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リレー小説(僻地支部)コミュのストーリーB(名も無き喫茶店)

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コメント(43)

マスター「まぁ、慌てなさんなって。今、コーヒーいれるよ。」
「いゃ〜走った走った!水もらいま〜す。」
どんだけ早急な話なのか‥

確かに、長年の経験で培(つちか)った、絶妙な温度とタイミングで入れたコーヒーを、喉の渇きを潤す為、乱暴に飲み干されては、普段は穏和な私も、この後の相談も落ち着いて聞けたもんじゃない‥
心おきなく水飲んでくれ。
かつやは水が注がれたコップを無造作に掴み、一気に飲み干した。
その姿はマラソンランナーが給水所を通過するときのそれと似ていた。
そこで水分を取り、またそこから走り出すような、そういう顔をしていた。
だが忙しいお昼時ではなかったので、マスターも丁寧に
コップをさげコーヒーを注いだ。
マスターがコーヒーを注いでいる間、かつやはセブンスターに火をつけ、落ち着かない仕草でそれを吸った。
「おまたせ。」

コーヒーを差し出すと、不足していた養分が適度に満たされた為か、ぷかっと息を吹いた煙の向こう側からやっと話し始めた。
「今日は暑いですね。」

かつやは、まずはありきたりな言葉を
さりげなく静かに
落ち着いた口調でつぶやく。

ついさっきまでは落ち着かない様子だったのに・・・・。
おそらく、コーヒーの香りと味わいが、かつやをホッとさせたのだろう。
かつやは慌てることなく、次の言葉を冷静に探している。
「200万円くらいです・・。」

かつやはそう言うと、コーヒーをごくりと飲んだ。
そのとき、カップを持つ手は微かに震えていた。
そして、マスターの顔色をうかがいながら、無意味にカップの中でスプーンを泳がせ続けた。
マスターはびびった。

引き攣りそうな顔の筋肉の一つ一つを、
いつもコーヒーをドリップする時の、
その原型に留めておく事で精一杯だった。
「冗談ですよ・・。と言ったら逆に怒ります?」
かつやは少しひきつった笑い顔で言った。

マスターの頭の中に無数の「?」や「!」が飛び交う。まったく、かつやという人間はよくわからない。
「ひぃひぃひっ・・・ひゃはっ!・・うひゃひゃははぁはははっ!!」

その引き攣った笑いは、遂に決壊の一途を辿り笑いの大洪水となり、店中を満たし尽くした。
今日の天気は晴れ時々雨。にわか雨が降ったり止んだりでハッキリしない天気。
空模様と同じように、マスターとかつやのやり取りもハッキリしない。
その時、入口のドアが開き、カツヤの笑い声を掻き消す様にドアに付いた銀製のベルが鳴り響いた。

馴染みの爺さんだった。
マスター 「いらっしゃーーーい!!!!」

マスターはやけに元気のいい声を出した。
かつやとのぎこちない会話から一瞬解放されたせいだろうか。待ってました!と言わんばかり。まさにそういう感じの「いらっしゃーーーい!!!!」という掛け声だ。
爺さんは軽く会釈をし、西日が差し込む、いつもの窓際のテーブル席に着いた。

「‥宇治金時。」
「宇治金時!?そんなのこの店にありましたっけ?」
かつやは何故だか横から口を挟む。
口を挟みつつマスターの顔を覗き込んでみるとなんとも尋常でない青ざめ方をしている。

「マスター・・・・?」

しかし、かつやのその呼びかけにまるで耳を傾けることなく
マスターはその爺さんを怯えきったラッコのような目で凝視している。

さらにその反応を無視するかのように

「小豆は柔らかめでのぉおお・・」と

薄笑いを浮かべつつ老人が再びつぶやく。

マスターはかき氷を作り始めた。

爺さんはかつやの顔をじろじろ見ている。

かつやは不思議そうに「な、何か、僕の顔に何か付いています?」と爺さんに尋ねる。

爺さんは「あなたは・・、あ、いや、思い過ごしかもしれない。」と何かを言いかけたのだが、途中で話をやめた。
かつやは老人のこの一言が気になって仕方なかった。
(この老人は俺のことを知っているexclamation & question・・・・何者なんだ?)
かつやは横目でチラリと老人を見る。

老人はさっきの一言からの後は
ただひたすらに「ビリーズ・ブート・・・・・・」
と語尾の明瞭でない言葉を繰りかえすのみである。

そしてしばらくそのリズムが続いた後であった。

「タタァ・・ポペッ!」

突然の歓喜の声。

マスターの声であった。
かつやは何がなんだかわからず呆気にとられていた。

そして、この老人は急に立ち上がった。
「タァカッカッ・・・
お若いの・・『純粋なる森』についての話を知っておるか?」

鳩が豆鉄砲を喰らった様な顔付きで、かつやは首を横へ振った。

そう言ったマスターの声はファルセット気味に
きれいな弧を描いた。
その声に一同しばらく酔いしれる。



暫らくしてハッと我にかえるかつや。
「『純粋なる森』って何すか〜?」と、かつやはぶっきらぼうに聞いてみた。

かつやは実は『純粋なる森』それ自体にはあまり興味が無かったのかもしれない。
ただ、老人とマスターの間に流れる意味深な空気の正体を知りたかった。
「‥むやみに聞くでない!
いまじんじゃ!
想像が大事なんじゃ!」

と叫んだ為に少しむせたのか、咳をしながら水を口にした。

かつやは急に苛々しだした。この老人の得体の知れない雰囲気が苛々をつのらせた。マスターに相談事があるというのに、この老人が居るせいで話しづらくなったせいもある。

邪魔者、そう、かつやにとっては今この老人は邪魔者である。

「おい!じじい!わけわかんねーこと言うなよ!貴様、何者なんだ?」
かつやは堪えきれずに強い口調で叫んだ。

老人はまだ咳をしていた。だが、そんなことはかつやには関係ない。苛立ちをぶつけるようにして店のカウンターを両手で叩き、そして、かつやは急に立ち上がった。

カウンターに手を着いたまま、前にうなだれれ、
かつやの丸めた背中、
その黄緑色のTシャツの生地が、

次第に盛り上がっていった‥

マスターは客二人の様子を見ながら、そそくさと冷蔵庫からチョコレートケーキを取り出した。

そのとき何故チョコレートケーキを出そうと思ったのか、無意識の行動だった。
何か不穏な空気を感じて、その空気を変えようとした。たぶん、そんなようなことだろう。

マスターは微笑を浮かべながらチョコレートケーキを2つ、
かつやと爺さんに差し出した。

少々白々しい口調でマスターは言う。
「うちはケーキは置いてないんだけどさ。
こないだ常連さんが差し入れしてくれてさ〜。
私は甘いものが苦手なんで、よかったらどうぞ。」

爺さんはまだ少し咳をしていたが、マスターと目を合わし微笑んだ。

かつやはそんなことはお構いなしに爺さんを睨んでいる。

そして、微笑んでいた爺さんは急に人が変わったように、毅然とした口調でかつやに激しく言葉を浴びせる。
「おまえに食わすチョコレートケーキは無い!
今すぐここから出ていけ!」

拳を固く握り震えるカツヤを尻目に、老人はケーキにフォークを突き刺した。

「なぁ〜に、さっきテレビでやってたんで、ちょっと使ってみたかったんじゃよ! ふぉふぉふぉ、どーれ、遠慮せず頂くとするかのぉ〜」
「このくそジジイ!」と、かつやは半分笑ったような半分怒ったような顔でつぶやく。

と、そのとき、ゆっくりと店のドアが開き、
一組の若い男女が入って来た。

男 「マスター、どうも。あっ、あれ、じいさん、こんなところで会うなんて奇遇ですね。」

女 「マスター、チョコレートケーキ美味しかったですか?」

二人の笑顔が
マスターの心の肺に
新鮮な空気を送り込み

引き攣った笑顔のため目尻に出来た
多すぎなシワが
徐々に潤ってゆく様に

かつやの心へ穏やかさを吹き込み
チョコレートケーキを頬張らせた。
マスター 「あぁ。チョコレートケーキね。俺さぁ、甘いの苦手だから、ちょうど今来てるお客さんに食べてもらってたんだ。」

じいさん 「お、おまえは、タケ・・。いや、なんでもない・・。」

かつや 「じいさんは延々とその調子か?思わせぶりな言動や行動ばかりだな。」

かつやは、じいさんに対して半ば呆れていた。じいさんに呆れてはいたものの、肝心のかつや自身の悩み相談はまだ全然進んでいない。じいさんに翻弄されていたら何もできやしない。

また新たな客が来たので、さらに話しづらくなってしまった。
悩み相談はまた日をあらためて話そうかという考えを脳裏に浮かべつつ、
かつやはタバコに火を点けた。

今日はよくわからない一日になりそうだ。なんとなくそんな予感がした。かつやはタバコをふかしながらほんの数秒間現実逃避した。
「夏バテとかは無縁そうだな、じぃさんは!」

「あ、そーだったんですかぁ?マスター。
すごく甘党だとお聞きしていた様に思ったんで‥」

そう言いながら、
ガタイの良い青年と、プリーツの入った白いワンピースの女性は、
当たり前の様に爺さんのいるボックス席へ座った。
じいさん 「おまえさんたち。仲良くやっとるのか?」

じいさんはカキ氷をほおばりながら、
青年のほうをちらっと見る。

「おうっ!ホント、爺さんの言う通り順調そのものだぜ!
最初は半信半疑だったけどな・・
今でも信じられないよ。」

と言い切ってから、男は水を一気に飲み干した。
爺さんと若い男女が語らい始めた頃合いを見計らって、かつやはマスターに小声で話しかけた。

「マスター、実はさ、相談があって。」

かつやが話しかけてきて、マスターは目を細めながらゆっくりと頷いた。俺になんでも話してごらん、とでもいうような柔らかな笑みを浮かべながらゆっくりと頷いた。
かつや 「最近腰痛がひどくてさ。どこかいい病院ないですかね?」

マスター 「あぁ、そうなんだ。それなら・・」
とマスターが言いかけた瞬間、
爺さんが会話に割り込んできた。

爺さん 「ふふふ。腰のことかい?ふふふふふ。」

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