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けんのじのさきちな小説コミュの告白の噴水広場?

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「あーさっぱりした」

お風呂から上がったばかりの佐紀は、濡れたままの髪から雫が垂れてもいいようにと首にバスタオルを掛けている。
かけたまま髪を拭き、冷蔵庫から麦茶を取り出してグラスに注いだ。
一気に飲み干してシンクの中に置いてあるバケットにグラスを置くと、小さい声で

「ぬぎ茶・・・おいしいな」

と呟く。

「ん?なんか言った?」

母親が聞き返す。

「なっ、なんでもないよっ。あたしもう寝るね!」

そう言うと佐紀は慌てて部屋に戻る。母親は

「・・・変な子」

と笑っている。

髪を乾かしてバスタオルを無造作に椅子の背にかけベッドに腰掛ける。
傍らに置いてあった携帯を見ると何件かメールが来ていた。

「みや、まぁ、ゆりな、りさこ、もも・・・」

一番心待ちにしていた千奈美からは来ていない。
少し項垂れて伏目がちになり口を尖らせる。ベッドの縁から下ろした足をぷらぷらさせる。

「バカ・・・」

ベッドに寝っ転がって一件ずつ返信していく。

「みやってば、メールでもテンション高いなぁ。」
「でも・・・まるで恋人に送るような文章・・・」
「懐いてくれるのは嬉しいんだけどさ・・・」

「まぁは相変わらず文章うまいなぁ。さすが生徒会長だね。」

「ゆりなってば・・・特に書くことないからって弟の話ばっかり。かわいいなぁ。」

「りさこ・・・は簡素に要点だけか。」

「もも・・・顔文字ばかりで何が言いたいのか解らないじゃん・・・もぅ。しょうがないなぁ。」

一通り返信し終わった佐紀はベッドに大の字になって左手に携帯を持ったまま目を閉じた。

(千奈美… いま何してるのかなぁ… お風呂の中で寝たりしてないかなぁ…。)

千奈美はよく眠る子だ。この部屋でも寝たし、お風呂で寝て溺れそうになったこともあるし、授業中だ
って電車の中だって…。

この前だって私が電車で居眠りをして千奈美に寄りかかって寝てたとき

「もぅ!無防備なんだからぁ。」

なんて言ってたくせにそのあとすぐに寝ちゃって…。
でも寄りかかってくる千奈美…可愛かったな…。
なんかいい匂いがして…
コンビニで買った男性用のオレンジと紅茶の香りの奴だって言ってた…
でも千奈美の匂いとよく合ってて…
今では私の一番好きな匂いなんだ…。

ブルブルブルブル。

マナーモードにしていた携帯が震えた。

(メールだ!)
(今度こそ千奈美…)

ももだった。
英語が解らないから教えてって…。明日学校で教えると返信してまた目を閉じた。

なんとなくウトウトしながら佐紀はあの日を思い出していた。
初めて自分の思いを告げた、あの日…。



定期試験の前で部活も休みのある晴れた日。
学校からそう遠くない、わりと広い公園の噴水のある広場。なんとなく異国風な感じのする白い石造りの噴水と周りにあるオブジェ。

日に焼けて所々角がまるくなった木のベンチ。時間は午後3時。
佐紀は木陰になっているベンチに腰掛けると大きくため息をついた。

(どうしよう…やっぱりやめればよかったかな…)
(嫌われたらどうしよう…嫌われるくらいならいっそ友達のままの方がマシ。)
(苦しいけど、切ないけど、このままの方がいいのかな…。)

佐紀は何度も携帯を見る。新しい着信はない。昨日の夜に来たメールを繰り返して見てばかりいる。

千奈美からのメール・・・。

『どうしたの?急に大事な話があるって。』
『最近の佐紀ちゃんなんか変だったから気になってたんだけど…。』
『じゃ、よく寄り道したあの公園の噴水の所で待ち合わせしない?』
『多分3時頃には着けると思うよ*^^*』

これからうまくいかなかった時のことを考えると自然と目が潤んでくる。佐紀はぎゅっと手を握り、その
小さな手で涙を拭った。

ゆっくりと近づいてくる足音がする。でも誰が来たのか怖くて見られない。ずっと下を向いたまま携帯を
握り締めている。

だんだんと足音が近くなり、自分の前で立ち止まった。
よく日焼けした細くて長いまっすぐな脚。白いソックス。あまり履いていない感じの綺麗なローファー。

千奈美だ…。

「…佐紀ちゃん?おまたせ。」

「うん…」

「はい、お茶買って来たよ。」

「うん…ありがと…」

佐紀は手渡されたペットボトル入りの麦茶を一口飲むとまた俯いてしまった。そういえばあの時もこのベンチだった。
放課後に仲のいい子達で寄り道して遊んだ日。疲れて休憩していた佐紀と千奈美。

話しかけようとして斜め上を向いたときすぐ近くに千奈美の顔があって…

唇が触れあって…。

あの日からだ…
私がおかしいのって…。

「で、話って何?」

千奈美がぶっきらぼうに言う。
それがなんだか悲しくて・・・うまく喋れない。

「あの…」

「なに?」

「あの…変だと思わないで聞いて欲しいの…」

「うん」

「あのね…ずっと友達だったし…小さい頃から仲良かったし…」

「うん」

「だから…こんな私って変なのかも知れないけど…」

そこまで言うとまた言葉が詰まった。千奈美は前にある噴水を眺めているように見える。
しばらく無言の時間が続く。

「お、思い切って言うね…あのね…私…いつもいつも千奈美のことばかり考えるの…。」
「授業中も、お弁当の時も、お風呂の時も、寝る時も、いつも考えちゃうの。」
「千奈美が部活やってる時もね、いつも見ちゃうの。もう…苦しくて…。」

佐紀の目から大粒の涙が溢れてきた。
うまく声が出ない。
千奈美は佐紀の方を向くが視点が定まらずにまた前を向いてしまう。

「…グスッ…ひっく…う…」

なかなか声が出ない。

「…好きなの…大好きなの…自分でもよくわからないよぉ…」
「なんでこんなになっちゃったのかわからないよ…」
「女の子同士だもん…おかしいって自分でも思うよ…」
「だけど…もう自分ではどうしようもないくらいに…好きになっちゃったんだもん…」

「ごめん…ごめんね…」

一気に喋った佐紀は声を上げて泣いてしまう。
千奈美は困ったような顔をして時々佐紀の頭を撫でる。また無言のままの時間が続く。
時間の経つのがいつもの何倍にも感じられて…。

夕方5時になり、公園内に時刻を知らせる音楽が鳴る。
暫く空を見上げていた千奈美は急に立ち上がって歩き出した。

(やっぱり…やっぱりそうだよね…)
(嫌だよね…もう…もう私…。)

なんとか堪えて止めていた涙がまた溢れてきた。もう何も考えられない・・・。
ただ溢れてくる涙と感情で胸がいっぱいになっている。

千奈美はぐるっと回ってベンチの後ろに立つと深呼吸をして、優しく・・・
そっと佐紀の体に両腕を廻した。佐紀の細くて小さい体がビクッとなる。


「ねぇ・・・佐紀ちゃん・・・」

千奈美が少しかすれた優しい声で言う。

「気づいていたよ・・・佐紀ちゃんが何か最近おかしいって。」
「今まで以上に私と仲良くしたがってるって。」

佐紀の体が小刻みに震えている。

「私ね、佐紀ちゃんには悪いけど・・・佐紀ちゃんのこと年上だって思えなくてさ。」
「ちっちゃくて可愛いし・・・最近少しは背が伸びたけどさ。」

佐紀は無言のまま頷く。

「正直に言ってさ・・・さっき言われた時・・・びっくりした。」
「だって・・・女の子同士だよ?今まで普通に友達で家族ぐるみの付き合いでさ。」
「絶対変だって思った。」

佐紀の体がまた震えて背中が丸くなり、千奈美の手に佐紀の大粒の涙が落ちる。

「でもね、佐紀ちゃん・・・。」

千奈美も前かがみになり後ろから佐紀を抱きしめ、佐紀の右耳に左頬をあてた。
佐紀の体がまたビクッとなる。

「でもね・・・凄く嬉しかったの。」
「佐紀ちゃんが真剣に好きだって言ってくれて、胸が苦しくなるくらい嬉しかった。」

「うう・・・グスッ・・・ヒック・・・」

佐紀がまた声を上げて泣き始める。

「佐紀ちゃんが泣いてるのを見て・・・」
「涙を拭いてあげたい、笑わせてあげたい、喜ばせてあげたいな・・・って思った。」

「抱きしめてあげたい・・・って思ったんだ・・・。」

耳元で聞こえる千奈美の声が優しく溶け込んでくる。

「ねぇ・・・私も今気づいた。」
「佐紀ちゃん・・・。私もね、佐紀ちゃんのことが好き。」
「ただの友達じゃないよ・・・大好き。」

千奈美は一旦体を起こしてまたベンチの前に移動した。

「ほら、佐紀ちゃん。立って!」

涙でぐしょぐしょの顔なんて見られたくない。佐紀は両手で顔を隠して立ち上がる。
千奈美はそっと佐紀の手をつかむ。不思議と力が抜けて佐紀の手は抵抗なく顔から外れてしまった。

「佐紀ちゃん、こっち向いて。」

佐紀は千奈美を見上げる。佐紀の大きな目にはまだ涙が溜まっている。
両頬に流れた涙もまだ乾いていない。

千奈美はスカートのポケットからフェイスタオルを取り出すと佐紀の顔をそっと拭いた。

「千奈美・・・」

佐紀の口がへの字になってまた泣きそうになる。

「ほらほら、もう泣かないの・・・。ね?」

千奈美は笑って佐紀の頭に自分のおでこを当てて左右に動かす。
そして顔を上げると佐紀の事を抱きしめた。

最初は軽く、だんだんと強く・・・。
佐紀はもう泣き止んでいる。

さっきまであんなに切なくて苦しくて泣いていたのに・・・
いまは不思議な高揚感でいっぱいになっている。

胸が高鳴る。千奈美の鼓動も聞こえてくる。千奈美の鼓動も凄く早い・・・。


「信じても・・・いいの・・・?」

佐紀はまた千奈美を見上げた。

千奈美は佐紀の顔を見ていた。
千奈美の顔が近すぎて、何だか気恥ずかしくて佐紀は目を瞑ってしまった。
佐紀の顔に千奈美の吐息がかかり、一瞬・・・唇に柔らかく甘く触れる感覚があった。

千奈美は頬と頬をくっつけると、小さく

「うん」

と言い、優しく佐紀の背中を撫でた。




ブルブルブルブル。

少しウトウトしていた佐紀は携帯が震えた刺激で目が覚めた。千奈美からのメールだった。

『ごめんごめん(-人-*)御飯食べて部屋に戻ったらそのまま寝ちゃってた(*´▽`)』
『ね、明日帰りに鯛焼き食べない?』
『このまえ友理奈と食べたのがすっごくおいしかったの!(*≧∇≦)b』

もう眠くて目が半分閉じている佐紀は、とりあえず

「うんわかったー。じゃあ明日また一緒に帰ろうね♪」

とだけ打って返信する。

部屋の明かりを消してもぞもぞとベッドに潜り込んだ佐紀は、枕元においてある大きな豚さんのぬいぐ
るみを自分の右側に寝かせた。

このまえ千奈美がプレゼントしてくれた大事な大事なぬいぐるみ。
内緒だけど・・・こっそり「ちなみ」と名づけて話しかけたりしている。

右を向いて寝転がり、両手でぬいぐるみを抱きしめると・・・これ以上ないほどに甘えた声で

「おやすみ、千奈美。また明日ね」

と言ってキスをした。なんか・・・毎晩寝る前の習慣になっちゃったな・・・。

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