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高木 竜馬:RYOMA TAKAGIコミュのスカラシップレポート(2010年 4月度 & 5月度 & 6月度)

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                               撮影:三好 英輔 氏


      スカラシップレポート(2010年4月度 & 5月度 & 6月度)
                              高木 竜馬

               2010年 4月度
 4月は、アンジェラ・ヒューイット先生のマスタークラスを受講しました。残念ながら、地球の裏側の出来事 ― アイスランドの火山噴火の影響で飛行機が飛ばなくなり、アンジェラ・ヒューイット先生の来日公演前半がキャンセルになりました。マスタークラスも一旦は中止になりました。ところが、公演後半のトークコンサートのあとに、突然先生が「こちらに、先日中止になったマスタークラスを受講する予定だった方は、いらっしゃっていますか」とおっしゃられましたので、「はい。楽譜も持って参りました」と申し上げると、貴族のようなお顔で笑われて「それではすぐに始めましょう。準備なして弾けますか」 とおっしゃって下さって、急遽マスタークラスが復活しました。

 あのグレン・グールドにつながるアンジェラ・ヒューイット先生のバッハで、まず大きな感銘を受けたのは、『調性格』から導き出された調ごとの演奏の方向性を、更に深く追及し、そしてそれらを徹底的に表現し尽くす極めて積極的な解釈と演奏に対する態度でした。例えば「ニ長調」→「祝祭歌。金管によるファンファーレ」→「付点音符を二重付点に近付けることで、よりリズムを鋭くして、やや攻撃的に感じるくらいまで音楽を活発にさせる」のように。
 ファンファーレを単にイメージとして感じるだけではなく、ピアニズム自体を金管楽器の発音に近付けるためには具体的に何をどうすればよいかを考え尽くして、自信をもってその考えの通りに実行する果断な演奏姿勢が、とても勉強になりました。

 また、ハイドンの演奏スタイルについても、心に残るご示唆を頂きました。「 例えば ff 。ハイドンの快活さや明るさを表現したい場面でも、ハイドンの時代の様々な背景からドュナーミクを抑制した狭い世界に私たち演奏家を閉じ込めてしまう表現方法も確かにあります。でも、どうすればハイドンのスタイルに反するような重く分厚い ff を出さないかを、よく考えてみることこそが重要な本質なのです。音量は現代のホールとピアノに見合う大きさをもっているけれど、確実にハイドンらしい大きな音量の ff を見つけ出すことは可能なことなのです」
 「そのような方向で考えることで、自らの表現の自由な範囲を広げる方向に、自らを導いていくことこそが、私たち演奏家には重要な心構えなのです。具体的なピアニズムで言いましょう。単音では、よりスタッカートに近い短い発音で弾けば、ブラームスのような重く分厚い音にはなりませんでしょうし、和音においてはバスや内声を抑え、ソプラノで ff を出そうとすれば、より軽やかさを保ったハイドンらしい音楽の枠を崩すことはないでしょう」
 「表現の範囲を制限する努力より、表現の可能性を広げるための研究や努力の方が、あなたにとって、より愉しくてやり甲斐がある努力なのではありませんか?」


               2010年 5月度
 6月に、生まれて初めて一人で外国で約1ヶ月間生活しますので、その準備をしました。滞在先はウィーンです。航空券の手配、アパートの予約や予約金の送金、レンタルピアノの手配、語学学校の予約などを自分でやりました。その他にも、簡単な料理や洗濯の仕方など日常生活のことを、母から教わりました。特に料理は、習い始めてみると、奥が深い世界ですので興味津々です。お皿洗い、お米研ぎと水加減、目玉焼き、ソーセージの茹で方と炒め方、スパゲッティのデスペラートとトマトソース、肉野菜炒め、じゃがいもとホーレン草のバターソティ、果物の皮むきなどが出来るようになりました。

 ドイツ語の勉強も集中して取り組みました。習い始めてまだ半年のため、やはり語彙が不足しています。朝1時間と夜2時間、毎日単語の暗記をしました。目標は、6月末までに 2000語の暗記です。8月にも、ハノーファの近くで開催されるマスタークラスに、やはり一人で参加する予定ですので、この機会に言葉が少しでも出来るよう、集中的に勉強したいと思います。

 5月もコンサートはありませんでしたので、とても淋しかったですが、新しい課題の「音のレリーフ」作りに専念しました。声部ごとに、120%から20%の幅で、一つ一つ音量や音色や音の雰囲気を定めて、声部と声部の間に遠近感や濃淡を出して、音楽を立体的に描き出す具体的な手法です。最終的には、それぞれのレリーフが無理なく出来る指の角度や仕事量を得るために、指や手の甲の形を考える事です。瞬時にどんどん変わっていく運指の中で、両端のソプラノやバスをコントロールするのは比較的容易なのですが、内声まで制御するためには、その時々で手の甲の形を大きく変えることが、今の私にはまだ必要です。

 あらためて偉大なピアニストのDVDを観ると、音楽は楽々と前へ前へと進めますが、音を捉えるピアニズムは、すべての声部の一音一音に対しはっきりとした意思を込め、完全に「音のレリーフ」をコントロールし切っています。人間業とは思えません。また一つ、偉大さの原因が分かったのは良かったのですが、一生掛かっても終わらないほど膨大な量の職人作業です。しかし「音のレリーフ」作りが上手くいくと、華やかな音楽は一層輝かしく、シリアスな音楽はまるで心を鷲掴みにされるように仕上がり、自分自身でも興奮するほどの音楽が出来上がります。
 リサイタルの、最初の一音から、アンコールの最後の一音まで、この「音のレリーフ」が作り込まれているピアニストに、いつかなりたいと思いました。


               2010年 6月度
 6月は、1ヶ月間学校を休みにして頂き、ウィーン国立音楽大学のコンサートピアノ科の受験に行って参りました。アパートを借りレンタルピアノを入れて貰い、ミヒャイル・クリスト先生のレッスンに通いました。ドイツ圏の音楽大学は、国家が授業料の大部分を補助してくれる代わりに、ドイツ語中級の資格試験 ZD が課されます。これがドイツ語を勉強し始めてまだ半年の私には難しい壁でしたので、ウィーンでも語学学校にも通いました。また初めての単身での渡航でしたので、基本的な生活のための料理や洗濯などを母に教わり出発しました。

 充実した夢のように素晴らしい毎日でした。ムジークフェラインで、ムーティ指揮のあのウィーンフィルを2度も聴くことが出来ました!! 1度はゲネプロを立ち見席で、もう1回は、見ず知らずのご親切なご老人夫婦から入手困難なチケットを頂戴して。しかも最上の席のチケットを頂戴しました!! 完璧な演奏に生まれて初めて接しました。圧倒されました。 それと、ルドルフ・ブッフビンダーのピアノ。シュテファン寺院のモーツァルトのミサ曲もそうでしたが、音があたかも天から降って来るようで、神々しい時のうつろいに身も心もを委ねました。フォルクスオパーには3回通いました。「トスカ」「トレヴァトーレ」「こうもり」を観ました。残念ながら、今回はシュターツオパーには予定が合わず行けませんでしたが、次の機会に是非行きたいと思います。

 また、美術史博物館とミュージアムクウォーターに行きました。何と素晴らしい世界でしょうか。レンブラントの群を抜く緻密さと、明暗のコントロールが描き出す光と闇の二元的世界観。ルーベンスの荘厳かつ神々しい雄大な縦の世界。ラファエロの描く美しい女性像。叙事詩的な広大な世界を描きながら、細部にはくすりと笑ってしまうようなユーモアを含ませるブリューゲル。フェルメールの描いた絵には、息を吹きかければまるで今すぐにでも動き出しそうなリアリティ・生命力があります。ファン・ダイク。その絶望的な世界には引力があり、まるで自分もその暗闇に在るのかと錯覚してしまいます。ベラスケスの描く少女はこの上もなく愛らしく、カナレットの風景画は、嗚呼表現を志す者は彼のように鳥の目と虫の目を上手く使い分けられるようにならなくてはいけません。アルチンボルドほどユーモアに富んだ絵はないでしょう。そしてシーレです。シーレだけはミュージアムクウォーターのレオポルト美術館で見ました。人物画こそ様々なものが混沌としてしまってあまり魅力的ではありませんでしたが、風景画の物憂い雰囲気と哀愁を帯びた絵画の数々は、まるで誰かの夢の世界へさ迷ってしまったかのようでした。いや、私もシーレが描いた風景を、夢で確かに見たことがあるような気がするのです。
 どの絵も、何より「心」を大いに刺激してくれました。

 肝心の試験ですが、1日目は楽典・楽理、2日目にピアノ実技でバッハ・古典派ソナタ・ロマン派エチュード・ロマン派作品・近現代作品でした。中1日空けて、3日目にドイツ語面接・会話、最終日にドイツ語文法の計4日間です。毎日、試験終了後に結果発表があります。

 楽典・楽理はとても簡単で満点。ピアノ実技はたった15分程度の抜粋演奏でしたが、ピアノ科全体で 120人の応募の方々の中で1位を頂きました。試験を終わった直後に、ロビーに出て来られた試験官の教授の先生方から次々に握手を求められ、「感動しました」と褒めて頂いたのが、とても嬉しかったです。合格者は13名。日本人は8名の方が受験されましたが、折角知り合いになりましたが、残念ながら皆さん良い結果が出なかったそうです。

 問題のドイツ語ですが、面接・会話は何とかギリギリで合格を頂けましたが、翌日の文法で「あともう少しでした。追試を受けて下さい」と言われてしました。秋にドイツ文化局が運営する「ゲーテ・インスティトゥート東京」で追試を受けることになりました。一年以内にドイツ語の追試に受からないと、音楽大学の合格資格自体も取り消されてしまうそうです。

 8月下旬には、北ドイツのハノーファの近くのゴスラーに半月ほど伺い、アリエ・ヴァルディ先生のマスタークラスに参加いたします。ゲリット・ジッターバルト教授の古楽器クラスからもお声を掛けて頂きましたので、ハイドンとモーツァルトのソナタもって行きたいと思います。ウィーンでの外国生活はとても素晴らしかったので、ゴスラーのホストファミリーの方々との出逢いも含め、今から本当に愉しみです。伝統のウィーンと最先端ハノーファとの魅力の比較も、きちっとして来たいと思います。

コメント(4)

竜馬さんのウィーン国立音楽大学への首席入学決定の報に接し、こころより祝詞を申し上げます。

よく設えられたプログラムの下で、クラシカルの本流を歩まれる高木家のご方針に敬意を表するものです。そうした竜馬さんの将来の大成を確信しています。

本当におめでとうございます。
 ○ カンタータ さん

 お祝いのお言葉を頂戴し、誠に有難うございます。

 音楽大学の試験は、お陰様で良い成績だったのですが、オーストラリア政府の
統一ドイツ語試験では筆記試験で一発合格を貰えず、追試試験を受けなければ
なりません。ベルリッツに通わせたためでしょうか、会話試験は合格でしたが。
まだ当分の間、ドイツ語の受験勉強が続きます。
レポートを読ませて頂きました。情景が浮かぶ内容に、読みながらも世界に入り楽しませて頂きましたグッド(上向き矢印)
音楽大学首席合格、本当におめでとうございますグッド(上向き矢印)
音楽大学入学後も、レポートは、また配信されますかexclamation & question
毎回、とても楽しみなもので、気になってしまいまして…冷や汗
 ○ HIME さん

 有難うございます。一番の収穫は、一人で一ヶ月間生活ができたことかも
知れません。

 中学校一年生の時から、江副育英会さんからスカラシップを頂戴していて、
毎月レポートを提出して参りました。ちょっと調べましたら、中学校三年生の
4月分から、mixi に載せさせて頂いておりました。スカラシップ自体は、
もう6年間も頂戴しておりますから、そろそろ卒業かも知れませんが、
その後も自立するまでは書き続けるよう、勧めてみたいと思います。

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