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リレー小説(僻地支部)コミュのストーリーA(3人の物語)

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コメント(35)

ヒロシは半年前の出来事を思い出していた。
限りなく真円に近い月を見て、タケシも半年前の事を思い出していた‥
過去に想いを馳せる二人を見てアキコは「ねえ、ヒロシ、タケシ。二人とも遠い目をしちゃって、一体どうしたの?」と話しかけた。
タケシ「適当に車を走らせたのはいいんだけど、

ナビないしここはどこだかわからないんだ。。。」
後部座席に座っているヒロシは二人の白々しい会話など上の空で、ただひたすら流れる景色を眺めている。
そして、自分達の行く先を暗示するかの様に、月は朧(おぼろ)げにその形を歪めてゆく。
タケシは、東京山の手の中流家庭の長男として生まれた。
さほど生活に不自由らしい不自由はなく、父親が経済に疎(うと)かったのが幸いしてか、バブル〜崩壊の波もさほど影響せず、
高校卒業後、気ままなフリーター生活を謳歌していた。
飽きっぽく、バイト先も1・2ヶ月ほどで転々とするタケシにも、ひとつだけ通い続けているのが猪山じいさんのお宅である。
タケシは車を運転している間、猪山じいさんが半年前につぶやいた言葉の意味を考えていたのだ。
「タケシ。転がる石には苔が生えないぞ。」。猪山じいさんは口癖のようにその言葉をタケシに投げかけていた。
しかし、なんで今この状況で猪じいの口癖を思い出すのか・・

必要な時にそのファイルが見付からない、日頃の使い慣れていない自分とその脳味噌を、今更ながら呪った。
猪じいから見るとタケシは孫のようなものだ。
猪じいはタケシのことをかわいがっていた。そして、タケシもそれはそういうものとして理解していた。
タケシにとっては、それがうっとうしいという気持ちも多少あった。
おそらく、タケシが猪じいを思い出すことは稀だが、猪じいはいつもタケシのことを思い出しているだろう。
その頃、猪じいは馴染みの喫茶店で宇治金時を頬張り、その甘さと頭の痛みと格闘していた。

その時・・
店の入り口についている鈴がガラガラと鳴った。
「なんだお前さんかい。タケシかと思ったよ」
 猪じいは一瞬だけ入り口の方を向き、宇治金時を口へ運ぶ。
「あいかわらず素っ気ないねぇ。タケシ以外の人は眼中にもないようだ」
 若い男の声。チャラチャラと腰につけているアクセサリーがやかましく響く。男は、猪じいの隣へ座る。
「で、どうすんのおじいちゃま? 答えを教えてくれよ」
「まあ待て、これが食い終わったらじゃ‥慌てるでない。」

「いちいちイラつくじじぃだなぁ、さっさと教えろっつーの!」

若い男は、今にも噛み付かんばかり前のめりになり、猪じいの耳元まで顔を近付け騒ぎ立てた。

が、猪じいは何事もなかったかの様に、黙々と氷を頬張った。
「ごらぁ!じじぃ!絞め殺すぞ!」

男は鬼の形相で、
ぶら下げてるウォレットチェーンを乱暴にベルトループから引き契り、
猪じいの首元へと近づいた。

「しゃー!おらー!」と猪じいは雄叫びをあげて立ち上がった。
そして、ボクサーのようなポーズをしながら、軽くステップをふんだ。

若い男は一瞬たじろいだ。
そう‥ヘッドライトが照らし出す世界、僕等が今いる樹海の夜の姿‥

本当に途方に暮れるしかなかった。

タケシからの話に希望を抱き、前の二人の一言一言にその牙城は次第に崩れてゆき、
とうとうアキコは後部シートで泣き崩れてしまった。

アキコ 「私・・、私・・。」
とぎれとぎれのアキコの声が車の中で小さく響く。

ヒロシ 「どうしたの?」

タケシはまだ過去の回想の中を漂っている。

ヒロシ 「おい!タケシ!こんなときにおまえ。何ぼーっとしてんだ!!」

タケシ 「あ、いや・・。カーナビ見てた・・。」

タケシはようやく今目の前にある現実に目を向けた。

タケシ 「樹海かぁ・・。」
タケシは困難な状況のときに小声で独り言を言う癖がある。語尾は「かぁ。」や「だなぁ。」が多い。そのことはヒロシもアキコも知っている。
相槌を打つ時は勿論
間を嫌う時なども

「そっかぁー‥」

などと物思いにふける様に呟く。

それはタケシなりの「照れ」の表れなんだと思う。

そうする事で、自分の間合いを取り戻そうとしているのだろう。

そんなタケシの振る舞いを、かわいく思ってしまっている事にアキコは気が付いていた。
タケシ 「右へ曲がると良さそうだ。」

ヒロシ 「そうなのか?何を根拠に?」

タケシ 「まぁ、いいから。任せてくれ。」

タケシは自信ありげに言った。
そして、次の曲がり角を右折した。

枝を四つのタイヤで押し潰しバリバリと音を立て、
暗闇をヘッドライトが切り裂き進んでゆく。

深夜の樹海で車を走らせる、何て無謀なことをしてるんだ・・

ひろしは今更ながら後悔した。
タケシ 「そういえばさ。ヒロシの妹、看護士やってるんだよな?」

ヒロシ 「あぁ。そうだけど。何を唐突に。」

タケシ 「なんかさぁ。最近体調悪いというか。何か変な感じなんだよね。妹のつてで、いい病院紹介してくれない?」

ヒロシ 「うちの妹の病院はそんなに有名でもないしなぁ〜。」

タケシ 「いや。体調悪いっつーのは冗談だよ。でもさ、最近変な夢を見ることが多くてね。なんか事故とか嫌なことが起こる前触れかなぁと思ってさ。病院に担ぎこまれる日が近いかもって思うんだよ。」

ヒロシ 「おいおい。こんな状況で変なこと言うなよ。リアル過ぎるぞ。」
「ははは!マジ笑えねぇよなぁ、こんな状況でさぁ!
わりぃわりぃ・・
で、妹ってもう結婚してたんだよなぁ?」

この状況と言うより、たけしの事ごとく緊張感が抜けた言動に対してなのか、ひろしは気の抜けた声を発した。

「・・・あぁ」
アキコ 「あのさぁ、私ちょっと・・」

ヒロシ 「何?」

アキコ 「あ、いや、なんでもないの・・。とにかく早く道を進みましょう。」

タケシ 「なんか言いたいことあった?まぁ、いいけど。」

アキコはひどく怯えていた。ちょうど一週間前に今の状況と似たような光景を夢で見たからだ。

アキコ 「とにかく早く!」

アキコはちょっとヒステリー気味に叫んだ。

タケシという人間は、どうしてここまで楽観的に振る舞う事が出来るのか・・
その言動の一つ一つが、ただでさえ神経質なヒロシへ彼の不安定な心に重くのし掛かってゆく。

アキコだって理解はしていたつもりだった・・
しかし、いざその場に身を置くと抑える事の出来ない感情が爆発してしまった。
タケシは急ブレーキを踏んだ。
鈍い音が響き渡る。

ヒロシは混乱しているのだろうか、車の天井を2〜3回叩いた。

アキコは怯えながら、身を縮めて俯いている。
「もしかして・・。もしかして・・。」、アキコは小さな声でつぶやく。

タケシ 「まぁ、みんな落ち着け。」

そう言ってタケシは車のドアを開け外へ出た。

<ジリジリジリッンー>

6時半に
けたたましく鳴る目覚まし時計は

いつも通りヒロシを悪夢から救った。


耕しても耕しても

大地に生える作物の大部分は刈り取られ

自分の手元に残る僅かな収穫

それも願望とは程遠いものへと消費されてゆく


路地、電車、喫茶店、オフィス、居酒屋・・・

何処へ居ても
出所の解らない偏頭痛と虚脱感に苛まれていた。

行き詰まり

やり過ごす日々



ある日

妹から電話がかかった。

「来月お爺ちゃんの七回忌だけど・・戻って来れるの?」

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