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糸瀬茂コミュの契約社員が主役になる日 (1999.11.29)

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契約社員が主役になる日 (1999.11.29) 

 人材派遣業に関する規制緩和により、12月1日から営業・販売職の派遣が解禁となる。これまで営業職等の派遣がなかなか認められなかった背景には、つぎのような労働組合側の反発があったと言われている。営業職に派遣を認めると、正社員の営業マンよりも「仕事のできる」派遣社員が正社員よりも安い給料で来る。そうなると、正社員の給料が、実は高過ぎるという現実が白日の下にさらされ、正社員の賃下げ圧力につながる、というものだ。  

 このように、日本の労働法制は、これまで正社員に対して過剰に保護的だった。例えば解雇法制について見てみると、民法及び労働基準法は、30日前の予告を前提に「解雇自由」の原則を表向きは維持しているのだが、現実には経営上の理由による解雇は、判例により次の「整理解雇の四要件」を満たさない限り、解雇権の濫用として無効となる。

1 人員削減の必要性

2 整理解雇の回避義務

3 人選の妥当性・基準の公平性

4 労働者への説明義務、労働組合との協議義務  

 つまり、「既に職を得ている労働者の既得権を守り、彼らを失業させないこと」に、日本の労働法制の主眼は置かれているのである。しかし、こうした発想こそが今の時代に最も必要な「雇用の流動性」を阻害してしまっていることに気付かなければならない。一例をあげよう。リストラをせざるを得なくなった企業は、先の要件の2である「整理解雇の回避義務」を果たさなければならないが、「新卒の不採用」が、実はこの回避義務を果たす役割をしているのだ。単純化すれば、正社員をなかなか解雇できないという制度上の縛りが、大卒無業者の大量発生の原因となっているのである(注)。ちょうど「中小企業を倒産させては可哀想だ」という発想に基いた政策が、市場から退出すべき中小企業を延命させ、敗者復活や新規ベンチャーの参入を妨げてしまっているのと同じことが、労働市場でも起きているのである。

 しかし、日本の省庁のなかで、文部省と並んで頭の固い労働省が、こうした労働法制の抜本的見直しに追い込まれるのは時間の問題だろう。仮に失業率が8%程度まで上昇したとしても、その8%の中身が常に流動化していれば、失業問題は社会問題化しない。そのためには、解雇法制の見直しや、雇用形態の多様化(=派遣、複数年契約、長期継続雇用の並存)を認めていくことが何より有効であることに、労働省の官僚も気付き始めている。今回の人材派遣業における規制緩和は、そうした方向への第1歩だと言える。  

 さて、そうなるとそれぞれの雇用形態における将来のサラリーマンの年収は具体的にどう変化していくのだろう。筆者は、「ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターン」という金融市場の大原則が、労働市場においても導入されてくると考えている。  

 例えば、フロントオフィス(=営業・企画等の専門職)500人、バックオフィス(=経理・総務等の事務職)500人から成る中堅サービス業を想定してみよう。数年後には、その雇用形態の内訳とそれぞれの年収はつぎのようになっているのではないか。フロントオフィスにおいては、一部の幹部社員(2割程度)を除いて、その大半が3年〜5年の契約社員からなり、彼らの平均年収は1200万円。そして、バックオフィスは、長期継続雇用者(=正社員)5割と派遣社員5割とから成り、正社員の平均年収は500万円。そして派遣社員の平均年収は700万円。ざっとこんなイメージだ。  

 ところで、こうした変化は、果たして明るい未来なのだろうか、それとも暗い未来なのだろうか。答えは簡単だ。こうした変化を「明るい」と受け止めることができる人にとっては明るい未来であり、それを「不安」だと受け止める人にとっては暗い未来でしかない。要するに、すべては、個々人の受け止め方次第なのであり、個々人が、自分に合った働き方を選べばいいということだ。

 注:このほかにも、日本の労働法制が、雇用の流動化を阻害している側面は少なくない。例えば、大竹文雄『雇用不安解消のためのシステム整備』(週刊東洋経済1999秋臨時増刊「エコノミックス1」に詳しい。

 

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