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「名もなき詩人」同好会コミュの控訴趣意書(弁護人作成)

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平成26年(う)第168号 大麻取締法違反被告事件
控 訴 趣 意 書
                    平成26年12月 12日

仙台高等裁判所第1刑事部 御中
被告人    関 千尋
弁護人    堀井 実千生

 上記被告人に対する大麻取締法違反被告事件について、控訴の趣意は下記の通りである。

                     記

第1 総論
 原判決は、大麻取締法第24条の2第1項が憲法に違反するとの被告人の主張を退け、被告人を懲役1年(執行猶予4年)に処した上、大麻を没収し、訴訟費用を被告人に負担させた。
 しかし、大麻取締法第24条の2第1項は憲法第13条、第14条及び第31条に違反するものであり、違憲無効である。原審は大麻の有害性に関する認識を誤った結果、違憲無効な法律を適用して被告人を有罪としたものであり、原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがある。
 よって、原判決は破棄されなければならない。

第2 大麻取締法第24条の2第1項が違憲であること
 1 憲法13条違反
 (1)憲法13条は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と規定している。大麻を所持することも一般的な行動の自由を保障する憲法13条の保障の範囲内にあり、原審が特段の留保を付さずに大麻取締法が憲法13条に違反するとの被告人の主張を検討していることも、大麻を所持することが一応は憲法13条の保障の枠内にあるとの理解に基づくものと思われる。
 (2)ア 大麻の所持が憲法13条の保障を受ける行為である以上、大麻所持を制限することができるのは「公共の福祉」に反しない場合のみである。そして、大麻所持に対し刑事罰の科せられることが許容されるためには、少なくとも大麻の使用が国民の保健衛生に危害を及ぼす有害性の存在することが前提とされなければならない。
   イ(ア)この点、原判決は「大麻が精神的薬理作用を有し、それが人体に有害なものであることは公知の事実である」と述べているが、大麻の使用が人に対し肉体的精神的に有害な影響を及ぼすものであるとした判例ないし裁判例が存在する一方で、大麻研究者であるアンドリュー・ワイルをはじめ大麻の有害性に対し疑問を呈する専門家らの知見が存在することもまた、本件と同様に大麻取締法の合憲性が争われた累次の裁判例などから明らかであり、原判決が説示するように大麻が人体に有害であることが公知の事実であるとは言えない。
   (イ)大麻に精神薬理的作用を有することは被告人も争わないものの、大麻が単に精神薬理的作用を有することを超えて人体に有害であるというためには大麻の使用が人の健康に害悪を及ぼすことが具体的に示されなければならず、本件でその証明はなされていないのであるから、結局、大麻取締法24条の2第1項は憲法13条に違反する。
 2 憲法31条違反
(1)仮に大麻の有害性が何らかの形で肯定され得るとしても、刑罰規定が罪刑の均衡という観点から著しく不合理なものであるときは憲法31条に違反すると解すべきところ、大麻取締法24条の2第1項は罪刑の均衡を欠くものであるから、同法の規制はやはり違憲である。
(2)ア 現行の大麻取締法は大麻所持を刑罰をもって規制しており、しかも懲役刑のみで処罰している(大麻所持の罰則は、立法当初、3年以下の懲役又は3年以下の罰金という比較的緩やかなものであったが、昭和38年の改正により選択刑としての罰金が廃止され、懲役刑も5年以下の懲役となるなど重罰化された。)。
  イ しかし、東京高等裁判所昭和53年9月11日判決(判例タイムズ369号424頁)が「大麻に従来考えられて来た程の強い有害性がない」と説示しているように、現在では大麻に強い有害性があるとの見解は裁判例上も否定されている。
 (3)一方、例えばオランダでは大麻の所持・使用は合法化されており、事実上、日本国に大麻規制をもたらしたアメリカ合衆国でも、ワシントン州及びコロラド州においては州法により個人による所持や吸引が認められていることからすれば、大麻所持の規制は普遍的な価値観に基づくものではなく、政策的なものに過ぎない。
 (4)ア 成人であれば誰でも適法に所持ないし使用できる煙草やアルコールとの比較の観点からも、煙草については健康上有害であることが公知となっており、アルコールも摂取する量や方法によっては人体に有害であることがほぼ常識となっている。アルコールの作用は自動車運転能力の低下を生じさせ、アルコールを摂取することにより急性中毒の症状が起こることもある。
   イ(ア)大麻取締法による規制が大麻使用者本人への有害作用に着目したものであるとすれば、少なくとも自己使用目的での大麻所持等には犯罪としての実質はなく、同法の規制は、本来的に個人の自由な領域に属する行為に対し、パターナリスティックな介入を行うものと言える。しかし、パターナリズムは重い刑罰を科す理由として十分ではない。
   (イ)そして、煙草やアルコールは大麻より人体に有害であるという専門的知見も存する中で、煙草やアルコールに対する規制は緩やかに行われているにもかかわらず、「強い有害性」が否定された大麻について、敢えて重い刑罰をもって所持等を禁止する理由は全くない。
 (5)以上に鑑みると、大麻取締法24条の2第1項が罪刑の均衡を欠いていることは明らかであり、同条の規定は憲法31条に違反する。
 3 憲法14条違反
 (1)原判決は、大麻取締法24条の2第1項が憲法14条に違反するとの主張に対し、アルコールや煙草と大麻では、心身に及ぼす影響が異なるため、有害性を単純に比較することはできないとし、アルコールや煙草の効用や危険性の社会一般の認知度と大麻のそれとは異なることから、大麻に対する規制が他の噂好晶に対する規制と異なるとしても直ちに不合理な差別であるとは言えないと述べて、憲法14条に違反するものではないとした。
 (2)しかし、アルコールや煙草の効用や危険性の社会一般の認知度と大麻のそれとは異なるとする原判決の説示にはそもそも根拠がなく、仮にその様な「認知度」の違いがあるとしても、何ら具体性のない漠然とした「認知度」の違いから不合理な差別に当たるかどうかの判断を行うことは許されないと言うべきである。裁判所が、法律による区別取扱いを正当化する具体的な根拠を示すことなく、社会一般の認知度(国民の感覚、感情)に従って法律の憲法適合性の審査を緩やかに行うことになれば、不合理な差別が固定化され、差別が助長される危険がある。
 (3)大麻取締法は、上記のとおり、無害又は強い有害性のない大麻について所持を一律に禁止し、その違反者に対し懲役刑を科すものであるが、大麻よりむしろ人体に有害であるアルコール及び煙草の摂取に対する規制や緩やかに行われていることからすれば、大麻の所持を処罰することはやはり不合理な差別であって、憲法14条に違反する。

第3 まとめ
 以上のとおりであるから、大麻取締法第24条の2第1項は憲法第13条、第14条及び第31条に違反する。同法が合憲であることを前提とした原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな法令違反がある。
 よって、大麻取締法第24条の2第1項は違憲無効であり、被告人は無罪であるから、原判決は破棄されるべきである。
             以上

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