁー!だめぇ!」
「へへっ。佐紀ちゃんの可愛い泣き顔ー♪」
「ちぃのいじわる!いじめっこ!」
「いじめてやるー♪」
「ふにゃー!」

ふと見ると周りの参拝客が笑いながらこっちを見ている。

「わ・・・綿菓子でも買いに行こっか。」
「そだね・・・。いこいこ。」


 夜店を物色する。今はまだあまりお腹がすいていないので綿菓子を一つだけ買った。

 秋祭りの時に休んだ末社はやはり誰もいなかった。見た目もぱっとしなく目立たないし少し小高くなった場所にあり周りを植え込みで囲まれているので、まるでそこだけ違う空間のようだ。植え込み越しに賑わう様子が見える。参拝客たちのざわめきが少し遠く聞こえる。
 きざはしに上がる木の階段に腰掛ける。体が斜めになってしまうほどピッタリとくっつく。そのままだと前を向いていられないので上半身だけ向き合うようにして・・・。人も多く夜店もあるので神社は暖かい。とは言えやっぱり吐く息は白い。佐紀の白い息を千奈美は吸い込む。ほんのり香る佐紀のにおい。千奈美の白い息も佐紀が吸い込む。体の中まで二人で共有しているような甘くくすぐったい感じがする。

 ニコニコしながら綿菓子を食べる佐紀。反対側から千奈美も少しもらってみる。

「わたあめってさ、ただのザラメなのになんでだかおいしいよね♪」

口の周りに綿をつけながら喋る佐紀。

「うん。不思議だよねー。あ!そう言えばさ、前に日曜の昼の番組で見たんだけど、普通のキャンディで作るわたあめがあるんだって!」
「えー?なにそれ食べてみたーい。」
「なんかね、普通の機械みたいにザラメを入れるところにキャンディを入れるとその色の綿みたいなのが出てくるのね。で、コーラ味とかソーダ味とかコーヒー味のわたあめができるの。」
「食べたい食べたい!どこにあるんだろう・・・。」
「ねー。ネットで調べれば出てくるかなぁ・・・。もしあったらさ、一緒に行こうねっ♪」
「うんっ。」

 食べ終わった佐紀の口の周りには白い髭のようにいっぱい綿菓子がついている。ポケットからフェイスタオルを出して拭こうとする佐紀の手を千奈美が押さえる。

「ちぃ・・・?」
「佐紀ちゃん・・・。ほんと子供なんだから・・・。ちぃが取ってあげる。」
「ちょっと・・・ちぃ・・・あ・・・や・・・。」

口を開け、舌で拭き取る。佐紀の頭を両手で抱えて丹念に舌を這わす。そのまま唇を重ねる。佐紀の甘い甘い口の中。

「ん・・・あ・・・ちぃ・・・。」
「佐紀ちゃん・・・すごく甘いね・・・。」
「ばか・・・恥ずかしいよう・・・。」

口の周りに柔らかくついた千奈美を佐紀は指でそっとなでる。うっとりとした表情と半開きの唇。

「もう・・・おかえしするんだから・・・。」
「ん・・・。」

今度は佐紀が千奈美の首に腕を絡めてお返しをする。

カシャ。

一瞬何かが光ると同時に音がした。携帯を構える舞美と後ろから抱きついているえりか・・・。

「あ・・・。」
「や・・・やだ・・・。」

抱きついたまま動揺する佐紀と千奈美。

「撮っちゃっ・・・た・・・。」
「駄目だって言ったのに舞美はもう・・・どうしてそう二人の世界を壊すようなことを・・・。」

心臓がドキドキする。いつからそこに・・・いつから見られてたの・・・?

「あ、心配しないで?人気のないところで少し休もうとここに来たら二人がすごくいい雰囲気だったんで・・・つい・・・。」
「だから!舞美は空気読まなさ過ぎ!早くその画像消しなさいっ!」
「えぇー?だってぇ・・・すごくよく撮れてるんだよ?」
「そういう問題じゃないのっ!・・・って・・・あら・・・ホントにキレイ・・・と言うか芸術的ですらあるわね・・・。」

涙目になっている佐紀。泣きそうな顔でへの字口になっている千奈美。

「ごめん・・・怒って・・・る?」申し訳なさそうに聞く舞美。
「怒ってない・・・怒ってないけど・・・。」と佐紀。
「恥ずかしすぎたんだからぁ・・・ばかぁ・・・。」と千奈美。
「うっ・・・ごめん・・・。じゃ、私とえりがキスしてるところ撮っていいよ♪」
「え?ちょ・・・ちょっと舞美さん?あ・・・やぁっ・・・。」

えりかに抱き付いてキスをする舞美。

「ちょっと・・・だめ・・・舞美・・・ん・・・や・・・。」
「えり・・・大好き・・・んっ・・・。」

ぽかーんと見ている佐紀と千奈美。なんだかさっきまでの恥ずかしさがなくなり、この二人と秘密を共有した感じがなんだかくすぐったくたい。

「ど・・・どうする?」
「どうって・・・。せっかくだから・・・撮っちゃおっか?」
「舞美ちゃんも撮ってって言ってるし・・・。」

立ち上がった佐紀と千奈美は二人を挟み込むようにして携帯を構える。

「ちょっ・・・やめてぇ・・・撮らない・・・で・・・んっ・・・。」
「えりぃ・・・私のえりぃ・・・大好き・・・。」

カシャ。カシャ。恥ずかしがるえりかが何だか可愛くて何枚も撮ってしまう。

「いやぁ!やめてぇ!だめぇ!んっ・・・。」


 四人で並んで階段に座る。舞美が人数分買ってきた紙コップに入ったお汁粉をいただく。体に染みるように暖かい。

「メール見た時に会うかもしれないなとは思ったけどまさかこんな状況で会うとは・・・。」
「思わなかったよね・・・。」
「ごめんねぇ。舞美ったらさっき寒いからって・・・店のおじさんに勧められるままに甘酒をガーッて飲んじゃって少しテンションが・・・。」

えりかが済まなそうに手を合わせる。

「いいじゃーん。いつもえりの方からちゅーしてくるくせにぃ。」
「そういう問題じゃないって言ってるのに・・・。」
「佐紀ちゃんと千奈美ちゃんに見られてるからって照れちゃってさぁ。えりってばかーわいい♪」

テンションの高い舞美。普段と違う子供っぽい舞美。

「ねぇ・・・えりかちゃん・・・。舞美ちゃんっていつもこんな感じ・・・?」
「私も・・・こんな舞美って初めて見た・・・。」
「まぁ・・・二人きりでいる・・・時は、ね。結構子供みたいで可愛いんだよ?猫みたいに甘えてきたりして・・・♪」
「あー!さっきのえりとのキス写真見せてー!」

 佐紀と千奈美は携帯のフォルダを開く。千奈美の撮ったのは全部ぶれていたが佐紀の撮ったものに一枚だけいい画像があった。

「ぷ。えりの嫌がりつつも嬉しそうな目が・・・♪」
「あーホントだぁ。」
「どれどれ?」
「いやーん!恥ずかしい!」

佐紀は三人の携帯に画像を送る。

「佐紀ちゃんと千奈美ちゃん・・・めんどくさいから『さきちな』でいいや。さきちなちゅー画像も見る?」
「う・・・。」
「・・・少し見たい気もする・・・。」
「じゃーん!」

 それは確かに良く撮れていた。夜店の明かりと神社の照明が白と橙色に薄く二人を照らして、舞美の白い吐息が二人を包むかのようにソフトフォーカスをかけている。バックの日に焼けた神社の木の色と植え込み越しに光る夜店の明かりがとても幻想的な雰囲気で・・・。

「ふあぁぁ・・・。」
「これ・・・ホントに私達・・・?」
「ね?キレイでしょ♪」
「よく見ると・・・凄いよね、これ。」

舞美は三人の携帯に画像を送る。

「この写真・・・ウチら四人だけの秘密だねっ。」
「うん。」
「なんか・・・いいなぁ・・・。」
「へへっ。なんかくすぐったいね。」
「あ!佐紀ちゃん。誕生日プレゼントの中に入れた温泉の券まだ使ってないよね?」
「う、うん。」
「あさって・・・3日の日にさ、えりと行こうかって話してたんだ。よかったら一緒に行かない?」
「えー・・・どうしよう・・・。」佐紀は千奈美と顔を見合わせる。
「ちぃは・・・佐紀ちゃんが行くなら・・・と言うか是非行きたいです!」
「うん・・・なんか楽しそうだよね。」
「じゃ決まりねっ!」
「まったく・・・舞美は強引なんだからいつも・・・。」
「えり、顔が嬉しそうだよ?とか言って。」
「えへっ。そりゃーね。佐紀ちゃんも千奈美ちゃんも可愛くて大好きだもん。」
「へー・・・。私は?」
「・・・舞美が一番可愛いよ・・・?舞美が・・・一番・・・大好きです・・・やだぁー!もう!なに言わせんのよもう。」


 桃子と雅は末社の植え込みの影で立ったまま動けずにいた。
桃子は何事もなかったかのように平然とした表情をしてはいるが手に持った小さいバッグが指から今にも落ちそうになっている。いつも一緒にいる舞美とえりかまで・・・。桃は・・・桃のいる場所はないの・・・?自分だけはじかれたようで胸が痛い。桃・・・佐紀ちゃんを応援するって決めたんだもん。でも佐紀ちゃんを好きだって気持ちが消えたわけじゃない。むしろ・・・どんどん好きになっていってる・・・。苦しいよ・・・苦しいよ佐紀ちゃん・・・。
 雅は唇をぎゅっと結んで必死に泣くのを堪えている。解ってはいる。解っているけど・・・楽しい雰囲気の中で偶然見てしまった・・・千奈美と佐紀ちゃんのあまりにも仲のよすぎる、愛情たっぷりのキス・・・。どうして・・・?どうして私はここにいるの?来なければよかった・・・。初詣に来てもここに寄らなければよかった・・・。なんで千奈美の横にいるのが私じゃないの・・・?やっぱり嫌だ。諦めるなんてできない。今すぐ二人のところに行って千奈美を奪って行きたい。でも絶対そんな事できない。あんな幸せそうな表情の千奈美は見たことない・・・。この場から逃げ出したいのに体が動かない。足に力が入らない。雅の頬を涙が伝う。
 動かないでいる二人の後ろで梨沙子は戸惑っていた。二人とも口に出してはくれないけど・・・私の事子供だからって・・・。でも二人がどう感じているのかはわかる。桃ちゃんは頼りない感じがするけど実はしっかり者でいつも私を心配してくれる優しいお姉ちゃん。みやは・・・初めて会った時から憧れていた、カッコよくてキレイで・・・私の大好きな人・・・。みやに憧れて始めたミニバスも選抜に残るくらいになった。中学に入ったら一緒にバスケ部で頑張ろうって思ってた。そんな大事な二人が苦しんでる。悲しんでる。私はどうすればいいんだろう・・・。

コメント(1)

誰もコメントしてくれない…読んでもらえてないのかな…まぁ妄想をただつらつらと書いてるだけだし…
(´TωT`)

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