ニルスクリスティ
Professor of Criminology教授犯罪の
Institute of Criminology 刑事政策研究院
Faculty of Law法学部
University of Osloオスロ大学
Box 6706 St. Olavs plass, N-0130 Osloボックス6706聖Olavs plassのN 0130オスロ
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「人が人を裁くとき―裁判員のための修復的司法入門」
原書名:En passende mengde kriminalitet(A Suitable Amount of Crime)(Christie,Nils)
人間らしい社会へ向けた犯罪学者からの提言。
市場原理主義と“犯罪”増加の因果関係を鋭く分析。
「報復」や「矯正」という概念を超えた「修復的司法」の可能性を説く。
市場万能主義が人間らしいつながりを破壊する一方、社会の亀裂に対し単純な善悪二分論を持ち出し「悪」を隔離・断罪する手法しかとらない。米国をはじめ世界の誤った趨勢に警鐘を鳴らし、真の安全に向け、報復とも矯正・教育とも違う修復的司法の可能性を説く。
■ ■ 森達也 リアル共同幻想論 ■ ■
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>殺人事件は年間1件だけ!?ノルウェー紀行
>アメリカほどではないにしても、日本も確実に厳罰化の道を歩んでいる。この20年で受刑者の総数は、ほぼ2倍に増加した。つまりオウム以降だ。死刑判決や執行数も急増している。
>世界的なこの傾向とまったく逆の方向に進んでいるのが北欧だ。つまり厳罰化ではなく寛容化政策。特にノルウエーにおいては、ニルス・クリスティの存在は大きい。彼の主張を採用する形でさまざまな刑事司法改革が行われ、そしてその帰結として、治安は劇的に良くなっているという。
殺意ありきの殺人事件は年間1件あるかないか
「殺人事件は年間にどのくらい起きていますか?」
僕のこの質問に、現地コーディネーターで長く北欧に暮らしてきた奈良伊久子さんは、少しだけ首をひねりながらこう答えた。
「年間ですか? ほとんどないですよ。あるとしても1件くらい」
数秒の間を置いてから僕は言った。
「……まさか」
「たぶんそのくらいです。後でちゃんと調べます」
後日に判明した正式なデータによれば、ノルウエー国内の年間の殺人事件は、総数で30件弱。ただしそのほとんどは過失致死で、殺意ありきの殺人事件(つまり故殺)は、やはり年間に1件あるかないかだった。
もちろん日本とノルウエーとでは分母が違う。ノルウエーの人口は約400万人だ。国土面積がほぼ等しい日本のおよそ30分の1。でも人口比で比較しても年間1件は、やはり驚異的な治安の良さだ。
ただし日本も、厳罰化を進める先進諸国の中では、例外的といえるほどに殺人事件が少ない国だ。人口比率では、実のところノルウェーと大差ない。ところがこの国では近年の傾向としては、体感治安だけが突出して悪くなり、厳罰化が進行している。まあこれについては、この連載で以前にも書いた。今回はノルウエーの話だ。