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詩歌全般・日本古代史・たべものコミュの奥山に もみぢふみわけ なく鹿の、声聞くときぞ 秋はかなしき

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奥山に もみぢふみわけ なく鹿の、声聞くときぞ 秋はかなしき   猿丸太夫 

<是貞のみこの家の歌合の歌 よみ人知らず 古今集・巻四・秋上>
・・・・・・・・・・・・・・
人里離れた深い山に

散り敷く紅葉を踏み分けて鳴く

鹿の声を聞く時に

秋はひとしお心に沁みて

かなしく感じられる
・・・・・・・・・・・・・・

牡鹿は妻を恋うて哀い哀いと鳴く。
鹿のなく声は情緒深いものらしく、中国最古の刺繍『詩経』(わが国の万葉集より千年以上古い)に、鹿鳴の詩がある。この歌は群臣や賓客をもてなす宴会で歌われた歌らしい(明治の鹿鳴館という命名は、ここからとられている)それには「ゆうゆうたる鹿鳴 野のひょうを食む」とあり、ゆうゆう(ヒュウヒュウ)というのが鹿の鳴き声である。

奥山に; 奥山は人里離れた奥深い山で、「深山」と同意。対語は「端山・外山」。
「に」は場所を表す格助詞。

もみぢふみわけ なく鹿の 声聞くときぞ;

「もみじ」は色づいた草木の葉、ここはその落ち葉。黄葉・紅葉を当てる。
「ふみわけ」は下二段活用動詞「ふみわく」の連用形で、踏んで分け入り意。
「ふみわけ」の主語は鹿で、「なく」にかかる。
「なく」は動詞連体形。
「鹿」は秋になると牡鹿が雌鹿を求めて鳴く。
「鹿の」は連体修飾語
「聞く」は動詞連体形で、主語は作者。
「ぞ」は強意の係助詞。

秋はかなしき;

「秋」は陰暦七・八・九月・
「は」は係助詞。
「かなしき」はシク活用形容詞「かなし」の連体形で、係助詞「ぞ」の結び。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「古今集」・巻四・秋上には次の四首が並ぶ。

山里は 秋こそことに わびしけれ 鹿の鳴く音に 目をさましつつ」 
 壬生忠岑

奥山に 紅葉ふみわけ 鳴く鹿の 声聞くときぞ 秋はかなしき 
 よみ人しらず

秋はぎに うらびれをれば あしひきの 山したとよみ 鹿の鳴くらむ 
 よみ人しらず

秋萩を しがらみ伏せて 鳴く鹿の 目には見得ずて 音のさやけさ 
 よみ人しらず

秋山寂寂葉零零  秋山寂寂として葉零零たり
麋鹿鳴音數度聆  麋鹿鳴く音數度に聆く
勝地尋來遊宴處  勝地尋ね來たりて遊宴する處
無朋無酒意猶冷  無朋無酒意猶冷し
 
 (菅原道真撰)   

『小倉山荘色紙和歌』によれば、「端山は人里にせっした山、外山は人里に近い山、紅葉が散ったのち秋が深くなるにつれて鹿は奥山に入ってゆくものだから、作者は鹿の声を聞いて、その奥山は紅葉が散って秋は一段と寂しさを増すだろう」という意だという。錦なす紅葉と鹿の取り合わせは古来から日本美のひとつである。

猿丸太夫というのは、すでに『古今集』の時代から、伝承の人物になっていたらしい。ひょうきんで脱俗的な歌人で、山中にかくれすんで歌を詠んでいる、当時の人にはそんなイメージがあったらしい。そのくせ、かんじんの歌は一首も伝わらない。文献的には「真名序」の一箇所だけである。

猿丸太夫の「太夫」は官職を示す太夫ではなく、神職を意味する太夫であり、猿丸太夫と名乗る多数の宗教関係者が、諸国を巡業してものと見るべきであろうという説がある。

しかし『古今集』の頃から百年も経つと、猿丸太夫は実在の人物と信じられはじめた。
藤原公任は、王朝中期の有名な歌人で評論家あるが、その選んだ三十六歌仙に猿丸太夫を入れている。定家はそれに拠って、百人一首に「奥山に・・」の歌の作者を、ためらいなく猿丸太夫としたのであろうと推察される。

また梅原猛先生は、『続日本記』に「柿本朝臣猿」という人物が出てくるのを重視され、しかも人麿こそ猿丸太夫そのものだった、とされる。人麿は政治犯として深い山中に流された。山中にかくれすむ歌人、世捨て人・・・・・その記憶が猿丸太夫を作ったと、おっしゃっている。

猿、という名につながる猿丸太夫の謎は、この説によれば明快に解けるのであるが定かではない。


【作者】
猿丸太夫、生没年未詳。優れた万葉歌人として『猿丸太夫集』が伝えられるほかは伝記未詳。
勅撰集入集歌のないところから実在を疑う説多いが、三十六歌仙の一人に選ばれている。



* 出典・転載元;
<ブログ[北極星は北の空から〜ブログの中に]・小倉百人一首 注釈(千人万首)>等より。


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