ウッディー／マイ詩集コミュの★フォーク詩／31★

「四国旅行」
　
17の時、四国を旅した
テープレコーダーとナップザックを抱え
只乗りのフェリーで海峡をひとっ飛び
ポンコツ列車で西へ、西へ
　
2人の女の子と友達になり
5人の年寄に席を譲ってやった
7人の車掌の目を盗みトイレに潜み
10個目の駅でオレは飛び降りた
　
土佐白浜には景色しかない
カモメの水兵に缶ジュースを投げ付け
駅へ戻ったよ、もう二つ引き返すために
そこに現われたヘンロのジジイ
　
見れば白装束はドロドロ
折れかけの杖に歯はたったの三本
喋っても理解できず勝手にうなづくだけ
そいつの汗臭いこと、汗臭いこと
　
オレは閉口して列車に乗り込んだ
ところが「ワシも兄ヤンと行こ！」と来た
オレはここですからと二つ目の駅で降りると
「兄ヤンが降りるならワシも降りる！」
　
待合室でどうにかまいて
泊まる所を探してうろついたよ、港町
全部断られ途方に暮れていた
すると「兄ヤンどこもいっぱいじゃったろう？」
　
魚市場の隅の小さなホコラ
結局ヘンロのジジイとそこへ潜り込んだ
はじめて一人で遠くまでやって来た
その第一夜目が、トホホこの始末
　
ジジイはズダ袋からお碗を取り出し
卵、胡瓜、醤油、最後にオロシガネ
全部をぶち込みグチャグチャ掻き混ぜて
ゴクゴク飲み干し、「兄ヤンも飲むか？」
　
ジジイは目が悪く１ｍ先も見えない
息子は医者で目を直す研究を続けてる
自分は目を直すために四国四十八箇所巡り
本当かどうかは知ったことじゃない
　
いつのまにか眠って朝ふと気が付いた
手足が動かず体が重い
これが金縛りかと薄目を開けると
ジジイがオレの上にのしかかって、ヘコヘコ
　
なんのことはない、オカマのジジイ
ヨボヨボの割りには妙な馬鹿力
やっとのことで振り解き怒鳴りつけると
「兄ヤン、スマンスマン、カカアに逃げられたもんで！」
　
ところで旅は道連れ世は情け
キレイさっぱり水に流して仲直り
ジジイはヘンロの続き、オレは旅行の続き
17の時の四国旅行の話さ

（ウッディー）