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詩歌全般・日本古代史・たべものコミュの山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり

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山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり  春道列樹 ( はるみちのつらき )
<志賀の山越えにてよめる 『古今集』・巻五・秋下>
比叡の南山麓を縫う志賀越えの山道での、実景と観念を詠う。
・・・・・・・・・・・

山あいを流れる川に
風が架け渡したしがらみは
流れることが出来ないで
散りたまったもみじ葉であったなあ

・・・・・・・・・・・
山道をゆけば川の急流にひとところ、秋風がかけた、しがらみができている。風が作ったしがらみってなんだかわかるかい、きみ、もみじなんだよ深紅のしがらみなんだ、もみじはしきりに落ちたまり、水は流れることもできず、 秋風の風雅ないたずらだよ。
・・・・・・・・・・・・・・・・
山川に 風のかけたる しがらみは;

「に」は場所を示す格助詞。
「の」は主語を示す格助詞。
「かけ」は下二段活用動詞「かく」の連用形。
「たる」は存続の助動詞「たり」の連体形。
第二句は擬人表現。
「「しがらみ」(柵)は、川の水流をせき止めたり、護岸杭に竹や柴をからませたもの。
「は」は係り助詞。
「しがらみ」は歌の主語。(述語は「もみぢなりけり」)


流れもあへぬ 紅葉なりけり;

「ながれ」は本来下二段活用動詞「流る」の連用形だが、
「も」を接して名詞となる。
「も」は強意の係助詞。
「あへ」は下二段活用動詞「敢ふ」の未然形だが、そうすることを十分成し遂げる意。
「ぬ」は打消しの助動詞「ず」の連体形。
「なり」は断定の助動詞「なり」の連用形。
「けり」は詠嘆の助動詞終止形。
・・・・・・・・・・・・・・・・
志賀の山越え、というのは、京都市左京区北白川から、如意が嶽と比叡山の間を通って、近江の志賀へ抜ける山道をいう。志賀には滋賀寺もあったのでその参詣人をふくめ、たくさんの人が往来したらしい。山道で見た実景であろうか、紅葉の吹きこむ清流、晩秋の冷たい風の雰囲気が出ていていい。
「風のかけたる」と風を擬人化して、かるく粘弄するところが『古今集』調。
しがらみというのは、田に水の流れを引くときとか、土木工事のとき、水の流れを堰きとめる柵である。杭を打ってそれに横ざまに木や竹を打ちつけたもの。そこに紅葉が流れせき止められているのである。

しがらみといえば古来から有名な歌がある。菅原道真が政争に破れて九州へ流されてゆくとき同志であり、庇護者である宇多法王に訴えた歌である。

ながれゆく われは水屑と なりはてぬ 君しがらみと なりてとどめよ
 菅原道真

しかしこのとき、宇多法王は無力で道真のしがらみとなって、彼を救ってやることはできなかった。

「志賀の山越え」というのは、『古今集』の詞書にもちょいちょい出てくる。そのころの歌枕であったのかも知れない。
紀貫之は春に、この志賀の山越えの道を行き、女たちがたくさん連れ立ってくるのに会って、

あずさ弓 春の山辺を 越えくれば 道もさりあえず 花ぞ散りける

という歌をよんで女たちに捧げた。
春の山路を越えてくると、満開、花だらけ、道をよけることもできぬほど、花が散りますなあということか。
花というのはもちろん女たちをさしている。女たちは大喜びしたであろう。
道は幅が狭く、女たちを通して男たちは道端へよける。「道もさりあへず 花ぞ散りける」というのは、思いもかけぬ山中、女たちと行き交うた、男の心のどよめきを表現して美しい。


春道列樹のくわしい生涯は今のところ不明である。父は主税頭(今でいうと財務省局長クラスか)新名という人であったという。列樹のほうは文章生あがりというから、学問はできたのであろう。
官吏登用の国家試験にパスして、叙位任官されて役人になっている。延喜二十年というから醍醐天皇の御代、壱岐守に任じられたが、着任する前に死んだといわれる。没年未詳。この春道列樹、歌は五首しか伝わっていない。『古今集』に三首『後撰集』に二首。

【他の代表歌】
昨日といひ 今日とくらして あすか川 流れてはやき 月日なりけり

昨日はこうだった、今日はこれをしないといけない、明日には(飛鳥川にかけている)この予定が,あるといいながら、あっという間に月日がたってしまった、・・・・永遠に人はこの感懐をくりかえす。

【主な派生歌】
紅葉ばの 流れもやらぬ 大井河 かは瀬は波の 音にこそ聞け
 (源資綱「新勅撰」)
散りかかる 紅葉流れぬ 大井川 いづれ井ぜきの 水のしがらみ
 (源経信「新古今」)
桜木の 葉守の神はしらねども 風のかけたる 花のしらゆふ
 (藤原顕輔)
龍田川 木の葉の後の しがらみも 風のかけたる 氷なりけり
 (藤原家隆「続後拾遺」)
山川に 風の懸けたる しがらみの 色にいでても ぬるる袖かな
 (藤原家隆)
木の葉もて 風のかけたる しがらみに さてもよどまぬ 秋の色かな
 (藤原定家)
散ればかつ 浪のかけたる しがらみや 井手こす風の 款冬の花
 (藤原為家「続拾遺」)
岩つたふ 山のさくらの しき波に 風のかけたる 布引の滝 
 (藤原基家)
山川に 春ゆく水は よどめども 風にとまらぬ 花のしがらみ
 (源通光「続拾遺」)
谷川に 岸の木のはを 吹きためて 風のかけたる 瀬瀬の浮橋
 (後崇光院)
天の原 春立つ雲の 浪こえて 風のかけたる しがらみもなし
 (正徹)
さそはれて いとど思ひの 露ぞもる 風のかけたる 袖のしがらみ
 (〃)
風さむき を花が末の 浪の間に ながれもあへぬ 秋の日のかげ
 (一色直朝)
こほりつつ 流れもあへぬ 山川に つもればかかる 雪のしがらみ
 (望月長孝)
さそひきて 紅葉をしけば 是も又 風のかけたる 山河の橋
 (後西院)



【作者】
春道列樹(?〜920)といわれるが正確な没年は未詳。春道新名の子。文章生、官吏登用の国家試験にパスし、叙位任官されて役人になって壱岐守に任じられたが、着任する前に死んだといわれる。『古今集』に三首『後撰集』に二首のこすのみ。その他伝記不称。


<ブログ[北極星は北の空から〜ブログの中に] ><千人万首>等より転載あり。


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