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ウッディー瓦版/コミュの●死小説=私小説/04●

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“感情とは挫折した衝動である”
(宇田珠樹「鬱のロックンロール」より)
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<イントロダクション>
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2006年2月11日が過ぎた。

うひー、ついに四十四だ。

“四”と言えば日本人が“死”にかこつけて忌み嫌い、ホテルの部屋番号なんかでは無条件にトバされたりする数字である。それが二つ並ぶ。

やべえー、しかし、こいつぁーいいゴロでもある。

“四=死”に掛けてここはいっちょ「“死”小説」ってな駄洒落たタイトルで長々と「“私”小説」でも書き散らしてやろーか。

てな感じで、この「“死”の“私”小説」はゆるりと始まる。
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■第1章/04-“タッフン、タッフン”と“プルルン”
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大きなおっぱいが揺れる感じをもっとも的確に擬音化するなら“タッフン、タッフン”だろう。これは僕が街で大きなオッパイの女のコを見るにつけ、思わず頭の中で鳴らしてしまう擬音である。「うおっスゲエ、“タッフン、タッフン”してるぜ!」てな具合だ。僕が知る限り、これまでに読んだエロマンガでは、この“タッフン、タッフン”を使っているのを見たことはない。僕のオリジナルな擬音なのだ。まあ、あくまで街路で見た場合なので、必然的にその音は、上着やブラウスに包まれたその下でタワワな肉塊が、縦に横に跳ね踊る躍動感を表現したものであり、実際マッパで揺れている様を目撃できたとして、おなじオッパイでもまた違った効果音の方が相応しく思えるかも知れない。

祭は形のいいオッパイをしているが、“タッフン、タッフン”というよりは“プルルン”という擬音が似合う。バカな僕はこの間の休日、四条寺町の入口付近の和菓子屋の2階にあるアサヌマコーヒー店の窓際の席で、ポテトフライとセットになったハーフ&ハーフをチビチビやりながら眼下の寺町を行き交う人々を眺め、向かいに座っている祭本人にうっかりそんな話をくっちゃべってしまったのだ。即座に「えっ?どういうこと、あたしの胸が小さいってこと?」と言う激烈な反応が返ってきた。やべえ、普段ならぜったいこういう失言はしないのに、ビールの酔いも手伝ってついつい口を滑らせてしまった。祭はいつもの微笑をまったく消し去り、口をアヒルにしてじっと僕を見据えている。しかも「どーゆーこと!?それに外の女の胸ばっかし見てるってことやん!?」…問題はさらに複雑化する一方だ。

祭のオッパイは決して小さくはない、というかスレンダーな身体の割にはかなりのボリュームだ。握ってみても手に余る。ブラジャーはCカップとDカップの両方を持っていて、Dカップの方が圧倒的に多いと自分でも証言しているし、ブラジャーの形状によってはDカップでもきついこともあるらしい。確かに谷間もリッパに出来る。こうやって付き合う前に、同じ会社で机を並べていた頃はよくチラ見したものだ。だからあなたのオッパイは小さいはずがない、と言っても時すでに遅し、である。「なんでアタシがおんのに別の女のコ見んのさ」と問題が完全にすり替わってしまっている。こうなるともう始末に負えない。

帰りに、バスに乗って七条御池にあるレンタルビデオ屋「アメリカン(なんつー店名)」に寄り、あれこれ物色した。祭は“プルルン”の件で延々と拗ねていたが、そこで僕が何げなく手にした1本のDVDに「え〜っ、それ何?何?ウワッウワッ観たい〜っ!」と目を輝かせ、おっぱいをやはり“プルルン”とふるわせた。

それは「ザ・ジャンク」という、いろいろな人がいろいろな死に方をした、ホンモノの死体映像満載のビデオであった。すでに裏ジャケの内容写真だけで目を背けたくなるグログロの内容だ。ブクブクの水死体、ボロボロの轢死体、コゲコゲの焼死体…。しかしながら、興味がないと言えばウソになる。世にビデオデッキが登場し、レンタルビデオが出来てから今になるまで、僕はレンタル屋のホラーコーナーやドキュメンタリーコーナーで幾度となくこの類のビデオを観るにつけ、借りそうになったことはあったが、店員の手前もあるし、自分自身でも人間の死体を面白半分に観るということに避け難い抵抗があったのだろう、その都度結局やめにした。

その後、宮崎事件や酒鬼薔薇事件が起こり、犯人の部屋からこれらの超3流グログロ死体映像ビデオが発見されたことから、ますます同様のビデオは借りにくくなり、一時ビデオ屋からもそのテの作品の多くが引き上げられて姿を消し、一度も借りないまま、現在に至っていたのである。

そんな死体ビデオの代表作「ザ・ジャンク」を祭は観たいというのだ。さっきまでの拗ねた態度や表情はすっかり影を潜め、裏ジャケを見詰める祭の顔はイキイキと輝いている。なんでやねん?え〜やんかぁ!なあなあなあなあ〜これ…観たいねん、でも、観たらかなり“落ちる”かも、そうそうそう〜だから一人やったらぜったい観られへんし、だからなだからなだからな〜いっしょに観よ、そうー、終わったあと絶対“落ちる”し、その時一緒におらなあかんねん〜、でも観たい〜。

そこまで言うなら、と「ザ・ジャンク」の第1巻に、その並びにあった同じ類のこっちも相当有名なグログロシリーズである「ザ・ショック」の第1巻、それだけじゃあんまりなのでアニメの「笑ゥせぇるすまん」を合わせて借り、バスに乗って阪急桂駅まで戻り、駅東口ロータリーにある「大阪王将」へ。僕はバカボンのパパをそれとなく思い出しつつレバニラ炒め定食(これ食う時は必ず思い出しちまうのさ)、祭はトリ、トリと叫びつつ鶏の甘辛ソース煮定食を貪る。「さっき借りたビデオ見てもたら、このニクニクしたメニュー、ぜってー食ねーだろーな」などと想像。何となく食欲引く。

気を取り直して2人で食後のイップクを葺かした後、西口のコンビニでビールとおつまみを買ってタクシーに乗り込み、運転手の無駄話にナマ返事しながらアパートへ。部屋に辿り着くと時計はすでに10時を回っていた。

で…。死体ビデオはと言や、いやもー、ホント、2本ともが訳の分からない、ほとんど評価不能なシロモノであった。何だか昔懐かしい「川口浩探検隊」を100倍くらい、日曜夜の鬼っ子「特命リサーチ」を200倍くらい胡散臭くしたような、エセ・エセ・セミドキュメント。

まあ、基本的な構成は「特命リサーチ」と同じ。何かスタジオにデスクがあって司会がいて、世界各国の事件を網羅し、それぞれのシーンを紹介していく、みたいな。

死体は…そりゃ色々でてくるけどねー。交通事故のマジ頭グニャッとひしゃげたのとか、草むらでパンパンに腐ったのとか、ビルから飛び降りたのとか、数日経った首つり死体とか、ライオンに顔半分囓られたのとか、サメに下半身もってかれたのとか、祭りで浮かれ過ぎ、登っていたデカイ水瓶の中に落っこちてブヨブヨになったのとか。確かにどれもが造形的にはギョッとするけど、想像していたような、それぞれの死体に感情移入してやるせなくなるなんつー雰囲気でもなかった。で、1本観たらもう1本は観るのがイヤになるようなヘヴィーさもなく、2本一気に観てしまった。

一番印象に残ったのは、2本目に見たビデオ(もーどっちが「ザ・ジャンク」だか「ザ・ショック」だか忘れた)の最後の最後の、手術台の上に寝かされた、何かの薬品の色が染みついているのかミドリがかったロウのような質感の死体を、アラブ人風の研修医みないなのが、まるでマグロか何かの如く淡々とさばいていく様を一部始終記録した映像である。

まず、胸の上から下腹部に掛けて一直線に切れ目を入れ、そこを中心に外側へと皮をめくり上げ、裏返しながら引っぺがしていくのだ。あらかじめ血抜きがしてあるらしく、切れ目を入れてもあんま血は出ない。皮はいとも簡単にクルクルッと剥がされてしまう。“タッフン、タッフン”も“プルルン”もない。まるであらかじめゴムの皮膚を着せられた人形か何かのようだ。

顔の皮がクルクルッとめくられ頭蓋が露わになる。「え〜〜〜っ、いっつもメイクとかして、お肌とかも気つかってるけど顔って所詮こんなもんなんや、ほんまに表面上のことやねんね…」祭がひと言もらす。確かに目のデカイ小さい、鼻の高い低い、顔の丸い細長い、ベッピン不細工、太ってる痩せてる、その他身体上の微妙な差異を表すウンヌンカンヌンは、こうなると元も子もない。これは一種の悟りの境地であろう。一体の死体の前で、我々が日々纏っている幻想はいとも簡単に意味を失い、しかしながら、その事実にはそこはかとない安堵感が漂っているような気がする。それにしても、血抜きされた死体はどこを切ってもえぐっても比較的キレイでちょっとびっくりだ。ちっともオエッとはならない。ただただ、その“物体感”に言葉を無くす。腎臓や肝臓、膵臓など、内臓が一つひとつ取り出され、皿のようなものに分類されていく。あとで犬にでも食わせるつもりか。

目玉がくり抜かれ、ポロンと取り出される。昔ホラー映画で目を串刺しにされるシーン(by-サンゲリア?)を観て「うぎゃ〜〜いってぇ〜〜っ!!」とか感じたような、痛点を刺激され、感染するアリティがまるでない。つまり死体はモノなのだ。

頭の上部に切れ目が入れられ、毛髪ごとズルリと頭の皮が剥がされる。ツルリとキレイな頭蓋骨の頂上が露わになる。テカテカだ。そこに垂直に丸鋸が当てられ、ゴリゴリと轢かれる。やがて切られた頭蓋骨の上部が河童の皿のようにパカッと外れ、脳みそが露出する。ブラックジャックによく出てきそうなシーンだ。しかもブラックジャックで描かれているくらいにリアリティがない。取り出された脳は何だか小さく縮こまっていて、剥く前から殻の中でカラカラ音を立てる小さく萎んだ出来損ないの甘栗の実ようにも見える。

キレイに内蔵をさらわれ、目玉と脳ミソをえぐり出された虚ろな物体がベッドの上に横たわっている。そこには死というドラマもすでにない。アラブ人風の研修医はおもむろに手ぶくろを外し、ベッド脇のテーブルにずらりと並ぶ内臓を取り分けた皿を一つづつ大切そうにどこかへ運んで行った。ビデオはそれで終わりである。

つまり、“タッフン、タッフン”も“プルルン”も一瞬であるということだ。我々はその一瞬を超スローモーに、しかし気忙しくあたふたと通過して消滅する運命のカタマリである。

(ウッディー著/つづく)
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■第1章/03-敦盛
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■第1章/02-焦燥
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■第1章/01-正夢
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