登記の勉強と情報コミュの信託登記3

信託登記について

2012年08月23日 (木) | 編集 |

１、定義

　・委託者とは、受託者に対して財産の管理処分を委託するもののことである。

　・受託者とは、委託者から財産の管理処分を受けるもののことである。受託者が数人いるときは合有となるので持分はない。

　・受益者とは、信託の利益を受け取るもののことである。

２、信託登記のやり方

　（１）、意義

　　・所有権移転登記と信託登記は同時に、一つの申請情報（つまり一枚の申請書で）で申請する。

　（２）、申請情報

　　登記の目的　所有権移転　信託

　　原因　　　　年月日信託

　　　　cf.信託契約が成立した日

　　権利者（信託登記申請人）　　　住所　受託者
　
　　　　cf.信託登記は本当は受託者の単独申請だが所有権移転登記と一緒に申請するので信託登記申請人とかいておく

　　義務者　　　　　　　　　　　　住所　委託者　

　　　　cf.委託者が複数の時は合有なので持分はかかない

　（３）、申請手続

　　①、添付情報

　　　・所有権移転登記の基本的な添付情報とともに、信託目録に記録すべき情報を記載した書面を添付する。信託目録とは、委託者・受託者・受益者が誰であるのか、何のための信託であるのか、財産管理はどうやってやっていくのか、どんな場合に信託は終了するのかなどが具体的に書かれてあり、これは登記官が作成するので、そのための情報を提供する。

　　②、登録免許税

　　　・信託登記については、所有権に関する信託であれば４/１０００、所有権以外に関する信託であれば２/１０００。

　　　・所有権移転に関しては非課税である。

３、信託の登記の登記事項

　（１）、信託の登記の登記事項
　
　　①、委託者、受託者及び受益者の氏名又は名称及び住所

　　②、受益者の指定に関する条件又は受益者を定める方法の定めがあるときは、その定め

　　③、信託管理人があるときは、その氏名又は名称及び住所

　　　・受益者が現に存しない場合に指定をする。受益者が現に存しない場合とは目的信託の場合や出生前の子どもを受益者とした場合などである。信託管理人は受益者がする一切の裁判上裁判外の権限を有する。

　　④、受益者代理人があるときは、その氏名又は名称及び住所

　　　・受益者が現に存する場合に指定する。これは受託証券発行信託など受益者が不特定多数に及ぶときに使われる。受益者代理人は受益者がする一切の裁判上裁判外の権限を有する。

　　⑤、信託法（平成十八年法律第百八号）第百八十五条第三項に規定する受益証券発行信託であるときは、その旨

　　　・受益権を有価証券化することが新信託法において許容された。

　　⑥、信託法第二百五十八条第一項に規定する受益者の定めのない信託であるときは、その旨

　　　・目的信託という。

　　⑦、公益信託ニ関スル法律（大正十一年法律第六十二号）第一条に規定する公益信託であるときは、その旨

　　⑧、信託の目的

　　⑨、信託財産の管理方法

　　⑩、信託の終了の事由

　　⑪、その他の信託の条項

　（２）、受益者の氏名と住所を省略できる場合

　　①、不動産登記法第９７条２項

　　　前項第二号から第六号までに掲げる事項のいずれかを登記したときは、同項第一号の受益者（同項第四号に掲げる事項を登記した場合にあっては、当該受益者代理人が代理する受益者に限る。）の氏名又は名称及び住所を登記することを要しない。

　　②、説明

　　　・３号の信託管理人は受益者がいないときに登記されるからであり、６号の目的信託はもとから受益者がいない。その他は申請人の負担を考えて省略してもよいこととなっている。

　　　・受益者のなかには代理人を指定した受益者と指定してない受益者がいるが、４号の受益者代理人を登記すれば受益者の氏名や住所が省略できるのは、受益者が指定した受益者代理人が登記されているときだけである。

４、信託登記の申請の特徴

　（１）、保存、設定、移転、変更と信託登記は一つの申請情報で申請する。

　（２）、自己信託登記について

　　①、自己信託とは？

　　　・自己信託とは委託者が自ら受託者となる信託である。

　　　例）、委託者の財産が信託財産となると、委託者の債権者がその財産を差押えることができなくなる。よって、委託者に障害を持った子がいるときに今すぐその子に所有権移転登記をすることはできない。しかし、委託者の財産にしておいたら差押えされる可能性もある。そこで、その財産を信託財産とすることによって差押えを免れながら子にその財産を移転させるために委託者が管理できるように自己信託をする。
　
　　　・ただし、自己信託は強制執行における競売妨害に使われる可能性もあるので、公正証書をつくる必要がある。

　　②、なすべき登記

　　　・委託者の自分の財産を信託にしただけなので移転ではなく変更登記をいれる。

　　　・委託者＝受託者が単独で申請することができる。つまり、「信託財産となった旨の登記」（変更登記）も信託登記も両方とも単独申請できるということである。

　　③、申請書

　　　目的　信託財産となった旨の登記　信託

　　　原因　年月日　自己信託

　（３）、信託登記は受託者の単独申請である。

　　　・受託者が信託登記の申請をしないときは、委託者または受益者が代位で信託登記を申請することができる。

５、信託登記の変更

　（１）、申請の仕方

　　・信託登記の変更は受託者からの単独申請である。この申請に基づいて信託目録の変更を登記官が行う。

　（２）、受託者が申請しないとき

　　・受託者が信託登記の申請をしないときは、委託者または受益者が代位で信託登記を申請することができる。
　
５、信託登記の抹消

　（１）、どのようなときに信託登記の抹消をするか

　　①、信託財産を処分した

　　　例）、信託財産＝不動産を処分すると今度はその対価としてのお金が信託財産となるので、不動産についての信託登記は抹消する。

　　②、信託が終了した

　　　例）、今まで受託者に信託していたのを、信託を終了することによて委託者に信託財産がかえってくるので不動産については信託登記の抹消をする。
　
　　③、信託財産が受託者の固有財産となった

　　　例）、信託していたら委託者が受託者にお金を払わなければならないが、委託者が払えなくなったので信託財産を代物弁済として受託者に渡したら、信託財産は受託者の固有財産となるので、信託登記は抹消する。
　
　（２）、どのような登記をいれるのか？

　　①、信託財産を処分した

　　　・第三者への所有権移転登記と同時に信託登記を抹消する

　　　　→登録免許税は所有権移転については２０/１０００で抹消登記は不動産１個１０００円である。

　　②、信託が終了した

　　　・委託者への所有権移転登記と同時に信託登記を抹消する

　　　　→登録免許税は所有権移転については受託者から委託者へ移すときは免除、受託者から受益者へ移すときは２０/１０００、受託者から委託者の相続人へ移すときは４/１０００で、抹消登記は不動産１個１０００円である。

　　③、信託財産が受託者の固有財産となった

　　　・変更登記と同時に信託登記を抹消する

　　　　→登録免許税は変更登記だけど信託登記をいれたときは免除されていたのでここで２０/１０００が課され、抹消登記は不動産１個１０００円である。

　（３）、申請の仕方

　　・信託登記の抹消も所有権移転登記や変更登記と同時に一の情報で申請する。

　　・信託登記の抹消も受託者の単独申請である。

　　・信託登記の抹消

関連記事◦不動産登記制度の意義（３）
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◦不動産登記事務取扱手続準則による建物の認定基準
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◦不動産登記の実体的有効要件

コメント(2)

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[1] mixiユーザー 06月30日 21:15

http://rekishiiroiro.blog130.fc2.com/blog-entry-903.html

[2] mixiユーザー 07月03日 20:24

租税特別措置法第７２条，第７２条の２，第７３条及び第７５条関係＞

適用期限の２年延長（平成２７年３月３１日→平成２９年３月３１日）

　(1)土地の売買による所有権の移転の登記及び土地の所有権の信託の登記に係る登録免許税の軽減措置（租税特別措置法（昭和３２年法律第２６号）第７２条），(2)住宅用家屋の所有権の保存の登記に係る登録免許税の軽減措置（同法第７２条の２），(3)住宅用家屋の所有権の移転の登記に係る登録免許税の軽減措置（同法第７３条），(4)住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定の登記に係る登録免許税の軽減措置（同法第７５条）につきましては，その適用期限を２年延長することとされ，税率の軽減措置が適用されます。

（参考：税率）
(1)土地の売買による所有権の移転の登記
　 1000分の15
　　
土地の所有権の信託の登記
　 1000分の3

(2)住宅用家屋の所有権の保存の登記
　 1000分の1.5

(3)住宅用家屋の所有権の移転の登記
　 1000分の3

(4)住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定の登記
　 1000分の1

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