ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

けんのじのさきちな小説コミュのさき☆ちな 第18話 从;´∇`)<未来日記?

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
「なによ!佐紀ちゃんのばか!」
「ちぃのわからずやっ!」
「ばかっ!ばかばかばかっ!佐紀ちゃんなんて大っ嫌い!」
「もう・・・勝手にしなさいっ!」

乱暴に電話を切る。
千奈美は窓際に置いてあるベッドに乱暴に寝転がった。
開け放った窓からドアに向かって風が抜け、汗ばんだ千奈美のTシャツを撫でる。
暑い・・・。強い日差しが容赦なく千奈美を照らす。
午前9時。空は、この地域では珍しいくらいのくっきりとした青。
遠くの方にもこもことした真っ白い夏の雲が申し訳なさそうに浮かんでいる。
「佐紀ちゃんの・・・ばかぁ・・・。」
グスッ。小さく鼻をすする。目にうっすら溜まった涙を手で乱暴に拭う。
うつ伏せになって枕に顔をうずめる。
せっかく・・・せっかく頑張って準備したのに・・・。
何ヶ月も前から約束してたのに・・・。
頑張って・・・凄く恥ずかしいけど・・・佐紀ちゃんに可愛いって言ってもらいたくて短めの白いスカートもはいたのに・・・。

佐紀が高校に入って初めての夏。夏休みになって最初のよく晴れた日に二人で海に行こうってした約束。
千奈美も部活を引退して、ようやくたっぷり時間の取れる夏休み。なのに・・・。

『ごめーん、ちぃ・・・。どうしても補習に出ないとだめになっちゃって・・・。』
『えー!だってずっと前から約束してたのにー!』
『ごめんごめん、私も昨日終業式の後に突然言われちゃって。』
『じゃあ昨日のうちに連絡くれればいいじゃん!』
『ごめーん・・・疲れてそのまま朝まで寝ちゃっててさ。』
『嘘っ!最近メールの数も減ってるじゃん!きっと私の事なんて・・・ぐすっ・・・』
『高校生活に慣れるまで忙しかったの!ほぼ毎日電話だってしてるじゃん!』
『最初の頃より回数減ってるもんっ!なによ・・・なによ佐紀ちゃんなんて・・・。』
『ちょっと千奈美・・・落ち着きなさいよ。』
『毎日毎日えりか先輩とばかり帰っちゃって・・・私のこと子ども扱いして・・・ばかっ!』
『横浜と座間だから途中まで一緒なの!仕方ないじゃん!そういう所が子供だって言ってんの!』

ぐすっ・・・佐紀ちゃんのバカ・・・。
中学の頃は毎日のように会ってたのに・・・。最近は週に一度か二度くらい・・・短い時間しか会えなくて・・・。
高校になったから仕方ないかなと思って我慢してたのに・・・。
今日の日をどれだけ楽しみにしてたと思ってんのよ・・・。


一週間前・・・新しい水着を買いに横浜駅西口の川沿いの大きな店に行った時の事が脳裏をよぎる。
佐紀ちゃん可愛いって言ってくれるかな・・・一人でにやけながら何着も試着して・・・悩みに悩んで買ったコーヒーブラウンのビキニ。
茶系統のハワイっぽい柄。派手過ぎない大人しめのデザイン。一緒に白い夏っぽいスカートとストロー素材のエスパドリーユも買って・・・。
ニコニコしながら店を出て強い日差しに目を細めた時に目に飛び込んできた二人。
背が高くて色が白くて凄い美人と仲良く手を繋いで歩く佐紀ちゃん・・・。えりか先輩だ・・・。
なんで・・・?なんで手を繋いでるの?
なんでそんなに楽しそうなの?
佐紀ちゃん横浜駅は使わないはずなのに・・・どうして・・・?
いたたまれなくなって下を向いて走り出す。
家に着いてからも部屋に閉じこもったままぬいぐるみを抱えて考え込む。

きっと・・・なにか買い物があってあそこにいたんだよね・・・。
きっと学校であった楽しい出来事かなんかの話をしてて楽しそうに笑ってたんだよね・・・。
えりか先輩と舞美先輩と・・・3人すごく仲がいいもん・・・手ぐらい繋ぐよね・・・。
きっとそう・・・きっと・・・。

そのあと佐紀から掛かってきた電話も普通の会話だった。
『ちぃ・・・元気ない・・・?』
『そんなことないよー。暑くて疲れてるだけだよ。』
二人を見かけたことなんて聞けない・・・だって・・・変に勘ぐったりしたら佐紀ちゃんに嫌な思いさせちゃうもん・・・。


今日・・・どうしようかなぁ・・・。
みんな都合悪いみたいだし・・・一人で家にいるのもやだし・・・。
一人で・・・行ってみようかな・・・。
でも・・・怖いなぁ・・・。
水着にならないで海の近くを散策するくらいなら平気かな・・・。


「まったくもう!ちぃったら人の話聞かないんだからもー!」
「なぁにぃ、また夫婦喧嘩?」
えりかが横の机でニヤニヤしている。
「今日の補習は出ないとまずいけど一限だけで終わるから出発時間を少しだけ遅らせようって言おうと思ったのに・・・。」
「ふーん。でもさ、佐紀ちゃんもなんかムキになってたじゃん?」
「だって・・・!ちぃったら子供みたいなことばかり言うんだもんっ。」
「あーあ、暑すぎてたまりませんわ。あー暑っちぃ暑っちぃ。」
「なによー。」
「だってさぁ、千奈美ちゃんってああ見えて他の人にはしっかりとした対応してるじゃん?」
「うん・・・まぁ・・・ね。」
「佐紀ちゃんの前でだけでしょ?子供みたく素直に甘えるのって。」
「そうだけど・・・でも・・・。」
「後でまた連絡しなよ。せっかく今日の為に・・・いやいや、今年の夏の為に可愛い服も水着も買ったんだからさっ♪」
「・・・えへっ。」
顔が緩んでくる佐紀。
「いろいろ計画したもんねー。海にプールに花火大会にキャンプに。そのうちのいくつかはウチらも一緒だけどさ♪」
「うん・・・初めてがいっぱいの夏・・・だねっ。」
「千奈美ちゃんに可愛いって言ってもらえるような服ばっかり選んじゃってさっ♪」
「えへへ・・・可愛いって言ってくれるかなぁ・・・。」
「あー、服を選んでるときの佐紀ちゃん可愛かったなぁ。もー恋しまくってる乙女って感じでさっ♪」
「そんな・・・そうかなぁ・・・?普通だけどなぁ。」
「もうね、『ねぇねぇ、ちぃ♡私を見て♡可愛いって言って♡ぎゅーって抱きしめてっ♡』って感じでさっ♪」
「そ・・・そんな・・・。」
「うーん、真っ赤な佐紀ちゃん可愛いっ。」


補習と言っても先生がいるのは最初の10分だけで後はレポート提出で終わり。佐紀は大急ぎで片付けた。
時計を見るとまだ9時半。急いで帰れば10時半前には着くかな・・・。
「じゃ、えりか。先に帰るねっ。」
「あーい。目一杯二人だけの世界を満喫してくだされ。」


メール・・・いや、電話の方が早いや。プルプルプルー・・・10回くらいコールするが出ない。トイレかな・・・。
早足で駅まで歩く。汗がだらだらと垂れてくる。ブラウスの背中がぺたぺた張り付く。
うまい具合に電車に飛び乗れた。エアコンの涼しさがたまらない。強い日差しに慣れた目に車内が暗く見える。
佐紀は座らないでエアコンの風が当たる位置に移動する。あ・・・気持ちいい・・・。
再び携帯を取り出してメールしてみる。一駅。二駅。乗り換えの駅についても返事が来ない。いつもならすぐに返ってくるのに・・・。
乗換えまで数分あったのでまた電話してみる。やっぱり出ない・・・。やだ・・・どうしたんだろう・・・。

佐紀の華奢な胸がちくちくする。何度もメールする。やっぱり返事はない。
地元の駅に着いてすぐに電話する。やっぱり出ない・・・。やだ・・・やだよ・・・ちぃ・・・どうして?
私が朝電話で怒ったから?最近なかなか会えなかったから?いじわるしてるの?

家に帰らずに直接千奈美の家に行く。
乾いた呼び鈴の音。奥から「はーい」と声がする。千奈美のお母さんだ。
「あらま佐紀ちゃん。どうしたの汗まみれで?」
「あのっ・・・ちぃ・・・千奈美・・・いますか?」
「あー、今日海に行くって言ってたもんね。でもなんか朝、『旅に出る』って言ってぷりぷりしながら出てったわよ?」
「え・・・旅?」
「まー、なんにも持たずに行ってるくらいだから夕方には戻るんじゃないかしらねー。あの子ってば昔っからそう。なんかあると飛び出すんだけどすぐに戻ってくるのよ。」
千奈美のお母さんが豪快に笑う。
「そ・・・そうですか・・・じゃあ、なにかあったら連絡もらえるように言っておいていただけますか?」
「はーい。必ず連絡させるからね。」
おばさんは笑ってたけど・・・やっぱり少し心配・・・。
嫌・・・どこに行ったのちぃ・・・やだよぅ・・・。


千奈美は小田急線の車内でうとうとしていた。涼しくて気持ちいい・・・。何度も電話が震える。反射的に開こうとするけど我慢する。
佐紀ちゃんに少しは心配させなきゃ。もっと・・・もっと千奈美のこと見てもらいたいの。
メールだけではなく電話も掛かってくる。佐紀ちゃんの声が聞きたい・・・。例え怒っててもいい。佐紀ちゃんの声が聞きたい。
でも・・・ぐっと我慢する。

やっぱりズボンに履き替えて正解だった。長く車内で座っていると段々と冷えてくる。佐紀ちゃんが隣にいればあったかいのにな・・・。
ばか・・・佐紀ちゃんのばか。

電車が終点の片瀬江ノ島に着く。外に出ると・・・眩暈がするほど暑い。
携帯の履歴を見てみる。全部『♡佐紀ちゃん♡』・・・。あ、一件だけお母さんから来てる・・・。
佐紀ちゃんからのメール。最初は普通なのにどんどん言葉が短くなって・・・。最後のメールは『どこ?』だけ・・・。
胸が少し痛くなる。佐紀ちゃん・・・心配させちゃってる・・・。ううん、いいの。もっと心配させてやるんだから。


佐紀は家に戻り鞄を置くと「ちょっと出かけてくる!」とだけ言って自転車に飛び乗る。
ちぃ・・・どこ・・・?なんで返事くれないの?
うっすら涙目になる佐紀。自転車に乗りながら片っ端から電話してみるがやっぱり行き先はわからない。
二人でよく行く場所から重点的に探して見る。図書館、ハンバーカー屋さん、スポーツ用品店、もんじゃ屋さん、公園・・・。
どこにも千奈美はいない。佐紀の口がへの字になる。
ばか・・・千奈美のばか・・・どこにいったのよ・・・。今朝の電話のことなら謝るから・・・だから・・・だから連絡ぐらいしてよぅ・・・。

午後になり日差しはますます強くなってくる。汗が髪から滴る。佐紀は自転車を押してとぼとぼと歩く。
ぐしっ。鼻をすする。汗と涙が一緒に流れる。ポケットから小さいタオルを出して顔を拭く。
千奈美にもらったタオル・・・。ぐすっ・・・ちぃ・・・。
地元の駅前に着く。まさか・・・そんなことないよね・・・。でも・・・何かが佐紀に『こっちだ』と言っているような気がする。
千奈美が呼んでいるような気がする。佐紀は自転車を駐輪場にいれると駅に入った。


駅は竜宮城のような派手な造りだった。駅前からすごく大勢の人達がいる。海のすぐ近く。潮の香りがする。千奈美の地元ではあまり見ることがないタイプの人達がいっぱいいる。カップルが多いな・・・。
とりあえず駅の周辺を散策する。暑い・・・。でも、こんなの部活やってる時に比べたら運動してないだけまだ過ごしやすい。海からの風が気持ちいいくらいだ。
マクドナルド、コンビニ、浮き輪やビーチサンダルを売っている小さい商店、どこからか漂ってくるシラス干しのいい匂い、コパトーンの香り、日に焼けた民家の木の塀、おしゃれな感じのカフェ、サーフショップ・・・。初めての雰囲気に千奈美はわくわくしていた。でも・・・佐紀ちゃんと一緒だったらもっと楽しいんだろうな・・・。

気になる看板を見つけた。「かき氷」。涼しげな「氷」の文字。ふらふらと引き寄せられる。値段を見る・・・高い・・・。地元で食べるものに比べると明らかに倍近い。でも・・・食べている人のを見ると・・・明らかに大きくていろんな具が乗っている。千奈美は財布を見る。まだお小遣いはもらったばかり。た・・・食べちゃおっかな・・・。

結局注文してしまった。クラシカルだけどよく手入れされているかき氷器から削られて出てくる柔らかいパウダーみたいな氷。大き目の容器に山盛りになっていく。たっぷりと掛けられる抹茶のシロップ。ぐるぐると廻されるコンデンスミルク。ごっそりと盛られる小豆。
「いただきまーす!」・・・おいしい・・・。店のおばちゃんがニコニコしている。「おばちゃん・・・すごくおいしいー!」
携帯で写真を撮る。後で佐紀ちゃんに・・・見せる・・・のかな・・・。少し沈んだ表情になるがおいしさの前にそんな気持ちは隠れてしまう。
一気に食べ過ぎて頭がキーンと痛くなる。
「ごちそうさまー。おばちゃん!すっごくおいしかった!また来るかも。」
「あいよー、また来てねー。」

おなかの落ち着いた千奈美は浜に向かった。車とバイクがすごく多い。海沿いの歩道を歩く。浜に下りる段を降りて砂浜を歩いてみる。
靴に砂が入ってくる。歩きにくい・・・。サンダルで来ればよかったな・・・。
いつもと違う場所。青い空。白い雲。強い日差し。潮風。気持ちいい・・・。
浜辺にいる人たちを眺める。やっぱり地元にいる人たちとは全然違う雰囲気。みんな真っ黒に日焼けしている。女の人達も派手な人達が圧倒的に多い。刺青をしている男の人もいる。なんだか少し怖いな・・・。
「ねーねー。」突然横から声を掛けられる。真っ黒に日焼けした軽そうな男の人が二人。
「一人?」「よく焼けてるよねー。地元?」いろいろと声を掛けてくる。やっぱりなんか少し怖い・・・。
千奈美は無言のまま遮るように手を出す。二人の男の人は諦めたように歩き出す。
ほっとため息をつく。携帯を取り出して見てみる。更に5件・・・佐紀ちゃんからのメール・・・。
泣いているような文章。佐紀ちゃん・・・佐紀ちゃん・・・。千奈美の目が潤んでくる。
「おっ!可愛い子はっけーん♪」
今度は一人の男の人が寄ってきた。なんかいろいろ話しかけてくるが全然耳に入らない。千奈美は立ち上がって歩き出す。男はまだ話しかけながら付いて来る。
「来ないでっ!」
強い口調で言うと男は両手を上げて「ごめんごめん」と言いながら離れていった。
佐紀ちゃん・・・ごめんなさい・・・千奈美が悪かった・・・会いたいよぅ・・・佐紀ちゃん・・・。

先ほどまで強かった日差しが弱くなってきている。西の方を見ると大きな入道雲が伸びてきている。海で遮るものがないから少し感動的なくらいに大きく見える。
とぼとぼ歩き出す千奈美。少し歩いて、また浜に下りる段の一番上に腰掛ける。
携帯を取り出す。佐紀ちゃんからのメールは一時間くらい前から来ていない。なんだか悲しくなって泣きそうになる。明らかに曇ってきた空。千奈美の心と同じ色・・・。雷の音が聞こえてくる。

ふと携帯が震えた。メール・・・いや、電話だ・・・佐紀ちゃん・・・!
もういじわるなんてしたくない。すぐに電話に出る。
「さ・・・佐紀ちゃん・・・。」
「ちぃ!どこにいるの!」
「・・・ごめんなさい・・・ホントにごめんなさい・・・あのね、・・・」
「もういいよ・・・。」
と言って切られる電話。
「もしもし?もしもし!佐紀ちゃん!?」
千奈美の目から大粒の涙がこぼれる。
怒らせちゃった・・・呆れられちゃった・・・佐紀ちゃんに・・・嫌われちゃった・・・。
両手で顔を覆う千奈美。涙が止まらない。

「ちぃ・・・。」
佐紀ちゃんの声が聞こえるような気がする。余計に悲しくて声が出てくる・・・。
「こらぁ!千奈美!」
ビクッとする千奈美。後ろから声がする。まさか・・・まさか佐紀ちゃんがここにいる訳ないもん・・・。
ふわっ・・・と後ろから抱きしめられる。小さい手。細い腕。華奢な体。千奈美の大好きな・・・優しい・・・とっても安心する柔らかさ。佐紀ちゃん・・・。
泣きながら後ろを振り返る。少し涙目の佐紀ちゃん。少し怒った表情。でも優しい目・・・。

「佐紀ちゃん・・・佐紀ちゃん・・・うう・・・うわーん・・・。」
「もー!ちぃのばかっ!どれだけ心配したと思ってんのよ!ばかっ!」
「あーん・・・佐紀ちゃぁん・・・ごめんなさい・・・。」
「もー!後でじっくり話してもらうからね!」
「・・・ぐすっ・・・ごめん・・・なさい・・・。」
「・・・でも・・・良かった・・・ちゃんと会えた・・・。」


大粒の雨が落ちてきた。二人はとりあえず雨宿りできる所を探して走る。
雷がすぐ近くで鳴っていて怖い。バリバリと空気を引き裂くような音。
千奈美が佐紀の手を引く。走るのが速い千奈美に佐紀は引きずられる。
とりあえず飛び込んだところは・・・さっきのかき氷の店だった。
店のおばちゃんが「あらま。ずぶ濡れで・・・ほら、このタオル使いなっ。」とタオルを貸してくれた。
「あれっ・・・あんた・・・また来るって言ってたけど随分早く来たね。」にこにこ笑っている。
「え・・・?ちぃ・・・さっきも来たの?」
「う・・・うん・・・しっかり食べてしまいました・・・。」
「・・・私も食べようかな・・・。」
「あのね、あのね、ここのかき氷すっごくおいしいんだよ!」
さっきまで泣いていた千奈美がもう笑顔になっている。
「ちょっと・・・ちぃ・・・私はまだ許してないんだからね・・・。」
「あ・・・ごめんな・・・さい・・・。」
しょんぼりしてまた泣きそうになる千奈美。
「もぅ・・・いいよ、ちぃ・・・。許してあげるから・・・。その代わり!」
「そ・・・その代わり・・・?」
「今日は一晩中問い詰めるからね・・・。」
「え・・・。」
「だからー・・・ちぃは今日はウチに泊まって・・・明日一緒に江ノ島に行くのっ。」
「え・・・佐紀ちゃん・・・。」
「最近ずっと短い時間しか会えなかったからね。」
「佐紀ちゃぁん・・・。」また泣きそうになる千奈美。
「ほらほら、泣かないの。ホントにちぃは子供なんだから・・・。」優しく笑う佐紀。
「子供じゃないもんっ・・・。」
ハムスターみたいに頬を膨らます千奈美。可愛い千奈美。大好きな千奈美。
「はーい、お待たせー。」
佐紀の前に置かれるかき氷。すごく大きく見える。
「ちょっ・・・でかっ・・・。」
じーっと見ている千奈美。
「少し・・・食べる・・・?」
無言でうんうんと頷く千奈美。
スプーンですくって食べさせてあげる。
ぱくっ。
幸せそうな千奈美。
ぱくっ。
「・・・おいしいぃぃぃ・・・。」
目を丸くする佐紀。
「えへっ・・・。」
「えへへっ・・・。」
交互に食べる。
そうこうしているうちに外が明るくなってきた。雷もゴロゴロと柔らかい音になってきている。
「ごちそうさまー。」
店を出ると西の空が晴れている。雨はほとんど上がっている。涼しくていい気持ち・・・。


電車の中。乗客は少ない。まだ少し濡れている服にエアコンが寒い。
佐紀と千奈美はぴったりとくっついて座る。触れている部分から暖かさが広がってくる。
「佐紀ちゃん・・・制服のまま・・・。」
「だって・・・どっかのばか娘が勝手にどっか行っちゃうから慌てて・・・。」
「うう・・・ごめんなさい・・・。」
「私こそ・・・ごめんね。朝・・・怒ったりして・・・。」
二人とも下を向いて寄り添う。多分お互いに寄りかかって眠っているように見えるはず・・・。
「ちぃの方こそ・・・ごめんね・・・。この前・・・」
「この前?」
「この前ね、横浜に水着を買いに行ったらね、佐紀ちゃんがえりか先輩と仲良く手を繋いでて・・・。」
「あー・・・。」
「なんか凄くショックで・・・やきもち焼いてたのかな・・・。」
「もう・・・ばか・・・。私も水着とか服とかえりかに見立ててもらいに行ってたんだよ・・・。」
「え・・・?」
「ちぃに・・・可愛いって言ってもらえるようなのをさ・・・。」
「え・・・。」
「だいたい・・・えりかはすぐに抱きついてきたり手を握ってきたりするじゃん?」
「それはそうだけど・・・。」
「もう・・・私が好きなのはちぃだけなんだから・・・もっと自信もって・・・。」
「うん・・・最近・・・会う時間が少なかったからちょっと不安だったの・・・。」
「わかればよろしい。」
「ねぇ・・・佐紀ちゃん・・・。」
「ん・・・なぁに?」
「ちゅう・・・したい・・・。」
「な・・・なに考えてるのよこんな場所でっ・・・。」
周りを見回すとみんな本を読んでいたり眠っていたりして誰もこっちを見ていない。
「もう・・・しょうがないなぁ・・・。」
ちゅっ。
「えへへ・・・。」
「ちぃのばか・・・。」
真っ赤になる二人。
「明日・・・晴れるといいね・・・。」
「きっと晴れるよ・・・。」
「そうだね・・・曇ってても行こうね・・・。」
「うん・・・。」
そっと手を繋ぐ。

コメント(8)

>あおいの姉貴

こないだ雅サイさんと江ノ島で(*´д`*)ハアハアしてる時に妄想したのれす

>弟ちん

从*´∇`)<えへへ

>ぬこ好き

もどかしくてじれったいのが好き(*´д`*)

>つ

ベリヲタじゃなくなったくせにー(ノ∀`)シクシク
く〜…やっぱいいわぁ。(笑)
…てか、どういうわけか小説を開いたときに限ってなぜか聞いていたBGMはレベッカだったりとか。^^;


>兄貴

いや…実はマジ夏だったりします…(ノД`)シクシク

>ABたそ

唇タッチ!恋はフリーウェイシンフォニー♪

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

けんのじのさきちな小説 更新情報

けんのじのさきちな小説のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング