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ジャック・ヒギンズコミュの英語は嫌いだ、でもHIGGINSは大好きだ!

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管理人様、トピ立てさせていただきます。

冒険小説の金字塔「鷲は舞い降りた」のなかのカッコイイ名セリフの数々、
「非常に頭がよくて、勇気があって、冷静で、卓越した軍人―そして、ロマンティックな愚か者だ。」(ヒムラー)
「この世は、万能の神様が、頭がどうかしているときに思いついた下手な冗談事にすぎないんだ。わたしはいつも、神様はその朝、たぶん二日酔いだったのだろう、と考えている。」(デヴリン)
などなど酔わせますよねー。
ところで、原文では英語でどのように書かれているのか気になりませんか?

「このセリフ、原文ではどうなってんの?」
とか、
「ここんとこ、菊池光さんの翻訳ではこうなってるけど、こうしたほうがぴったりくる。」
とか
書き込んでいただければと思います。
英語の原作本もアマゾンなどで手軽に購入できますからね!

かく言う私、段田は大の英語嫌い。英語力は中学生レベル。
とんちんかんな書き込みをすると思いますので、ガンガンつっこんでください。

コメント(12)

「真鍮の猿のきんたま」

物語のオープニングの舞台。スタドリ・コンスタブルの聖母諸聖人教会の墓地で墓穴を掘っている男、レイカー・アームズビイが言った言葉「うるさい鳥どもめ!」「レニングラードへ帰れ!」
これを不思議におもったヒギンズ氏の問いに対してレイカー・アームズビイが鳥はレニングラードから10月にここへ渡ってくる、冬は寒すぎていられないのだ、と答えたあと、付けくわえた言葉。
"Cold enough to freeze the balls off a brass monkey over there in winter."
「あっちの冬は寒さがひどくて、真鍮の猿のきんたまですら、カチカチに凍ってとれてしまうんだ。」(菊池氏訳)

翻訳を読んだときは、猿に真鍮の●●たまが付いているという意味と思っていましたが(いまさら伏字にしてどうする(笑))
どうも、真鍮でできた猿の●●たま、ということですねー。

ところで、なんで真鍮の猿なの?
もっと後で、軍情報部のカナリス提督が、「見ざる、言わざる、聞かざる」のブロンズの置物を見る、というシーンが出てきますが、●●たまは関係なさそう。

そういう決まり文句があるのでしょうか?
「二日酔い」

軍情報部アプヴェールのラードル中佐に呼び出された時のリーアム・デブリンの有名なセリフ
「この世は、万能の神様が、頭がどうがしているときに思いついた下手な冗談事にすぎないんだ。わたしはいつも、神様はその朝、たぶん二日酔いだったのだろう、と考えている。」(菊池氏訳)
 これが原文ではどう表現されていたのか?それが知りたくて英語原作を買ったようなもんです。わたくし。

"The world was a bad joke dreamed up the Almighty on an off-day.
I've always felt myself that he probably had a hangover that morning."
「世界は、万能の神が非番の日に思いついた悪いジョークなんだ。 私はいつも感じているよ、その朝彼はたぶん二日酔いだったろうと。」(私流直訳)

off-day というのには休日、非番という意味と調子が出ない日という意味があるそうです。
まあ、どっちにしても、休日の前夜ちょいと飲みすぎて二日酔いでひどい状態の朝、悪い冗談を思いついた、ってところなんでしょうか。
二日酔いってのは英語では hangover て言うんですね。この本で初めて知りました。気分が悪くてソファーなんかにぶら下がるように伸びている、ってなイメージでしょうか。感じがよく出ていますねー。

ところでかく言うリーアム・デブリン氏も神様の事を責めてばかりもいられません。
シュタイナ中佐と彼の部下たちを作戦に参加させるべくラードル中佐とともに、チャンネル諸島オールダニを訪れた帰り、前夜飲みすぎてしまったデヴリンは港まで送ってくれた車の後席に、二日酔いのためうずくまってしまいました。
「デブリンは後ろの席にうずくまって、ひどい二日酔いの兆候をはっきり示していた。」(菊池氏訳)
"Devlin huddled in the rear seat showing every symptom of a king-size
hangover."
うーむ。キングザイズの二日酔いとはどんなんですかねー。さすがアイリッシュ。
「畜生!」

敵対する人間同士を描くドラマである冒険小説なのだから、ののしり言葉は当然頻発。
「鷲は舞い降りた」では、どれだけ多彩なお下品な英語が出てくるのかと思いきや、連合国側、ドイツ側、中立のアイルランドも含めてこの小説のののしり言葉ほとんどこれ、
“ You bastard! ”
Bastard とは非嫡出子、私生児とかいやな奴とかいう意味があるそうです。
ドイツ語にもこれに相当する言葉があるんですかねえ?
”bastard”がでてくるシーンを拾ってみると、以下の通り。

*レイカー・アームズビイが墓掘りをしていて、うるさい烏を怒鳴りつけるシーン
“Noisy Bastards!” he called. “Get back to Leningrad.”
「うるさい鳥どもめ!」彼がどなった。「レニングラードへ帰れ!」(菊池氏訳)

*魚雷にまたがり「めかじき作戦」に従事するシュタイナ中佐とその部下たち。一緒に海上に浮かび待機していたレムケ軍曹が無謀な突撃をする。
“ The silly young bastard.” Steiner thought. ”What does he think this is, the Charge of Light Brigade?”
「ばかな小僧め」シュタイナは思った。「なんだと思っているのだ、軽騎兵の急襲くらいに思っているのか?」(菊池氏訳)

*ワルシャワでユダヤ人少女を助けようとしたシュタイナ中佐がSSに逮捕されるシーン
Steiner said.”I pride myself I can always tell a thoroughgoing bastard when I see one.”
シュタイナが言った「わたしは、つねづね、一目見ただけで犬畜生のような人間の見分けがつくことを、自慢にしているのだ。」(菊池氏訳)
(”thoroughgoing”とは「徹底的な」とかいう意味とのこと、「最低のクソヤロー」てな感じでしょうか?)

*シュタイナ中佐を作戦に参加させるべくオールダニを訪れたラードル中佐とデヴリン。話に乗ってこないシュタイナに対して、ラードルはシュタイナの父親シュタイナ少将が国家反逆罪でゲシュタポに逮捕されていること、シュタイナの行動如何によって父親の公判に有利に働く可能性のあることを示唆した後のシーン
Suddenly his face changed and he looked about as dangerous as any man could and when he reached for Radl, it was in a kind of slow motion. “You bastard. All of you, bastards.”
とつぜん、表情が一変して凶暴な顔つきになり、スロー・モーションのようにゆっくりとラードルの方へ手を伸ばした。「犬畜生め。きさまたちはみんな犬畜生だ。」(菊池氏訳)

*モリイ・プライアを襲おうとしたアーサー・シーマーに立ち向かいリーアム・デヴリンが言う。
“Now then, you bastard,”Devlin said.
「さあ、こい、こんちくしょう」デヴリンがいった。(菊池氏訳)
シーマーを叩きのめした後のデヴリンの言葉。 
“And now you will listen to me, you bastard!”
「いいか、よく聞くんだ、このけだものめ。」彼はいった。(菊池氏訳)

*シュタイナ少将に精神的ショックを与えるため、ゲシュタポはいちど疑いが晴れたように見せかけてから、再度少将を拷問に引っ張っていこうとするシーン。
The whole thing became dreadfully clear.”You bastard!” he said and threw the cup of coffee at Rossman’s head.
一瞬にして、すべてがはっきりと読み取れた。「この犬め!」ロスマンの頭を狙ってコーヒー・カップを投げつけた。(菊池氏訳)

*シュタイナ中佐の部隊をノーフォークの海岸で降下させた帰り道。誤ったドイツ軍の夜間戦闘機に海へ撃墜されてしまったゲーリケが救出にきたドイツのEボートの乗組員に言う言葉。
“Safe, is it?” he demanded in German. “You stupid bastards – I’m on your side.”
「大丈夫だと?」彼がドイツ語でどなった。「この大ばか者―おれはきさまたちの側の人間だ」

*デヴリンの正体を知ってしまったモリイ・プライア。どうしてもたまらずデヴリンのいる管理人小屋に行きデブリンを罵倒するシーン。
“You bastard!” she said. “You dirty swine! You used me.”
(表紙がダコタとモスキートの初期版にはこの行の翻訳は省略されている。完全版では次の通り)
「ちくしょうめ」彼女が言った。「この人でなし!私を利用したのね」(完全版:菊池氏訳)
(「人でなし」でもいいけどここは直訳して、「おまえは汚い豚だよ!」のほうが感じでるような)
「Tommi とJerry」

戦争中ですから敵国の兵士や国民にたいして蔑称を使うのは万国共通。
わが国も大戦中アメ公とかロスケとか使ってました。(差別用語あつかいされている言葉もあるのであえて例示しないけど、お互いやりあってるんだから気にしすぎるのもなあ、)
で、「鷲は舞い降りた」ではどんなのがあるかとぱらぱらと見てみるとこんなのがありました。(一般的なのばかりですが)

ユダヤ人;Jew
ワルシャワでユダヤ人ゲットー壊滅をはかるSS混成部隊。SSの少佐が隠れていたユダヤ人少女を捕まえる。
He had her by the hair and shook her like a rat. “Dirty little Jew bitch. I’ll teach you some manners.”
少佐が娘の髪をつかんで吊るしあげた。「このけがらわしい雌ユダヤ人め。作法を教えてやる。」(菊池氏訳)

日本人;Jap
スタドリ・コンスタブルから8マイルほど離れたメルサムハウスに駐屯するアメリカ軍レンジャー部隊の指揮官シャフトゥ大佐。派手なカッコウと単純な突撃精神だけで部下のケイン少佐からの信頼はいまいち。イギリスに来る前は太平洋戦線で日本軍と戦っていたようです。
“Got himself out of Bataan back in April last year when the Japs overran the place.”
「去年の4月、日本軍がバターン半島を制圧した時、彼は無事脱出した。」(菊池氏訳)
(原書ではケインはJapanese Army じゃなくて Japs と言っているのだから軽蔑の意味を含めて日本軍にルビで”ジャップ”といれてほしかった。それとoverrun は制圧よか、蹂躙って感じじゃないかなあ、この会話の流れでは。)

英国人;Tommi
味方の夜間戦闘機に誤って撃墜され海面に浮かぶゲーリケ。救助に来たドイツのEボートの乗組員が相手を英国人とおもって声をかけます。
“Catch hold, Tommi, and we’ll haul you in. You’re safe now.”
「つかまれ、トミ、引き上げてやる。もう大丈夫だ」(菊池氏訳)

ドイツ人;Jerry
聖母諸聖人教会に押し込められたスタドリ・コンスタブルの村人に対してイギリスを裏切りドイツ側についているハーベイ・プレストンが横暴な振る舞いをする。堪え切れなくなった居酒屋の主人ワイルド氏がプレストンに詰め寄るシーン。
George Wilde came out of his pew, waked up the aisle slowly and deliberately and stood looking up at Preston. “The Jerries must be damned hard up, because the only place they could have found you was under a stone.”
ジョージ・ワイルドが座席から出てきて、ゆっくりと通路を歩いて行き、プレストンを見上げた。「ジェリイ(ドイツ人の蔑称)たちはひどく困っているにちがいない、おまえのようなうじ虫は、石をめくらなきゃ、みつからないだから。」(菊池氏訳)
(ドイツ人の蔑称がJerryってのは初めて知りました。ワイルドさんなかなか勇気があります。石の下でみつかるというとミミズってことですかね。)

ドイツ兵;Kraut
スタドリコンスタブルで演習していた落下傘部隊の正体がシュタイナ率いるドイツ軍であることを知ったアメリカ軍レンジャーの指揮官シャフトゥ大佐はおおはりきり。冷静なケイン少佐に向かい即刻攻撃を主張します。
He slammed a fist down on the table. “No, by Godfrey. I’m going to nail these Krauts myself, here and now, and I’ve got the men to do it. Action this day!”
(シャフトゥが)拳でテイブルを殴りつけた。「そんなことをしておれん。おれは、いま、ここで、そのドイツ兵どもを片づけてやる。また、それだけの人員がいる。いま直ちに行動だ!」(菊池氏訳)
(Kraut とはドイツ兵の蔑称であるとともにドイツ料理の塩漬けキャベツ「ザワークラウト」も指すので、ドイツのキャベツ野郎ってな感じなんでしょうか。)

アメリカ人;Yankee
デヴリンの正体を知ったモリイ・プライヤが怒りにまかせ、お前たちの作戦はパメラがアメリカのレンジャーに通報しているとぶちまけるシーン。
“Pamela Vereker was with me up at the church when he and his men took her brother and George Wilde up there. We overheard enough to send her flying off to Meltham to get those Yankee Rangers.”
「シュタイナと部下たちが、神父さんとジョージ・ワイルドを教会へ連れてった時、パミラ・ヴェリカが私といっしょに教会の中にいたんだ。二人で話を盗み聞きすると、彼女がヤンキー・レンジャーを呼びに、メルサムハウスへとんで行ったんだ。」
(アメリカ人・アメリカ兵=ヤンキーってのは一般的ですよね)

Tommi=イギリス人、Jerry=ドイツ人
♪トムとジェリー仲良くケンカしな♪ってここからとってんのか?(まさかね)
「名誉」

ラードルがシュタイナに作戦に加わるよう説得した後、オールダニを出発する前夜のパーティを抜け出した二人の会話。シュタイナが名誉に関しての考えを開陳する名場面です。

・・・・・・
Steiner put a hand on his arm. “And my father?”
Radl said ,”I would be dishonest if I led you to believe I have any influence in the matter.
Himmler is personally responsible. All that I can do --- and I will certainly do this --- is make it plain to him how co-operative you are being.”
“And do you honestly think that will be enough?”
“Do you?” Radl said.
Steiner’s laugh had no mirth in it at all. “He has no conception of honour.”
It seemed a curiously old-fashioned remark, and Radl was intrigued, “And you?” he said. “You have?”
“Perhaps not. Perhaps it’s too fancy a word for what I mean. Simple things like giving your word and keeping it, standing by friends whatever comes. Dose the sum of these things total honour?”
“I don’t know, my friend,” Radl said “All I can confirm with any certainty is the undoubted fact that you are too good for the Reichsfűhrer’s world, believe me.” He put an arm around Steiner’s shoulders.

シュタイナが彼の腕に手をかけた。「それで、父は?」
ラードルが言った、「その件について、わたしに多少なりとも影響力があるときみに思い込ませては、騙したも同然になる。ヒムラーがすべての鍵を握っているのだ。わたしにできることは―それだけは必ずやるが―きみがいかに協力的であるかを彼にはっきりと告げることだけだ。」
「それで充分だと、きみはほんとうに信じているのか?」
「きみはどうだ?」
シュタイナがうつろな笑い声をたてた。
「あの男は名誉に関する観念を完全に欠いている。」
妙に古めかしい言葉のように思えて、ラードルはとまどった。「それで、きみは?」彼がきいた。「きみは、あるのか?」
「ないかもしれん。あるいはわたしが考えていることを表現するには、高尚すぎる言葉かもしれん。約束したら必ず守る、とか、いかなることがあろうと友人を助ける、といった単純なことだ。それらを合わせたものを、名誉といえないだろうか?」
「わたしにはなんともいえない。ただ一つ、私が確信をもっていえることは、きみがヒムラーたちの世界には立派すぎる人間だということだ、これは本心からいっているのだ」シュタイナの肩に手をまわした。(菊池氏訳)
・・・・・

英国人であるヒギンズが書いているので名誉は 英国綴りで ”honour” 、米語では”honor”。ワードでこの文の下書きを書いているとスペルチェッカーに引っ掛かります。
菊池光氏訳ではこの言葉を聞いたラードルはとまどったとありますが、直訳するとintrigued は好奇心をそそられてわくわくした、感じでしょうか。このやりとりでラードルはシュタイナに、より好意をもったのではないでしょうか。
また、シュタイナの「言った言葉は守る」という絆は、Eボートの艇長ケーニヒとシュタイナの間にもあり、ラスト近くでのEボートによる要員回収の場面の伏線にもなっていますね。

アイルランド風通夜

デヴリンは作戦の地イギリスのノーフォークへ行くため、イギリスとの国境近くアイルランドのモナガン県に夜間落下傘降下します。
http://maps.google.co.jp/maps?f=q&source=s_q&hl=ja&geocode=&q=ireland+county+monaghan&aq=&sll=54.258807,-6.800537&sspn=0.068586,0.277405&brcurrent=3,0x0:0x0,0&ie=UTF8&hq=&hnear=County+%E3%83%A2%E3%83%8A%E3%83%8F%E3%83%B3,+%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89&ll=54.252389,-6.965332&spn=1.09756,4.438477&t=h&z=8

深夜午前2時45分の降下であったにかかわらず、デヴリンは通夜帰りに道に迷った老人に目撃されてしまう。
ストーリーにはあまり影響しないシーンなのですが、私、ここが結構好きです。

At precisely two forty-five on the following morning, Seumas O’Broin, a sheep farmer of Conroy in County Monaghan, was endeavouring to find his way home across a stretch of open moorland. And was making a bad job of it.
Which was understandable enough for when one is seventy-six, friends have a tendency to disappear with monotonous regularity and Seumas O’Broin was on his way home from a funeral wake for one who had just departed – a wake which had lasted for seventeen hours.
He had not only, as the Irish so delightfully put it, drink taken. He had consumed quantities so vast that he was not certain whether he was in this world or the next;

翌朝のちょうど午前2時45分。モナガン県コンロイの畜羊農家シェイマス・オブロウインは、荒れ地で家路を探していたが、うまくいっていなかった。
76歳になれば当然のように次第に友だちが亡くなっていく一方で 、シェイマス・オブロウインは亡くなったばかりの友だちの通夜―それも17時間もつづけた通夜―から帰宅するところだった。
彼は、アイルランド人がよく言う「ちょっとひっかける」だけでなく、あまりにも大量にいただいていたため、自分が今この世にいるのか、あの世にいるのかすら確かでなかった。
(団田いいかげん訳)

17時間つづけてのお通夜、とうぜんお酒をやりながらの。いったいどうなっちゃうんですかねー。
先日読んだ「アイルランド歴史紀行」(高橋哲雄著ちくまライブラリー65)に、アイルランド風の通夜について書かれた部分がありましたので、引用します。
きっとオブロウインじいさんも17時間飲んで騒ぎ通しだったんでしょうね。
オブロイウンじいさんに目撃されてしまったデヴリンも、じいさんから漂ってくるアイリッシュウイスキーの香りとろれつの回らないじいさんの言葉ですぐに事態を理解するところは、やっぱりアイリッシュです。

「有名なアイルランドふう通夜(Irish Wake)は「徹夜祭」と訳されたりもするほど、飲めや歌えやの賑やかなものである。ここには「お通夜のよう」というようなひっそりした感じはかけらほどもない。小説「ファミリー・ビジネス」に出てくるニューヨークのアイルランド人社会(映画ではスコットランド人社会になっている)の通夜の情景を読んでいると、そもそも「ウェイク」とは、家族や客が眠らないで死者の夜伽をするという意味だったのか、それとも皆が飲んだくれて騒ぎ、死者を目覚めさせるという意味なのか。頭がこんがらがってくるほどだ。俗謡「フィネガンの通夜」では、通夜の席でいつものように騒いでいるうち、命の水であるウィスキーを死者に振りかけたら、死者がむっくりと起き直ってオレにも飲ませろといったことになっているが、そうした奇跡を期待してなのか。」
「アイルランド歴史紀行」(高橋哲雄著ちくまライブラリー65)
Schraege Musik 斜め音楽
シュタイナ中佐率いる落下傘部隊をノーフォークの海岸まで送り届けるダコタ機を操縦するペーターゲーリケはドイツの夜間戦闘機のエースパイロット。
彼の乗機Ju88に装備された秘密兵器’Schraege Musik’のことが説明されていますが、日本語版でも「シュレーゲ・ムジーク」とそのまま音訳されています。
機体正面に対して斜め上方を向くように取り付けられた機関銃で、標的の爆撃機を後方斜め下から狙うためのもので、旧日本軍の夜間戦闘機にも同様の装備がありました。
シュレーゲ・ムジーク=斜め音楽(ドイツ語でジャズのこと)とは、「ブラッカムの爆撃機」(ロバート・ウェストール作 金原瑞人訳 宮崎駿編 岩波書店)を読んで知りました。この作品はイギリスの爆撃機ウエリントンのクルーとドイツの夜間戦闘機Ju88との戦いを軸に描かれています。宮崎駿さんが描く解説まんがも秀逸。深い感銘を受ける作品なので「鷲は舞い降りた」ファンならぜひともチェックしてください。
ところで、「ブラッカムの爆撃機」でキーになる登場人物、ウエリントン爆撃機の機長タウンゼント大尉はカソリックの神父でもあるアイルランド人。志願してイギリス空軍に入り極めて損耗率の高い作戦任務に3サイクル従事している(1サイクル=出撃30回、1942年において1サイクルを生存するものは44%であったという)。タウンゼント大尉はリーアム・デヴリンとは違う形でこの戦争にかかわるアイルランド人として描かれています。
イギリスとアイルランド。長く複雑な関わりの歴史のため、イギリスを舞台にした冒険小説ではなんらかのアイルランドが顔を出さざるを得ないのでしょうか?
馬占山さま

おお、すばらしい!Ju88と後ろはV-1ですね。
「鷲は舞い降りた」では、原文も日本語訳もシュレーゲムジークの取り付け角度が、
「10ないし20度」と書かれていますが、実際には60〜70度とのことなのでヒギンズの
勘違いかもしれませんね。
馬占山さんのプラモデルでも確認できますね。

「ブラッカムの爆撃機」に触発されて、ウェストールの作品「機関銃要塞の少年たち」も読みましたが、これまたジーンと来てしまいました。
子供を過ぎて大人の入り口に立つ青少年をメインにした文学ではイギリスに一日も二日も長があるのでしょうね。(ってえらそうに言ってますけど文学にはとんと縁がない私です。(汗))
Motorcycle

ジョウアナ・グレイの口利きで、リーアム・デヴリンはヘンリー卿からオートバイを手に入れます。「鷲は舞い降りた」の中でのリーアム・デブリンの活躍は、このオートバイとともにあったと言っても良いくらい。
モリー・プライアとの出会い、モリーとのデート、ガーヴァルド兄弟から闇物資の入手、米レンジャーに包囲されたシュタイナの救出などなど、数々の名場面にこのオートバイが登場しますね。

このオートバイの初登場のシーンです。

The motorcycle was pre-war, of course, and had seen better days. A 350cc BSA, but
when he took a chance and opened the throttle wide on the first straight, the needle
swung up to sixty with no trouble at all.

イギリスのオートバイメーカーBSAの350ccの戦前モデルとのこと。形式名は書かれていないけど、こんな感じかな。

http://www.cybermotorcycle.com/gallery/bsa_1934/BSA_1934-04.htm

オートバイを受け取って最初の直線路でアクセルを思い切り開けて速度計が60(マイル?=約95km/h)まで達してトラブルがないことを確認したとあります、当時としては十分すぎる性能だったのでしょうね。

デヴリンはスペイン内戦に義勇軍として参加しているときに、点在する部隊との連絡用にオートバイが役立つ乗り物であることを知ったのですが、単に実用性だけでなく、その開放的な感覚が気に入っていたようです。
ホッブズ・エンド沼沢付近でオートバイを走らせるデヴリンを描写する美しく楽しい一節があります。

When he reached the coast road, Devlin took the first dyke path that he came to at
the northerly end of Hobs End marsh and drove out towards the fringe of pine
trees.
It was a crisp, autumnal sort of day, cold but bracing, white clouds chasing each
other across a blue sky.
He opened the throttle and roared along the narrow dyke path. A hell of risk for
one wrong move and he’d be into the marsh. Stupid really, but that was the kind
of mood he was in, and the sense of freedom was exhilaration

「海岸道路に至った時、デヴリンはホッブズ・エンド沼沢の北端からの最初の土手道を、松の林縁に向かって駆け抜けた。
爽やかな、空気は冷たいが身が引き締まる秋の日。白い雲の群れが互いに競い合いながら青空を流れ過ぎる。
彼はスロットルを開き、狭い土手道を唸りをあげて駆け抜けた。一つ間違えば沼に突っ込むリスクがある。実に馬鹿げている、しかし彼はそんな気分の中にあり、自由な感覚に心が浮き立っていた。」(団田 いいかげん訳)

不利は承知で冒険に向かう。判官びいきなアイルランド気質が、かつてはスペインへ、現在はドイツからノーフォークへ彼を向かわせた。と同時に自由と美しい風景、文学を愛し、時には理性より情熱を優先してしまい、モリーとの恋にはまり込んでしまう。
オートバイに関わる描写は、デヴリンの心のうちを暗喩しているように思えます。

下記リンクは、グーグルによるイギリスノーフォーク地方の町ブレイクニから東に向かうコーストロードです。少し先を左折すると沼沢地を抜け海岸に至る細道へ進めます。
ストリートビューでちょっとだけノーフォークを駆けるデヴリンの気分が味わえます。
http://maps.google.com/maps?q=52.9558,1.04722&num=1&t=h&sll=52.955955,1.047907&sspn=0.008635,0.034676&hl=en&ie=UTF8&layer=c&cbll=52.955748,1.046823&panoid=0zGVVXf6HjJ6RRKdCl3t9Q&cbp=11,65.03,,0,0&ll=52.955774,1.046963&spn=0.015719,0.138702&z=13


「この世は全て冗談」

「鷲は舞い降りた」でのリーアム・デヴリンの最も有名なセリフの一つ

"The world was a bad joke dreamed up the Almighty on an off-day.
I've always felt myself that he probably had a hangover that morning."
「世界は万能の神が非番の日に思いついた悪いジョークなんだ。 私はいつも感じているよ、その朝彼はたぶん二日酔いだったろうと。」(私流直訳)

「この世は全てジョーク」。青臭い若造が漏らせば薄っぺらいセリフにしかならないが、人と故郷を愛し深い教養と明るい魅力的な人柄を持ちつつ、厳しい現実とテロルによる戦いのなかで自らも傷ついてきたこの男が言えば、複雑な印象を与えます。

ところで、先日ラジオで19世紀イタリアのオペラ作曲家ヴェルディをテーマにした番組があり何の気なしに聞いていたら、「この世は全て冗談」というセリフが出てきてちょっとびっくり。
これはシェークスピアの戯曲「ヘンリー4世」「ウインザーの陽気な女房たち」をもとにしたオペラ「ファルスタッフ」のラストに出てくる有名なセリフだそうです。
もちろんヒギンズ好きがこれを聞けば、「あ、これがデヴリンのセリフの元ネタじゃない?!」って思うよね。
デヴリンは英国と戦うIRAの闘士でありかつ英文学の教授でもある。シェークスピアの戯曲からセリフを引用して当然じゃない?
翌週さっそく図書館でシェークスピアの「ヘンリー4世」と「ウインザーの陽気な女房たち」を借りてきて、急いで流し読みしたけど戯曲にはそれにぴったりのセリフは無かった。(じっくり読んでないので見落としはありうるけど。)
どうもこのセリフはオペラのオリジナルみたいだ。
英語でネット検索したところ、これにあたる3種類の表記があった。
(1)Everything in the world is a jest.
(2)All in the world is a jest.
(3)The whole world is a jest.
もともとイタリア・オペラなので英語の訳が分かれているんだろうね。
ところで(3)はつづけて次のような文章になっていた。
“The whole world is a jest. Man was born a great jester, but the best laugh of all is the last one.”
「世界はすべて冗談だ。人は生まれつき偉大な道化なんだ。最後に笑った奴の勝ちさ」(適当訳)

デヴリンのセリフ。元ネタがこのオペラなのかどうか?あなたはどう思う?
シェークスピアの戯曲から直接引用ならわかるけど、一度イタリアのオペラになったものから引用するかなあ?英米人なら感覚でわかるんだろうなあ。

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