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騒音駆け込み寺コミュのマンション騒音トラブルの解決策を裁判例から読み解く

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連載特集 : 第110回 マンション騒音トラブルの解決策を裁判例から読み解く
 集合住宅の騒音問題は今に始まったことではないが、これだけマンションが身近な居住形態として定着した現在でも、画期的な解決策は見つかっていない。それどころか、むしろエスカレートする様相を見せており、傷害事件にまで発展するケースさえある。これでは、快適なマンション暮らしなど望めるはずもない。一体、どうすればトラブルを減らすことができるのだろうか?―― 頭の痛い問題だ。そこで、今回は上下階の騒音トラブルに限定して、1つの裁判例を紹介することにする。裁判官の考え方を参考にしながら、騒音問題の本質および解決策を導いてみたい。

■「物音がうるさい」と、上階のマンション住人が腹などを刺される

 2007年12月、愛知県内のとある分譲マンションで、35歳の女性が自宅の玄関先で腹などを刺される傷害事件が発生した。犯人は同じマンションで被害者宅(夫と子供3人の5人家族)の真下の部屋に住む38歳の男。物音がうるさかったことに腹を立て、犯行におよんだと供述している。取り調べによると、「普段から上の階の音が気になっていた。今日もうるさくてキレてしまい、刺した」「毎日のように天井から音がする。昼間でも足音がうるさい。辛抱できなかった」などと話していたそうだ。昨今、常識では到底、理解できない身勝手な事件が後を絶たないが、同じマンション内でこうした惨事が起こってしまうと、他の区分所有者への影響(心のケア)、あるいは、マンションの今後の資産価値を考えても、管理組合としては再発防止に向けた施策が欠かせなくなる。

 さて、冒頭から衝撃的な話題に触れたが、このように上下階の生活騒音をめぐる言い争いは枚挙にいとまがない。騒音トラブルの典型例であるカーペットをフローリングに変更したことによる訴訟も数多く存在する。そこで、あるフローリング工事をめぐる裁判に注目し、原告側に軍配が上がったケースを紹介する。

 今回の舞台は、東京都内にある鉄筋コンクリート3階建ての高級分譲マンションだ。1993年(平成5年)11月上旬、203号室の区分所有者(被告)が自室の一部床をカーペットからフローリングに変更した。このマンションでは、フローリングへリフォームするには管理組合へ届け出ることが使用細則に定められていた。しかし、被告は届け出を怠り、また、今回の原告である103号室の区分所有者の同意も得なかった。「工事をするので、数日間、騒音を我慢してほしい」「音を立てないよう気をつけて生活する」旨の説明だけだったそうだ。そして、11月下旬、工事が始まり、数日でリフォームは完了した。

■上階の物音で朝、目が覚める日が2年半も続く

 原告の苦悩が始まることになったのは、まさに、この日からだった。歩く音・イスを引く音・掃除機の音など、あらゆる生活音が断続的に103号室に響き聞こえるようになった。このため、原告は被告が寝静まるのを待って午前2時以降に就寝し、朝は朝で加害者が起床する音で目を覚ますようになったという。

 そこで、限界に達した原告は被告へ原因調査を依頼。驚いたことに、使用したフローリング材は、本来、1階床用として用いられる極めて防音性能の低い床材であったことが判明した。その上、コンクリートスラブに直張りだったことが、より床衝撃音を伝えやすくした。あわてた被告は補修工事を行ったり、また、理事会に仲裁に入ってもらうなど、お互いに解決へ向けた努力を重ねた。しかし、いっこうに改善のきざしは見えず、ついに原告は(1)騒音の差し止め(原状回復工事)、(2)不法行為に基づく慰謝料300万円――を請求する訴訟を提起した。

 そして判決として、差し止め請求は棄却され、慰謝料請求の一部(75万円)のみが認容された(東京地裁八王子支部 平成8年7月30日判決)。

■原状回復を課すことは被告の不利益につながる

 騒音といった主観性や感受性を伴う判断には、必ずといっていいほど「受忍限度」という考え方が登場する。受忍限度とは意見の異なる両者の調和点のことで、「ここまでは我慢できるであろう」という限界点のことでもある。

 今回、本件では「受忍限度を超えている」と判示された。その理由の1つとして裁判長は、「管理組合への届け出を怠った」という手続き上の不備を指摘している。本件マンションでは使用細則に専有部分の仕様変更に関する規定が盛り込まれており、このルールに違反したことに重きを置いたことによる。と同時に、遮音性能の劣るフローリング材を使用したことも配慮不足であったと断じている。現在は建材技術も進歩し、防音性能の高い床材も誕生している。にもかかわらず、リフォーム業者任せで、何ら指示をしなかった。適正なフローリング材を選択していれば、これほど原告が精神的な苦痛を被ることはなかったというわけだ。

 しかし一方、原状回復工事までは必要ないとも判示している。騒音被害を差し止める(=現状回復する)ことによって生じる被告の不利益と、差し止めを認めない(=原状回復しない)ことによって生じる原告の不利益とを比較衡量した場合、フローリングへの変更には一定の有用性(メンテナンス面や衛生面)があり、その上、原状回復費用を考慮すれば、直ちに差し止め請求を是認するほどの違法性があるとまでは言い切れない、というのがその理由だ。原告に落ち度はないものの、原状回復は被告に対して相応の費用と損害をもたらすと説明している。いかに騒音問題が奥深く、同時に根深いか。こうした判決理由からも現状が垣間見える。

■騒音紛争の“真”の犯人とは一体、誰なのか?

 こうしてみると、騒音紛争の“真”の犯人とは一体、誰なのか?―― このような疑問が頭をよぎる。区分所有法には「共同の利益」という考え方があり、「区分所有者は建物の保存に有害な行為その他建物の管理または使用に関し、区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」としている。かみ砕いていえば、区分所有者は専有部分や共用部分を使用する際、他の区分所有者に迷惑をかけないよう配慮することが必要、というわけだ。

 共同の利益に反する行為に該当するかどうかは、前述した「受忍限度」同様、その行為の必要性と有用性、他の区分所有者に与える不利益の態様・程度その他の諸事情を考慮して判断しなければならない。つまり、総合判断が求められるのだ。ということは、逆に「共同の利益に反する行為」が具体化されていれば、その行為を抑止することにもつながるに違いない。有害行為に対する規制の基準が明文化(ルール化)されていれば、騒音トラブルの減少にも一役買うことになるはずだ。

 では、一体誰がこのルール(規制基準)を作成するのか? 言うまでもなく作成主体は管理組合だ。総合判断を下すには、区分所有者を構成員とする管理組合の協力が欠かせない。ルール作りが容易でないことは誰の目からも明らかだが、そこは各管理組合が知恵を出し合い、最適なものを作り上げていくしかないだろう。作成を怠った管理組合こそが、騒音紛争の“真”の犯人だ。

 月並みではあるが、各マンションの置かれている状況や意向に応じて最適なルールを作成し、同時に、そのルールを管理組合が徹底させることが騒音トラブルを減らす近道だと筆者は考える。現在、騒音トラブルを根絶する魔法の杖は今もって見つかっていない。地道な努力の積み重ねが、いつしか実を結ぶことになるだろう。


(住宅コンサルタント 平賀 功一)

[2008年12月1日]
NIKKEI NETより

http://sumai.nikkei.co.jp/mansion/kanri/serial.cfm

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